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[GC 2008#03]加速するパブリッシャの巨大化,その理由とは。「3ds Max」のAutodeskが考えるゲーム業界のトレンド
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印刷2008/08/20 13:39

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[GC 2008#03]加速するパブリッシャの巨大化,その理由とは。「3ds Max」のAutodeskが考えるゲーム業界のトレンド

Mary Beth Haggerty氏(Senior Industry Manager, Autodesk)
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 3Dグラフィックス関連のツールスイート「Autodesk 3ds Max」や「Autodesk Maya」などで知られるツールベンダ,Autodesk。GC 2008に先だって開催されたGCDC 2008では,同社のMary Beth Haggerty氏が,「Game Industry Trends Worldwide」(世界規模におけるゲーム業界のトレンド)という題で,ゲーム業界の流行を把握しようというセッションを行った。


開発規模の大型化が生んだ

ゲーム関連企業の大型化


 過去20年以上もの間,ゲームというモノは,そのプログラムやデータを書き込んだメディアを小売店で販売するというビジネスモデルを採用してきた。しかし,2003年頃から,配信システムを用いたダウンロード販売や,それこそオンライン専用ゲームが本格化し,販売形態は急激に変わり始めたと,氏は話を始める。
 日本や韓国でスタンダードとなった「基本プレイ無料,アイテム課金制」というオンラインゲームが北米でも増えつつあり,新たなトレンドを生み出した。ロシアでもアイテム課金は成功しており,アジア生まれのビジネスモデルが,世界のスタンダードになりつつあるのだ。

プレイステーションからプレイステーション2,PLAYSTATION 3へと進化するなかで,キャラクターに用いられるポリゴン数は大きく増加した
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 また,コンシューマゲーム機の進化が目に見える形で一気に進んだのも,このタイミングである。
 プレイステーション2からPLAYSTATION 3へ,XboxからXbox 360へとゲームプラットフォームが移行。これに伴い,ゲームの表現の幅が広がり,プレイステーション2では2500ポリゴンで表現していたオブジェクトも,PLAYSTATION 3では200万ポリゴンへと大幅に増えている。表示できるポリゴン数が増えたことで,同じようなオブジェクトを作るにしても,従来より手間がかかるようになった。

2003年の作品であるEnter The Matrix(上)と,まだまだ売れ続けている2008年のタイトル,Grand Theft Auto IV(下)
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 手間がかかるということは,それだけ多くの人手が必要になるわけで,事実,2003年と2005年のゲームでは予算規模がまったく異なる。
 Haggerty氏によると,2003年に発売されたゲームで最も開発費がかかったのは,「Enter The Matrix」で,およそ2000万ドル。対して,2008年に発売されたタイトルの中で,最も開発費がかかっているのは「Grand Theft Auto IV」で1億ドルとなる。単純計算で,開発費は5倍へ膨れあがっている計算だ。また,開発に携わった人数は,クレジットされているだけで前者が180名,後者が1000名となっており,こちらも5倍以上である。

 アウトソーシングも活発に行なわれるようになっており,(表には出ていないが)開発に関連するさまざまな業務が外注されているとのこと。外注先は開発会社と同じ国ではなく,インドや中国などが中心だ。最近はモロッコやブラジルなどにもかなり発注されているという。

 ここで重要なのは,開発規模が大きくなり,さまざまな国や地域と密接に関わる必要が生じてきたために,オフィスがグローバル化,巨大化していったことだと,Haggerty氏は強調する。BioWareやMythic Entertainmentなどを買収したElectronic Artsや,Blizzard Entertainmentと合併したActivision Publishingなど,昨今,メジャーパブリッシャが急激に巨大化する動きは,枚挙に暇(いとま)がないが,パブリッシャが大型化した最大の理由は,ここにあるというわけだ。

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 「なにも開発会社を買わなくても,プロジェクト単位で契約していったほうがビジネス的なリスクが少ないのでは?」という気もしてくるが,現実には,ゲーム開発の規模が大きくなればなるほど,プロトタイプの早期開発が鍵になり,いきおい,良質なプロトタイプを迅速に開発できるチームを多く抱えたパブリッシャが有利になるとのこと。なるべく早い段階でプロジェクトを進めるか否かの判断をつけないと,損失が大きくなってしまうからだ。

 また,開発に携わる人の数が増えるので,いままで以上にプロデューサーの役割が重要になる。大きなチームの舵取りを間違えれば,開発するゲームの方向性も狂い,せっかくお金をかけて作り上げても,失敗作となってしまうからである。
 付け加えるなら,大規模な開発チームがゲームの完成(≒発売)を延期させると,コスト面での負担が大きくなる。ビッグタイトルには,どうしても延期がつきものといったイメージがつきまとうが,今後は,納期を守れるプロデューサーというのが,これまで以上に求められることになるだろう。

 余談だが,映画監督として知られるスティーブン・スピルバーグ氏は,ハリウッドではプロデューサーとしての評価のほうが高いのだという。なんでも氏は,撮影期間をきっちりと守るどころか,早めに完成させることで有名で,よほどのアクシデントでもない限り遅れることはないそうだ。撮影期間の延期は,ダイレクトにコストに響くため,映画プロデューサーとしてのスピルバーグ氏は,これ以上ない人材なのだとか。


カジュアルゲームタイトルすら

パブリッシャ大型化の要因に


Activision Publishingには,Blizzard Entertainment以外にも多くの会社が集まっている
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 以上,規模の大きなゲームを開発するためには,会社を巨大化させていかなければならないというのがHaggerty氏のセッションの要旨だが,氏は,巨大化の背景には,にわかに流行しだしたカジュアルゲームなどの影響も無視できないと付け加える。
 ここでいうカジュアルゲームには,いわゆるレトロゲームも含まれるが,過去の資産を多く持つメーカーを買収してしまえば,かつての名作を容易に扱えるようになるわけだ。

 予算規模が少なく,リスクの少ないカジュアルゲーム――ここにはレトロゲームのリメイクなども含まれる――と,ハイリスク&ハイリターンのビッグタイトルをバランスよくポートフォリオに混ぜ,トータルでしっかりと利益を出す。これこそが,現在のゲーム業界における最大の流行であり,逆にいえば,この流行に乗れない会社は,どこかに買収されるか,業界から撤退することになるだろうと,Haggerty氏は指摘する。


 企業は巨大化すると,小回りが利かなくなるという弱点がある。だが,ビジネスとして成熟してきたゲーム業界においては,巨大化が必然なのかもしれない。
 とはいえ,片手で数えられるほどの数の会社からしかゲームが発売されなくなるというのも寂しいもの。小さな開発会社が一攫千金を狙うのが難しい業界になりつつある事実を「業界が成熟してきた証拠」と見るなら,それは歓迎すべきなのかもしれないが,一方で,適度な競争がある,健全な市場が維持されることも願いたいものだ。
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