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CPUとGPUを持つAMDには,明確な存在理由がある――日本AMDの2009年事業方針説明会レポート
今回はそんな同社の説明会から,ゲーマーとして気になるところを中心に,ピックアップしてお伝えしたいと思う。
「生き残っていける企業には明確な存在理由が必要
そして,CPUとGPUの先端技術を持つのはAMDだけ」
2008年10月7日の記事でお伝えしているとおり,AMDは先に,半導体製造部門を分社化すると発表している。Intelと戦うに当たってファブ(=製造工場)を保持し続けていた同社が,ファブレスの(=製造工場を持たない)ビジネスモデルへと転換したのは,AMDのみならず,半導体業界全体にとっても大きなニュースだったが,吉沢氏は,「(ファブレスへの転換により)プロセッサアーキテクチャの設計やマーケティングに集中できる」と,そのメリットを強調。また,アブダビ首長国の政府系投資会社と合弁して設立した「The Foundry Company」について,「まもなく,その正式名称とともに,発足を発表できるだろう」と予告する。
- x86プロセッサのIP(Intellectual Property,知的所有権)と開発技術を持つ企業は,世界に2社しかない
- 先端グラフィックスのIPと開発技術を持つ企業は,世界に2社しかない
としたうえで,いずれも,2社のうち1社がAMDであるとアピールする。
「x86は,5年後には世界で唯一の汎用プロセッサアーキテクチャになる。x86プロセッサのマーケットはIPで守られていて参入障壁が高く,x86プロセッサの開発はこの2社で続けられるだろう。x86プロセッサとGPUという,二つの(PCに関連したコア)技術を提供できるのはAMDだけだ」(吉沢氏)。
――AMDの「明確な存在理由」は,この点にあるというわけである。VIA Technologiesの存在を忘れている気はするが。
Netbookと“一般的なノートPC”の間を埋める
Yukon/Congoプラットフォーム
また,Phenom IIについては,AM3への移行だけでなく,TDP 65Wの低消費電力版を展開する予定であるとし,「さらなる低消費電力版も計画している。順次,新しい製品を投入していく」(土居氏)。Phenom IIの好評を受けてか,鼻息も荒い。
また土居氏は,Netbookの登場によって様変わりしたノートPC市場に話題を移し,メールやWebブラウジングが主な用途になっているNetbookと,15.4インチ液晶ディスプレイサイズが主流の“メインストリームノートPC”の中間を狙うプラットフォームとして,「Yukon」(ユーコン)と「Congo」(コンゴ),二つの開発コードネームを紹介した。
ざっくりまとめてしまうと,YukonやCongoは,NetbookがノートタイプのPCで想定される販売価格を一気に下げた結果,主流のノートPCとの間に大きな価格差が生まれたので,そこを埋めようというものである。
YukonとCongoは,ネットブックとメインストリームの間に生まれた大きな隙間を狙うプラットフォームだと土居氏 |
YukonやCongoは「1.5台めの(ノート)PC」になると,土居氏は持論を展開する |
土居氏は説明会で,Yukonプラットフォームに「ATI Mobility Radeon HD 3410」GPUを別途搭載したHewlett-Packard製ノートPC「Pavilion dv2」の試作機を手に,三洋電機から発表された「AMD HD!エクスペリエンス」プログラム対応の新型デジタルビデオカメラ「Xacti」で撮影したという720pのビデオファイルを,滑らかに再生するデモを披露。「薄型で軽量,そしてHD! Experience。まさにメインストリームのノートPCとNetbookの間に,Yukonはヒットしてくるのではないか」との見解を述べていた。
「1台めのノートPCとして使えるパフォーマンスと,2台めのノートPCとして使えるモビリティを持」ち,「家族で共用するPCはあるが,自分のPCは初めて」という人に向く,「1.5台めのPC」になるのではないかとは土居氏の弁だが,全体として,狙い自体は悪くない。
総じて,土居氏の説明は,ノート全盛となっている日本のPC市場を意識したものとなっていたが,PC市場,とくにゲーム用PC市場において,2009年のAMDは目を離せそうにない。こと,コストパフォーマンスという面では,デスクトップPC,ノートPCを問わず,AMDが主導権を握るのではないか,という期待すら抱かせるほどだ。とりあえずは,近日と予告される,AM3パッケージのCPUを待ちたい。
- 関連タイトル:
Phenom II
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