プレイレポート
「頭の体操」マニアがプレイしてみた「レイトン教授と最後の時間旅行」
» 今回の「極私的コンシューマゲームセレクション」は,ライターの大陸新秩序氏がニンテンドーDS用ソフト「レイトン教授と最後の時間旅行」を紹介する。シリーズ三部作完結編となる“ナゾトキ”アドベンチャーは,「頭の体操」マニアの目にはどう映ったのだろうか。
2008年11月27日にレベルファイブから発売されたニンテンドーDS用ソフト,「レイトン教授と最後の時間旅行」。本作は,筆者のようなマニアの期待に応えながらも,シリーズものにありがちな高難度化への罠に陥ることなく,まったく新規のプレイヤーにも親しみやすい内容となった“ナゾトキ・ファンタジー”アドベンチャーである。
大胆にスケールアップした
三部作締め括りのテーマは「時空」
あらためて説明しておくと,本作は2007年に発売された「レイトン教授と不思議な町」および「レイトン教授と悪魔の箱」(いずれもニンテンドーDS用ソフト)に続く,「レイトン教授」シリーズ3作目にして,三部作の締め括りとなるタイトルである。
とはいえ,ストーリーはそれぞれ独立しているので,いきなり本作からプレイしても問題なく楽しめるだろう。しかしその一方で,シリーズを通してのいくつかの伏線が本作中で明かされていくため,より楽しみたいという人であれば,素直に一作目からプレイするのがいいかもしれない。
本シリーズの主人公となるのは,レイトン教授とルーク少年の二人。レイトン教授は英国紳士にして優秀な考古学者だが,世界に散見する未解明の謎を追い求める研究者でもある。その弟子を自称するルーク少年は,ときおり鋭さを見せるものの,レイトン教授の洞察力にはまだ及んでいないという設定。
つまり行動をともにする二人の役割分担は,シャーロック・ホームズとワトソン博士,エルキュール・ポワロとヘイスティングス大尉のそれに準じており,英国クラシックミステリーの王道を踏襲しているというわけだ。
ルーク少年(左)とレイトン教授(右)。友情で結ばれた先生と助手という,王道の設定だ |
10年後のロンドンでレイトン教授を待ち受けるルーク青年。彼が出した手紙から物語が始まる |
ストーリーのカギを握る女性サリアス。未来のロンドンでレイトン達と出会う |
レイトン教授史上最強の敵として立ちはだかるディミトリー。その真意は? |
今回のストーリーの発端は,レイトン教授に届いた一通の手紙だ。その手紙を書いたのは,なんと10年後のルークだった! その内容は,混乱に巻き込まれた未来のロンドンを救ってほしいという要請だ。いぶかしく思いながらも手紙の指示に従ったレイトン教授とルーク少年は,10年後のロンドンへタイムスリップ。そして成長したルーク青年と出会い,未来のロンドンで発生した不可思議な事件を解決していくこととなる。
続くストーリーは,過去二作がそうであったように,“人”と“街”を中心に展開するが,各種の演出も含めてかなりのスケールアップを見せている。加えて,これまで不明だったレイトン教授の過去にまつわるエピソードも上手にストーリーに絡めてあり,細部まで見逃せない内容となっている。
平易な表現になったが「頭の体操」流のレトリックは健在
しかし,そうした本筋に関する謎は,実のところプレイヤーが解いていくわけではなく,ストーリーの展開ととも明らかになっていく。
プレイヤーが解くのは,人物や建物など画面上のオブジェクトにタッチペンで触れたさいに登場する数々の“ナゾ”。たとえば時計をタッチすると「そうだ,ルーク。時計といえば,こんなナゾを知っているかい?」という感じでナゾトキが始まる。
実は過去二作では,頭の体操そのものというナゾも多かったのだが,本作ではすべて新たに書き起こされたナゾばかりとのこと。漢字にふりがながついたことをはじめ,非常に読みやすく,また意味が分かりやすい表現となった。
過去二作では,いかにしてテキストのレトリックを読み解くかがナゾを攻略する大きなカギだった問題もあるのだが,一度読んだだけでは意味を把握しにくい,難解な言い回しが初見のプレイヤーを遠ざけてしまっていた感もある。中にはレトリックを把握しきれず,問題に対する解答が屁理屈やこじつけの類ではないか,と理不尽に思った人もいるかもしれない。
その点についてはある意味そのとおりで,多湖さんが「頭の体操」第1集の序文において,「屁理屈だと文句をいわせるレトリックこそが頭の体操の本懐である」との旨を述べている。「頭の体操」の流れを汲む「レイトン教授」シリーズにおいてもしかり,というわけだ。
とはいえ,手軽さやとっつきやすさを求めてレイトン教授シリーズを手にした人達に,あらかじめ書籍をチェックしてからプレイしろというのもおかしな話だ。本作の処置は大正解といえるだろう。また平易になったといっても,特有のレトリックを損なわないよう上手に表現を置き換えており,多湖さんをはじめナゾを作成したスタッフの尽力がうかがえる。
このナゾでは,なぞなぞ風の問題文を採用。平易な表現で,何を問われているか分かりやすくなった |
パズル系のナゾは,書籍「頭の体操」よりもイメージをつかみやすくなっている。デジタル万歳 |
「ひらめきコイン」は画面内の窓枠や飾り部分などに隠されている。怪しいと思ったらタッチ! |
また,どうしても解けないナゾは後回しにして,別のナゾに挑戦したりストーリーを進めたりすることも可能。一定数以上のナゾを解かないとその先ストーリーが進行しないという仕掛けもあるが,それまでの出題数に対する正解率はかなり余裕を持った設定になっているので,それほど心配する必要もないはずだ。
また,ナゾ同様に特定のオブジェクトにタッチすると,まれに入手できる「ひらめきコイン」を活用するという手もある。ナゾにはそれぞれヒントが用意されており,このコイン一つを消費すれば一つのヒントが得られるのだ。
過去二作では一つのナゾに三つのヒントが用意されていたが,本作では新たに四つめの「スペシャルヒント」が登場した。これは実際のところ解答にかなり近い感じのヒントなので,解けない問題は存在しないと言っても過言ではないほどの親切設計だ。
ただし,ゲーム中に隠されたコインの絶対数は決まっていおり,序盤からバンバン使っていると中盤以降の難問で行き詰ることも考えられるので,コインのご利用は計画的に。
万人向けのストーリーと引き出しの多い内容で
さまざまなプレイヤーの要求に応えうる作品
むしろ雰囲気は1970年代に宮崎 駿監督が手がけたテレビアニメ「未来少年コナン」や映画「ルパン三世 カリオストロの城」などに近く感じられ,優しい人間ドラマとダイナミックな演出で,どこか懐かしい不可思議な世界を描いたファンタジーものである。
声の出演もレイトン教授役の大泉 洋さん,ルーク少年役の堀北真希さんをはじめ,本作では主要ゲストに小栗 旬さん,木村佳乃さん,上川達也さんなど当代の人気俳優を起用しており,女性ファンが多いというのも十分納得できる内容だ。
また,ナゾとは別に用意されたミニゲームや,本編中でのナゾの解答状況に応じて楽しめる特典,毎週ダウンロード配信される追加のナゾとやり込み要素も豊富で,一通りストーリーを堪能したあとも引き続きプレイできるのも嬉しい。
だが,やはり筆者にとってたまらないのは,巧妙に隠された引っ掛けを見破り,次々にナゾを解いていく快感だ。長い問題文のどこが要点なのか,マッチ棒パズルではまず全体図が英単語になっていないかどうか,イラスト内の妙な模様が書き文字になっていないか──。往年の頭の体操で培ってきた筆者の思考回路が最大限に活かされるのは,やはり頭の体操をベースにしたレイトン教授シリーズであるし,新規のナゾが目一杯詰め込まれた本作なのである。
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レイトン教授と最後の時間旅行
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レイトン教授と不思議な町
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レイトン教授と悪魔の箱
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