レビュー
演出面だけではなくゲームとしても一級品! PS3のパワーを「これでもか」というほど見せつけてくれる「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」
» 4Gamerスタッフ/ライターが,個人的に大好きなゲームを熱っぽく紹介する不定期連載,「極私的コンシューマゲームセレクション」。ライターの御簾納直彦氏に「2009年に発売された最高のPS3タイトルを教えてください」とたずねたところ,速攻で「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」のレビュー原稿が上がってきたのでお届けしよう。
本作は,2007年12月6日に発売された「アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝」の続編となるタイトルで,前作同様,三人称視点で物語を進めていくアクションアドベンチャーゲームである。
前作でも高評価だったグラフィックスの美しさは,さらに磨きがかかっており,まるで映画の一場面をそのまま動かしているような感覚でストーリーを堪能できる。それに加え,新たに導入されたステルス要素やプルダウンアクション,オンラインでの協力/対戦モードなどが,ゲームとしての面白味をより一層高めている。
ご存じの方もいるかと思うが,黄金刀と消えた船団は,国内に先駆け海外で発売された。前作もかなり評判は良かったのだが,今作の評価は前作のそれを上回っており,発売されるやいなや海外メディアが大絶賛。「PS3を代表する傑作」とまで評されたほどだ。国内においても,数々のレビューサイトやブログなどで大きな話題となった。
それほどまでに高い評価を得ている黄金刀と消えた船団とは,一体いかなるゲームなのか。本稿ではそんな本作の魅力に迫っていきたいと思う。
超が付くほどの王道ストーリーはまさに冒険活劇!
ハデな銃撃戦は一見の価値あり
ゲームは前述のとおり,三人称視点で展開していく,いわゆるTPS方式が採用されており,プレイヤーは迫り来る敵の群れを切り抜けながら先へ進んでいく。
メインとなる銃での攻撃方法は,ハンドガンタイプと,マシンガン/ショットガンタイプの二つ。この2種類は,方向キーの右左でいつでも切り替えられるので,状況を考えつつ選択していこう。
ちなみに銃を使うということで,弾切れを心配している人もいるかもしれないが,そんな心配はご無用だ。本作では弾丸はそこかしこに落ちているし,倒した敵から銃を奪うこともできる。むしろいっぱい武器がありすぎて,余ってしまうくらいだ。もちろん,弾丸の消費は難易度設定に左右されることもあるので,絶対に弾切れにならないとはいいきれないが,少なくとも筆者がプレイした限りでは,とくに弾丸に困るということはなかった。
そして武器といえば,忘れてはならないのがグレネードだ。グレネードは,爆発に巻き込んで敵を一気に吹っ飛ばせるスグレモノ。ただしこちらは,一度に所持できる数が少なく,なおかつ入手できる機会も普通の弾丸に比べると若干少ない。使用する際には乱発を避け,できるだけ敵が一か所に集まっているときに放り投げるようにしたい。
余談だが,グレネードを敵の近くに投げたときに,「グレネードだーー!」と慌てふためく敵の絶叫が非常に心地よく,プレイ時のモチベーションを高めてくれる……のは筆者だけ?
またTPS(またはFPS)といえばお約束の爆発するボンベ(作品によってはドラム缶)。本作でも,まるで「撃ってください」と言わんばかりのたたずまいで,ステージ上に転がっている。敵が多くて苦戦している場面などは,敵がボンベの前に密集しているときを見計らってすばやく打ち抜き,ザコどもを一網打尽にしてしまおう。ボンベを利用した攻撃がジャストで決まったときの爽快感はかなりのものなので,機会があればガンガン狙っていきたいところだ。なおボンベは掴んで投げる事もできるので,状況に応じて使い分けていくことも大事である。
格闘攻撃の存在も見逃せない要素だ。格闘は敵に接近した状態で,□ボタンを押すことで発動する。ボタンを連打すれば,連続攻撃となって映画ばりのハデな演出とともに敵をボコれるのが魅力だ。ただし,敵によっては(後半ではほとんど),反撃してくるヤツもいる。そんなときは△ボタンで攻撃をかわしつつ,うまく立ち回って応戦しよう。
音もなく倒すもよし。カバーアクションで応戦するもよし
プレイヤーが自由に戦闘スタイルを構築できる。
ステルスの使い方はプレイヤーによって千差万別。物陰,または敵の背後を移動しながらソロリと敵に近づき,専用演出を堪能しつつ一撃で相手を倒すこともできるし,敵に気づかれないようにアイテムを調達することもできる。
本作では通常,発砲すると銃声によって自分の存在が敵にバレてしまう。ステージの最初のほうでは,敵も少なめなので問題ないが,後半に進むにつれ敵の数も多くなる。そうなってくると,まともに戦えば苦戦を強いられるケースが当然増える。しかし,ステルスで確実に数を減らしておけば,いざ敵に見つかったときにも,比較的有利に戦えるというわけだ。
だが,「おれはコソコソ戦うなんて性にあわねえ」という根っからのランボータイプもいるだろう。そういったプレイヤーは,敵と真っ正面からぶつかっていくパワープレイもあり。もちろん,それなりの流血は覚悟する必要があるが,本作では,時間の経過とともに体力が少しずつ自然回復するので,やってやれないことはないはずだ(後半はけっこう厳しいと思うが)。
ちなみに筆者は,最初は,カバーアクションで隠れつつ,銃で応戦するというオーソドックスなプレイに終始していた。
しかしゲームに慣れてきた中盤あたりから,積極的にステルスを使っていくプレイにチェンジ。もちろんステージによっては最初からネイトの存在がバレているケースもあるので,ステルスばかりに頼るわけにはいかないのだが……。
とまあ以上のように,本作ではステージの攻略手段がある程度プレイヤーに委ねられる。プレイヤーのスタイルによって,フリーダムな戦術が練れるというわけだ。フルマップ/フリーランニングのゲームでは珍しくないが,本作のようにチャプター制のゲームにおいては,かなり自由度が高いといえるだろう。その点は,本作の小さくない魅力である。
高所恐怖症の人はドキドキもの
ここまでやるか! と思わせるトラバーサルアクション
本作の主人公ネイトは,外壁,吊り橋,巨大な像といったオブジェクトをよじ登ることができる。そういったトラバーサルアクションの一例としては,ジャンプして突起部を掴み,次の突起部に手をかけて……といった具合に先へ進んでいく(よじ登っていく)。老朽化している部分などを掴むと,そこが崩れてしまう演出が入ったりすることもあり,グラフィックスのリアルさと相まって非常にヒヤヒヤさせられる。
しかしこっちはヒヤヒヤしていても,主人公ネイト本は「あぶねーあぶねー」とか「おっと」とか,意外と余裕そう(?)にしているのがニクい。ときには「下を見ない,下を見ない」などと自分に言い聞かせることもあり,プレイヤーとしては,そういったヘタレなボヤキが地味に楽しかったりする。
トラバーサルアクションに関しては,アナログスティックを傾けることで,次に飛び移るべき場所が分かるので,間違って飛んでしまいそのままジ・エンドというケースは意外に少ない(距離を見誤って転落してしまうことはしょっちゅうだが)。基本的には,スイスイと先に進めるはずだ。
仮に落ちてしまっても,ちょっと手前の場面からすぐにリスタートできるので,プレイしていてストレスは感じない。むしろ落ちていくネイトの断末魔がちょっぴりお間抜けな感じなので,クスリとしてしまう。ネイトの落下時の断末魔は数パターンあるので,興味のある人はわざと落ちてみるのもいいかも。ネイトには申し訳ないが。
また,トラバーサルに関連して,併せて紹介しておきたいのがプルダウンアクションだ。これはトラバーサルアクション中に,頭上にいる敵を掴んで引きずり落とすというもの。このプルダウンアクションはかなり中毒性があり,ハマるとクセになってしまう。アクション映画などでよく見かけるシーンではあるが,それを自分の手で行えるというのはなかなか嬉しいものだ。さらにトラバーサルアクション中に,ハンドガンで,敵を攻撃できるシステムも熱い。ネイトが狙っていることも知らずに余裕をかましている敵に,鉛の一発をお見舞いしてやろう。
とまあ,ここまで駆け足で本作のシステムを紹介してきたが,上記のような部分を考察していくと,本作がいかに,映画の良い部分をゲームに取り込もうとしているかが分かる。ムービーなどで映画的な演出をする作品はよくあるが“ゲームとして遊べる部分”にこれほど映画的な要素を,しかも違和感なく溶け込ませている作品はそう多くないだろう。前作「エル・ドラドの秘宝」のキャッチコピーが「PLAYする映画」だったというのも頷ける話だ。
トータルバランスが高い次元で取れた秀作
海外産ゲームに偏見がある人にこそプレイしてほしい
ミスってもすぐにリスタートできるし,もし難しいと思ったら,ゲーム中いつでも難度を変更できる。さらにゲームに詰まったときなどは,ヒントが表示されて道を指し示してくれるので,迷うということはほとんどないはずだ。このように本作は,初心者に対してもかなり敷居が低く,プレイすれば洋ゲーに対する意識が変わってくるはずだ。
さらにゲーム中のロードも気になることはなく,シームレスに絶え間なくストーリーが進んでいく。とくにストーリーが盛り上がってくる中盤くらいからは,九死に一生を得るシーンが続出し,気が付けばゲームに没入しているといった状況も珍しくない。このあたりの演出力は「さすがだな」と感心してしまう。
また,今さら言うことではないが,CELL(PS3の心臓部)の能力を使い切ったといわれる超美麗なグラフィックスは,もはやアートの領域。極端な話,友達同士で集まって上手い人のプレイを観ているだけでも楽しめるレベルだ。
さらにヤリ込み要素の充実にも抜かりはない。ステージ内に隠された宝物を発見したり,特定の条件で敵を倒したりすると,メダルを入手できる。このメダルを使えば,コスチュームや武器といった隠し要素をアンロックできるので,一度クリアした人も,二度三度と楽しめるわけだ。ちなみに一度クリアしたステージは,その後自由に選べるので,取り逃した宝物があったときなどもストレスなく楽しめる。
個人的には,文句なしといってもいいほど満足度の高い作品なのだが,欲をいえば一度に使える武器をもっと増やして欲しかったなぁと思うことも。また銃の照準が若干曖昧なのも,気になったといえば気になったのも事実。このあたりは,不自由な部分をあえて盛り込んで,ゲームとしての魅力を高めているようにも思えるので,判断が難しいところではあるのだが。
またキャラについてだが,本作のキャラ勢は洋ゲーだけあって(?),クセのある奴らが多い。主人公のネイトなどは,パッと見「どこのチンピラだよ」といった感じだし,ヒロインのクロエも,名前はカワイイが見た目はオリエンタル感バリバリの濃ゆい顔立ちだ。国内ゲームにある萌え的な要素は皆無に等しい。
しかし,そういったキャラ達もプレイしていくうちに段々とアジが出てくるのが本作の不思議な魅力。キャラがネックで購入に踏み切れないという人もいるかもしれないが,本作は本当の意味で“ゲームの中身”が優れているので,ぜひその一歩を踏み出してほしい。とにかく丁寧に作り込まれた一本道のゲーム展開が,どれほどプレイヤーを楽しませてくれるものなのか,一度遊んでみればきっと理解できるはずだ。
長々と紹介してきたが,とにかく言えることは,「PS3を持っているなら絶対に一度はプレイしてほしい」ということ。公式サイトには動画も公開されているので,参考に観てみるのもいいだろう。ちなみに前作とのつながりについては,共通のキャラなどは出てくるものの,ストーリー的な関連性は薄いので,今作からシリーズを始めてもなんら問題ない。もし気になってしまうという人がいたら,前作のベスト版も出ているのでそちらを購入してみるといいだろう。
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