連載
ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第31回「Bethesda Softworksは『Fallout 3』だけじゃない!(4)」
さて前回まで,Bethesda Softworksが世に送り出してきたシネゲーの歴史を振り返ってきたので,ここらでゼニマックス・アジア((ベセスダ・ソフトワークスの親会社)の高橋 徹ゼネラルマネージャーに聞いた,あの“蔵ゲー”(お蔵入りゲーム)の話題をお届けする予定だった。
だがその前に,Bethesdaがリリースしてきたシネゲー以外のタイトルについて誌面を割かせていただきたい。じゃないと,「The Terminator」と「The Elder Scrolls」だけのメーカーみたいな誤解を招いてしまいそうだし,何より筆者自身,ある意味でとんがったゲームを出し続けているBethesdaが好きなわけだし……。ということで,1990年代中期以降のBethesdaヒストリーを紹介していこう。
Bethesdaは,PCゲームを中心としたパブリッシャだった。これがどういうことを意味するかというと,コンシューマゲーム機に主軸を置くパブリッシャと比較して,冒険的なゲームをリリースしやすい環境にあったわけだ。
その一つが,1995年にPCのみで発売された「PBA Bowling」。その名のとおり,ボウリングのゲームだ。こちらはかなりのロングセラーとなり,海外のPC雑誌では「ボウリングゲームがこんなに売れてもいいのか!」といった見出しの記事で取り扱われていたのを記憶している。
基本的にマウスで遊べるゲームだったのだが,筆者はさらにボウリングらしい臨場感を味わうべく,トラックボールを購入して遊んでいた。
ちなみにこの作品は,2000年と2001年に続編がリリースされたほか,2006年にはその延長線上にある「AMF Xtreme Bowling 2006」が,XboxとPlayStation 2向けに発売。さらに2008年にはWiiに「AMF Bowling Pinbusters!」が投入され,いずれも好評を博している。
なお,Dreamcast向けに「PBA Tour Bowling 2001」というタイトルも開発されていたのだが,こちらはセガのハードウェア事業撤退に伴い,お蔵入りとなってしまった。
「PBA Bowling 2」 |
「AMF Xtreme Bowling 2006」 |
「AMF Bowling Pinbusters!」 |
Bethesdaは1997年,PC用カーレースゲーム「XCar: Experimental Racing」を発売した。これは自社開発の3Dエンジン「XnGine」を使って作られたものだが,際立つ個性があったわけでもなく,セールス的にはそれほど振るわなかった。
一応説明しておくが,“Burnout”とは,レースのスタート前にリアタイヤを空転させ,タイヤを温めてグリップ力を高める行為のこと。Electronic Artsも「Burnout」というレースゲームのシリーズを発売しているが,Bethesdaとの関連性はない。
EAのBurnoutが,多くの人にとってすぐに思い浮かぶであろうタイプのレースゲームなら,BethesdaのBurnoutはドラッグレースという,やや特殊なジャンルを取り扱っているのが大きな違いである。
ドラッグレースとは,2台のクルマで規定の直線コースをいかに速く走り抜けるかを競う,アメリカ生まれのモータースポーツである。ここでいう“ドラッグ”は,“ものを引きずる,平らにならす”といった意味。直線を走る2台のクルマの姿が,まるで一方が一方を引きずっているように見えることや,走行後の地面が平らになることなどから名付けられたらしい。
日本では,1/4マイル(約400メートル)のコースを走る,“ゼロヨン”が,そこそこ有名な存在だろう。そういえばPCエンジン用に「ゼロヨンチャンプ」という,ギアチェンジのタイミングが非常にシビアなゲームがリリースされていたっけ……。
さらに2000年にもPC向けに,「IHRA Motorsports Drag Racing」をリリース。こちらは,「IHRA」(International Hot Rod Association)と提携した作品である。NIRAはIHRAより組織的な規模も小さく,確か2003年には完全消滅してしまっている。そういう意味では,NIRAからIHRAへ乗り換えたBethesdaの判断は,的確だったといえるだろう。
まず2001年,PlayStationに前述の「IHRA Motorsports Drag Racing」を移植(同年には,ラスベガスにある有名レーシングスクール「Skip Barder Racing」を題材にしたPCゲームもリリースしている)。2002年になると「IHRA Motorsports Drag Racing 2」をPlayStation 2で。2003年末には「IHRA Motorsports Drag Racing 2004」をXboxで発売した。
なんというか,日本ではたとえ発売されても,さほど売れなさそうなこのジャンルのゲームが,発売されるたびにヒットを記録してしまうあたり,国民性や文化の違いを象徴する出来事といえるような気がする。
「IHRA Motorsports Drag Racing 2」 |
「IHRA Motorsports Drag Racing 2004」 |
2004年末に,「IHRA Motorsports Professional Drag Racing 2005」がPlayStation 2とXboxで発売されると,またしても大ヒット。その結果,2005年にはPCへも移植された。そして2006年には,PlayStation 2とXbox,そしてPCで「IHRA Motorsports Professional Drag Racing: Sportsman Edition」がリリースされたが,残念なことにこれを最後に新作は出ていない。
ひょっとしたら,The Elder Scrollsシリーズや映画「Star Trek」のライセンス作品に,リソースを割くことになったから……かもしれない。
「IHRA Motorsports Professional Drag Racing 2005」 |
「IHRA Motorsports Professional Drag Racing: Sportsman Edition」 |
話は前後するが,XboxのみでリリースされたIHRA Motorsports Drag Racing 2004は,当初海外ものののゲーム誌ではPlayStation 2にも発売予定であるとされていたが,理由は不明だが中止となっている。
さらにIHRA Motorsports Drag Racingは,Dreamcast用も開発されていたが,PBA Tour Bowling 2001同様,こちらもお蔵入りに。ああ,Dreamcast……。
といったところで,今回はここまで。次回こそはいよいよ,高橋氏に聞いてきたあの蔵ゲーの話をお届けする。
■ドブ漬けゲームスープレックス(31)
Xbox 360,PLAYSTATION 3
「Midnight Club:Los Angeles」(スパイク)
レースゲームつながり(?)で,ここでは発売されたばかりの「Midnight Club:Los Angeles」を取り上げよう。……といっても,プレイしたのは,発売前にスパイクが開催したメディア向け試遊会でのこと。
本作は,「湾岸ミッドナイトクラブ」のタイトルで発売されていた人気シリーズの最新作。しかし筆者は,ここ最近のレースゲームでは,エレクトロニック・アーツの「Burnout」シリーズ(ドラッグレースじゃないほう)で,クラッシュの楽しさを味わうことに満足しがちだったため,本作がシリーズ初体験だった。
遊んでみて,まず驚愕させられたのは,クルマの細部までいじれるカスタマイズ性の高さと,Los Angeles市街の再現っぷりである。
スタート直後にサンセット・ブールバードを疾走していたら,信号無視でポリスに追いかけられ即逮捕。今度はゆっくり,ウィルシャー・ブールーバードを走っていたら,渋滞に巻き込まれてしまったので反対車線を逆走しつつ信号無視をしてしまったら,やっぱりポリスに見つかりカーチェイス後に逮捕。やけくそになって暴走しまくったら,多方向からパトカーがやってきて逮捕。……途中から逮捕されこと自体が楽しくなってくるのは,なぜだろうか。
その後,道交法を守りつつ,知っている映画会社のスタジオへクルマを走らせると,残念なことに門が閉じていて中には入れず。しかしアクセル全開で門に突っ込んでみたら,見事,侵入に成功。この背徳感もたまらない。
ついでに,筆者が以前住んでいたアパートのあたりまで行ってみると,そのエリアは巨大なショッピングモールになっていた! このショック,逮捕の非ではない。
続いてオンラインバトルに挑戦! したときの様子は,また次回ということで。
「Midnight Club: Los Angeles」公式サイト
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- 関連タイトル:
Midnight Club: Los Angeles
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