レビュー
トライエースとセガが世に送り出した,挑戦的な“銃撃多重奏”RPG
End of Eternity(エンド オブ エタニティ)
遠い未来,狂った生態系によって滅びへと向かう地球を舞台に,剣や魔法ではなく,銃器を駆使して戦う「t・A・B」(tri-Attack Battle,トライ・アタック・バトル)システムが最大の特徴となっている。
本稿では実際にプレイした感想を交えつつ,ゲームの概要を紹介してこう。
「End of Eternity」公式サイト
暗い話なのに,意外とノリがコント的?
いい意味で先入観を覆されるストーリー
■プロローグ
遠い未来の地球――その理由は定かではないが,あらゆる負の要素が飽和し,世界は壊滅の危機にあった。
毒された大気が地上に沈殿し,捻じ曲がった地軸は地上から時間の概念すらも奪う。生態系は狂い,人類はその環境変化に対応できずに滅びつつあったのだ。
残された人々は環境を正常化するために巨大な装置“バーゼル”を地球に埋め込んだ。
しかし,バーゼルが目指す正常化には,生物の在り方までもが含まれていた。生死のローテーションを機械にゆだねるところまで,人類は種として疲弊しきっていたのである。
こうして人々はバーゼル周辺に群がり,暮らしだした。やがてはその内部に入り込み,住居を構え,街をつくる。しかし,その事により,バーゼルは徐々に蝕まれその機能を低下していった。
人々は何者かが作った小さな世界に引きこもり,太古の過ちを繰り返していた……。
本作のメインキャラクターは,「ヴァシュロン」「ゼファー」「リーンベル」の3人。彼らは“PMF(Private Military Firm)”を生業としており,日々報酬と引き替えにミッションをこなしていくことで,ストーリーが進行していく。物語の本筋に深く関わる“ストーリーミッション”のほか,任意に請けられるミッションもあり,その内容は人探しから危険地帯での戦闘までさまざまだ。
それというのも,世界観の暗さに反して,メインキャラクターの3人がかなりお気楽なのだ。というか,“バカ”だ。リーンベルの胸のことでビンタされたり,リーンベルの胸のことで肘鉄されたり,リーンベルの胸のことで……いや,まぁリーンベルの胸の話はともかく,日常はもちろん,危険なミッションに挑むときでも,基本的にノリがコント的なのである。ヴァシュロンにゼファーにリーンベル,容姿だけなら文句なしの美男美女なのに,その実態はとんだズッコケ3人組だった。
まぁ何やらバカゲー的要素ばかりが前面に押し出された説明になっている気がするが,もちろん3人とも,キメるシーンではビシッとキメてくれるので,その辺は安心してほしい。
ヘックスを埋めて行くのが気持ちいい
エナジー・ヘキサで開拓して行く世界
そこからミッションの内容によって,さまざまな階層や場所へと出かけなければいけないのだが,本作の移動システムは少々変わっている。画面写真を見てもらえれば,そこら中に,ストラテジーゲームでお馴染みのヘックスが描かれているのが分かるだろう。灰色の部分は通行不能となっており,ゲーム開始直後はマップの大半がこんな状態だ。
ちなみに,通行不能区域には多くの宝箱が隠されているため,目的地まで最短で道を作ったらあとは放置,というのはもったいない。なかには通行不能区域でしか手に入らないレアアイテムもあるので,エナジー・ヘキサに余裕がある限り,どんどん埋めていくべきだ。この作業が意外と楽しく,マップ全体を埋めきったときの達成感は格別。やり込み好きな人なら,ストーリーの進行そっちのけで熱中してしまうことだろう。
独特のレベルシステムと
斬新すぎるカスタマイズ
RPGといえば,欠かせないのが“レベルアップ”システムだ。一部を除き,大半のRPGでは,レベルアップによって主人公達が強くなっていくというのが一般的である。しかし,本作はその辺のシステムが少々特殊で,“武器ごとに”レベルが割り当てられている。ゲーム中に登場する武器は“ハンドガン”“マシンガン”“グレネード”という三つのカテゴリに分けられているのだが,それぞれのレベルの合計値がそのままキャラクターのレベルになるのだ。よって,RPGでよくあるような“力”や“素早さ”といった概念は存在せず,レベルアップで上昇するステータスは最大HPと,武器の最大装備重量のみ。また,一定のレベルで与ダメージなどを上昇させるスキルも習得する。つまり,武器の強さがそのままキャラクターの強さになるというわけだ。
武器にはそれぞれ攻撃力やチャージ速度,吹き飛ばし力,集弾性能,装弾数といった性能が設定されているのだが,これらはレベルアップによって上昇することはない。消費アイテムであるグレネードを除き,カスタマイズによって強化していくのだ。
カスタマイズでは,スコープやバレルといったパーツを銃にセットするのだが……とりあえず,ガンマニアの方々が想像しているようなリアル指向ではないと前置きしておこう。正直,かなりシュールである。
「スコープ付ければ敵がよく見えるよね。なら,スコープ六つ付ければもっとよく見えるんじゃね? すげぇ!!」と,まぁ現実ならこんなアホなことを言うヤツはいないだろうし,一丁の銃にスコープ六つなんてとんでもない愚行だ。というか,物理的に不可能だ。銃に詳しくない人でもそれくらいは分かる。
しかし,恐ろしいことに本作では,それが可能なのである。接続部のマークが同じで,装備重量とスペースが許す限りはいくつでもパーツをセットできるのだ。必然的に,純粋に強さを追い求めるのならば,銃本体よりもパーツの割合が多いという超変態銃を目指すことになるだろう。ゲームを進めていけば2丁拳銃も可能になるが,その場合は重量の関係で,パーツはあまり付けられなくなる。ゴリゴリにカスタマイズした1丁を選ぶか,欲張りな2丁か,悩ましいところだ。
なお,幸い(?)銃のカスタムはグラフィックに反映されないので,安心してほしい。反映されたらされたで,どうやって撃つのか,少々見てみたかった気もするが……まぁレゴブロックのように崩壊するのが関の山だろう。
また,異常に充実した着せ替え要素も,大きな魅力だ。本作には防具が存在しない分,カッコイイ物から奇妙な物まで,見た目にこだわった衣装が豊富にある。着替えるだけで,イベントシーンや戦闘での印象がガラリと変わるので,ぜひ色々と試してほしい。
コツさえ掴めれば絶対ハマる
まさに“銃撃多重奏”な戦闘
そのド派手な戦闘シーンから“銃撃多重奏”RPGと銘打たれている本作。t・A・Bシステムのなかでも強く注目したいのが,“インビンシブル・アクション”と“レゾナンス・アタック”の存在だ。
通常,移動と攻撃を別々に行わなければならないところを,“I.S.(Invincible State)ゲージ”を消費することによって同時に可能とするのがインビンシブル・アクションの利点。アンカーで指定した目標地点に辿り着くまでは一切のダメージを受け付けない状態となり,さらに複数回の攻撃が可能となる。移動中にジャンプもできるので,邪魔な障害物を楽々乗り越えていけるのだ。つまり,銃弾飛び交う敵陣のど真ん中でも平気で突っ切れるのである。
発動した時点で溜まっていたレゾナンス・ポイントの量に応じて,連続攻撃の回数は変わるのだが,途中で障害物にぶつかるなどのミスさえしなければ,通常の攻撃やインビンシブル・アクションよりも遥かに高いダメージを叩きだせる。とくにボス戦では,レゾナンス・アタックを上手く使いこなすことが勝利のカギとなるだろう。
RPGではお馴染みの“魔法”などが一切存在せず,威力の高いマシンガンで敵に“スクラッチ・ダメージ”(放っておいたら徐々に回復して行く一時ダメージ)を与えてから,“ダイレクト・ダメージ”を与えられるハンドガンで一気にHPを削るなど,戦略的な思考が求められる本作。その斬新さから,お世辞にも分かりやすいシステムとは言えない。正直,最初は説明書を読んでも良く理解できないだろう。
ゲームを始めたら,まずは闘技場でチュートリアルを受けることを強くオススメする。ちなみに,筆者は初回プレイ時,良く理解しないまま進めてみたが,最初の戦闘でゲームオーバーになってしまった。ザコ相手でも油断は禁物だ。
レベル上げや武器のカスタマイズで,ある程度の強化ができるとはいえ,本作においては,キャラクターの能力差で押し切る“ゴリ押し”はまったく通用しないと言っていいだろう。しっかりシステムを理解するのは当然として,戦闘ではフィールド上のオブジェクトや敵の能力・配置を冷静に読む“観察眼”が,最も重要であると言っても過言ではない。
難度は高めだが,本作は戦闘のコツを掴んでからが本番。諦めさえしなければ,きっとほかのRPGでは味わえないような,奥深く爽快な戦闘を楽しめるだろう。
剣と魔法の世界に飽きた人に遊んでほしい
RPGのセオリーをぶち破った挑戦的な作品
斬新な要素が色々と詰め込まれた本作。頭のネジが2,3本飛んでるんじゃ……いやあまりにも大胆な銃のカスタマイズ要素や,RPGのセオリーをぶち破った挑戦的な戦闘システムには賛否両論ありそうだが,ゲームバランスはなかなかよく,完成度もかなり高いタイトルだ。また,(これも好き嫌いが分かれそうだが)登場キャラクターに愛嬌があり,硬軟両面を併せ持つストーリー展開も,プレイヤーの興味をグイグイと引っ張ってくれる。王道的な“剣と魔法の世界”にちょっと飽きていて,変わったRPGを遊んでみたいと考えている人や,刺激的な戦闘を楽しみたいという人は,ぜひ「End of Eternity」をプレイしてみてほしい。
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(C)SEGA Developed by tri-Ace Inc.
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