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[GC 2007#001]北米ゲームレーティング評議会「ESRB」に異を唱えたGCDCオープニングスピーチ
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印刷2007/08/21 15:20

業界動向

[GC 2007#001]北米ゲームレーティング評議会「ESRB」に異を唱えたGCDCオープニングスピーチ

「Lair」より。なんでいきなりPS3タイトル? と思ったかもしれないが,詳細は後ほど
 ドイツで開催されるゲームショウ「GC」(Games Convention)に先立つ形で毎年開催されているのが,欧米のゲーム開発者が集う国際会議「GCDC」(Games Convention Developers Conference)だ。GCDCは,毎年3月に北米で開催される「GDC」(Game Developers Conference)の欧州版といった位置づけになる。
 数年前まで,ヨーロッパのゲームショウといえばロンドンで開催される「ECTS」(Electronic Consumer Trade Show)のことだったが,ECTSの終了とともにGC,そしてGCDCは力を付けてきており,今年のGCDC 2007ではついに,欧米を中心として1000人以上の開発者を集めるに至っている。2006年は200人程度だったので,なんと5倍以上。欧州,そしてドイツのゲーム業界の隆盛を物語っているといえよう。

GCDCのオープニングキーノートでレーティングシステムの改善を要求したFactor 5のCEO,Julian Eggebrecht氏。会場ではLairのデモが行なわれたものの,プロジェクターの調子がおかしく上手くはいかなかったのが残念そうだった
 さて,GCDC 2007の開幕を告げる基調講演(オープニングキーノート)のスピーカーを務めたのは,ドイツで現在最も“イキのいい”開発チーム「Factor 5」を率いるJulian Eggebrecht(ユリアン・エッゲブレヒト)氏である。筆者の記憶する限り,ドイツ人開発者がGCDCのオープニングキーノートを行うのは初めてのことだ。

 Eggebrecht氏のFactor 5は,もともと1987年にドイツで設立された開発会社。1995年にリリースされたSega Genesis版「International Superstar Soccer Deluxe」――日本的にいうとメガドライブ版「実況ワールドサッカー2 ファイティングイレブン」――などの成功を経て,1996年にアメリカのカリフォルニア州に本拠を移した。その後,1998年の「Star Wars Rogue Squadron」や2000年の「Indiana Jones and the Infernal Machine」など,LucasArts Entertainmentの下請けとしてヒット作を量産し,アメリカでも確固たる地位を築いていったわけだ。

 そんなFactor 5が現在開発中なのは,PLAYSTATION 3専用となるアクションゲーム「Lair」。今回の基調講演でEggebrecht氏がテーマとして挙げたのは,Lairにまつわる北米ゲームレーティング評議会「ESRB」(Entertainment Software Rating Board)との“攻防戦”の内容である。
 「No Sex, No Drugs, and Little Rock'n Roll - Rating and the Challenged Creativity in Games」(セックスなし,ドラッグなしでロックがちょびっと――レーティングと試されるゲーム開発)と題された基調講演は,ESRBの評価がいかにいかにあやふやで実態のないものかを糾弾するという,過激ながらも笑いの絶えない内容になった。

 PCゲーマーの中にはLairというタイトルを初耳という人もいると思うので簡単に紹介しておくと,ドラゴンの背中に乗って空中戦や地上戦を楽しむという,派手なアクションがウリのタイトルだ。最大2000人もの兵士と戦うようなシーンも用意されている。

 当初Factor 5は,13歳以上を対象にした「T」(Teen)レーティングを目指しており,ESRBの認可得るため,何度も映像や画像のやり取りをしていたとEggebrecht氏は語る。
 しかし,炎のブレスで攻撃したときに起こる,敵兵やモンスターの肉片が飛び散る描写がESRBのお気に召さなかったそうで,何度も作り直して,少しずつ肉片を減らしていくという時間の掛かる作業を強いられたとか。結局すべての肉片を消してOKとなったらしいが,Eggebrecht氏は「それなら最初から全部消すように言ってくれれば,無駄な作業をする必要がなかった」と不満を述べる。

 ただ,火で燃えた人体の骸骨だけが残るのもダメ,サイ型モンスターの首をむしり取り,それをボウリング玉のように別の敵に投げつけるのもダメといわれ,一つずつ問題を解決していったにもかかわらず,結局のところはFactor 5の努力むなしく,18歳以上しか購入できない「M」(Mature)レーティングは回避できなくなった。Sony Computer Entertainmentも,そのままリリースすることを決定したとのことだ。

 そんなESRBを皮肉るため,チートコードの入力で視聴できるようになるちょっとエッチなムービー「Hot Coffee Maker」を挿入する予定だというEggebrecht氏。いうまでもなく,これはあの「Hot Coffee」事件に引っかけたもので,基調講演では,裸体の女性が並ぶ,儀式のような短いムービーも紹介された。Eggebrecht氏は「ガイドラインが不在で,担当者が思い思いに評価するようなESRBには今後も改善を求めていこう。暴力描写だけでなく,セックス描写も含め,開発者が信じることを責任を持ってゲームにしていくことが大切だ」と締めくくった。(ライター:奥谷海人)

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