インタビュー
機体のカスタマイズ機能を強化して“メカもの”としての側面を打ち出していく。オンラインTPSの注目作「鉄鬼」プロデューサーインタビュー
11月末に実施されたクローズドβテストでは,事前の募集に実に7万件を超える応募があり,テスター枠が当初の1万人から2万人に拡大されたのは記憶に新しい。
また,クローズドβテスト期間中の最大同時接続者数が7000人,現在実施中のオープンβテストにおける最大同時接続者数が1万人を超えるなど,昨今のオンラインFPS/TPSでは異例ともいえるほどの注目度の高さを誇っている。
そんな鉄鬼に関し,今後どういった形での展開を狙っているのか。4Gamerでは,鉄鬼のプロデューサーを務めるゲームヤロウ パブリッシング事業本部 小野寺 崇氏にズバリ聞いてみた。
「鉄鬼」公式サイト
ロボット/メカが人気の日本市場をターゲットにして企画/開発が進められた鉄鬼
本日はよろしくお願いします。まずは,鉄鬼のサービスを日本で展開することになった経緯などを教えてください。
小野寺 崇氏(以下,小野寺氏):
そもそも鉄鬼は,弊社の親会社である韓国GameHiが,日本向けにメカもののゲームとして企画/開発してきた作品です。
4Gamer:
つまり,当初から日本をターゲットにしたタイトルだったということですか。
小野寺氏:
ええ。「機動戦士ガンダム」などのロボット/メカものの人気が高い,日本に向けて企画されたゲームなんですよ。
4Gamer:
日本での展開が発表されてからβテストに至るまで,かなりの時間が費やされました。当初は,2009年夏にサービス開始予定でしたし。
小野寺氏:
そのあいだ,日本市場に向けたさまざまなデータ収集やバランス調整の観点から,先行展開していた韓国のデータや,ゲーム全体のボリュームなどを元に情報を分析し,スケジュールやゲームバランスの調整を行っていました。期待していた方には,本当に申し訳なく思っています。長らくお待たせしましたが,ようやくオープンβテストまで漕ぎ着けました。
4Gamer:
これまでのβテストを通じて感じた手応えや,プレイヤーの反響はどうでしたか?
小野寺氏:
同時接続者数,新規登録会員数ともに,弊社が予想していた数字を大きく上回っています。正直なところ,こうした鉄やオイルの質感を打ち出したメカものはどうだろうとも思っていたのですが,そんな心配を拭うほどの反響がありました。
4Gamer:
プレイヤー層はどのような感じですか?
小野寺氏:
男女比については,想像がつくように,9割以上が男性です。年齢的には,20代中盤〜後半が中心ですね。
4Gamer:
一般的なFPS/TPSのプレイヤー層で,若干年齢が高めといったところですか。
小野寺氏:
ええ。ただ意外だったのは,オンラインFPSの経験者だけでなく,これまでコンシューマゲームばかり遊んできたという方もかなりの割合を占めている点です。この特徴を活かして,弊社の中でも新しい流れを作れるんじゃないかと期待しているところです。
不評の機体獲得システムは,よりよい形に改善。機体のカスタマイズ機能も強化
具体的に,どのような意見や要望が寄せられているか,教えてください。
小野寺氏:
クローズドβテストでは,さまざまな機体を使える点がとくに好評でした。
4Gamer:
オープンβテストについてはどうでしょう?
小野寺氏:
機体の獲得方法を変更したのですが,その部分に意見や要望が集中しています。実際にプレイした方は,弊社が予想していたよりも,経験値テーブルが厳しいと感じているようです。当然,バランスの調整は引き続き行っていきますし,階級の経験値テーブルも同様です。
バランス調整の一環として,獲得経験値が通常の30%増加する「ボーナスタイム」イベントを,2010年1月11日23:00まで実施しています。
4Gamer:
今は,1機体ずつ決められた順番でアンロックしていくシステムになっていますよね。それ自体に変更はないんですか?
小野寺氏:
そのあたりについて,今まさに開発と協議している段階です。弊社からは,例えば,最初に「VANGUARD」(ヴァンガード),「DUAL」(デュアル),「BLITZ」(ブリッツ),「VELOX」(ヴェロックス)の4機体から,1機体ずつプレイヤーが選択してアンロックできるような方式を提案/検討しています。
4Gamer:
より多くのプレイヤーが納得できる方式が採られることを期待しています。
小野寺氏:
開発/運営としては,機体が8種類も登場しますから,ぜひ全部プレイしていただきたいという気持ちも持っています。それぞれ役割が異なりますので,遊び方も大きく変わってくるんですよ。昇級や,チュートリアルのクリアを機体獲得の条件としているのは,各機体に十分慣れ親しんでほしいという思いからです。
最初からすべての機体を使えるようにするのではなく,それぞれの機体の特性を楽しく覚えながら,使える機体が増えるようにしていく。それをストレスなく行えるようにすることが,目指すべき理想形だと考えています。
私達からの提案どおりにはならないかもしれませんが,プレイヤーの皆さんが望む方向に近づけるように努力していくつもりです。
4Gamer:
なるほど。
そのほか,これまでに寄せられた反響の中で,目立ったものはありますか?
小野寺氏:
コンシューマゲームをプレイされている方が多いためか,ゲームパッドに関する意見が目立ちます。例えば,鉄鬼の自動照準機能について,マウス操作と比較すると,どうしてもターゲットが遅れがちになってしまうといった内容です。
4Gamer:
ああ,それはFPS/TPSタイトルでしばしば見受けられる問題ですね。
小野寺氏:
そこで,ゲームパッドをより緻密にサポートするための仕組みをクライアント側に盛り込めないか,考えているところです。
そのほか,武器の種類を増やしてほしいという要望も多く寄せられています。
4Gamer:
そのリクエストも,コンシューマ機用のロボット/メカものゲームが好きなプレイヤーが多いことの表れかもしれませんね。そういった人は,自機をカスタマイズしたいという願望が強い気がします。
小野寺氏:
ええ,カスタマイズ性の強化に対する期待の高さを強く感じています。そういったリクエストに応えるために,機体のカラーを変えるアイテムや,武器をはじめとするパーツの追加などを重点的に行っていく計画です。カスタマイズ性の高さをウリの一つにできるよう,力を注いでいきますよ。
4Gamer:
なるほど。単なるオンラインTPSではなく,“メカものの作品”としての厚みをつけていくと。
小野寺氏:
例えば,VANGUARDには現在3種類のメインウェポンが用意されているんですが,特定の武器に人気が集中しているのが現状です。新たな武器を追加するときは,操作方法を少し変えるなどして差別化し,その武器に対するプレイヤーのモチベーションを高めたいと思います。
実は先日,韓国から開発チームのリーダーが来社したので,日本製のゲームをプレイしてもらったんです。彼は,日本でカスタマイズ性が重視されている理由や,メカのパーツを変えることで遊びの幅が大きく広がることを実感していたようですよ。
4Gamer:
このことで,より良い方向に進むことを期待しています。
小野寺氏:
日本のプレイヤーからの反響が大きかったので,開発チームも,これから日本市場に向けた作業により大きな力を注いでいくと意気込んでいます。
上位の「レジェンド機体」に加え,日本人メカデザイナーが手がける新機体も登場
11月10日に開かれたプレスカンファレンス(レポート記事)では,新機体に関する話が出ていました。
小野寺氏:
その一つが「レジェンド機体」という種類で,ゲーム内に登場するキャラクターの専用機体という位置付けです。性能的には既存8機体の上位版にあたり,もちろん見た目も異なります。2010年1月に予定している正式サービス開始後に実装する計画なので,そう遠くない将来,お目見えするはずです。
4Gamer:
プレカンでは,日本で独自にデザインされた新機体に関する情報も公開されていました。
小野寺氏:
メカデザイナーの明貴美加さんと石垣純哉さんに,それぞれ2体ずつデザインをお願いしており,すでにラフデザインはできあがっています。実装時期は開発作業の進み方次第ですが,できるだけ早く登場させたいところです。
4Gamer:
既存のレジェンド機体のデザインを,明貴さん達が描き起こしたものに差し替えるわけではないんですよね?
小野寺氏:
ええ,レジェンド機体と新デザインの機体は,全く別の扱いです。新機体の性能は追って発表します。
4Gamer:
明貴さんは,VANGUARDとVELOXのデザインを担当するという話でしたね。石垣さんはどの機体のデザインを手がけているんですか?
小野寺氏:
石垣さんには,BLITZとDUALの2タイプをお願いしています。実をいうと,残りの4機体についても別のデザイナーの方にお願いしており,計4人のデザイナーさんに参加していただいているんですよ。
いずれも,鉄鬼の世界観にマッチする,“ロボ”というよりは“メカ”という感じの,とても良いデザインに仕上がっています。それぞれのデザイナーさんのカラーが強く打ち出されていますので,ロボット/メカもののファンの方はぜひ期待してください。
4Gamer:
楽しみにしています。
ちなみに,残りのデザイナー2名の名前は,まだ教えてもらえませんか?
小野寺氏:
申し訳ありませんが,今はまだ秘密です。どちらも,メカものが好きな人ならば納得のデザイナーさんですよ。これを皮切りに,第2弾,第3弾と続けていければと考えています。
「ボスモード」「キャンペーンモード」の実装でプレイヤー同士の協力プレイを強化
それでは,先日の「サドンアタック祭り2009」(レポート記事)で発表された新モードについて教えてください。
小野寺氏:
12月28日に実装予定のアップデート「巨大ボスが襲来!」で,「ボスモード」を追加します。これは,ボス機体を護衛する側と攻撃する側に分かれて戦うという内容です。ボス機体はかなり大きいうえ,攻撃力が非常に高いので,迫力満点の戦闘を楽しんでもらえると思います。
4Gamer:
このボスは,かなり遠くから見ないとディスプレイに収まりそうにありませんね。
小野寺氏:
そうですね。近接機体だと見上げる感じになってしまいます。
ボスは,レーザーやらミサイルやら,多彩な攻撃を繰り広げますし,それを護衛するメカもいますので,攻撃側はかなり困難な戦いを強いられるでしょう。
4Gamer:
ボスは変形したりしないんですか?
小野寺氏:
残念ながら,このボスは変形しません。とはいえ,メカに変形は“つきもの”ですから,将来的には変形するボスを登場させるのも面白いかもしれません。
4Gamer:
もう一つ,「キャンペーンモード」に関する情報も公開されました。
小野寺氏:
キャンペーンモードは,正式サービス開始と同時に実装予定となっています。こちらは,プレイヤー同士で4〜8人のチームを組み,多数のNPC機体と戦うという内容です。ストーリー性もあり,チームメンバーと共に一つの目的に向かって戦っていくんですよ。日本向けのカルチャライズの一環として,このモードにもかなりの力を注いでいます。
4Gamer:
なるほど。
小野寺氏:
難度が高めに設定されていますので,攻略にはチーム内での機体編成と役割分担が重要となります。正直に言って,VANGUARDだけのチームでは攻略は非常に困難だと思います。
4Gamer:
となると,機体獲得方式を早々に変更しないと問題が出そうですね。
小野寺氏:
整備機体のVELOXがいないとキャンペーンモードの攻略は厳しいので,早めに対処したいところです。
4Gamer:
各ミッションの目的には,どういったものがあるんでしょう。
小野寺氏:
例えば,施設内のコアを破壊するものや,拠点を一定時間防御するもの,そして中ボスクラスの強敵を打ち負かすものなどが用意されています。
4Gamer:
今後の展開も気になるところです。正式サービス開始後のアップデート予定を教えてください。
小野寺氏:
今の段階で話せるのは,マップや武器の追加をコンスタントに行っていくということです。ちなみに12月28日のアップデートでは,サドンデスモード用の「DARKSIDE」(ダークサイド)という新マップが追加されます。
4Gamer:
そういえば前から気になっていたんですが,日本での展開にあたって,「METALRAGE」から「鉄鬼」に名称を変更していますよね。その理由を教えてもらえますか?
小野寺氏:
GameHiは,日本で展開していくうえで,ゲームの世界観にあった力強いイメージを漢字で表現したいという意向を持っていました。日本側でもシンプルでインパクトのあるものをと思っていましたので,「金属」という意味の「METAL」,「激怒/憤怒」という意味の「RAGE」の2単語からなる原題を元に,「鉄鬼」という邦題に決定したんです。ちなみに「鉄鬼」は,METALRAGEを開発した韓国のスタジオの日本名でもあるんですよ。
4Gamer:
それでは,鉄鬼に期待している人や,4Gamerの読者に向けてメッセージをお願いします。
小野寺氏:
まずは,12月19日20:30頃〜12月22日10:00までのあいだ,クランサーバーが機能していなかったことをお詫びしたいと思います。せっかくクランを作っていただいた方には,本当に申し訳ありませんでした。
鉄鬼自体は,これまでPCのオンラインFPS/TPSを遊んだことがないという人にも親しみやすい内容になっています。ゲームといえばコンシューマ機が中心だという人も気軽に遊べるよう,随時調整していきますので,ぜひともプレイしていただければと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
このインタビューから分かるとおり,小野寺氏をはじめ,ゲームヤロウのスタッフは,鉄鬼を単なるオンラインTPSではなく,メカもののゲームとして展開していきたいと意気込んでいる。
実現可能かどうかすら検証していないとのことなので,記事には盛り込まなかったのだが,インタビューの現場では,小野寺氏が「こうしたい」「こうなったら面白い」とさまざまな構想を口にしていた。その多くは,ロボット/メカが登場するゲームが好きな人ならば,まず考えるような内容だったといっていい。
ただ,メカものとしての展開は,当面のあいだ,徐々に進行していく見通しとのこと。この手の作品が好きな者の一人として,少しゆったりとした気持ちで,これからの展開に注目したいと思う。
もちろん4Gamerでは,今は伏せられているメカデザイナーの名前や,新機体のデザインをはじめとする情報についても入手次第お伝えしていくので,続報を楽しみにしてほしい。
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