インタビュー
[インタビュー]LoLの“GODS”へと至るのはどのチームか――katsudionさん&Recruitさんが「Worlds 2023」の見どころを語る
世界中の各地域リーグを制した猛者たちが集まり,世界最強の称号をかけて戦うさまは,まさに“夢の舞台”にふさわしい。
そして今年もLoLの日本リーグ「League of Legend Japan League」(以下,LJL)より,日本代表チーム「DFM」(DetonatioN FocusMe)が乗り込む。昨年は惜しくも本戦出場を逃したが,今年は熾烈な争いを勝ち抜き,大きな結果を残すことができるだろうか?
っと,カッコよく書きはしたが,Worlds 2023ってなんなの? ずっと同じパッチでやるってどうなの? しかも今年は夏のシーズンが終わってからけっこう経つけど,どんなチャンピオンが出てくるの? いろんな世界の選手が来るらしいけど,けっきょく誰が強いの?
そんで戦ったとしてDFMは勝てるの?
いろいろ分からん人は多いだろう。
そこで,餅は餅屋。分からんときは識者に聞くべきだろうと,LJLの実況・katsudionさんと解説・Recruitさんに情勢を聞いてきた。
まもなくのWorlds観戦前に,ぜひともご覧あれ。
やっぱり最後はあの人でしょ!
「DFM」の注目選手とは?
4Gamer:
「Worlds 2023(正式名称:2023 League of Legends World Championship)」の開幕直前でお忙しいところ,話を聞かせていただきありがとうございます。
ところで,今回はkatsudionさんとRecruitさんという,普段のLJL配信ではあまり見ない組み合わせですが(※),お二方はどのような関係性なのでしょう? 配信視聴者には見えないところの話ですと。
※普段は両者,別のキャスターと組んで実況・解説をしていることから
katsudion(カツディオン)さん:
あー,シンプルに“同僚”ですかね。
タッグのイメージはあまりないかもしれませんが,表に出ないところとかだと,この2人で動くことがけっこう多いんですよ。
Recruit(リクルート)さん:
LJL関連で「なにか企画を動かすぞー」ってときは,だいたいこの2人でやっていますね。あと普通に仲がいいってのもあるかな。
4Gamer:
なるほど,そんな感じなんですね。仲のよさはいつものキャスター飲み会(※)でもなんとなく伝わってきていましたが。
※オフシーズンに実況・解説陣が集まって酒盛りをする恒例の配信
katsudionさん:
よくご飯食べにいったり,ゲームしたりするもんね。
4Gamer:
ちょっとした疑問を解消したところで,さっそく本題へ。
まずは先日,国内大会「LJL Final」のウォッチパーティー(※)が盛況に終わりましたが,ストリーマーたちの影響もあってか,普段LJLを見ていなかった層も観戦していた実感があります。
そしてWorlds 2023でもウォッチパーティーが開催されますが,LoLを知らない人でも面白く観戦できるポイントはどこでしょう。
※チャット可能な大会配信の視聴番組
katsudionさん:
なんと言っても日本代表戦,DFMの試合ですね。
視聴者もキャスター陣もウォッチパーティ主催者も,全員が一丸となって応援する,国際戦だけの特別な体験になりますので。
4Gamer:
分かりやすくワールドカップみたいですものね。
Recruitさん:
そうですね。日本戦は絶対に見てほしい。
それと,観戦時はぜひとも“集団戦”に注目してほしいです。集団戦はLoLにおいて一番分かりやすいシーンですし,きっとkatsudionさんたちのステキな実況で盛り上がるはずですので!
katsudionさん:
わはは(笑)。
Recruitさん:
それと,推しのストリーマーさんが応援するチームを見るというのもいいと思います。もし勝ったら推しが喜ぶわけですから,“推しが喜んだら自分もうれしい”みたいに楽しんでみたりとか。
katsudionさん:
誰かと一緒に見るのって,すごくいいですよね。
ウォッチパーティーでk4senさんやSHAKAさんたちと一緒に見るのもいいですし,友達とDiscordしながら観戦するのも絶対に楽しいです。
4Gamer:
大勢で見るのって,本当にいい思い出になりますからね。
それでは日本のDFMについて,ずばり今大会で期待することはなんでしょう。今回はプレイインステージ(予選)からのスタートですが。
Recruitさん:
やっぱり,スイスステージ(本戦)への進出をぜひとも見たいところです。それこそ,世界的に有名なプレイヤー……Faker選手なんかと戦う姿をあらためて見てみたいですよ。
4Gamer:
「Worlds 2021」の再来ですね(※)。
※当年,日本は初めて本戦出場を果たし,世界を大いに沸かせた。韓国・中国などの強豪地域が幅を利かせまくっているLoLの競技シーンでは,強豪以外が本戦に出場するのはかなりすごいことなのだ
Recruitさん:
ゲーム的な盛り上がりも,自国の選手が活躍しているかどうかで大きく変わりますから。そういった面でも期待しています。
4Gamer:
今年は大会形式も大きく変わりましたね。
katsudionさん:
プレイインステージからスイスステージに上がれるチーム数が,今年は4枠から2枠に減りました。ただこれって実質,枠数は変わっていなくて。4枠あったころも「2枠は中国か韓国のチームで決まりだよね」みたいな空気感がありましたので。
4Gamer:
勝ち抜ける可能性自体は,それほど変わっていないと。
katsudionさん:
そうですね。そのうえで可能性は十分にあるかと。
Worlds本戦は世界強豪チームがひしめく戦場です。そこでの戦いは選手たち,ひいては僕らファンにとっても夢のようなことですので,そこに行けるチャンスをぜひともつかんでほしいです。
DFMには,春の「MSI 2023」で1勝もできなかったリベンジを果たしてほしいですし,Recruitくんと同じように「あのチームとDFMが戦ってる姿を見たい!」という気持ちがいくらでもありますので!
4Gamer:
katsudionさん的にはやはり,FNC(Fnatic)戦だったり?
katsudionさん:
一番見たかったのはTH(※)戦でしたけどね!
ただ,今回はTHが勝ち上がってきていないので……。
※Team Heretics。EMEA地域のチーム。昨年までDFMに所属していたtopレーナーのEvi選手が在籍していることもあり,世界大会で相まみえることを期待していたファンも多かった
4Gamer:
では,お二方が注目するDFMの選手は誰でしょう。
katsudionさん:
Milan選手とapaMEN選手の活躍が,勝負の分かれ目になるのではないかなと。どちらもWorlds未経験となり,どちらが出場するにせよ“覚醒”と言えるほどのパフォーマンスが求められそうです。
それと,昨年はいなかったAria選手の存在は大きいですね。勝ち上がっていくためには,彼の爆発的なキャリー力も必要でしょう。
Recruitさん:
伸るか反るか,みたいなところもありますけどね。
それこそWorlds 2021ではAria選手がとんでもないキャリーをしてくれたのが,グループステージに到達できた一因だと思いますし。
でもやっぱり最後は,Yutapon選手なんじゃないかな。
4Gamer:
確かに! 格上の地域に勝つ試合って,だいたいYutapon選手のアウトプレイから流れが変わるイメージありますよね。
Recruitさん:
今年のLJLでも,ゼリでスーパープレイを見せてくれたりしましたし。膠着した状況を変えるのはやっぱり,Yutapon選手だと思います。
katsudionさん:
Yutapon選手に関しては,なんかもう逆に信頼しきっちゃってます。というかどう? Recruitくん心配してる?
Recruitさん:
いやまったく。出てくれたら勝てるだろうなーって(笑)。
katsudionさん:
だよねぇ。Yutapon選手が国際戦でパフォーマンスを落とすって,なんなら見たことないかもしれないし。だって今年も,なんかもう活躍の仕方が意味分かんなかったじゃないですか?
4Gamer:
意味分かんなかったですね。
katsudionさん:
「topレーンYutapon……えっうまいじゃん。なんならキャリーしてる」ぐらいの感じで。もちろん努力あってのことですが,本当に天才なんだなとあらためて実感させられる年でした。
だからこそ,Yutapon選手にはWorldsで思う存分戦ってほしいです。今年はなによりもがんばった選手の1人だと思うので。
4Gamer:
DFMの初戦の相手は,CFO(CTBC Flying Oyster)です。
こちら,どのようなところが怖いチームでしょう。
Recruitさん:
まずsupのShiauC選手。彼はフック系チャンピオン(※)のなかでも「ノーチラス」をピックしたときのパフォーマンスがすさまじいんです。どれだけ不利を背負っていても,鋭い仕掛けで有利な集団戦を形作るので,たとえ優勢でも油断できない相手です。
必要なフックは絶対に外さない。そういうところを怖く見ています。
※相手を捕まえる手段に長けた飛び道具(フック)持ちの意
katsudionさん:
topのRest選手も「グウェン」などの攻撃的ピックが怖いんですよね。攻めもすごくて,チーム全体ダメージの20%以上が彼だというデータもあります。これはtopレーナーとしてはかなり高い数値です。
チームとしては,midに「アジール」を置いたり,jgに「ヴァイ」を採用したりと,集団戦寄りの戦術を得意としていますが,なおかつ“キャリー系のtopを出せる”という手札に警戒ですね。
4Gamer:
今のDFMは,topとbotどちらにもウィークポイントがあり,注意すべき点がいくつもあるとされます。
とは言いつつ,かつてDFMはCFOと同格である台湾,香港,マカオ(PCS)地域第2シード(国内リーグ2位抜け)のチームにも何度か勝ってきました。だから今回も同じように勝てるのでは?
katsudionさん:
確かにCFOはPCS地域の2位なのですが,これまでDFMが相手してきた2位のチームたちとは少し事情が異なります。
今までのPCSは“1位が圧倒的に強く,2位は大きく差がある”という認識の地域でしたが,今年は2位のCFOも,1位と変わらないぐらい強いんです。なので,例年のPCS以上に油断ならないわけです。
4Gamer:
同じように見ていると痛い目にあうと。
Recruitさん:
逆に,わりと大丈夫だろうと思う点もありますけどね。
jgのGemini選手は,ベテランゆえになんでもできるが,尖って強いところがない。midのJimieN選手は「アジール」を使ったときの集団戦がうまいが,当のアジールはパッチ13.19で弱体化されている。
この時点で,jg/mid部分は十分に上回れるんじゃないかなと。
katsudionさん:
まあでも,DFMは勝てると思います。
Recruitさん:
はい。いろいろ「CFOは怖いよー」と言いましたが全然勝てます。
katsudionさん:
なんていうか,ナメちゃいけないんですよ。
どのチームも各地域のリーグを勝ち上がってきて,Worlds 2023に向けて全身全霊の準備をしてくる。だからこそリスペクトを忘れずに,ちゃんと警戒する。そして,DFMはそういったことを忘れないだろうし,しっかりと戦えば勝つ見込みは十分にあると考えられます。
世界の戦いについて聞く
優勝予想とWorldsの“ジンクス”
4Gamer:
ここからはWorlds 2023全体について話を聞かせてください。
まずはずばり,優勝予想のチームはどこでしょう。
katsudionさん:
えー,そうですねー……JDG(JD Gaming)です。
4Gamer:
MSI 2023を制した大本命。理由を教えてもらっても?
katsudionさん:
今シーズンも各地域の試合を見てきましたが,やっぱり頭一つ抜けているなと。まず,チーム全員が一線級のプレイヤーであるうえ,Ruler選手という化け物がいるということ。彼は今シーズン中,レーン戦で負けている姿を見たことがない気がします。
あと,特異点とも呼べる369選手がtopにいます。タンク系チャンピオンって“レーンで勝てないけど集団戦で強い”というのが普通なんですが,彼が使うとその普通が通用しないんですよね。ゲームの根本を変えてしまっているような強豪選手です。
という,とんでもない選手しかいないので,グランドスラム(年間の国内リーグ&世界大会全制覇)もできるんじゃないかなって。
4Gamer:
まだどのチームも成し遂げたことのない,初のグランドスラムを。
Recruitさんはどうでしょう?
Recruitさん:
私,LNG(LNG Esports)なんですよ。
katsudionさん&4Gamer:
おぉ〜!
Recruitさん:
当然,韓国も中国も全チームが強いです。でも世界戦って,いつも予想外のことが起きるじゃないですか? それこそ去年は韓国の第4シードで予選出場だった「DRX」が優勝したわけですし。
なので私が考えたのは,世界戦における“ジンクス”でした。
katsudionさん:
そうなんだよなぁ! そう,そうなんだよ!
4Gamer:
チャンピオンのほうではなく(※)。
では,どんな“ジンクス”を?
※LoLには同名チャンピオン「ジンクス」がいるが,そっちではない
Recruitさん:
まずは「グランドスラム達成はこれまで絶対に阻止されている」という“ジンクス”。なのでJDGはないと考えます。あと「大会開催国のチームは優勝できない」というのもあります。今年は韓国開催ですので,そうなると韓国の出場チームはすべて候補から消えます。
で,残ったチームから考えると,そこはEMEAやNAより,国際戦で結果を出してきた中国のチームが優勝する計算になりますよね。
4Gamer:
ほうほう。
Recruitさん:
ついでに,パッチ13.19のメタ(詳しくは後述)を考慮すると,midはメイジの習熟度,botはキャリー力,jgはエンゲージやマクロ面の強さがキーになると考えています。そのうえで全部を兼ね備えているチームはどこかと考えると,LNGだったんですよ。
Scout選手が使う,シンドラを代表するメイジの強さ。GALA選手のキャリー力。Tarzan選手のマクロ。すべての“ジンクス”に当てはまらないでいて,かつメタに沿って考えるとLNGだろうと。
4Gamer:
“ジンクス”も含めた分析ですか。解説者らしい視座です。
katsudionさん:
僕も“ジンクス”で言うとちょっと期待していることがあります。今年の“Worlds Anthem”(※)の曲名って「GODS」じゃないですか。
※Worldsのために制作されるテーマソング。ZeddやImagine Dragonsなど,毎年豪華アーティストが担当。今年はNew Jeansの「GODS」がテーマソングとなる。そして不思議なことに,毎年Worldsの展開は“テーマソングの内容やタイトルに引っ張られる”ことがしばしば
katsudionさん:
つまり“神”になるチームが出てくるんじゃないかって。
グランドスラムを達成したJDGがGODSになる,という意味で。
Recruitさん:
「Worlds 2019」でFPX(FunPlus Phoenix)が優勝したときの曲名は「Phoenix」でしたし。去年の「STAR WALKIN'」も振り返ってみれば優勝はDRX。チームリーダーのDeft選手の曲でしたね。
katsudionさん:
これもう神になるんじゃない? 神になるしかないんじゃない?
Recruitさん:
でも,T1かもしれませんよ? Faker選手の4度目の優勝だって,もはや神と呼ぶにふさわしい偉業でしょう。
katsudionさん:
魔王から神に? なるほど。でもそうなると決勝のカードは。
4Gamer:
すみません。そろそろ次の質問に……(笑)。
katsudionさん:
あはははは(笑)。
Recruitさん:
すみません,熱中しちゃって(笑)。
4Gamer:
気持ちは痛いほど分かるので,推しのチームはのちほどということで。続けて,大会で活躍しそうな選手はいますか。
Recruitさん:
個人的には,T1のZeus選手が気になっています。topの影響力がそこまで大きくないメタだったのに,あそこまで存在感を発揮できていたZeus選手は異質だと思うんですよ。
夏は不調も見られましたが,Faker選手の復帰に加え,Khan選手(※)のコーチングを受けたというウワサもあり,かなり調子を上げてきているのではないかと。どれだけ仕上がっているのか早く見たいです。
※韓国チームで優勝を2度経験しているtopレーナー。過去にT1の前身となるチームSKT(SK Telecom T1)にも所属していた
4Gamer:
Zeus選手は間違いなく,T1優勝のカギになるでしょうね。
Recruitさん:
あ,あとKT(KT Rolster)のKiin選手ですね。今まで“韓国で一番強いtopレーナー”と言われながらもWorldsに出場できていなかった彼がようやく出てくるので……いやこれ,Zeus選手より気になるかも。
4Gamer:
そう聞くと,recruitさんはけっこうtopの選手を見がちな?
Recruitさん:
そういえばそうですね。なんでだろ。top全然やらないのに。
うーん……topの1vs.1って,芸術的だからですかね。midだと一発のスキルで勝ち負けが決まることも多いのに比べて,topは戦いが長く続く。だからこそ一歩一歩の動きに意味が込められているので,そういうところが見ていて楽しいんです。自分では絶対やらないですけど!
katsudionさん:
国際戦はtopに強みを持つチームが多いですよね。
それこそエイトロックスやグウェンでゲームを破壊できる選手がたくさんいますし。タンクでもレーンで勝っちゃう369選手みたいに,その人にしかできないtopアドバンテージを生かすべく,バンピックの段階から深めな戦術を組み立てていけるチームもあります。
1vs.1を強制されるからこそ,選手の腕がモロに出るtopは本当に大変ですが,だからこそ高度な戦いが起こりやすいんですよね。
4Gamer:
ハンドテクニック以外にも,選手の細かな意図を探っていくのも,プロシーンの見方としては面白いですよね。
katsudionさん:
ただ僕の場合はうまいだけじゃなく,ワクワクさせてくれる選手が好きです。個人的な推しはBLG(Bilibili Gaming)のsup,ON選手。
4Gamer:
どんな選手なんですか?
katsudionさん:
僕が勝手に言っているだけですが“中国産のHylissang”(※)です。ものすごいプレイで試合を動かしますが,動きすぎて自身やADCのElk選手がやられて不利になることもあったりするので。
※EMEAのsup。現MAD Lions所属。「Hylissangは毎試合サイコロを振っている」と言われるような,ムラのあるパフォーマンスとアグレッシブなプレイが魅力。ノッているときのHylissang選手は,誰よりも強い。
4Gamer:
すごい。イメージが一発で伝わってきた。
katsudionさん:
中国で一番強いなと思っているのは,先ほど口にしたJDGなんですが,見ていて一番楽しいのはON選手のいるBLGです。
BLGの試合はワクワクできて面白いので,ぜひともON選手に注目して見てみてください。伸ったり反ったりするので!
4Gamer:
BLGの試合も要チェックですね!
Worlds 2023で,メタはどうなる?
4Gamer:
続いてはメタについて。今パッチの注目チャンピオンはいますか。
Recruitさん:
難しいですね〜……。
katsudionさん:
そもそも,今までのWorldsって夏のシーズン終了後からそんなに期間が空いてなかったんですよ。でも,今回は間が置かれた。
すると当然,プロシーンではやらなかったパッチが4〜5個と適用されることになるので,予測を立てるのもなかなか大変なんです。
Recruitさん:
ただ,そんなにガラッと変わる感じはしないです。
いきなり出てくるようになるチャンピオンとか,逆にまったく見なくなるチャンピオンとかは,今回に限っては少ない気がします。
katsudionさん:
僕,こういうの全然当てられないんですけど,この場に来るまでにいろいろと見て,フッと思い浮かんだチャンピオンならいました。
「ノクターン」と「アイバーン」なんですけど。
4Gamer:
おー。その理由は?
katsudionさん:
なんだかんだ,現状のメタではドレイクの存在感が大きい以上,botレーンを中心とした戦術からは逃げられないと思うんです。
そこで「ノクターン」はキャリーを狙い撃つ性能が高く,逆に「アイバーン」はキャリーのカバー性能に長けている。
お互いに相克するようなマッチングですが,この2体が使われる場面はなんとなく出てくるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
botでの影響を加味しているんですね。
katsudionさん:
あと,Eugeo選手(※)の受け売りですが「シンドラ」もです。
シンドラは単純にバフされましたし,中国のmidプレイヤーにかなり好かれているチャンピオンなので,よく使われるんじゃないかと。
Eugeo選手に言われて「なるほど」と思いました(笑)。
※日本のCGA(Crest Gaming Act)で活躍中のmidレーナー。「ガリオ」のパフォーマンスに定評がある
Recruitさん:
あとはチャンピオンというか“ゴアドリンカー+ショウジンの矛”ビルド。midにシンドラのようなベタ足(※)が来るなら,このビルドと相性のいい「ジャーバンIV」がピックされそうです。
※一瞬で高速移動する,距離を開けるなど,ダッシュ&ブリンク系の移動スキルを持たないチャンピオンの俗称
4Gamer:
ジャーバンIVは少し前にナーフされましたが,それでも?
katsudionさん:
集団戦に組み込みやすいチャンピオンですし,あるでしょうね。
今夏の「マオカイ」と「セジュアニ」のように,今大会パッチにおける“安定して強いjgチャンピオン枠”になると思います。
4Gamer:
ほかのレーンにも,そういったチャンピオンはいそうですか。
Recruitさん:
topは「エイトロックス」とバフされた「ケネン」。jgはジャーバンIVに加え,バフされた「リー・シン」もあるでしょうね。
midは「シンドラ」「タリヤ」「リサンドラ」のメイジメタ。なかでもタリヤは機動力が高いチャンピオンたちのけん制として大きく機能しますし,マップ全体へのプレッシャーが強いです。
adcはチーム貢献度が高く,レーニングも強い「アッシュ」。脅威ビルドが開発された「カイ=サ」。supは「ラカン」「アリスター」「レル」といったエンゲージ系を予想しています。
4Gamer:
midがメイジ主流となると,ゲーム速度も遅くなりそうな。
Recruitさん:
そうなると思います。メイジはミニオンのクリア速度が速いので,タワーを狙う機会が減ります。となると,必然的にゲームスピードが下がります。そもそもシンドラはレイトゲームに強いですし。
katsudionさん:
まあ,メイジメタにはなるだろうね。
Recruitさん:
でも,予想が外れると怖いんですよねー。もしかしたら「アカリ」「サイラス」が出てきて,エイトロックスとかと組み合わせたtop/mid間のフレックス(※)メタになる可能性もあって……。
あるいは「トリンダメア」とかの飛び道具が出てきたりして。
※top/mid,sup/jgなど複数レーンで活躍できるチャンピオンをピックし,ギリギリまで相手に対面チャンピオンを悟らせない戦略
katsudionさん:
そうなると,またjgでセジュアニが使われるよね。
Recruitさん:
そうなんですよ。ということもあって予想が難しいんです。
ただ,集団戦を重視したメタは継続するでしょう。
katsudionさん:
今回の形式だとBO3やBO5が例年より多くなるので,その関係でも集団戦意識のピックは多くなりそうですよね。
そういう試合って基本的に長くなる傾向にありますし。
4Gamer:
大会設定の観点からも,ゆっくりした展開になりそうだと。
katsudionさん:
そうなりますね。
今年のPick'emお役立ち情報
NAは果たして決勝リーグに残るのか
4Gamer:
ここからは今年の「Worlds Pick'em」(※)で使えそうな話題を。まずノックアウトステージ(決勝リーグ)に進む内訳はどうでしょう。
※Worlds恒例の勝敗予想企画。結果に応じて,ゲーム内アイテムやゲーミングPCなどの賞品をもらえる
katsudionさん:
中国から3チーム,韓国から2チームです。
4Gamer:
力強い断言ですが,どのチームが残るかも聞いても?
katsudionさん:
中国からJDG,LNG,BLG。韓国からGEN(GEN.G),T1かなと。
BLGは「残ってほしい!」という願望も込みですが(笑)。
4Gamer:
ON選手がいますしね(笑)。
katsudionさん:
ただ,韓国の決勝戦を見たところ,T1はこのままだとノックアウトステージに進出できるかが怪しそうでしたね。
それでも修正してくるのがT1だよな,という思いもありつつ。
4Gamer:
ノックアウトステージに必ず進出するのがT1ですし。
katsudionさん:
あと「韓国開催だし中国のほうが多く残るか」って感じです!
4Gamer:
なるほど! 自国開催は優勝できない“ジンクス”(笑)。
Recruitさん:
(大いに悩みながら)でもこれ,NAとEMEAは1チームでも勝ち上がれば上々って感じがするので,韓国が4,中国が3もある気がする。中国が4じゃない理由は,彼らは毎年どこかのチームが調子を崩すので。
4Gamer:
昨年で言うとTES(Top Esports)ですね。
katsudionさん:
昔,JDGに裏切られた記憶あるなぁ。Pick'emが激しく燃えてた。
Recruitさん:
ありましたありました。まあ,そういったこれまた“ジンクス”もあって,韓国のほうが多く残るだろうという予想です。
katsudionさん:
まあ8チーム選ぶとなると,これ韓国4,中国4も全然あるよなぁ。
4Gamer:
今回の大会形式じゃ“強いチームが残るようになった”気も。
katsudionさん:
そこは間違いないですね。
ただそうなると……ねえ,これ,NA残ると思う?
Recruitさん:
…………どうですかね〜?
4Gamer:
さっそくNA(Near Airport)の気配が……(※)。
※NAはNorth America(北アメリカ)ではなく,Near Airport(空港に近い)の略称。ネタの意味は……お察しとして,NA代表は国際戦での戦績が奮わないときなんかに配信チャットなどでこうヤジられがち
それとメジャー4地域(中国,韓国,EMEA,NA)の話が続きましたが,マイナー地域はどうでしょう。日本のライバルになりそうな,もしくはいい成績を残すであろうチームはあるのかどうなのか。
katsudionさん:
鉄板はPCSですかね。次点はベトナムかと思いますが,彼らは最近の国際戦では抑え込まれちゃって,地域の特色である荒々しい戦い,いわゆる“ベトナムの風”(※)を吹かせていないんですよ。
※ベトナム地域らしい,超攻撃的なスタイルがノリにノっているときに称される用語。出典は筆者もぶっちゃけよく知らない
Recruitさん:
ベトナムリーグを1位で抜けたGAM(GAM Esports)のbotレーンが,今までと比べてあまり強くないってのもありますね。
Sty1e選手もいないですし,もともと所属していたsupのBie選手も,もう一つのベトナム代表,TW(Team Whales)に加入したので。
katsudionさん:
でも僕は正直,ブラジル代表のLLL(LOUD)は見てます。
Recruitさん:
ああ。PCSを除くとLLLはありそう。
4Gamer:
ブラジルですか。ちょっと意外なところが出てきた感じが。
katsudionさん:
ブラジルって不思議で,リーグ戦の戦績とかに関わらず,決勝トーナメントでは“よりノったほうが勝つ”傾向が強いんです。
そういう風潮もあってか,今まで同じチームが優勝することがあまりなくて,新人ばかりのチームが勢いのまま国内で優勝し,国際戦でボロ負けするみたいな姿が珍しくありませんでした。
でもLLLは現状,ブラジルリーグを3連覇しています。ノったうえで,ちゃんと実力を伴った代表が,国際戦に出場してくるわけです。
Recruitさん:
マイナー地域のチームって,試合の組み立て方に「ん……?」と疑問符がつくことも多いんですが,LLLは比較的少ないですからね。Robo選手やtinowns選手など,キャリアの長いベテランが多いせいか。
4Gamer:
そう聞くと,LLLはかなりアツそうな気がします。
katsudionさん:
なんならベトナムより成果を出すかもしれません。
Recruitさん:
ベトナムは過去の実績での評価ですが,LLLは“今”の評価ですし。
4Gamer:
残るはラテンアメリカの代表,R7(Movistar R7)ですが。
katsudionさん:
ラテンアメリカは……ちょっと微妙かな。評価が難しいです。
あのリーグではおそらく,R7がダントツで強いです。ただし国内リーグだと,どうにも横綱相撲の気質があって,格上や対等の相手がひしめき合うWorldsの舞台にどれだけ対応できるのかが読めません。
Recruitさん:
実際,MSI 2023では通用していませんでしたね。あのときからスタイルが変わったという印象も受けませんし。
katsudionさん:
あのままなら,今回も苦労するんじゃないかな。
キャスター陣のパーソナルに迫る
2人が優勝を見たいチームとは?
4Gamer:
Worldsで「実況・解説したい!」と思うチームはありますか。
Recruitさん:
kanavi選手とknight選手には驚かされてばかりなので,この2人がいるJDGの解説ですね。とくにknight選手の「アニー」がよかったんですよ。どれだけ不利でも,すばらしいエンゲージで勝利に近づくので。
ただ,Beryl選手がいればそのチームにしたのになあと。Worlds 2022の解説のとき,Beryl選手の「アッシュ」ピックを当てたことがあって,めちゃくちゃ気持ちよかったんですよ。「今年もBeryl選手の変態ピック当ててやるぜ!」ぐらいの意気込みでしたが……(笑)。
4Gamer:
残念ながらDRXは勝ち上がらず。katsudionさんのほうは。
katsudionさん:
やっぱりBLG,でもLNGもな〜。Tarzan選手のマクロがすごくて,一つのきっかけから有利を取りにいく動きがとてもキレイなんです。
でも,僕としてはお祭りみたいな激しい展開が連続する試合を実況するのが大好きなので……さっきからBLGとG2の文字が頭を離れず。
Recruitさん:
じゃあBLG vs G2じゃないですか?
katsudionさん:
BLG vs G2……! それはおもしろい! ストロングポイントも違いますし,見てみたいですね〜。いやでもFNC(Fnatic)の扱いも悩むなぁ。昔から好きなチームではあるんですが。
4Gamer:
では推し的な意味で,優勝する姿が見たいチームは?
katsudionさん&Recruitさん:
そりゃDFMですよ!
4Gamer:
そりゃそうですね! ということもあってDFMは殿堂入りとしたとき,それ以外のチームだとどうでしょう。
Recruitさん:
そうなると,T1です。
katsudionさん:
うん,T1だね。伝説が見たい。
4Gamer:
即答だ。
Recruitさん:
もう去年,「優勝するしかないだろ」みたいなところで優勝できなかったので。彼らには今年こそ優勝してほしい。
katsudionさん:
T1への期待は毎年ずっとあります。T1の優勝をもう一度見たいっていう気持ちが常にある。どんな状況であれ,絶対にあるんです。
そのうえで「Pick'emどうしよっか……」みたいな悩みもね。
Recruitさん:
Faker選手が4度目の優勝を飾る姿を見たいですよね,本当に。
今年はT1いけそうな気もするんですけど,どうでしょうねえ。
4Gamer:
Worlds AnthemのPVで,ラスボスじゃなくて主人公をやっているFaker選手,見たいですねえ。
次いで質問の毛色を変えますが,いつも日本代表がすばらしい成績を残したとき,X(旧Twitter)に投稿されているキャスター陣の動画ってあるじゃないですか? あれは今年もやりそうですか。
Recruitさん:
あれはわりと偶発的な産物で,絶対にやりますとは言えないんですけど。日本がいい結果を出せば,あるんじゃないでしょうか。
katsudionさん:
ディレクターがちょうど,カメラ性能がめっちゃいいスマホに買い替えたのでやる気はありそうです。僕も一応,買い換えましたし。
まあ,その日のスケジュール次第とあって確証はありません。でも,なにか思い出に残るような映像が録れたらいいですね。そうじゃなくても,Recruitくんが面白いリアクションしてたら録っときます。
Recruitさん:
いらないでしょ! 需要ないでしょ!
katsudionさん:
あるある。
Recruitさん:
え〜……。
4Gamer:
楽しみが増えました。それでは最後に,もう間もなくのWorldsを待ち望んでいる人たちに向けて,一言ずつメッセージを。
katsudionさん:
Worldsは,LoLにおける年間最大のお祭りで,すべての試合が面白く,それでいて世界一が決まるという夢のステージです。
そんな舞台に日本のDFMが立つ。彼らの勝利を,ファンもスタッフも僕らも一丸となって見守る。その行為はすごく特別なもので,そうした特別をもっと多くの人たちに知ってほしいと昔から思っています。
なので,いつも見ている方々はもちろん,ストリーマーさんがいるから見るという人たちも,この特別な機会をぜひ楽しんでください。
Recruitさん:
Worldsって1年の12分の1。約1か月も続くんです。その間,楽曲をはじめとするたくさんのコンテンツが展開されます。
そして決勝の豪華な演出は毎年,見ているだけでも驚けます。“LoLを知らない人でも楽しめるイベント”で,ストリーマーの方々とともに,ウォッチパーティーを通じて一緒に盛り上がりましょう。
もしそこで興味を持ったなら,Worldsを見返してもいいですし,来年のLJLに期待していただけるようなら,ありがたく思います。
とにかく,トップクラスのプレイヤーが集う世界の祭典。日本の選手たちが活躍する場ということもあるので――。
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