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新生DHARMAPOINTの第1弾製品となるマウス「DPTM37BK」レビュー。復活した「三七」はゲーマーの期待に応えられるか
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印刷2017/11/14 00:00

レビュー

新生DHARMAPOINTから復活した「三七」,その実力やいかに

DHARMAPOINT ダーマタクティカルマウス(DPTM37BK)

Text by BRZRK


ダーマタクティカルマウス(型番:DPTM37BK)
メーカー:ソリッド
問い合わせ先:「お問い合わせ」フォーム
実勢価格:5500〜6000円程度(※2017年11月14日現在)
画像集 No.002のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTの第1弾製品となるマウス「DPTM37BK」レビュー。復活した「三七」はゲーマーの期待に応えられるか
 かつては「日本発のゲーマー向け製品ブランド」として,国内PCゲーマーの支持を集めていたDHARMAPOINT(ダーマポイント)。2013年9月に主要メンバーの離脱があって事実上の終焉を迎えた後は,マウスの製造に必要なデータが流出したと見られ,結果として台湾メーカーによるクローン製品が登場したりと(関連記事1関連記事2),悲しい“終わり方”をしていたので,ファンの中にはこのあたりの経緯を覚えている人も少なくないだろう。

 そんなDHARMAPOINTの商標が,ソリッドという会社に移ったのは2016年後半のことだ。ソリッド傘下のDHARMAPOINTは,同年内にティザーサイトを立ち上げ,2017年7月には公式Webサイトもオープンして,ついに再始動後の第1弾製品である「ダーマタクティカルマウス」(型番:DPTM37BK,以下型番表記)をリリースするに至った。新生DHARMAPOINTは,ここに復活を遂げたわけだ。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTの第1弾製品となるマウス「DPTM37BK」レビュー。復活した「三七」はゲーマーの期待に応えられるか
 ただ,DHARMAPOINTがいったん終了してから復活するまでの間に,ゲーマー向けマウスの市場には大きな動きがあり,かつての群雄割拠の時代も今は昔,世界規模の大型メーカーが圧倒的な存在感を見せるに至っている。果たしてそんな市場において,新生DHARMAPOINT,そしてDPTM37BKは立ち位置を確保できたのだろうか。例によってじっくりテストしたので,結果をお伝えしていきたい。


DRTCM37の復刻と言うより,COUGAR 300Mのバリエーションモデル的なDPTM37BK


 最初に基礎的な情報を押さえておくと,DPTM37BKは,旧DHARMAPOINTが2013年にリリースした右手用ワイヤードマウスにして,「三七」(さんなな)という愛称で呼ばれた「DRTCM37」の復刻を目指したものだ。

いずれの写真も左がDPTM37BK,右がDRTCM37の黒モデル「DRTCM37BK」
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画像集 No.007のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTの第1弾製品となるマウス「DPTM37BK」レビュー。復活した「三七」はゲーマーの期待に応えられるか
 「DRTCM37の復刻版」ではなく「DRTCM37の復刻を目指したもの」という表現をせざるを得ないのは,Microsoftの「IntelliMouse Explorer 3.0」(以下,IE3.0)クローンとして,DHARMAPOINT独自の拡張が入っていたDRTCM37そのものよりも,実際にはDRTCM37の(あまりデキのよろしくない)クローンである「COUGAR 300M Gaming Mouse」(以下,COUGAR 300M)がベースになっているように見えるからである。

4Gamerの比較用リファレンスマウス「Gaming Mouse G500」と並べたところ。全長はGaming Mouse G500に近いが,横幅と背の高さはDPTM37BKのほうが短い
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COUGAR 300M
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 なぜそう言えるのかだが,ポイントは3つある。
 1つは,もともとのDRTCM37が,左右メインボタンをセパレート化していたのに対し,COUGAR 300Mはさまざまな事情――話すと長くなるので,詳細は2014年12月24日掲載の記事2015年5月8日掲載の記事を参照してほしい――でワンピースタイプになっており,そしてDPTM37BKもワンピースタイプになっている点が挙げられる。

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 もう1つはメインボタンで,DRTCM37では左右メインボタン用スイッチとしてZippy Technology(以下,Zippy)製のものを搭載しているのに対し,COUGAR 300MとDPTM37BKはオムロン スイッチアンドデバイス(以下,オムロン)製になっている。

 当然のことながら,スイッチが異なるので,クリック時に得られる感触はDPTM37BKとDRTCM37で異なる。DPTM37BKのほうが少し硬く,カチカチ感が増している印象だ。メインボタンがセパレートタイプからワンピースタイプに変わっていることも押下感には影響しているかもしれない。
 なら,より近いデザインであるCOUGAR 300Mとの違いはどうかというと,DPTM37BKのほうがCOUGAR 300Mよりも軽い押下圧でボタンを押し込むことができた。つまり,ボタンの硬い順で言えば「COUGAR 300M>DPTM37BK>DRTCM37」ということだ。DPTM37BKの押下感は,2製品のちょうど中間くらいという印象だ。いいか悪いかではなく,「違う」ということがここでは重要である。

本体底面。ちなみにセンサーホールの位置はDPTM37BKとDRTCM37,COUGAR 300Mで同じだった
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 もう1つ,微妙な操作感に影響するのが本体底面部で,DRTCM37だと四隅に小さな楕円形のソールが貼ってあったのに対して,COUGAR 300Mでは底面の前後に大きめのソールを貼る仕様になって,単純に抵抗が増したのだが,DPTM37BKの底面およびソールのデザインはそんなCOUGAR 300Mと完全に同じものになってしまっているのだ。

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DPTM37BK(左)とDRTCM37BK(右)。左右メインボタンの両端部に注目すると,デザインが異なっていると分かる
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この角度から見ると,左右メインボタン部にほんのりとした凹みがあると分かる。一方,個人的に気になったのは,スクロールホイール手前側のボタンがやたらグラつくこと。写真でも右に傾いている
 以上,細かいながらも使い勝手を左右するところがことごとくDRTCM37とは異なるDPTM37BKだが,「COUGAR 300Mのバージョン2か?」と聞かれると,回答はなかなか難しい。
 まず,ワンピース型の左右メインボタンだが,先端部を見てみると,DPTM37BKはDRTCM37ともCOUGAR 300Mとも似ていない。具体的には,DPTM37BKだと,左右メインボタンの先端部は左右にそれぞれ2mmほど突き出た形状になっているのだ。

 この形状により,より奥側(=前側)に指を配置できるようになるだけでなく,ボタンを押すときに自分にとってのベストな指の配置の選択幅が増えている。ただ,DPTM37BKでは左右メインボタンがワンピース型になっているため,DRTCM37に慣れていたユーザーは,乗り換えにあたって多少なりとも違和感があるかもしれない。

 指を配置する場所は少しだけ凹んだ形状になっており,自分に合った指の置き場所を見つけやすくなっている。
 DRTCM37やCOUGAR 300Mでは「スクロールホイール側から両側面にかけての傾斜」はあったが,「メインボタン部の凹み」はなかったので,この点はDPTM37BKが新たに採用した,今風のデザインと言っていいだろう。

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 スクロールホイールは,巻いてあるラバーの表面に浮かぶ模様が七支刀の枝刃のようになっている点も含め,DRTCM37と完全に同じ。横幅が実測約7mmで,1回転が24ノッチなのも,もちろん変わっていない。

 左側面は,IE3.0クローンによく見られる,マウス前後から中央部にかけて凹みを持たせたデザインを採用している。というか,COUGAR 300Mと基本的には変わらないデザインだ。
 DRTCM37とも形状自体は同じなのだが,DRTCM37は本体両側面がザラザラとして滑り止め効果があったのに対し,DPTM37BKとCOUGAR 300Mではよくあるマット加工になっているのが大きな違いとなる。

 左側面にある凹みの上には左サイドボタンが前後方向に並んでいる。奥側(=前側)のボタンは長さが実測約19mm,幅は同7.5mmで,手前側(=後側)の長さは同約28mm,幅同7.5mm。手前側のサイドボタンのほうが長めで,サイドボタン自体は本体から実測約1.5mmほど突き出ていた。

DPTM37BKは,親指を立ててもベタ置きでもしっかりと配置できる,大きな凹みを備えている。この凹み方自体はオリジナルのDRTCM37と同じだ
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 右側面は左側面と異なり,手前側が若干膨らみ,奥側にかけて小さくなっていく。この形状は薬指と小指を乗せたりするのに向くというIE3.0クローンらしさで,DRTCM37およびCOUGAR 300Mとの間に違いはなさそうだ。

右側面はDRTCM37を踏襲。奥側ほどマウス本体中央へ切り込む形状になっている
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ケーブルは布巻き仕様で,太さは実測約3mm。強度保持のためか少し硬めでクセが残りやすいため,使用前にほぐしておくといいだろう。でなければマウスパッドの端にひっかかったり,ケーブルアンカー(マウスバンジー)を使っても引っ張られる感覚を受けたりする可能性がある
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 なお,DPTM37BKが搭載するセンサーは,PixArt Imagingの光学モデルである「ADNS-3090」。2013年リリースのオリジナルDRTCM37が採用していたものと同じだ。基本デザインも完全に復刻できていれば,「外観だけでなくセンサーもオリジナルのままなので,使い勝手は変わらないね!」と好印象なのだが,ここまで述べてきたとおり,いろいろ変わってしまっているので,結果としてセンサーには古さしか感じないというのが正直なところだ。
 新生DHARMAPOINTの「再始動」感を高めるためにも,センサーは思い切って最新世代のものにしてもらいたかったと個人的には思う。

 以上を踏まえつつ,DPTM37BKの主なスペックを下にまとめておくので,参考にしてもらえれば幸いだ

●DPTM37BKの主なスペック
  • 基本仕様:光学センサー搭載ワイヤードタイプ
  • 搭載センサー:PixArt Imaging製「ADNS-3090」
  • ボタン:左右メイン,センタークリック付きスクロールホイール,ホイール手前×1,左サイド×2
  • 最大トラッキング速度:60IPS
  • 最大加速度:20G
  • フレームレート:6400fps
  • 画像処理能力:未公開
  • トラッキング解像度:400〜4000 CPI(※3600 CPIを超える設定値はエミュレーション動作,1CPI刻みで設定可能)
  • USBレポートレート(ポーリングレート):125/142/166/200/250/333/500/1000Hz
  • データ転送フォーマット:16bit/axis
  • リフトオフディスタンス:調整可能
  • LEDイルミネーション:非搭載
  • 実測本体サイズ:68(W)×126(D)×39(H)mm
  • 実測重量:130g(※ケーブルを含む),94.5g(※ケーブル抜き)
  • マウスソール:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
  • 実測ケーブル長:約1.7m
  • 対応OS:Windows 10・8.x・7
  • 発売日:2017年10月6日
  • 税込実勢価格:5800〜6000円程度
  • 保証期間:1年間


IE3.0クローンらしい持ちやすさは変わらず


 外観を押さえたところで,お次は握ったときのフィーリング確認だ。今回も「つまみ持ち」「つかみ持ち」「かぶせ持ち」といった定番の持ち方と,かぶせ持ちをベースに親指と薬指,小指を立たせるように配置する筆者独自の「BRZRK持ち」の4パターンで握ってみたので,その結果を以下のとおり,写真とキャプションでお知らせしたい。

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つまみ持ちの例。右サイドのふくらみに小指,薬指を乗せるとちょうどいい塩梅で操作できる
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つかみ持ちの例。なんら不満を覚えることなく操作可能だ。あえて言えば,筆者の場合は小指と薬指の間隔を空けるように指を配置するとより握りやすく感じた
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かぶせ持ちの例。こちらも気になる点はとくにない。長時間の使用にも耐えられる
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BRZRK持ちの例。手が大きめな筆者の場合,マウスを斜めに持つように気持ち左側から握ると快適に操作できた

 さすがは信頼と実績のIE3.0クローンといったところで,不満のない形状だとまとめられるだろう。DRTCM37自体が持ちやすいマウスで,そこと比べても形状面の違いはメインボタン先端部くらいだから,握りやすさに大きな変化は生じていないのも当然といったところか。


シンプルなソフトウェアはほぼかつてのまま


 DPTM37BKはWindowsのクラスドライバで動作するが,サイドボタンやマウスの感度を調整するには公式サイトのダウンロードページから専用の設定ツール「DHARMA CONTROL」を導入する必要がある。筆者がテストしたときのバージョンは2.1だったが,結論から先に述べると,その使い勝手は旧DHARMAPOINT時代とまったく同じで,見た目にもとくに変わったところは見られなかった。

DPTM37BKでは,スクロールホイール手前側に並んだボタンのさらに手前,2つ並んだLEDインジケータのボタン側でCPI設定を確認できる。設定できるCPI設定が2つなので,色も赤と青の2色
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 もっとも,2013年の頃と「変わらない」と言われても……という人も多いだろう。ざっと説明しておくと,タブは「CPI SETTING & TOOL」「SCRIPT SETTING」「BUTTON SETTING」の3つで,CPI SETTING & TOOLでは最大2段階のCPI設定を登録したり,リフトオフディスタンスの調整を行ったりできるだけでなく,「Debounce」(デバウンス)の設定も行えるようになっている。
 Debounceは,意図しない連打の入力を防ぐためのもので,ms単位の時間指定を行っておくと,それより短い間隔で入った入力をカットできる。デフォルトは16ms。0〜30msの範囲を1ms刻みで指定可能だ。

DHARMA CONTROLで最も重要と言えるのがCPI SETTING & TOOLだ。センサー関連の設定はここで行う。リフトオフディスタンス調整機能は「リフト機能をカット」にチェックを入れると,10〜50の範囲を1刻みで設定可能だ。ただし,設定値の1が1mmなのかどうかは明らかになっていない
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BUTTON SETTINGタグでは各ボタンの機能を変更できる。左ペインの「PROFILE」以下にゲームの実行ファイルを登録しておくと,アプリケーション起動時に自動でプロファイルを切り換えてくれる。切り替わらない場合は本体底面にあるボタンを押せば手動での切り換えも可能
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こちらがSCRIPT SETTING。要はマクロエディタだ。右側にはDHARMAPOINTの作成したプロファイルが入っているのだが,旧DHARMAPOINTから更新されていないため,ここ数年の間に登場した主要タイトルに向けたものはない。ここはどうにかならなかったのか
プロファイルのインジケータを確認したところ。プロファイルに応じて,スクロールホイール手前のボタン近くにある2連LEDインジケータのうち,本体後方側(※写真では右側)にあるほうが赤,緑,青,紫,水と切り替わる
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 操作性自体は問題ないので,ゲーマー向けデバイスに不慣れな人でも,おおむね問題なく扱えるのではなかろうか。マニュアル(※リンクをクリックするとpdfファイルのダウンロードが始まります)もあるので,何か疑問があればそちらを参考にしてほしい。


センサー周りには大きな問題あり


 今となっては「古い」としか言いようのないADNS-3090センサーを搭載するDPTM37BKだが,その実力は2017年にあっても十分なものなのか。下に示したシステムとテスト条件で検証していきたい。

●テスト環境
  • CPU:Core-i7 7820X(8C16T,定格クロック3.6GHz,最大クロック4.3GHz,共有L3キャッシュ容量11MB)
  • マザーボード:MSI X299 TOMAHAWK(Intel X299)
    ※マウスのレシーバーはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結
  • メインメモリ:PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×4
  • グラフィックスカード:ASUSTeK Computer DUAL-GTX1070-O8G(GeForce GTX 1070,グラフィックスメモリ容量8GB)
  • ストレージ:Intel SSD 600p(SSDPEKKW128G7X1,NVM Express 3.0 x4,容量128GB)
  • サウンド:オンボード
  • OS:64bit版Windows 10 Pro

●テスト時のマウス設定
  • ファームウェアバージョン:0.02O
  • DHARMA CONTRLバージョン:8.96.81
  • DPI設定:400〜4000 CPI(主に800CPIを使用)
  • レポートレート設定:125/142/166/200/250/333/500/1000Hz(主に1000Hzを使用)
  • Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
  • Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効

 最初は,「MouseTester」を用いたセンサー性能検証だ。ここではDPTM37BKをARTISAN製マウスパッド「飛燕 MID」と組み合わせ,400,800,1600,4000の各CPI設定を行ったうえで,マウスを一定のリズムで左右に振り,その挙動ログを取ることにした。
 なお,筆者の「いつも」だと4000ではなく3200 CPIになるところだが,今回4000を選択しているのは,DPTM37BKは3600 CPI以上でエミュレーションによる補間が入るためだ。その状況で挙動に変化が生じるかどうかも見てみようというわけである。

 その結果をまとめたものが,下に示した8枚のグラフ画像だ。いずれのグラフもY軸のプラス方向が左への振り,マイナス方向が右への振り,横軸がms(ミリ秒)単位での時間経過を示している。
 青い点は実際にセンサーが読み取ったカウント。左の画像における青い波線はそれを正規化したものである。波線が滑らかで,その上に青い点が並んでいるほどセンサー性能が優れているという理解でいい。一方,右の画像における青線は,カウント同士をつないだものだ。どちらでも見やすいほうを参照してもらえればと思う。

400 CPI設定時。マウスの振り返し時に加減速が入るとカウントが正常に行われない。正規化した青線も曲線ではなく直線になっている
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800 CPI設定時。400 CPI設定時と同じ問題が発生している。一定方向にマウスが動いているときに突然の加減速が入ると,再現性のある形でカウント不良が生じるようだ
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1600 CPI設定時。症状は変わらない
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4000 CPI設定時。ソフトウェアエミュレーションでも同じ症状が出続けている
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 以上,マウスの加速減速が切り替わるタイミングで,センサーがマウスの移動する方向を明らかに検知できていない挙動を確認できた。最近のゲーマー向けマウスが示しているキレイな波形と比べると閉口モノの結果で,これはまったく評価できない。

 続いてはリフトオフディスタンスだ。
 計測方法はシンプルで,厚さの異なるステンレスプレートを重ねていき,マウスの反応が途絶する高さを0.1mm単位で割り出すというものになる。

 本テストにあたって,DHARMA CONTROL側の設定値はデフォルトの16で固定。さらに「リフト機能をカット」のチェックボックスは,DRTCM37と同じく「チェックを外すと,スライダーによる設定が有効になる」ことから,ここではチェックを外したうえで,スライダーを工場出荷状態のままテストすることにした。
 その結果が表1で,ARTISAN 紫電改とRazer Goliathus V2 Speed Cosmic Editionを除くと,4Gamerが許容範囲とする2mmを超える結果となった。いまとなっては残念な結果だが,DRTCM37でも標準設定のリフトオフディスタンスはおおむね3〜4mm程度だったので(関連記事),古いセンサーらしいスコアとも言えるだろう。

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 続いては直線補正の確認だ。ここではWindows標準の「ペイント」で線を引き,入力に対して補正が行われているかを見る。
 その結果は下に示した画像のとおりで,少なくとも体感できるような補正は入っていないと言ってよさそうだ。

ペイントを用いたテスト結果。グニャグニャとした線になっていて,補正特有の“直線ぽさ”はない
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 センサーのテストを終えたところで,メインボタンの入力遅延も確認しておこう。「マウスクリックをしてから音楽制作ソフト上のシンセサイザが音を鳴らすまでの遅延」を,DPTM37BKと,比較対象として用意したマウスとの間で比較することになる。
 ざっくりとした計測方法は以下のとおりだ。

  1. テスト対象のマウスを定位置で固定する
  2. マイクスタンドに吊したRazer製マイク「Razer Seirēn」を,マウスの左メインボタンすぐ近くに置く
  3. Windowsから音楽制作ソフト「Fruityloops」を起動。本アプリ上にあるソフトウェアシンセサイザの鍵盤をクリックする
  4. クリック音をRazer Seirēnで集音しつつ,「XSplit Gamecaster」を使って,「Razer Seirēnで集音した音」と「Fruityloops上の鍵盤で鳴った音」をミックスし,映像として録画する
  5. 動画編集ソフト「AviUtl」で,音声をWaveファイルとして切り出す
  6. サウンド編集ソフト「Audacity」でWaveファイルを開き,クリック音とシンセサイザの音が出るまでの時間を計測する
  7. テストを連続30回行ったうえで,ブレ対策のため最初の5回をカット。6回めから30回めの平均を取ってスコアとする

 比較対象として用意したのは「G403 Prodigy Gaming Mouse」(以下,G403)と,「Pro Gaming Mouse」の2つだが,比較結果のまとまった表2を見ると,最新世代のワイヤードマウスと比べて,DPTM37BKの応答速度は遅め……というより,ブレが大きいのが分かる。安定感のなさが,センサーの古さを感じさせると言ったら言いすぎだろうか?

単位:ms(ミリ秒)
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内部構造はDRTCM37とほぼ同じだが,精度に不安も


海外市場向けとされる試作品。本体手前側にある「DP」ロゴ部がLEDイルミネーションで光るようになっていた
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 最後はDPTM37BKを分解して内部を確認してみたいが,結論から先に述べると,内部構造は旧DHARMAPOINT時代のDRTCM37とほぼ同じだった。違いは,先に展示されていた「海外市場向けモデル」と共通の筐体,というか,COUGAR 300Mより先に登場したもう1種(2モデル)のDRTCM37クローン,CM Storm「Mizar」「Alcor」と共通の筐体を採用するためか,LEDイルミネーション用と思われる凹みが本体後方の天板部にあったことくらいだ。

天板と底面部を分離させた状態(左)。基板2枚体制なのはDRTCM37,そしてCOUGAR 300Mと同じである。右は天板部を2つに“下ろした”状態だ。右の写真を見ると,天板側の本体後方に丸くて大きめの凹みがあると分かるが,これは海外市場向け試作品と共通の筐体を採用したためだろう
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底面からメイン基板とスクロールホイールを取り外した状態
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 正直なところ,ここまで同じであるなら,やはりメインボタンのスイッチは従来同様にしてほしかったとは思う。また,筆者が入手した個体だけかもしれないが,サイドボタンのスイッチが少しズレて取り付けられており,こういうところからは,品質管理周りの不安も感じてしまう。
 ともあれ以下,主要なポイントの写真をお届けしてみたい。

メイン基板。基板リビジョンと思われるシルク印刷は,DRTCM37後期モデルの「31-50651-201/B」から,DPTM37BKで「31-50651-201/C」に変わっている。詳細は不明だが,何かは新しくなったはずである
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搭載するセンサーはもちろんADNS-3090で,Avago Technologies時代の「A」ロゴも残っている
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搭載するマイクロコントローラはMicrochip Technology製の「PIC18F45J50」で,これはDRTCM37と同じ
左右メインボタン用スイッチがオムロン製に変わったことは本稿の序盤でも紹介したが,型番は「D2FC-F-7N(10M)」。スクロールホイール用のロータリーエンコーダもアルプス電機製からTTC製に変わっていた。この「メインボタン用スイッチがオムロン,ロータリーエンコーダがTTC」という仕様はCOUGAR 300Mと同じ
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左右メインボタンのスイッチを押す突起部のデザインはDRTCM37,そしてCOUGAR 300Mを踏襲したものになっていた
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天板部に取り付けられていたサブ基板。サイドボタン用とスクロールホイール手前側ボタン用のスイッチが載っている
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サブ基板で残念だったのが,スイッチの傾きだ。DRTCM37では,前後サイドボタンで高さが微妙に異なるため,後部側スイッチではスイッチと基板との間に薄い板を挟むことでガタつきを抑える仕様になっていたのだが,その板は省略され,その結果として,後方側のスイッチが曲がってしまっている。もちろん好意的に解釈すれば「角度調整を行っている」可能性もあるのだが……
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 分解してみると分かるのは,DRTCM37とMizar&Alcor,そしてCOUGAR 300Mをごちゃ混ぜにしたものという紹介が,最もDPTM37BKの真実に近いということだ。COUGAR 300Mに最も近いという筆者の印象を覆すものにはなっていない,とも言える。

※注意
 マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。


「三七」はゲーマーの思い出に留まるべきだった


製品ボックス
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 私事だが,筆者はかつて,オリジナルのDRTCM37(と,そのバリエーションモデルである「DRTCM38」)の開発に微力ながら協力させてもらったことがある。それだけに三七への思い入れは人一倍あるつもりで,DHARMAPOINTが復活し,三七も復刻するのだと聞いたときには,胸が熱くなった。

 だが,いま筆者の目の前にあるDPTM37BKは,残念ながら三七ではない。DRTCM37にCM Stormが手を入れ,さらにCOUGARが手を入れたものをベースにしたと思われる本製品は,まさに「ごった煮」なのだ。形状が変わっていないのは本当に大きな救いで,そこは歓迎すべきなのだが,それ以外があまりにもDRTCM37とは違う。
 左右メインボタンの押下感やソールは変わってしまい,それでいてイマドキのものに変わってほしかったセンサーはそのまま。しかも,チューニングのミスなのかどうか,テストで得られた波形はひどいものとなった。

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 全員とまでは言わなくとも,DRTCM37を使っていたユーザーの多くは,「三七の復活」にあたって,センサーだけ最新になった新型を期待していたのではないかと思う。しかし,出てきたものはその逆,センサーだけが旧型の製品だ。今回の検証を通じて,DPTM37BKがDRTCM37ユーザーの琴線に触れると思えるところはなかった。
 リニューアルではなく,リメイクにもなっていないものに留まるくらいなら,三七は復活せずに,「日本発のゲーマー向け製品ブランド,最後のマウス」として,よい思い出であり続けるべきだったと,DPTM37BKのテストを終えて,強く思う。

 2017年秋の時点で,IE3.0クローンのゲーマー向けマウスは,大手メーカーの製品が百花繚乱だ。DPTM37BKとほぼ同じ価格か,少し高いくらいの価格で,今の時代に見合った製品を購入できる。IE3.0クローンを探しているなら,そちらの選択肢を考慮すべきだろう。

新生DHARMAPOINT公式Webサイト

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    DHARMAPOINT

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