プレイレポート
コミュニティサービスはゲーム業界の次の主戦場なのか? ゲームプラットフォーム初となる仮想世界サービス「PlayStation Home」に触れてみた
そんななか,PLAYSTATION 3(以下,PS3)を擁するSony Computer Entertainment(以下,SCE)は,PS3向けの次世代コミュニティサービスとして「PlayStation Home」(以下,PS Home)の開発を発表。2008年8月下旬(欧州などでは,先行してβテストが行われていたが)からは,一般ユーザーを対象としたクローズドβテストを実施している。
一見すると,「Second Life」などをはじめとした,いわゆるメタバース系(仮想空間)のサービスという印象が強いPS Home。しかし関係者の話によると,PS Homeは,PS3の新しい「遊び場」という位置づけであり、高解像度の3D空間の中でユーザー同士が出会い、ゲームやコミュニケーションを楽しめる場だという。2007年の制作発表以来,業界向けのカンファレンスなどで逐次情報が伝えられてはいるものの,なかなかその全貌が見えてこなかったPS Home。その内容は,果たしてゲーマー向けのオンラインサービスとして真に有用なものになり得るのだろうか?
普段はPCゲームを中心に扱っている4Gamerであるが,今回,そんなPS Homeのβテストに参加することができたので,その内容を紹介していきたい。
そもそもPlayStation Homeとは?
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PS Homeとは,SCEが開発を進めている,コンシューマ機では初となる本格的なバーチャルワールドサービスである。プレイヤーは,3Dのリアルなアバターを使って,テキストチャットやボイスチャット,あるいはジェスチャーなどといったさまざまなコミュニケーションが取れるほか,PS Home内の各種コンテンツを楽しむことができる。
PS3のグラフィックス機能を駆使したリアルなアバターや3D空間など,ビジュアル的な要素も大きな特徴だが,ほかの仮想世界サービスとは異なり,あくまでも「ゲームを遊ぶため」のプラットフォームとして位置づけされているというのが,このPS Homeの最大の特徴だ。
これはいわば,Xbox LIVEが持つゲームロビーとしてのインフラを,PS Home上に実現しようという試みだと考えられており,対応する各種コンテンツは,PS Home上から直接操作できるものもあれば,外部アプリケーションとして起動できるものもある。PS3の機能やゲーム群が有機的に融合されている点は,ほかの仮想世界サービスと一線を画す部分だといえる。
前述したXbox LIVEやWi-Fiコネクションなどといった競合他社のサービスに比べると,いまいちオンラインプレイ周りが弱い印象のあったSCE陣営にとって,このPS Homeは,文字通り待望のオンラインプラットフォームであり,競合他社に対抗する,社運をかけた(?)一大プロジェクトという位置づけと考えられる。今年2月に行われたGame Developers Conference 2008では,PS Homeのサードパーティー向け開発ツール「Home Development Kit」の詳細も公開されるなど,SCE陣営の戦略コンテンツとして,着々と準備が進められているサービスでもある。
というわけで,PlayStation Homeに参加してみた
ホームスクエアは,言うならば各種コンテンツ/コミュニティへつながっていくためのゲートウェイのような位置づけとなっていて,このビジュアルロビーが全プレイヤーの交流する社交場としての役割を担う。ホームスクエアのいたるところに,各種ポスターや映像が配信される巨大スクリーンなどが設置されているあたりは,PS Homeがメディア的な情報発信や広告展開などを見据えたサービスであることをうかがわせる部分だろう。
顔の造形の詳細な調整などに入っていくと,まだローカライズ作業が途中の状態なのか,各項目が「タイプ1」「タイプ2」「タイプ3」などと表記されるだけで,何をどう弄ればいいのかが若干分かりにくかった。この辺りのブラッシュアップは,正式サービスまでの課題といったところか。いずれにせよ,クローズドβテストの現段階で大きな問題として挙げる部分ではないだろう。
ちなみにアバターの外見はいつでも簡単に変更が可能で,新しい服などを手に入れたら,メニューを開いて即座に身につけることができる。服装だけではなく,髪型や顔の輪郭,肌の色など含めてすべてが変更可能なため,“イメチェン”というよりは“作り直し可能”といった雰囲気だ。昨日はヒップホップ系の黒人だった知り合いが,今日は白人の女の子の姿で,「俺だよ俺」というのも何か間違っている気がするが,まぁ仮想空間サービスというのはそうしたものなのかもしれない。少なくとも変に固定してしまうよりは,フレキシブルな今の仕様のほうが好ましい方向性だろう。
ゲームプラットフォーム初となる本格的な仮想世界の出来映えは?
ちなみに交流の起点となるホームスクエアは,各国ごとに異なっているようで,前述した5つのエリアという基本構成こそ変わらないが,イギリス,日本,アメリカなどでそれぞれ違ったオブジェクト/空間が用意されている。
また,ゲームスペースに設定されている「ナムコミュージアム BETA」などは,日本のエリア独自の要素。シアターなどで放映されている映像も各国で異なるなど,それぞれの国にあった告知/イベントが展開されている。
肝心の仮想世界自体は,PS3専用だけあって,グラフィックスの水準は非常に高い。現行の仮想世界サービスの中では,トップクラスといえるだろう。この手のコミュニティサービスで,リアルさが必要であるかどうかはともかく,Second Lifeなどといった既存のサービスに負けまいとするSCEの意気込みは,十分に感じられる。
ともあれ,PS Homeの世界がどんな雰囲気であるか? だらだら文章で説明するよりは,百聞は一見にしかず,だろう。下記にスクリーンショットを掲載しておくので,その雰囲気を感じ取って貰えれば幸いだ。
最大のウリの一つであるゲームロビー機能は改善の余地あり?
ともあれ,PS Homeのアバターサービスとしての完成度はともかく,ゲーマーとして気になるのは,やはり「ゲームロビーとしての完成度,使い勝手」についてだろう。
結論から言ってしまうと,少なくとも現段階では,クローズドβテストであるということを考えても,ゲームロビーとしての使い勝手は,改善の余地ありというのが正直なところだ。
PS Homeにおけるゲーム起動までの手順は,PS Home中からメニューを開き,「ゲームセッション」を作成。まずそこに参加者を募る形になっている。参加者が集まったあとでゲームを起動すると,そのセッションに参加しているプレイヤーは,ゲーム中の対戦ルームないしロビーに放り込まれるといった形だ。この辺りは,通常のゲームランチャー(最近はそれ自体あまり見かけないが)と,考え方はあまり変わらない。
ただ問題は,その“参加者”を集めるという部分が,システム的にあまりこなれてないという点。例えば,ホームスクエア上で作られているゲームセッションの一覧などを表示する機能がなく,ゲームセッションが作られているかどうかは,各キャラクターのアバター上に表示されるアイコンでしか確認できない。そのうえ,「どんなゲームのセッションなのか」は,そのキャラクターの情報ウインドウを開いて見なければならず,自分が遊びたいゲームのセッションを仮想世界上から探すのは,かなり難しいのだ。テストであることを加味しても,ゲームロビーを志向したサービスとしては,この辺りの設計にスマートさが足りないように思えてならない。
これは例えばの話だが,アバター上に出るアイコンを,ゲームコントローラーのようなものではなく,各ゲームのサムネイルが表示されるようにすれば,どこで誰が何を遊んでいるかというパっと見の分かりやすさは大分良くなるだろうし,モンスターハンターにおける集会所の掲示板のように,ゲームごとに掲示板が立てられたりして,そこに人だかりができたりすれば,ゲームの対戦/協力プレイ,あるいはその盛り上がりを“ビジュアル化”するという意味では,だいぶ分かりやすいのではないだろうか。
PS Homeでは,各ゲームごとに専用のエリアが作られたりもするという話ではあるが,もっとも人が行き交うであろうホームスクエア上での見せ方には気を遣う必要があるように思う。少なくとも今のままでは,PS Home上で同好の士(要するに,同じゲームを楽しむ友達)を探そうという気は起きない気がするし,仮にその気になっても難しい。正式サービスまでさほど時間的な猶予はないとは思われるが,この辺りは改善を求めたい部分である。
ゲーム初の本格ビジュアルロビーとして,さらなる発展を期待したい
正直なところ,PS Homeのような“重いコンテンツ”がゲームロビー/ゲームランチャーとして適切なのかどうか? という点に,いくばくかの疑問が残るのは確かだ。しかし,今年に入ってマイクロソフトが新たにアバターサービスの実装を発表してきたように,シンプルな機能だけを提供するロビーサービスに,限界が出てきたのも事実だろう。とくに今後,さらに多くのプレイヤー層が自然にオンラインプレイ(ゲーム)をしていくにあたって,より分かりやすく使いやすい,あるいはより楽しそうな“ゲームロビーの見せ方”が必要なのは,ほぼ間違いないところなのだ。
これはゲーム単体で完結している例なので,単純な比較はできないのだが,例えば,上にも挙げたモンスターハンターなどは,近年“ビジュアルロビー”がもっともうまく機能したタイトルの一つだと筆者は考えている。モンスターハンターでは,それが非常に上手くゲームと一体化しているのでなかなか意識しにくいのだが,集会所に集まってそこでゲーム(冒険)を作成し起動する(冒険へ旅立つ)というのは,まさしくゲームロビーの機能そのものだろう。
もし仮に,モンスターハンターにおけるロビー機能が,集会所という“見せ方”ではなく,シンプルなルーム作成とマッチングだけの機能然としたものだったなら,中学生や高校生が違和感なく快適に協力プレイを楽しめただろうか。
ゲームロビーというと,とにかく「シンプルな機能さえあればよい」という声も少なくない分野なのだが,根っからのゲーマーならともかく,そうではない層を睨んだ場合,「それだけでは限界があるかもしれない」という疑問は提起しておきたいところだ。
いずれにせよPS Homeとは,そんな“ゲームのよりよいオンラインプレイの楽しみ方”を模索する挑戦的な試みではないかと思う。今後は,その本質的な価値を見極めつつ,さらなる発展を期待したいところだ。
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