イベント
[GC 2008#07]PCゲーム産業は4兆4500億円市場!? PC Gaming Allianceが活動の成果を大発表
例えばAmazon.comなど,ゲームショップ以外の通販サイトにおけるソフトウェア販売額が抜けているほか,南米地域が調査対象に含まれていないという課題はあるものの,これまでの市場調査ではカバーしきれなかった部分も網羅していることが,特徴のひとつとされている。
いま,南米地域が含まれていないと述べたが,今回のHorizon's Reportでは,北米と欧州(※中東およびアフリカを含む),日本,アジア太平洋地域を「4大市場」として統計している。日本の場合,ソフトウェアでもハードウェアでも3%ほどのシェアしかなく,残る3大地域とは比べものにならないほど小さな市場だが,
- オンラインでの販売額が圧倒的に多いアジア太平洋地域とは異なる性格を持つ
- 高額なハードウェアを購入する層が少なくない
ことから,その市場の潜在性を認められて単独表記されたようだ。カプコンがPCGAにContributorとして参加していることが影響している可能性もある。
いずれにせよ,4兆5000億円という数字は,ちょっと“やりすぎ”の感が否めない。ソフトウェアの市場規模が1兆円を超えているといっても,PCゲームで成功しているゲームデベロッパが多いわけではない。また,(PromoterにIntelがいるのでやむを得ないとはいえ),市場規模3兆円超とされるハードウェアの統計基準は「DirectX 9に対応したグラフィックス機能を持つPCや,周辺機器の売り上げを積み上げたもの」。つまり,「Mobile Intel 945GM Express」搭載のノートPCなどもこの統計に含まれているのだ。単体GPUを持たないノートPCを「PCゲーム機」と呼んでいいのかは,甚だ疑問である。
もっとも,仮に“PCGA承認のゲーム用PC”という規格が出来たところで,それが本当に正しく機能するかは疑問が残る。とくにGPUメーカーは,半年ごとに性能を向上させた新製品を投入し続けなければ株価に影響してしまうという,企業としての宿命を背負っているため,「このPCを買えば,3年はアップグレードなしにゲームを楽しめます」などと宣伝されれば,たまったものではない。
実際,今回のカンファレンスに参加していたEpic GamesのMark Rein(マーク・レイン)氏も,「“ソフト屋”としては,将来的に我々が制作するどんなプログラムでも動いてしまうような,行き着くところまで行った高性能PCが登場してくれれば,それでいい」と,集まった開発者の質問に答える形で述べていた。
今回のHorizon's Reportを軸として,今後は「標準的なゲーム用システム」の規格化に向けて関係各社が調整を行っていくはずだが,ここにあるハードウェアメーカーとソフトウェアメーカーの誤差は,PCGAの活動にとって,大きなハードルとなる可能性も否定できない。
今回の発表内容は,Horizon's Reportのごく一部にしか過ぎない。詳細はメンバーのみが共有していくとのことなので,発表されていない部分に,筆者の懸念を吹き飛ばすデータがあることを願うばかりだ。
ただ,たとえ名目上とはいっても,PCゲーム産業が4兆円市場として発表されたこと,それ自体には相応の意義がある。このポジティブなデータを軸に,実質的にも世界最大のゲームプラットフォームとして定着するよう,PC業界全体が協力し合っていくことを望みたい。
- この記事のURL: