レビュー
Tegra 4の実力はいかに? 東芝製Androidタブレットで検証してみた
東芝 REGZA Tablet AT703
今回取り上げる東芝のAndroidタブレット「REGZA Tablet AT703」(以下,
10.1インチで2560×1600ドットの高解像度液晶パネルを採用
Tegra 4搭載が特徴の製品ではあるが,これに関する説明は後述するとして,まずは外側から見ていきたい。
AT703で注目すべきポイントの1つが,10.1インチサイズ,解像度2560×1600ドットで300ppiという高精細な液晶パネルを搭載することだ。2560×1600ドット解像度の液晶パネルを備えたタブレット端末といえば,前述のASUS Pad TF701やGoogleブランドの「Nexus 10」もそうなので,AT703も流行に乗っていると言えるだろう。10インチクラスではこのクラスの解像度が今後の標準になっていくのかもしれない。
本体のサイズは,260.7(W)×178.9(D)×10.5(H)mmで,重量は約671g。Androidリファレンス機たるNexus 10だと,厚さは実測約8.9mm,重量は同603gなので,今となってはやや重いほうと表すべきだろう。
背面の形状は四辺を丸めたラウンドフォルムで,取り立てて特徴あるものではない。むしろ背面全体に細かい凹凸を施したり,ラウンドフォルムの丸みも手にとても馴染みやすかったりと,持ちやすさに配慮したデザインを目指したように思われる。
しかし603gという重量は,デザインの工夫だけでごまかせるものではないようで,片手持ちで長時間使うには,この重さは少々厳しいというのが正直なところだ。
シンプルな背面で目立っているのが,右上にあるアウトカメラと,左右の両端にあるharman/kardonブランドの2chステレオスピーカーである。とくにスピーカーは,グリル部分に光沢のある金属パーツを使っているので目立つ。
本体背面。背面の樹脂製パネルは細かい凹凸に覆われているので,手が滑りにくい |
ラウンドフォルムのカーブは手に馴染む仕上がりで,手のひらに“角が刺さる”ような感じはしない |
harman/kardonスピーカーはグリルに金属パーツを使用しているので,ここだけ目立つ |
アウトカメラは約800万画素。その横には,タブレットでは珍しくLEDライトが用意されている |
ボタンやインタフェース類は,そのほとんどが液晶パネル向かって左の側面にまとめられている。具体的には,ヘッドフォン出力端子と音量調節ボタン,電源コネクタに加え,側面中央部のカバー下にmicroSDカードスロットとHDMI micro Type D出力端子,USB Micro-B端子といった具合だ。専用の電源コネクタがあるためか,充電は付属のACアダプターでしかできず,USB端子からの充電には対応しないのは,ちょっと不便な気もする。
本体上側面。マイクと[電源/スリープ]ボタンがある。なお,下側面には何もなかった |
本体右側面にはストラップホールがあるのは,いかにも国内メーカー製らしい |
誤解を恐れずに言えば,AT703のデザインは高級感を感じさせるものではない。しかし実機を触ってみると,見た目の良さよりも実用性を重視したことが窺えるので,東芝は,タブレットを「頻繁に使う道具」と位置づけ,使い込んでいくにあたって不安を感じさせない方向でのデザインを目指したのではなかろうかと思う。
Bluetooth接続キーボードとペンが付属
ペン入力は1024段階の筆圧にも対応
装着状態での総重量は約1.2kgと,一般的なUltrabook並みの重さになってしまうものの,畳んだときの厚さは実測約19.8mm程度なので,持ち運びにくいということはない。
Bluetoothキーボードを装着した状態。カバーに本体をはめ込んで一体化させる構造で,スタンド部分にはソフトな素材が使われている |
装着した状態でも,本体のボタン操作やカバーの開閉には不自由しない。専用の付属品ならではの利点だ |
英語キー配列をベースに,Androidデバイス操作用のショートカットキーが散ったキーボードは,いわゆるアイソレーションタイプだ。英数キー部分のサイズは実測で約14×14mm,キーピッチは約17mmだった。外枠ギリギリまでキーが配置されているおかげで,タブレット端末向けのBluetoothキーボードとしては,入力しやすい部類に入るといえる。ただ,[FN]キーが[Enter]キーの下にあるなど,場所によっては特殊な配列になっていたりもするので,それが気になる人はいるだろう。
Bluetoothキーボードに載せた状態の側面。使い勝手はノートPCとほとんど変わらなくなる |
キーボード全体。主要なキーの配列はまずまず常識的。タイプ感も良好なほうだ |
Bluetoothキーボードには容量250mAhのバッテリーが内蔵されているが,バッテリー駆動時間は公表されていない。本体とBluetoothキーボードを有線でつなぐ手段がないので,Bluetoothキーボードから本体を充電したり,その逆に本体からBluetoothキーボードを充電することはできないのは,致し方ないところか。モバイルキーボードドックと組み合わせることを前提としたASUS Padシリーズとは,方向性が異なる製品といえよう。
Androidタブレットしては珍しいもう1つの付属品が,電磁誘導式のペンだ。付属のペンは,ペン先の抵抗感が少なく滑りやすいタイプで,ペン入力は1024段階の筆圧に対応している。タブレットをメモ書きやイラスト描きにも使っているのであれば,チェックしておきたいポイントだ。
付属のペン。替え芯も付属している |
AT703本体と付属品一覧 |
Tegra 4は動作クロックを細かく制御して省電力化を狙う
続けて内部に目を向けてみる。冒頭で述べたとおり,AT703が採用するSoCは,NVIDIAのTegra 4である。ARMアーキテクチャの「Cortex-A15」を5基用意し,うち1基を省電力動作専用のコンパニオンコアとして使う4-PLUS-1構成のCPUコアと,72基からなるGPUコア「Ultra Low Power GeForce」を統合してきたのが,ハードウェア的な特徴だ。AT703における動作クロックは最大1.8
メインメモリ容量は2GBで,内蔵ストレージ容量は32GB,microSDカードスロットで64GBまでのmicroSDXCメモリーカードに対応するなど,メモリやストレージ周りはごく標準的なスペックといえよう。
無線通信関係では,IEEE 802.11a/g/n/ac対応の無線LAN機能と,Bluetooth Smart readyにも対応したBluetooth 4.0機能を内蔵する。3GやLTE系の通信機能は持たない。
バッテリー駆動時間は,動画の連続再生時で約9.5時間と,10インチ級タブレットとしては長くも短くもない程度だ。バッテリー容量や連続待機時間は公開されていないのだが,アカウントを設定しただけの初期状態で3日ほど放置してみたところ,バッテリー残量は満充電から82%に減っていた。
なお,先にも述べたとおり,AT703はUSB Micro-B端子での充電には対応しておらず,専用ACアダプターでの充電のみとなる。汎用のUSB−ACアダプターやモバイルバッテリーなどを使えないのは残念だ。
これらは東芝の液晶テレビ「レグザ」やBDレコーダーとの連携で機能するものが多く,東芝のテレビやレコーダーを持っていれば,録画番組をタブレット側で表示したり,タブレット側からテレビを操作したりといった使い方ができる。もっとも,同社製のテレビを持っていない人にとっては,使い道のないアプリが多いとも言えるのだが……。
東芝に確認したところ,Android 4.3へのアップデートは検討中とのことだった。
AV機器メーカーらしい特徴としては,映像の高画質化機能とサウンド再生の高音質化機能を備える点も挙げておこう。
「映像の先鋭感を向上させる」という謳い文句の高画質化機能「レゾリューションプラス」は,ソフトウェアでの処理によって映像をより美しい画質で表示するという触れ込みの機能だ。ただし,対応するのはビデオ再生や写真表示アプリといった一部アプリに限られるとのことで,ゲームには無関係と思っていい。設定もオンかオフのみで,効果もあまり感じられないのが正直なところだ。
ベンチマーク各種でTegra 4の実力を探る
なお,Tegra 4搭載端末には,ゲームを含む特定アプリの性能を最適化する「TEGRA Experience」という機能が用意されているのだが,これを有効化しても無効化しても,ベンチマークテストの結果に有意な差は生じていなかったので,今回は無効化して検証している。
なお,今回は比較対象としてNexus 10も用意し,同じテストを行ってスコアを比較することにした。
まずは定番のグラフィックス性能ベンチマークテストであるAndroid「3DMark」からだ。
実のところ,AT703のスコアはばらつきが大きく,複数回計測してもなかなか安定しなかった。とくにIce Stromの場合,最高値は計測上限を意味する「Maxed Out!」(おおよそ1万1000以上)に達する一方で,最低値が「8430」と,非常にばらつきが大きく,これに限っては6回計測した中から,最高と最低のスコアを除いた4回分の平均値を採用することにしているので注意してほしい。Ice Storm ExtremeやIce Storm Unlimitedも同様にばらつきが大きいものの,Ice Stormほどではなかったので,こちらは3回計測した平均値を採用した。
その結果をまとめたものがグラフ1だ。ばらつきが大きかったとはいえ,Samsung Ele
最近のタブレット端末やスマートフォンと比べた場合はどうだろう。横並びで条件を揃えたわけではないので,あくまでも参考となるが,4Gamerが過去に製品発表会で実際に3DMarkを動かしたときのスコアと比べてみると,Qualcomm製SoC「Snapdragon 800」が搭載された2013年冬モデルのスマートフォンや,「Tegra 4搭載」「10.1インチ,解像度2560×1600ドットの液晶パネル採用」という点でAT703と同じASUS Pad TF701Tよりも,AT703のスコアは低かった(関連記事1,関連記事2)。
とくにASUS Pad TF701Tと比べた場合,AT703のスコアはIce Storm Extremeで約75%,Ice Storm Unlimitedで約58%に留まるなど,かなりのギャップがあった。OS,あるいはグラフィックスドライバ側におけるチューニングの違いが生んだものなのか,AT703のほうが性能よりも長いバッテリー駆動時間を指向したためなのかは分からないが,いずれにせよその3D性能は,2013年秋冬モデルのスマートフォンやタブレットと比べると,若干落ちる可能性が高そうである。
もう1つグラフィックス性能テストとして,シリコンスタジオの3Dグラフィックスベンチマークソフト「MOBILE GPUMARK」を使用し,その中から「NATURAL BONE」と,「GPU BENCH
NATURAL BONEを採用したのは,西川善司氏の解説記事中にある「NA
グラフ2がその結果である。MOBILE GPUMARKは,3DMark以上にスコアのばらつきが大きいのだが,NATURAL BONEではAT703がNexus 10を4倍も,GPU BENCHMARKでは14%ほど上回る結果となった。
NATURAL BONEは,ポストエフェクト処理やαテスト処理のため,ピクセルシェーダの負荷が高いという。ここで4倍もの差がついたのは,Tegra 4が72基という,モバイル機器向けSoCとしては格段に多いGPUコアを搭載しているおかげで,これらの処理をGPUコア数にものを言わせて高速に処理できるからではないだろうか。
3つめのテストは,「AnTuTu Benchmark version 4.0.3」(以下,AnTuTu Ben
スコアのブレは少なかったものの,どちらもNexus 10の方が上回るという意外な結果となった。そういえば,以前にTegra 3を搭載するタブレット端末でAnTuTu Benchmarkを実行したときにも,スコアが妙に低かったことがある。あるいはAn
今回の3種類のテストによる計測結果が,Tegra 4全体の得手不得手なのかどうかまでは断言できない。AT703では性能を限界まで引き出すよりも,動作の安定性やバッテリー駆動時間を優先したチューニングを,東芝側で施しているのではないかと思える。しかし,3DMarkやMOBILE GPUMARKのスコアを見る限り,AT703の性能ならば,現状のAndroid用ゲームをプレイするに当たって,不満を感じるようなことはないといえると思う。
これも3回計測を行なったところ,結果は75〜78で平均値は76.3だった。おおよそ23,53,65タップ前後で飽和が見られたが,とくに最後の飽和が長かったため,スコアが伸びなかった。スコアを見ると,ゲームに向かないように思われるかもしれないが,連打を始めてから最初の飽和が起こるまでの反応は良好だったので,連打が必要なゲームでも,20連打くらいまでなら,ストレスを感じることはないと思われる。
手軽に買えるTegra 4搭載タブレット
ゲーム用途にも適する
実勢価格は5万6000〜6万3000円程度が中心で(大手家電量販店は8万円程度と高いが),7万円前後で販売されているASUS Pad TF701Tよりは,やや安く手に入れられるのも魅力である。ゲーム用途と前提に,ハイクラスの性能を持った10インチクラスのAndroidタブレットを探しているなら,選択肢になる1台だ。
●REGZA Tablet AT703の主なスペック
- メーカー:東芝
- OS:Android 4.2.1(Jelly Bean)
- ディスプレイパネル:10.1インチ液晶,解像度2560×1600ドット
- プロセッサ:Tegra 4,動作クロック1.8GHz
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ容量:内蔵(32GB)+microSDXC(最大64GB)
- アウトカメラ:有効画素数約800万画素
- インカメラ:有効画素数約120万画素
- バッテリー:約9.5時間(ビデオ再生時,容量未公開)
- 3G/LTE通信:未対応
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- Bluetooth:4.0搭載
- NFC:未対応
- センサー類:GPS,加速度,電子コンパス,光,ジャイロ
- サイズ:260.7(W)×178.9(D)×10.5(H)mm(本体)
- 重量:約671g
REGZA Tablet AT703 製品情報ページ
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- 関連タイトル:
Tegra
- 関連タイトル:
Android端末本体
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