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SteelSeriesの「Apex Pro」はゲーマー向けキーボードに革命を起こすか? キーごとにアクチュエーションポイントを変更可能
見どころの多いApex ProとApex Pro TKLの特徴を,写真を中心に説明していこう。
磁気ホールセンサーを組み込んだ独自キースイッチで,アクチュエーションポイントを1キーずつ自由に変えられる
SteelSeriesと,中国のキースイッチメーカーであるHuizhou Gateron Electronic Technology(以下,Gateron)の共同開発で実現したOmniPointは,ユーザーが自由に各キーごとのアクチュエーションポイントを変更できるという特徴を備えたキースイッチだ。
4Gamer読者であれば,普段使っているPCにゲーマー向けキーボードを接続している人は少なくないだろう。しかし,ゲーマー向けキーボードはゲームにおいては適当であっても,日常的なPC使用,たとえばテキストの入力,表計算やプレゼンテーションスライドの作成といった用途には,適しているとは言い難い面もある。
とくに,アクチュエーションポイントが浅く,軽く指を押し込んだだけで入力となるキースイッチを使ったゲーマー向けキーボードは,日常的な用途に使うとミスタイプが多すぎることもあるだろう。
OmniPointは,メカニカルキースイッチでもなければ,静電容量式キースイッチでもなく,磁気ホールセンサーを使ったまったく新しいキースイッチである。あえて言うなら,「磁気ホール式キースイッチ」といったところか
大雑把に言うと,磁気ホールセンサーとは,磁極の判別や磁力の強さを検知できるセンサーである。スマートフォンが内蔵している磁気センサーとは,ほとんどの場合,この磁気ホールセンサーだ。
OmniPointは,キーキャップが押し込む軸の下側にごく小さな磁石を取り付けてあり,これが発する磁力の変化を,基板側に取り付けた磁気ホールセンサーで検出できる。つまり,磁力が設定したしきい値を超えた場合,スイッチが押下されたと認識して,キーがオンになったという信号をキーボード内のコントロール用プロセッサに送るのだ。
しきい値がアクチュエーションポイントとなるので,しきい値の値を任意に変更すれば,アクチュエーションポイントの深さを変えられるという仕組みである。アクチュエーションポイントの設定幅も広く,最も浅い状態では0.4mm,最も深い状態では3.6mmに設定できるという。
SteelSeriesのエンジニアが,分かりやすい例えをしていたが,ゲーマー向けマウスでトラッキング解像度のDPI値を任意に変えられるように,Apex Proシリーズは,ユーザーの好みやアプリケーションに合わせて,キーボードのアクチュエーションポイントを変えられるわけだ。素早い入力が重要なFPSでは,アクチュエーションポイントをごく浅くしておき,ミスタイプを減らしたいテキスト入力のアプリケーションや用途では,アクチュエーションポイントを深くできるのである。
あるいは,[W/A/S/D]キーだけはアクチュエーションポイントを浅くしておき,誤爆を避けたい周囲のキー(たとえば「Overwatch」における[Q]キー)は,あえて深く設定するといった使い方も可能だ。
さて,ここまでの説明を読んでピンときた人もいるだろうが,OmniPointの利点はアクチュエーションポイントが可変であることだけではない。
まず,入力に対するレスポンスが非常に速いそうだ。Cherry MXシリーズや互換キースイッチの場合,キーがオンになったという信号がPCへ送られるまでのレイテンシが約6msもあるのに対して,
それに加えて,メカニカルキースイッチやメンブレンキースイッチのような機械部品がないので,耐久性も非常に高いとのこと。SteelSeriesのエンジニアによると,同社では打鍵回数1億回まで計測できる試験機材を用意しているのだが,OmniPointは測定限界である1億回を超えても,キースイッチが壊れることはなかったという。そのためSteelSeriesでは,OmniPointの耐久性は1億回以上としているそうだ。
余談気味だが,Cooler Masterのキーボード「MK850」が採用した「Aimpad Technology」の印象を,SteelSeriesのエンジニア氏に聞いてみた。氏によると,
小型有機ELディスプレイの搭載で,オンザフライでの設定変更やマクロ作成が容易に
Apex Proシリーズでは,PC用の設定ソフトウェアを使わなくても,OLED Smart Displayに表示される内容を見ながらスクロールホイールとボタンでアクチュエーションポイントを変更したり,それ以外の設定項目を変更したりできるのだ。
そのほかにも,OLED Smart Displayはオンザフライでのマクロ登録時に入力した内容を表示できるし,設定を保存したプロファイルをキーボード内のストレージに書き込んだり,読み出したりもできる。ゲーマー向けメッセンジャーアプリ「Discord」の通知を表示することも可能で,モノクロであるが,GIFアニメーションを表示することもできるという。
外観やそれ以外の機能についても,簡単に説明しよう。
Apex Proシリーズには,着脱可能なパームレストが付属しており,キーボード本体とは磁石で簡単に付け外しできる。
キーボードのデザインには,天板上にキースイッチを並べたフローティングデザインを採用しており,各キーに内蔵したカラーLEDイルミネーションの光がよく見えるようになっていた。
また,キーボード背面の左側には,USBパススルー用のUSB 2.0 Type-Aポートが1つある。USBポート内に白色LEDを内蔵しているため,光らせておけばいちいちキーボードの背面を手で探ったり,キーボードを持ち上げてUSBポートの位置を確認したりすることなく,接続したいUSB機器を簡単につなげられるというわけだ。
新しいセンサーと有機ELディスプレイを使った設定機能といった特徴を盛り込んだだけに,メーカー想定売価もそれなりで,フルキーボードタイプは199.99ドル,10キーレスタイプは179.99ドルになる予定とのこと。すでに日本語配列モデルの投入も予定にあり,2019年秋の終わり頃には発売できるだろうとのことだった。
最後に,Apex 7シリーズについても簡単に触れておこう。
Apex 7シリーズとApex Proシリーズの違いは,採用するキースイッチにあり,SteelSeries独自のメカニカルキースイッチである「QX2 Linear Mechanical RGB Switch」を採用しているとのことだ。
デザインは共通で,10キーレスモデルを用意していることや,OLED Smart Displayによる設定機能なども同様である。
メーカー想定売価は,フルキーボードタイプが159.99ドル,10キーレスタイプが129.99ドルとのことだ。
SteelSeriesのApexシリーズ製品情報ページ(英語)
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