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PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話
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印刷2010/09/04 14:15

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PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話

画像集#001のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話
 ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)は,メディア向けの「PlayStation Move体験会」を9月3日に東京都内で実施した。

 この体験会では,2010年10月21日に発売予定のPlayStation 3用の新入力デバイス「PlayStation Move」に対応した東京ゲームショウ2010に出展予定タイトルのうち,11本をプレイできた。また,PlayStation Moveの開発担当者によるプレゼンテーションも行われ,この新入力デバイスの開発秘話も語られた。
 本体験会でプレイできたタイトル群については,「こちら」の記事でプレイの模様を撮影したムービーとともに掲載しているので,ここでは割愛する。本稿では,プレゼンテーションの模様を中心にお伝えしよう。

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 プレゼンテーションには,ソニー・コンピュータエンタテインメントからワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏,同 第二事業部 設計部5課 課長の宮崎良雄氏,同 商品企画部 企画1課 磯部洋子氏の3名が出演した。

写真左から宮崎氏,吉田氏,磯部氏
画像集#002のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話

画像集#003のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話
 まずPlayStation Moveの企画コンセプトだが,これは“「リアルで高画質な世界表現」と「正確で直感的な操作性」の融合”を目指したという。
 吉田氏は,PlayStation Moveの基礎となった技術は,PlayStation 2の入力デバイス「EyeToy」で,SCEAのR&Dで行われていた,画像認識の研究が元になっていると話した。そして,PlayStation Moveの開発にはなくてはならない存在だったという,Richard Marks博士の名前を挙げた。
 吉田氏によると,カメラを使った3Dの空間認識については,PS2でEyeToyを開発している時点ですでに実現はできていたという。Marks博士の紹介時に写真2枚がスクリーンに映し出されたのだが,そのうち1枚は,博士がボールを持っていて,その上に人形のようなものが乗っているというものだった。
 実はこの人形はCGで,EyeToyは解像度が低かったが,大きなボールを使えば,そのボールの上にCGモデルを乗せるといったことが,技術的にすでに可能だったそうである。
 これが2003年頃の話で,吉田氏は,いつかこの技術をゲームに生かしたいとMarks博士と話していたそうだ。

画像集#004のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話

 そして,PS3が2006年に発売され,吉田氏はこのときにカメラの性能を上げることを提案したと話す。そして解像度とフレームレートが向上した,PlayStation Eyeが発売された。
 同時に,コントローラにもモーションコントロールを加えていこうということで,宮崎氏を中心に,PlayStation 3用コントローラのSIXAXISが生まれ,「WARHAWK」のような対応タイトルも作られた。
 とはいえ,当時のセンサーの性能やコスト面,そしてコントローラの形である以上「両手で操作する」など,非常に制約のある中でのモーションコントロールの実現しかできなかったという。

 吉田氏は,任天堂からWiiが発売され大成功したあと,Wii向けゲームタイトルを作っている開発者などと話し,モーションコントロールがゲームに与えられていることはまだまだ氷山の一角で,技術的にはこれからまだまだ良くなると確信,Marks博士とともに,さまざまな技術の調査を行なったそうだ。
 そして,さまざまな分野にわたる調査の結果,カメラでのボールの認識と,高性能な内部センサーの組み合わせが,自分達の一番やりたいことを実現できるという結論に至ったとのこと。それを日本の開発部署に持ち込んだのが,2008年の夏頃であるという。

画像集#005のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話
 ここで宮崎氏から,今回のPlayStation Moveの開発は特殊だったという話が出た。
 ソフトウェア R&DのSCEA R&D Group,ゲーム開発のWorldwide Studios,ハードウェア開発のSCEI R&Dグループの3グループによる,緊密な共同開発体制が採られたとのこと。
 なお宮崎氏は,拠点を結ぶと“Y”に見えることから,開発プロジェクトではMoveは「Yコン」と呼んでいたと話した。ちなみにナビゲーションコントローラは,“Yの次だから”ということで「Zコン」と呼ばれていたそうだ。

 吉田氏は,PlayStation Moveはプラットフォームの一部として,いろいろなゲームで使えるものにしたいと考えていたそうだ。そこで,ハードコアなゲームを作っているチームからカジュアルゲームを作っているチームまで,さまざまな開発者に試作のコントローラを渡して意見を求めたと語った。宮崎氏によれば,“相当厳しい”フィードバックやダメ出しを何度ももらったそうだ。
 磯部氏は,通常はハードウェアがある程度できた段階でソフトウェアの部署に意見を聞くというスタイルが多いのだが,Moveでは仕様が固まる前から,吉田氏自らが開発ミーティングに必ず参加していたと,開発時を振り返った。

画像集#006のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話
 続いて出た話題は,開発目標についてだ。
 吉田氏は,PlayStation Moveにおける重要なポイントとして,「高精度・高信頼性」「リアルタイム性」「ゲームへの取り込みやすさ」の三点を挙げた。
 「高精度・高信頼性」は,動作を高水準で認識できる性能を常時実現するという,技術的には難しいことの両立。「リアルタイム性」は,プレイヤーの動作にダイレクトに反応するような,高フレームレートでの追従性の高さである。
 「ゲームへの取り込みやすさ」とは,具体的には,MoveによるPS3本体のCPUやメモリへの負荷を限りなくゼロに近づけるという取り組みである。
 たとえば,ハードウェアとしてのPS3の能力をフルに使っているようなゲームの場合,PlayStation Moveを使うことでさらに負荷がかかるようだと,その時点で開発者から敬遠されてしまう。PlayStation Moveを「第2の標準コントローラ」として広く使われるようにしたいと考えていた吉田氏は,CPUやメモリの使用率を限りなくゼロに近づけるよう要求したそうだ。

 続いて宮崎氏から,PlayStation Moveのコントローラ本体デザインにおいても,宮崎氏は,右利きでも左利きでも,また大人でも子供でも使えるよう,デザインを含め制作時は試行錯誤の連続だったことなどが話された。
 いろいろな人にプレイしてもらうため,いろいろな開発チームを巻き込んで開発していたのだが,ボタン配置一つをとっても,「どのボタンをどれくらいの大きさで,どこに配置する」などが徹底的に議論されたのだと述べた。

 PlayStation Moveでは,ユーザー層を増やしたい,新しいユーザーにも気軽にMoveを触ってほしいという意図から,今までのコントローラにはなかった「Moveボタン」が用意された。これは,ゲームをやったことのない人にとっては,○/×/△/□ボタンの四つでも複雑に見えてしまう。その敷居を下げる意味も含め,「真ん中に大きなMoveボタン」を一つ配置したわけだ。
 だが,ハードコアなゲームの開発チームからは,「SIXAXISにあるボタンは全部用意してほしい」「○/×/△/□ボタンは小さくしないでほしい」といった要求も出たそうだ。
 そういった開発時の苦労の結晶が,商品としての形になったPlayStation Moveというわけである。

画像集#008のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話
 なお,PlayStation Moveの先端に付いている「スフィア」と呼ばれる球体も,開発には非常に苦労したそうだ。PlayStation Moveでは,PlayStation Eyeで“球体”を認識させるので,その認識性を高めるため,継ぎ目がなく,コントローラともギリギリの部分で接続されている。また,発光するギミックにおいても,色ムラがほとんど出ないとのこと。
 また,スフィアは触ると軟式のテニスボールのように柔らかく,安全面にも配慮されている。
 ナビゲーションコントローラについては,“SIXAXISの左側半分”をコントローラにして,○/×ボタンを追加したものだという。ナビゲーションコントローラを買うと,当然その分経済的負担も大きくなるが,「ユーザーの負担をなるべく増やしたくない」とのいう配慮から,“SIXAXISでも代用可能”な設計になっているわけである。

画像集#007のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話
 そして次に,PlayStation Moveでは「見立て」が重要であるという話になった。「実際に世の中にあるものに見立てて作れば,ユーザーに複雑なことを説明しなくてもすんなり入ってもらえる」ということ。
 言い換えれば,「このゲームではPlaystation Moveを虫あみとして使います」ということを提示すれば,そこで使用目的や操作方法をプレイヤーが理解できてしまう,といったところだろうか。このあたりはCEDEC 2010の講演レポートに詳しいので,より深く知りたい人は目を通してほしい。

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画像集#016のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話
 ここで,宮崎氏によるPlayStation Moveの技術デモンストレーションが行われた。宮崎氏が剣に“見立て”たPlayStation Moveのモーションコントローラをビュンビュンと振り回すのだが,ディスプレイに表示される剣が宮崎氏の動きに見事に追従し,パッと見で遅延は感じられなかった。特筆すべきは,PlayStation Moveが体の影に隠れてカメラに認識されなくなっても,再び認識された瞬間に,遅延や位置ズレなどほぼない状態で表示される点だ。
 また,手首をひねる動作では画面内のオブジェクトの向きがきちんと変わる,前後に動いて奥行きが変わるとオブジェクトの見た目も追従して大小するなど,といったデモも行われた。

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 最後に,「PlayStation Moveが持つこれからの可能性」というテーマでのトークが行われた。
 吉田氏は,3D立体視が可能な「3Dテレビ」は,3D表現と3D空間を操作できるPlayStation Moveにいい作用をもたらすと述べた。たとえば「肉弾」は3D立体視対応で,3Dバーションでプレイすると,まるで相手がそこに立っているのと見紛うほどの臨場感があるとのことで,その没入感は相当なものだという。
 ソニーのグループ企業とも交流をしており,今後はさらに,コントローラの認識に留まらず,ヘッドトラッキングや表情認識,マイクを使った音声認識なども期待できるため,研究が進めば,さらにPlayStation Moveが面白くなってくるだろうと吉田氏は話し,セッションを締めくくった。

画像集#025のサムネイル/PlayStation Moveを“第2の標準コントローラ”に――メディア向け体験会で開発者達が語った開発秘話


 セッションのあとには,メディア合同での質疑応答が行われたので,最後にその中から目立ったトピックを紹介しよう。
 まず,PlayStation Moveを使用するさいの適正距離だが,PlayStation Eyeのカメラで映像認識を行うので,「1〜3m程度」が理想とのこと。ただ吉田氏によれば,奥行きが重要視されないものならば,もっと離れていても大丈夫だろうとのことだ。
 また,PlayStation Moveのモーションコントローラおよびナビゲーションコントローラには,mini-BのUSB端子があり,SIXAXIS同様にUSBケーブル接続で充電が可能となっている。
 今後どれだけのタイトルがPlayStation Move対応で登場するかについては,技術的にはどんなゲームにも使えるので,できる限り対応はしたい,SCEのタイトルではほぼすべてのタイトルでPlayStation Move対応を最初に検討していくだろうと回答。
 ただ,PlayStation Moveがゲームにとってプラスになるかマイナスになるかは分からない部分もあるため,十分な検討をしながら決めていきたいとのことで,必ずPlayStation Move対応になるとは限らなそうだ。

  • 関連タイトル:

    PlayStation Move モーションコントローラー

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