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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第45回「成り上がれ,『ゴッドファーザー』に(2)」
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印刷2009/05/21 21:40

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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第45回「成り上がれ,『ゴッドファーザー』に(2)」


 前回,映画「ゴッドファーザー」のシネマゲームを,最初にリリースしたのはElectronic Artsではなく,U.S. Goldであるという話題をお届けした。
 今回は,そんなU.S. Gold版「The Godfather」が完成に至るまでの道のりを紹介していく予定だったのだが,急きょ変更して,日本人にとってなじみの薄いゲームパブリッシャ,U.S. Goldそのものの歴史に触れてみたいと思う。

 1980年代後半から1990年代前半にかけて,海外産アーケードゲームの移植モノに親しんできた人なら,U.S. Goldのことを懐かしく思い出すのではないだろうか。
 とくに筆者のように,少年時代をCommodorer(コモドーラー)として過ごした者にとっては,人間形成における大部分をU.S. Goldが占めているといっても……いやさすがにそれは言い過ぎか。


 そんなU.S. Goldが設立されたのは,1984年のこと。
 当初は,イギリスのバーミンガムで,ジェフ・ブラウン氏が1983年に興したゲームデベロッパCentreGoldと,ゲーム以外のPCソフト開発を担うCentreSoftの,パブリッシングを担当する会社という位置づけだった。
 当時,イギリスを中心にヨーロッパ市場で成長しつつあったATARIや,Commodore 64に加え,ZX SpectrumやAmstrad CPCなどにゲームソフトを供給すべく,アーケードゲームを移植したり,Epyx Computerと組んでサッカーゲームやオリンピック系ゲームを発売したりして,その業績を大きく伸ばすことに成功する。

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 とくに好成績を収めたのは,1985年にCommodore 64で発売されたサッカーゲーム,「World Cup Carnival」である。これがヨーロッパ圏で爆発的なヒットを記録したことで,設立後間もないU.S. Goldは莫大な利益を獲得。
 さらに,その前年に「Pole Position」のライセンスをナムコから取得して移植した流れから,「ローリングサンダー」「ゼビウス」「メトロクロス」といったアーケードゲームも,前述の各機種向けに移植していく。
 同時に,ブラウン氏が個人的にLucasFilmとの付き合いを持っていたことから,「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」や「スター・ウォーズ」「モンキーアイランド」など,LucasArtsの作品を移植。
 セガとも,「ザクソン」「アウトラン」「クラックダウン」「エイリアンストーム」「ムーンウォーカー」「スーパーモナコGP」「ボナンザブラザース」「シャドウダンサー」「ESWAT」などの移植ライセンス契約を結んでいった。

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 余談だが,1984年に公開されたホラー映画「13日の金曜日 完結編」に登場するトミー少年(クライマックスでジェイソンを倒す)が,自室でプレイしているゲームは前述の移植版ザクソンである。
 発売前のゲームが,プロダクトプレイスメント扱いで映画に登場したのは,これが初めての例ではないだろうか。ここで映画制作サイドとセガとの間を取り持ったのは,双方にパイプを持つブラウン氏だったそうだ。
 ちなみに,トミー少年を演じたコリー・フェルドマン氏は元々ゲーム好きで,アーケード版ザクソンもよく遊んでいたという。そのため,現場での待ち時間にはずっとザクソンで遊んでいたという話を,本作の特殊メイクを担当したトム・サヴィーニ氏から聞いたことがある。

 U.S. Goldに話を戻そう。
 同社は,ナムコやセガ以外にも,テクモの「ソロモンの鍵」や「アルゴスの戦士」,カプコンの「ストリートファイター」「ストリートファイターII」「ストライダー飛龍」「魔界村」「フォゴットンワールド」「ファイナルファイト」といったアーケードゲームも移植(ストライダー飛龍は,U.S. Gold版だけの続編も作られた)し,ヨーロッパを中心に“アーケードゲームからの移植といえばU.S. Gold”といった信頼を得る。
 その一方で,「Summer Games」や「Winter Games」といった自社タイトルでもヒットを飛ばしていたのだから,当時の同社はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったのである。

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 また,日本のゲームメーカー以外にも,Commodore 64へ「ガントレット」を移植してヒットさせたのをきっかけに,ATARI(TENGEN)とも良好な関係を築き,ことガントレットに関しては,パート3に至るまで数多くの機種へ移植を担当した。

 このように,アーケードからの移植作品に関しては,複数のヒット作を飛ばしていたのだが,パブリッシングを手がけていたものの中には,ヨーロッパではあまり受け入れられていなかったLucasArts関連の作品なども含まれていたことから,業績は伸び悩むことに。
 結果,1996年春にU.S. Goldは,同じくイギリスに本拠地を置くEidos Interactiveの子会社となる。

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 しかし,だからといって安泰というわけではなかった。CD-ROMメディアの普及に伴い,ゲームの開発費も高騰。結果,U.S. Goldと同じくCentreGoldグループの一員だったゲーム開発スタジオ,Silicon DreamsとCore Designを維持できなくなる。
 こうして徐々に追い込まれていくCentreGoldグループに対し,Eidos Interactiveは全面的な資本参加。そしてCentreSoftを売却し,CentreGold自体も解体。こうしてU.S. Goldというブランドも,その姿を消すことになる。
 一方でEidosは,Core Designのみは維持。このデベロッパが開発していた「Tomb Raider」は,Eidosに大きな利益をもたらすことになる(イギリスの経済誌も,当時のEidosのCEOには先見の明があったと評価していた)。
 U.S. Gold創立者のブラウン氏は,Silicon Dreamsのみを買い戻し,これを機にジェフ・ブラウン・ホールディングス(GBH Group)を設立した。

 GBH Groupは,U.S. GoldがLucasArtsの「Indiana Jones and The Fate of Atlantis: The Action Game」をヨーロッパ圏でパブリッシングしてから付き合いのあったAttention To Detail(ATARI LynxやJaguarで発売された「Blue Lightning」がオリジナルタイトル)を,1997年に吸収。そして社名をKaboom Groupへ変更し,Eidosを含む多くの出資者からの協力を受けて,Audiomotionという会社を設立する。
 この会社は,ゲーム業界だけでなくテレビや映画業界にも広がるブラウン氏の人脈を生かし,サウンドエンジニアリングや映像制作,モーションキャプチャー,CG制作など幅広いビジネスを手がけており,現在もイギリス国内で高い需要を誇っているようだ。
 Kaboom Groupはこれ以外にも,Conflictシリーズで勢いに乗っていたPivotal Games(近作は「ダブルクラッチ」)を吸収するも,開発の遅れなどでハンドリングが困難になったため2003年に手放す。これ以外にも,ゲーム開発部門が軒並み赤字を出し始めたことにより,Silicon DreamsとAttention To Detailを閉鎖。
 そのためブラウン氏は現在,Audiomotion一本に絞って経営を行っている。


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 さて,そんなブラウン氏のビジネスパートナーだったEidosは,2005年にSCi Entertainment Groupに買収される。同時期には,ロックバンド U2のボノ氏が役員を務める投資会社,Elevation Partnersからも1株あたり50ペンスで買い取るという条件の買収提案を受けていたのだが,Eidos側はSCiが提示した,SCi 1株に対し,Eidos 6株という条件を選択したのだ。
 こうしてEidosの親会社となったSCiは,のちに次世代ゲーム機への対応が遅れたことがグループ全体の経営不振を招き,社員の4分の1をリストラ。さらに14本のゲームを開発中止にした。こうした状況を見て,投資家達はSCiのCEOであったJane Cavanagh氏を退陣に追い込む。
 その後Eidosは,「ケイン&リンチ」のみ,全世界で150万本というヒットを記録するも,ほかのタイトルはふるわず。結果,SCiはEidosを手放すことを決めた。

 そこで2009年4月にEidosを買収したのが,スクウェア・エニックス・ホールディングスである(関連記事)。こうして,日本のゲームメーカーがイギリスのゲームメーカーを完全子会社化するという,珍しいケースが出来上がったのだ。


 そんなわけで,今回は予定を変更して,U.S. Goldを中心にイギリスのゲーム業界再編成事情をお届けした。
 次回はしっかり,ゴッドファーザーの話に戻ります!

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■ドブ漬けゲームスープレックス(45)

Xbox 360 / PLAYSTATION 3
「セインツ・ロウ 2」(THQ)

 発売からずいぶん経ったが,ようやくプレイ。最初に告白してしまうが,遊んだのは海外版。国内版よりも,いろいろな意味で表現が過激なヤツだ。そういえば前作も海外版で遊んだ気がする。

 まず驚かされたのは,前作を大きく上回る圧倒的なボリューム感。しかもプレイヤーキャラクターのカスタマイズ性の高さといったら!
 バカな格好の男性キャラを作ったり,ちょっとエロっぽい女性キャラを作ったりと,キャラメイキングだけでケタケタ笑いながら長時間遊べてしまう。

 で,いざスティルウォーターへ。前作からの期間が空いていたこともあって,「GTA」シリーズや「ゴッドファーザー」シリーズを思い出してしまう局面もあるが,ニセ警官になって大暴れしたりと,“ヴァーチャルな悪いこと”をGTAなどを上回る自由度でやりまくれてしまう。

 個人的にこの手のゲームでは,単身敵のアジトへ乗り込んでドンパチぶちかますのが好きなんだが,時間が経つとライフが自動回復してしまうため,少々緊張感が足りないか。とはいえ,これがないとちょっと難しすぎるのかもなぁ。
 あ,お気に入りの武器はチェーンソーです。

 なお,いつもの筆者であればプレイを開始するやいなやオンラインマルチプレイに飛び込んで痛い目に遭うのだが,今回はシングルプレイを先にやり込んでみる所存。英語でののしられるのはもうこりごりだからさ……。

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「セインツ・ロウ 2」公式サイト(要年齢認証)



■■ジャンクハンター吉田(シネマゲーム研究家)■■
吉田氏が,1980年代から現在までのゲーム&映画関係の資料の数々を保管している,通称“物置倉庫”。その大家であるおばあさんが先日,83歳で亡くなってしまったそう。なんでも,そこは30年ほど前は駄菓子屋兼ゲームセンターで,吉田少年は毎日のように通い,「ゼビウス」などで遊びまくっていたそう。そのおばあさんは,吉田少年がゲームオーバーになるまでは,営業時間が終わっても店を開けたままにしてくれたのだとか。ご冥福をお祈りします。
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