連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第166回「バランス感覚の妙」
例えば,ゲイムを作るのに必要なバランス感覚とは,そのゲイムのオリジナリティとゲイム性の調和だったり,難易度の調整だったり,プレイする側の立場に立って面白いかどうかを判断する力のことでしょうな,きっと。
一方,ゲイムをヒヒョーする立場のバランス感覚とは,自分の嗜好に基づく感想と,大衆がプレイして抱くであろう感想との両方を,偏らずに,場合によっては意図的に偏らせて伝える能力ね。
そして,社会人としてのバランス感覚とは,自分という「個」と「世の中全体の中での個」をどれだけ意識して,自分の立ち位置を決めることができるか,要は人間関係を築くためにどういう行動がとれるかの感覚だと私は思うのよ。
これを読んでいるあなたは,冒頭から何を訳の分かんないことを書いているんだ,トチ狂ったかゲイレスラー? と思うことでしょう。私が一読者なら間違いなく思う。
えっと,結局何が言いたいかというと,さまざまな選択肢や問題点がある物事の中で,ベストとは言わないまでもベターな立ち位置をチョイスできる能力こそが,言いたいことも言いづらいこんな世の中で,一番必要とされる能力なのではなかろうかと私は考えるわけであります。
それはどういうことかというのは,今後1年間かけて追々書くとして,先にこのゲイムの紹介をしておくわ。ホラ,私くらいの余談ニストになると,このあと,ゲイムの内容とはちょっと違った部分に注目してしまうことが予想されるから。なのでおススメだということを真っ先にお伝えしておこう,と。
いや,冗談抜きで面白いのよ。まず,バイオハザード リベレーションズは,言わずと知れた「バイオハザード」シリーズの最新作ね。それがニンテンドー3DS用としてリリースされたわけ。
要するに,極限状態の中でクリーチャーと戦い,謎を解いていくサバイバルホラーゲイムなんだけども,ここで強調したいのは,面白さの質が「バイオハザード」や「バイオハザード2」のそれに近いというところね。
シリーズもののゲイムって,プラットフォームが変わるたびにそのハードでできることが増えたりするから,それに合わせてゲイム性自体を変えていくケースが多々あると思うのよ。もちろん良いか悪いかは別にして。バイオハザードシリーズも,そうやって面白さの質を変えながら進化してきたタイトルの一つでしょう。シリーズの中のどのタイトルがいいかっていうのは,完全に個人の好みだから,それについて私は何も言わない。
ただ,今回のリベレーションズは,バイオハザードシリーズがブレイクした1や2の頃の楽しさを思い出させてくれたわ。具体的には,エリアを行き来して鍵を探したりパズルを解いたり,その結果,今まで進めなかったエリアにも足を踏み入れたりできるようになる。そうね,ひと言で言えば「手探り感」かしら。その楽しさが,このリベレーションズでは復活しているわ。
「昔は,バイオハザードをヤったんだけど,最近は……」というような人には本気でオススメ。シリーズファンは,私がここで何を書こうともすでにプレイしているだろうから何も言わない。まあ,いずれにせよバイオハザードシリーズをかじったことがあって,その上で世界観が嫌いでさえなければ,プレイして損はないでしょうね。
ちなみに,今プロレス界の外国人レスラーで最も日本文化に造詣が深い,世界ジュニアヘビー級チャンピオンのカプコン大好きケニー・オメガ選手は「ソノバイオハザード面白イデスカ? エェッ!? 1トカノキャラクターガ使エル? OH! グレイト! ソレハマサニ温故知新デスネ!」といたくお喜びの模様。もちろん全部日本語で。
で! ですよ。ここからバランス感覚の話に戻してみるわ。さっき私は,プレイ感覚が1や2に近いと述べた。でも,1や2と決定的に違うことがある。それは何か。1や2は一つのストーリーを中断ポイントなく通してプレイする構成だったんだけど,今回のリベレーションズは章仕立てなのよ。
なぜそうしたか。ここで,作り手の立場にタってみると,一つの大きな選択が生まれることは分かるはず。プレイヤーにストーリーをぶっ通しでプレイさせたほうがいいのか,それとも区切って休むきっかけを与えたほうがいいのか。もっと端的に言うと,「止め時」をプレイヤーに与えるべきか否か。そこでリベレーションズは,止め時を与えることを選んだわけね。
ちょっと前まで(場合によっては今もだけど),熱中度が高いゲイムを,「止め時がない」という表現で賛辞する傾向があったように思う。でも,今やその言葉は,単純な褒め言葉からは外れたと私は思っているの。なぜならそれは,必ずしも幸せなことではないから。
ハードの性能が向上するに従って,最近のゲイムは,全部が全部ではないけれども,ある種ボリューム勝負の側面も出てきているじゃない? オープンワールドのゲイムなんて,まさにその典型よね。そんなゲイムの場合,「止め時が無い」ことがすなわち,「再開したときにどこまでプレイしたか思い出せない」可能性を高くしてしまうこともあるわけ。
それこそ,RPGにボリュームがあり過ぎて,途中まで進めたはいいが仕事が忙しくなってちょっと中断,ある日再開したら話がさっぱり思い出せなくて,あっれ,何すれば良かったんだっけ? と考えるうちにまた中断して,結局,クリアできなくなったとか,きっと私だけじゃないわよね?
昔はそれでも良かったのよ。学生時代なんかだと,ゲイムをプレイできる時間がたっぷりあったから。でも今は,そうじゃない。そしてきっと,私と同じようなジレンマを抱えている人は少なくないと思うの。4Gamer読者全体の平均年齢は28.6歳らしいんだけど(関連記事),これってほとんどが,昔からのゲイマーがそのまま大人になったケースよね?
そして私とほぼ同世代の30代前後,もしくはそれ以上の年齢の人は,ゲイムが昔と比べて子供だけのものではなくなっているという実感もあるでしょ?
で,ゲイマーの平均年齢が高めってことは,暇な時間がなくなっている人も多い,と。つまり「止め時がない」ゲイムは,時間が思うように取れない層にとってありがたいことでは決してなくなっているのね。
だから! リベレーションズは1や2とプレイ感覚を似せながらも,1や2とは違って「止め時」をプレイヤーに与えた。私は勝手にそう解釈したわ。そしてこの意味において,作り手のバランス感覚が非常に冴えていると思った次第。
章の最初に今までのストーリーをダイジェストで流すのも,プレイを再開したときにどこまでプレイしていたかを思い出させるためだろうし。そしてこのダイジェストの質が高いの。思い出すばかりか,ちゃんと気分が盛り上がるダイジェストに仕上がっているわ。ぶっ通しで続けてプレイする人に対しても,再開する人に対しても,どちらも高揚した気分で始められる。こういう落とし所を作った作り手のバランス感覚を,本当に素晴らしいと心から思ったわ。
ま,ここまで私が書いた文章を身も蓋もない感じで切り捨てるならば,そんな難しいことは抜きにして「面白いからプレイしたほうがいい」の一言で済むっちゃあ済むわね。ともあれ! リベレーションズは買いですぜ!
というわけで,今回はデッドオアアライブ,生か死か,天と地と,などの選択におけるバランス感覚について論じてしまったわ。この論自体,意外とどうでもいいものなんだけど。
ちなみに,生か死かは変換をミスると「性化鹿」で鹿が突然変異を起こしてエロくなってしまったり,「成果しか」で結果しか求めないドライなビジネスマンになったり,「製菓四課」で甘いものを作る会社で,しかも四課まであるならそれなりの大企業になってて凄いなと思ったり,「生家歯科」でなんか実家が儲かりそうな稼業やっててうらやましいなぁと思ったりするんで,変換するときには皆さんも注意してくださいね,くれぐれも。ではまた来週!
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)」
PlayStation Vita:「アンチャーテッド -地図なき冒険の始まり-」
ニンテンドー3DS:「バイオハザード リベレーションズ」
Wii:「ぷよぷよ!!」
Xbox 360:「トロピコ4 日本語版」
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- 関連タイトル:
バイオハザード リベレーションズ
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