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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第27回「映画のあとはゲームで追体験せよ! ディズニー×ピクサーのメディアミックス・ゲーム再遊記(5)」
Traveller's Talesは,Pixar Animation Studiosや,Disney Interactiveの仕事以外にも,ActivisionやWarner Bros.の仕事も請け負ってきた。中でもActivisionやWarner Bros.からの発注で開発したLEGOシリーズは大ヒットを記録。これを受けてWarner Bros.は,ゲーム市場への本格的な再参入を狙って2007年11月にTraveller's Talesを買収した。
これとは別の動きなのだが,2008年末に,Activisionは日本法人アクティビジョンを閉鎖した。アクティビジョンは,さまざまなシネゲーを日本語ローカライズして発売していた貴重なパブリッシャだったのだが,本国との国民性の違いからか,あまり大きなヒットに恵まれないでいたので,それはまあ仕方のないところかもしれない(「コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア」なんかは,けっこう売れていたような印象なのだが……)。
アクティビジョンの日本撤退が明らかになる前,「LEGO Indiana Jones: The Original Adventures」の日本語版「レゴ インディ・ジョーンズ オリジナル アドベンチャー」の発売が中止された。ニンテンドーDS,Wii,PLAYSTATION 3,PlayStation 2,PSP,Xbox 360,そしてPCと,現行のすべてのプラットフォーム向けのリリースが予定されていたにもかかわらず,そのすべてが日の目を見ることなく,消え去ってしまったのだ。
実際のところ,この作品は日本語ローカライズも完了し,マスタープルーフディスクが一部のゲームメディアに提供されていたという。それにも関わらず,発売中止という事態に陥ったのだ。今にして思うと,アクティビジョンの日本撤退に向けての動きであるのは確実。
だが一方で,レゴ インディ・ジョーンズのあとに発表された「LEGO Batman: The Videogame」は,無事に「レゴ バットマン」として発売されている(ニンテンドーDS版,PLAYSTATION 3版,PlayStation 2版,Xbox 360版,PC版は発売されたが,Wii版とPSP版は発売中止)。シネマゲーム研究家としてちょっと考えてみると,これはなんだか釈然としない。レゴ インディ・ジョーンズは発売中止なのに,後発で宣伝もろくに行われていなかったレゴ バットマンが発売されたのは,一体なぜなのだろうか?
また,同時期に発売予定で,しかも同じレゴシリーズのレゴ インディ・ジョーンズと,ただでさえ小さい日本のシネゲー市場のパイを食い合うようなことは避けたいと考えるのも当然だ。
そこでWarner Bros.はTraveller's Talesの親会社として,撤退準備を進めるアクティビジョンに対し,レゴ バットマンを優先するよう働きかけたのかもしれない。
この仮説の真偽は,アクティビジョンが撤退してしまった今となっては,確認するのは難しい。しかし筆者の知る複数の関係者筋が,同様なことを考えているのだ(ひょっとしたら私怨混じりかもしれないが……)。
ちなみにWarner Bros.は,北米だけでなく日本のゲーム市場への再上陸を視野に入れているという。実際,現在ゲームメーカーに勤めている人のヘッドハンティングも進めているらしい。これでWarner Bros.のシネゲーが,日本でもたくさん発売されるようになれば嬉しいのだが。
おっと,ActivisionがDreamWorksの「シュレック」をはじめとしたフルCG映画のゲーム化を手がけたという意味において,Disney&Pixarのライバル的な存在であるとはいえ,さすがに余談が過ぎてしまった。このあたりで話を元に戻そう。
これまでにも述べてきたとおり,Pixarのコンテンツをゲームに生まれ変わらせた最初のデベロッパとして,Traveller's Talesの功績は非常に大きい。そしてそれを世に送り出したという意味で,パブリッシャとしてのActivisionの存在も見逃せない。しかし現在,Activisionの役割を引き継いでいるのはTHQだ。
普通に考えると,Activisionのポジションを引き継ぐのは,Disney Interactiveになりそうなもの。だが,当時のDisneyとPixarの関係は,決して一枚岩ではなかった。
「トイ・ストーリー」の頃からDisneyとPixarの間で意思の疎通がスムーズにいっていない部分はあったのだが,Pixarが劇場用長編作品第2弾として「バグズ・ライフ」(1996年公開)を制作し,その後「トイ・ストーリー2」(1999年公開)に取りかかっていた時期に,それは決定的なものになる。
当初Pixarは,ビデオスルーとしてトイ・ストーリー2を制作していたのだが,周囲の期待が高まっているのを察知したDisneyは,これを劇場用作品に変更するようPixarに命じた。
当時,Pixarの中心人物であるジョン・ラセター氏は,トイ・ストーリー以降休むことなく働き続けていたということもあり,長期休養に入っていたのだが,トイ・ストーリー2を劇場用長編作品として仕上げるために,それを途中で切り上げて仕事に復帰せざるを得なくなった。
結果的に作品は,劇場用としてのクオリティを満たしたのだが,この騒動の背後ではほかにもさまざまな問題が生じていたらしい。そのためPixarは,自社コンテンツのゲーム化にあたって,Disney Interactiveとのパブリッシャ契約を拒んだようである。
2003年になると,同年に公開された「ファインディング・ニモ」(開発:Traveller's Tales,Vicarious Visions)を,PC,Mac,PlayStation 2,Xbox,Nintendo GameCube,Game Boy Advanceのマルチプラットフォームで発売。のちにスピンオフ作品「Nemo's Underwater World of Fun」をPCとMacで,「Finding Nemo: The Continuing Adventures」をGame Boy Advanceでリリースするなど,THQはニモをきっかけに本腰を入れてPixar作品のゲーム版に取り組み始めたのだ(そしてニモを最後に,Traveller's TalesはPixar作品から離れることに)。
2004年には「Mr.インクレディブル」のゲーム版(開発:Heavy Iron Studios,Helixe)を,PC,PlayStation 2,Xbox,NINTENDO GAMECUBE,GAMEBOY ADVANCEで発売。翌年にはこれのスピンオフ作品である「The Incredibles: Rise of the Underminer」(開発:Heavy Iron Studios,Helixe)を,上記プラットフォームに加えNintendo DSでもリリースした。
続いて2006年には,再びニモのスピンオフ作品「Finding
Nemo:
Escape to the Big Blue」(開発:Altron)を,Nintendo DSでリリース。映画の公開から3年が経過していたが,THQにとっていかにニモの存在が大きいかを物語るエピソードといえるだろう。
同じく2006年には,原作の映画からしていかにもゲーム化しやすそうな「カーズ」(開発:Rainbow Studios,Helixe,
Locomotive Games)を,PlayStation 2,Xbox,Nintendo GameCube,Wii,Xbox 360,Game Boy Advance,Nintendo DS,PSPで,同時にスピンオフ作品「Cars: Radiator Springs Adventure」(開発:Beenox)をPCとMacで発売し,THQ史上最大規模のマルチプラットフォーム展開を見せた。
翌2007年は,「レミーのおいしいレストラン」(開発:Heavy Iron Studios,Helixe,Locomotive Games,Asobo Studio)を,「カーズ」の10機種にPLAYSTATION 3も加え,11機種でリリースし記録を塗り替えた。
また,同年にはレミーのスピンオフ作品「Ratatouille: Food Frenzy」をNintendo DSで,カーズのスピンオフ作品「Cars Mater-National」(開発:Rainbow Studios)をPC,PlayStation 2,PLAYSTATION 3,Wii,Xbox 360,Game Boy Advance,Nintendo DSの7機種で発売するなど,“Disney&Pixar作品のゲームといえばTHQ”というイメージを,不動のものとしたのだ。
2008年は……これはもう,いまさら説明するまでもないだろう。「ウォーリー」(開発:Heavy Iron Studios,Asobo Studio)を,PC,Mac,PlayStation 2,PLAYSTATION 3,Wii,Xbox 360,Nintendo DS,PSPでリリース(日本ではPLAYSTATION 3,Wii,ニンテンドーDSのみ)。基本的に,現行機種であればどれを持っていても,Disney&Pixar作品のゲーム版をプレイできる環境を,提供し続けているのである。
なお現在,Disney&Pixarは「トイ・ストーリー3」を制作しているが,ほぼ間違いなくゲーム版がリリースされることになるだろう。映画ともども,ゲームのトイ・ストーリー3にいまから期待したい。
というわけで,途中からかなりの駆け足になってしまったが,Diney&Pixarの項は今回で終了。次回はベセスダ・ソフトワークスが発売予定だった“あのシネゲー”について,突っ込んでいく。
■ドブ漬けゲームスープレックス(26)
Xbox 360/PLAYSTATION 3/PC
「Fallout 3」(ベセスダ・ソフトワークス)
毎週木曜日の4Gamerには,この連載以外にも「Fallout 3」をテーマにした「荒野に咲いた一輪の花」が掲載されている。なのでゲーム内容の詳細はそちらに譲るとして,Fallout 3を3機種で同時に遊んでみた感想などを,ここに書きつづってみたい。
Fallout 3で個人的に気に入っているのは,映画「マッドマックス2」を彷彿とさせる終末世界を舞台に,ローテクからハイテクまで幅広い重火器を使っての戦闘を行える点。さらに,一本道ではない自由なプレイが可能な懐の深さも,アメリカの自由主義っぽいスタンスの表れなのかなぁという気がする。
また,本作の開発者が「バーンアウト」シリーズのエッセンスをヒントにしたと語っている,敵を攻撃するときにスローモーションになる演出が面白く,無駄に部位ダメージ狙いをしてしまいたくなったりと,中毒性はかなりのもの。
Xbox 360版とPLAYSTATION 3版は,音声も日本語化されているので,文字情報をせわしなく目で追う必要がないのも嬉しい。
PC版は残念ながら英語版のみだが,コンシューマ版では省略された核のエピソードや,人体の部位欠損といった表現も収録されている。といっても,PC版のウリはそれだけではない。声優としてリーアム・ニーソン氏(主人公の父親役),マルコム・マクダウェル氏(大統領役),ロン・パールマン氏(ナレーション)らが参加するなど,シネゲーフリークにとってなかなか興味深い作品となっているのだ。リスニングには苦労するけれども。
さて,Xbox 360版とPLAYSTATION 3版(発売前のバージョン)だが,遊び比べた感じでは大きな変更点は見つからなかった。指が巻物に描きかえられていたり,Perksの表現が幾分マイルドになっていたりといった差異はあるが,気にするほどのものではないだろう。持っているハードに合わせて購入すれば,それで構わないと思う。もちろん,全機種版を集めたいというのなら,それは止めないが。
なお,北米版との違いについては,ベセスダ・ソフトワークスの公式サイトで公開されているので,そちらを参照してほしい。海外のゲームを日本市場向けにローカライズして発売しているパブリッシャは少なくないが,こうした発表を行うのはまれなケースのように思う。それだけベゼスダが,日本のゲーマーのことを思ってくれているのかもしれない……が,アレとアレを発売中止にしてくれやがったんだよなぁ。
「Fallout 3」公式サイト(要年齢認証)
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