レビュー
「Forza Motorsport」シリーズの“凄さ”を世に知らしめた傑作レースシム
Forza Motorsport 2
発売に先駆けて体験版も配信されているのだが,軽くプレイしてみたところ,前作である「Forza Motorsport 2」の良いところはそのままに,データの増量やコックピットビューの実装など,あらゆる要素がパワーアップしている印象を受けた。まずは,その体験版をもとに撮影したプレイムービーをご覧あれ。
さて,このままForza Motorsport 3のレビューに移りたいところだが,そういえば4Gamerでは,前作をしっかりと紹介していなかった。というわけで,Forza Motorsport 3のプレイムービー/レビューは来週あたりにお届けすることにして,まずはForza Motorsport 2のレビューをお届けしようと思う。Forza 3の発売日が待ちきれずにやきもきしているファンはもちろん,Forzaシリーズを未プレイだという人も,ぜひ参考にしてほしい。
個人的に,Xbox 360というプラットフォームにおけるレースゲームの充実っぷりは,すさまじいものがあると思っている。その中でもとくに“凄い”と感じるレースゲームは,以下の3タイトルだ。
ただ走る。カーライフを堪能することこそが目的であり,レースは存在するが,別に参加しなくても楽しめるという尖り具合が魅力の「Test Drive Unlimited」。ラジオを聞きながら広大なハワイ島をひたすら走るだけ。交通ルールをだらっと守りながら,大自然を楽しむという徹底したカーライフシムだ。家を購入し,ガレージに車を並べて悦に入り,ラジオを聞きながら島を流す。時折すれ違う世界中の誰かと競り合うでもなくドライブを楽しむという,真の車愛好家のために存在するようなタイトルである。
徹底してゲームとしての楽しみが追求された箱庭系車ゲーム,「バーンアウト パラダイス」。作り込まれた箱庭を自由自在に走れるのはもちろん,裏道を探し出したり暴走しながらジャンプを決めたりと,大騒ぎしながら楽しむことができる。フレンドを集めてのマルチプレイでは,当然のように派手な爆発音が鳴り響くことになる痛快お祭りレースゲームだ。
世界中のリアルな街を,リアルな車でドリフトしながら走り抜けられる「PGR 4 ―プロジェクト ゴッサム レーシング 4―」。ひたすらスタイリッシュに,新宿,上海,ニューヨーク,マカオといった有名なロケーションを,スーパーカーで駆け抜ける。クールなドリフトを決めるのが容易なバランシングで,攻める楽しさをとことん味わえる。次世代機ならではのグラフィックスや,未だに他の追随を許さない充実のリプレイ機能,ほかではあまり見られない天候変化や路面の凍結など,見どころ盛りだくさんのレースゲームだ。しかもほかのリアル系レースゲームと異なりバイクも充実しており,モータースポーツマニア全般を楽しませてくれること請け合いである。
そして今回紹介するのが,これらの3タイトルを凌ぐ,Xbox 360におけるリアル系レースの最高峰といっても過言ではない,「Forza Motorsport 2」だ。さまざまなレースゲームが存在する中で,別格といえるほどの魅力を備え,いまだに高い評価を受けている本作の,こだわりと人気の秘密を紹介していこう。
※本稿で使用しているムービー/スクリーンショットは,筆者のフレンド達に許可を得て撮影/掲載したものです
ここまでやるか? 一般人置いてけぼりのこだわり
Xbox 360のスペックを考えると,ある意味レースシムとしての正当進化を遂げたタイトルともいえるが,それだけに終わらないのがForza Motorsport 2の恐ろしいところ。
とりあえず下の映像を見てもらいたい。車の改造にしてもこれだけ多くの項目が用意されている。本作では,「自分だけの車を作りたい!」という願望はあっさりとかなってしまうのだ。むしろ他人と同じマシンに仕上がる可能性のほうが低い。
改造パーツはゲーム内通貨で購入するのだが,このゲームでのセッティングは,よくある「パーツを交換して終わり」というものではない。すでに実際のF-1などで採用されているテレメトリシステムが実装されているのだ。本当の意味でのテレメトリというわけではないのだが,タイヤの圧力やサスの堅さなど,さまざまな微調整ができる。
ここまでくると,「普段車に乗る」というレベルの人間では,どういじればどのような影響があるのかを想像することさえ難しい。逆に,セッティングの知識を身につけていけば,とんでもなく奥の深いカスタマイズが楽しめるというわけだ。
しかし,一般人でも安心
冷静に考えれば,そこまで一般人を突き放したかのような“リアルさ”だけを求めたゲームが,全世界で好評を博することはできない。Forza 2には,レースゲーム/レースシムにおけるリアルさだけでなく,ゲームファンがしっかりと遊びこめる要素もちゃんと盛り込まれている。
初心者や,ゲームに不慣れな人に対する工夫も,本作を語るうえで重要なポイントだ。そういった配慮は,大まかに分けると2種類あると思う。一つは,何も考えることなく誰でも楽しめるような難度に調整してしまうことだ。このタイプの調整を行ったレースゲームで最高のバランスを誇るのが,任天堂の「マリオカート」シリーズ。子供からお年寄りまでそれなりに楽しむことができて,それでいてレースゲームとしての完成度も高い。とはいえ,このベクトルではForza 2のこだわりが無駄になりかねない。
もう一つの工夫は,初心者やゲームに不慣れな人を,教育/訓練するという方向性だ。つまり,上級者になるための道筋をゲーム内にしっかりと用意し,それを理解させ,「諦めなければうまくなれる」という手応えをプレイヤーに持たせ続けるのである。この方法論は王道であり,ゲームというエンターテイメントにおける正解の一つといってもいいはずだが,大きな問題もある。チュートリアルは,丁寧に作り込んだものが必要になってくるし,それを用意した上でなお,システムが有効に機能するとは限らないのだ。
Forza 2では,主に後者の工夫でビギナー層にアピールしているのだが,その方法論が素晴らしい。
難度を下げる場合,実際にはありえない高性能な車を与えて「俺,最速!」と勘違いさせるようなことは得策ではない。それをやると「リアル」というForza 2の大事な魅力がスポイルされてしまうからだ。Forza 2では,操作や敵車AIなどの難度はそのままに,レースを快適に走るためのアシスト機能をつけた。
これは,レースにおいて最重要ともいえるライン取りやブレーキングポイントを,目に見える形で提示するもの。このシステムを手放しで褒めちぎりたい理由としては,慣れていない車でもレースが成立するという部分以上に,プレイヤースキルの上達に直結しているところにある。
いくら操作に慣れていなくても,アシストが表示されていれば完走はできる。しかも,ブレーキングポイントなども周回を重ねれば身体で覚えることができる。結果としてプレイヤーのテクニックが徐々に鍛えられていくというわけだ。
当然ながら,アシストが付いたところで,誰でも1位が取れるというほど簡単になるわけではないのだが,完走できるレベルまで難度が下がる。このアシスト機能がモチベーション維持に一役買っていることは間違いない。
リプレイ機能とito君達が生み出すさらなる遊びやすさ
極端なことをいえば,能力の高い車さえ手に入れてしまえば,ほとんどのレースをAIドライバーに走らせても構わないのだ。レース中はリプレイモードと同じカメラアングルで,車が華麗に走り抜けていくシーンを堪能できるので,まさに見ているだけでチャレンジをクリアすることが可能。アシストオンで彼らを雇うと,リプレイ画面にもしっかりとアシストラインが表示される。
ちなみに支払う報酬のパーセンテージが最低ランクということで,ito君(性別不明)というAIドライバーが日本では人気になっている。好きな車を入手できるようになるまで,あるいは自分でレースに勝てるようになるまで,AIドライバーを雇ってお金を稼ぎつつ,イメージトレーニングを積むというのも立派な本作の楽しみ方なのだ。
日本先行発売の理由
このForza 2,海外の会社が開発しているにも関わらず,世界で一番最初に発売された地域は日本。このゲームではペイント機能(記号などを組み合わせるだけ)があるのだが,これを利用して日本人の職人というか,情熱と才能の無駄遣いを行う人々(確実に誉め言葉)が,ものすごい作品群を作り上げているのも理由の一つだろう。
開発者はこれに感動し,その情熱に応えるために日本を一番最初に発売するエリアに指定したとも言われている。今ではすっかり有名になった「痛車」を,記号やベクタデータのみを駆使して作り上げる日本人の職人による作品は,YouTubeやニコニコ動画などでいくらでも探すことができる。実際の作り方は,単純なパーツと限られた色の組み合わせでしかないのだが,情熱,時間,才能,それ以外の何かを駆使して制作することが可能なのは,ご覧のとおりである。
華麗にサーキットを走るだけがレースゲームではないという,新たな価値観を生み出し,育て上げた日本人のプレイヤー達には本当に頭が下がる思いだ。運転技術だけがプレイヤーの価値を決めるわけではないという事実が,一プレイヤーとしてとても嬉しい。
ちなみに,このゲームは自分の持っている車をオークションに出したり,出品されている車を落札したりできるので,誰かが作った痛車を探す楽しみも味わえる。ただ,うますぎるペイントは高額になりやすい傾向があるので注意しよう。
よほどの車嫌いでなければ遊ばない手はない
大幅にパワーアップした「Forza 3」にも要注目!
純粋なレースを,どこまでもストイックに追求する人間がいる。好みの車をひたすら集めることに喜びを感じる人間がいる。芸術家のように己の生み出した作品を世に問う人間がいる。
それらをすべて受け入れるだけの器があり,ライトユーザーを切り捨てないだけの懐の深さを持つ。圧倒的なグラフィックスと車の挙動。そして乗車可能な300を超える現実世界の車達。このForza Motorsport 2を経由せずして次世代ハードのレースゲームを語ることは,少々おこがましいのではないかとさえ筆者は思っている。
もう明日には,待望のコックピットビューの実装をはじめ大幅にパワーアップしたシリーズ最新作「Forza Motorsport 3」が発売されるタイミングではあるが,Forza 2はプラチナコレクション(廉価版)として発売されているので,Forzaシリーズの実力を安価で楽しみたいという人は,ぜひお試しを。あるいは,Forza 3の体験版を実際にプレイして,シリーズ最新作の実力の一端に触れつつ,購入を検討してみてほしい。
動画撮影機材:トムソン・カノープス HDRECS
動画編集用ソフト:トムソン・カノープス Edius Pro 5
- 関連タイトル:
Forza Motorsport 2
- 関連タイトル:
Forza Motorsport 3
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