レビュー
コードマスターズが送り出す,本物のF1レースゲーム
F1 2010
レースゲームの老舗が,F1に真正面から取り組んだ作品
モータースポーツの最高峰,F1(FIAフォーミュラ1世界選手権)。筆者のようなレースゲームファンにとって,F1ドライバーというのは一つの憧れだが,ここ最近,F1をテーマとしたタイトルがほとんど登場しておらず,いささか寂しい想いをしてきた。そんな筆者の前に現れたのが,レースゲームの老舗として知られるコードマスターズが制作した,世界でただ一つのFOM(Formula One Management。F1レースのマネジメントを行う組織)が公認したF1レースゲーム,「F1 2010」だ。日本語のPlayStation 3版とXbox 360版およびPC版は10月7日に発売されている(※PC版はイーフロンティアより販売)。
公認ということで,2009年シーズンの覇者,ジェンソン・バトンを始め,フェルナンド・アロンソ,ルイス・ハミルトン,そして小林可夢偉などといった,2010年のF1シーズンに参戦しているすべてのチーム,およびドライバーがすべて実名で登場する。
もちろん,2010年のF1シーズンでも使用された三重県の鈴鹿サーキットをはじめ,ホッケンハイム,モンツァ,スパフランコルシャンなどの有名サーキット,初開催となった韓国サーキット,そしてアルバートパーク,モンテカルロ,シンガポール,バレンシアといった市街地コースを含む全19サーキットが再現されている。コースレイアウトもCADデータなどを元に精密に作られており,F1中継の車載カメラの映像と,ほぼ同じ風景がゲームの中で見られるのだ。これはビックリ。
チームの戦歴などの細かなデータも,ゲーム内で確認できるので,一通り目を通しておけば,これであなたもF1通だ。
上にも書いたように,開発は「RACE DRIVER GRID」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)や「Colin McRae: DiRT 2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360/Wii/PSP/NDS)など,多くの人気レースゲームを手がけてきたイギリスのコードマスターズで,ゲームエンジンとして同社が独自開発した「EGO」を使用することで,ハイレベルなグラフィックスを持ったレースシミュレータを作り上げているのだ。まさに,世界中でたった24名のドライバーだけが,チャンピオンシップに参加することが許されるモータースポーツの最高峰を,あますところなく描いているといえそうだ。そして,そんなF1にあなたも私もドライバーの一人となって参戦できるのだから,たまらんなあ。
「F1 2010」公式サイト
キャリアモードで,F1ドライバーの生活を疑似体験しよう
本作の大きな特徴は,「F1ドライバーとしての生活を,疑似体験できる」ことにある。それを担うのが「キャリアモード」だ。最初にプレイヤーの分身となるドライバーを作成するのだが,この作業がF1参戦会見のインタビューに答える形式で進められるのは面白いアイデアだ。ここで名前や出身国のほか,レーサーとして過ごす年数(キャリア年数)を3年,5年,7年から一つ決め,最後はどのチームのセカンドドライバーとして参戦するかを選ぶことになるのだ。もちろん,いきなりトップチームに入るのは無理なので,まずは下位チームに参戦して結果を残し,そして上位チームへ移籍していくというダンドリになる。
また,レース以外の部分でも現実に近い状況を作り上げているのも大きな特徴である。
ゲームを始めるとまず登場するのが,関係者だけが入れるピット裏の「パドック」。ここではキャリアモードとは別に,自由にサーキットを選んでレースウィークを楽しめる「グランプリ」,とことんタイムを突き詰めて最速ラップを叩き出す「タイムトライアル」,最大12名でインターネットを介したレースが楽しめる「マルチプレイヤー」が用意されているのだ。
パドックには欠かせない,ナイスバディのキャンギャルが歩いているほか,見物客などもいる。レースで活躍したり,チームメイトを上回る結果を残したりすると,だんだん見物客が増えていったりして,いい雰囲気だ。またここでプレスからインタビューを受けることもあるのだが,これにどう答えるかも重要だ。
良いコメントを残すとチームの士気が上がり,アップグレードパーツを用意してくれたり,ほかのチームから誘いがかかったりするので,ここはじっくり考えてコメントしたいところ。事実,最近のF1ドライバーはただ速く走るだけでなく,メディアの対応やチーム内のコミュニケーション能力も以前より強く要求されており,そのあたりもうまく再現されているといえそうだ。
そんなキャリアモードの拠点となるのが,パドック内にある「モーターホーム」だ。ここには自分のエージェントが常駐しており,参戦しているチームの状況や,他チームからの自分の評価が確認できるほか,契約交渉などの面倒もみてくれる。また,好きなデザインのヘルメットを選んだりすることも可能。
流れとしては,このモーターホームからキャリアモードの各レースに参加し,それが終わればまたここに帰ってくることになる。ゲームでは,2010年のF1シーズンをカレンダーどおりに戦う。つまり,開幕戦のバーレーンから最終戦のアブダビまで全19戦に挑み,チャンピオンを目指すのだ。さあ,がんばろう!
レースものに限らず,ゲームのメニュー画面にはテキストを並べただけのそっけないものが多いが,最近のコードマスターズのタイトルは,そのへんにも遊び心が取り入れられている。とくに本作では,パドックやモーターホームといったF1ファンなら思わずニンマリしてしまう裏舞台を再現しており,F1ドライバーの雰囲気をより味わえて,いい感じだ。
ここまで来たか!
刻々と変化する天候システムは一見の価値あり
レースが実際と同じセッションで構成されているのも,コードマスターズのこだわりかもしれない。F1では,一部の例外を除いて金曜日にフリー走行(マニアならプラクティスと呼ぼう),土曜日に勝ち残り式の予選(クオリファイ),そして日曜日に本戦という流れになっており,これをひっくるめて「ウィークエンド」と呼ぶ。
ゲームでもそれは同じで,モーターホームからレースに行く際に,ウィークエンドの長さ,走行周回数,アシスト機能などの細かい設定が可能だ。ウィークエンドには,フリー走行1回,予選20分で決勝に挑む「ショートレースウィーク」と,実際同様にフリー走行3回,予選,決勝と進む「ロングレースウィークエンド」がある。
レース前に行える設定としては,ブレーキアシスト,トラクションコントロール,ギアボックス,ピットスピード制限といったドライビングアシスト機能のほか,タイヤの損耗や燃料の消費をシミュレートするかどうか,ダメージは見た目だけか,それともマシンの挙動に反映させるか,そして(詳しいことは後述するが)「フラッシュバック」の回数をいくつにするかなどがあり,ビギナーからベテランまで,自分自身の腕前に合わせたレースを楽しめるのだ。
さて,そんなレースウィーク中はもっぱら,「ガレージ」で過ごすことになる。目の前のモニターにはフリー走行や予選における自分のタイムや順位が表示され,現在の気温や天気予報が見られるほか,アップグレードパーツとその効果の確認や,メカニックへの細かい指示などが可能だ。
さらにガレージでは,残っているタイヤセット数を確認したり,ピット戦略や,どのタイミングでタイヤを変えるかといった設定をしたり,エンジニアがコースの状況に合わせてセットしたマシンから最適なものを選んだり……と,文章で書くと相当ややこしく聞こえるかもしれないが,実際にやってみればそれほどでもない。なによりF1ファンにとっては,こんなところまで! という驚きのほうが勝っているはずだ。
本作の特徴の一つであり,レースの重要な要素でもあるのが,ダイナミックに変化する天候だ。「アクティブ トラック テクノロジー」と呼ばれるシステムにより,天候は刻々と変化し,例えば雨が降り出すと,雨量から路面のコンディションが判定され,タイヤのグリップ力や挙動などが変化するというから凄い。
予選開始時はピーカンだったのに,途中でポツリポツリと雨が降り出し,最終的に土砂降り。タイヤ選択を間違えた上位チームが脱落し,下位チームがポールポジションを取った,などということが普通に起きるのだ。そのため,長丁場となる決勝では,とくに天候変化を見越した戦略を立てる必要があり,レース中に雨が降り出したとき,どのタイミングでウェットタイヤに切り替えるのか,スリックタイヤに戻すのかなどを考えなければならない。それにしても個人的に,こういうのは楽しくてしょうがない。
ピットインのタイミングも重要であり,タイヤ交換が済んでいるのにピットレーンが混んでいてコースに戻れないといったことも起きる。トップでピットインしたのにピットアウトしたときには最後尾に近い,では目も当てられない。エンジニアから「ピットインしろ!」という指示が来るのだが,すぐにはピットインせず,あえて数周ずらすなど,タイミングを変えるとロスなくピット作業が行える可能性が高いので,ぜひ試してほしい。
速く走るためだけに作られた
F1マシンの挙動を思う存分楽しもう
元F1ドライバーのアンソニー・デビッドソンがテクニカルコンサルタントを担当し,実際のF1チームやタイヤメーカーなどから助言を受けているという本作だけあり,マシンの挙動はリアルそのもの……と言いたいが,さすがに実際に乗ったことはないので,“リアルだろう”という推測になっちゃうけど,実にF1マシン「らしい」ハイレスポンス,ハイダウンフォース,そしてハイグリップが再現され,普通のレースカーとは次元の異なる走りが楽しめる。
ゲームの「クイックマシン設定」を使えば,最高速度,ダウンフォース,ハンドリングの組み合わせを,チームのエンジニアがあらかじめ設定したものの中から選べるので,レースゲームが初めてという初心者から手軽にプレイしたい上級者まで,ワンタッチでコースに出られるので楽チン。筆者も愛用している。
もっと細かくマシンの設定をしたければ,「カーセットアップ」から,エアロダイナミクス,ブレーキ,重量バランス,サスペンション,ギアボックス,エンジン,アライメントを細かく調整しよう。調整したマシンの設定を5種類まで保存しておけるので,とことんタイムを詰めたエッジプレイを楽しみたいマニアも安心だ。
挙動特性がシミュレータ寄りなのか,アーケード寄りなのか気になる人も多いと思うが,その両方をバランスよく取り入れた,コードマスターズらしい仕上がりになっている。
ゲーム設定を上級者向けにすれば,微妙なステアリング&アクセル操作が必要になり,ラフな操作はスピンやコースアウトに直結する。しかし,現在のF1マシンの特性なのか,思ったよりピーキーではなく,コツをつかめば手も足も出ないということはない。
初心者向けにすると,レースゲームが初めてという人でも走りやすく,ゲームパッドでも十分楽しめるだろう(筆者はステアリング型のデバイスを使っている)。
いずれにせよ,さすがはコンマ数秒を争うF1レースだけに,体感できるスピードは半端ではなく,走り終わると普通のレースゲームを遊んだときよりはるかに疲れる。まあ,極限の緊張感の中でライバルと競い合うF1なのだから,当たり前といえるだろう。レースが終わり,緊張感がスッと途切れる瞬間がなんというかもう,たまらないので,あなたもぜひ体験してほしい。
先にも少し触れたが,コードマスターズのレースゲームではすっかりおなじみの,フラッシュバック機能は本作にも実装されている。これは,クラッシュしたときなどに時間を少し巻き戻し,ミスを「なかったこと」にする便利なもので,これによって,思う存分コースを攻めることができる。
ゲームの難度や設定によってフラッシュバックできる回数は異なるが,せっかく時間を戻したのに,あろうことか,同じミスを繰り返したり,もっとひどいクラッシュを引き起こしたりなど,油断しているとフラッシュバックの無駄遣いを,しょっちゅうやってしまうはずだ。少なくとも,筆者はそうだった。とほほ。
初心者,上級者問わず何度もお世話になる機能だと思うが,練習を積み,いずれはフラッシュバックを使わずにレースを制覇したいところだ。
キャリアモードで腕を磨いたら,マルチプレイにも挑戦しよう。マルチプレイの「クイックゲームモード」には,最速ラップを競う「ポールポジション」,3周のレースで順位を競う「スプリント」,天候が変化する過酷な条件で行われる「耐久レース」,そして,予選ありで7周のレースを行う「オンライングランプリ」が用意されている。
自分の好きな設定でオンラインレースを楽しむ「カスタムグランプリ」も用意されており,フレンドを招待して仲間同士で熱いレースを楽しむのも面白そうだ。
F1をテーマにした本格的なタイトルとして,久々に登場したF1 2010だが,現在手に入るタイトルの中では間違いなく最高峰の出来といっていいだろう。
普通のレースゲームを遙かに上回る速度で,きれいにコーナーを駆け抜けられたときの爽快感は,まさに「これぞF1」。SF的でさえあるドライブ感覚は,本作の大きな特徴だ。
プレスへの対応やチーム内のコミュニケーションなど,レース以外の部分も細かく再現され,その中にはこれまであまり知られていなかった部分も多いため,まるで本物のF1レースを体験しているような気分になれる。今までF1を知らなかった人も,これを機会に別次元のスピードのレースを体験してほしい。
※掲載したスクリーンショットは,コードマスターズから提供されたものです
- 関連タイトル:
F1 2010
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F1 2010(日本語版)
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(C) 2010 The Codemasters Software Company Limited ("Codemasters"). All rights reserved. "Codemasters”(R) and the Codemasters logo are registered trademarks owned by Codemasters. An official product of the FIA FORMULA ONE WORLD CHAMPIONSHIP.
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