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世界樹の迷宮III 星海の来訪者公式サイトへ
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  • 発売日:2010/04/01
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印刷2010/05/25 12:39

連載

徳岡正肇のこれをやるしかない! / 第13回:「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」はなぜ面白いのかを考える

徳岡正肇のこれをやるしかない!
シリーズ全作を遊び倒したライターの徳岡氏オススメ 第13回:「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」はなぜ面白いのかを考える

 

 「タンネンベルクラインが……」とか「まさに二つの思想の角逐といえるだろう……」とか,そういう記事の多いライターの徳岡正肇氏だが,意外(?)にも携帯ゲーム機でRPGを熱烈プレイし,しかも世界樹の迷宮シリーズのヘビーユーザーだったりするから,人は見かけによらないというか。というわけで,シリーズ最高の作品になったと徳岡氏が太鼓判を押す「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」を紹介するしかないのが,今回の「徳岡正肇の これをやるしかない!」である。

 

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 「ウィザードリィ」に代表される3DダンジョンRPGは,それこそPCゲームの黎明期から存在する歴史の長いゲームジャンルだ。だがふと見ると,そんな3DダンジョンRPGが,最新の携帯用ゲーム機向けのタイトルに意外と多いことに気づく。
「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」(以下,世界樹の迷宮III)は,そんな「携帯ゲーム機で楽しめる3DダンジョンRPG」の,代表作の一つだ。“ニンテンドーDS”でしかも“ポップなキャラグラ”と,なんだか筆者には似つかわしくない作品のように思われるかもしれないが,個人的にはシリーズ第1作からずっと楽しませてもらっている。
 というわけで,発売後1か月ちょっとたった今,世界樹の迷宮IIIの魅力をざっと紹介してみたい。物語上のネタバレになるような話題は基本ないと思うので,興味はあるけど知りたくないとお悩みの方の参考になったりすれば幸いだ。

 

 

世界樹の迷宮,その概略

 

 世界樹の迷宮IIIは,5人のパーティで迷宮を探索し,宝を集めて敵を倒していくゲームだ。今回はそれ以外の要素も実装されているが,最も基本的なところを要約すればそういうことになるだろう。
 世界樹の迷宮シリーズの特徴をざっとまとめると,以下のようになるだろうか。

 

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・マッピングは手動
 歩いたグリッドは自動的に着色されていくので,半分はオートマッピングだが,壁や扉,特殊なイベントが発生する場所などについてはタッチパネルを使って地図に直接書き込んでいく(オブジェクトを配置する)ことになる。このため,プレイヤーによって完成した地図が微妙に違ったりもする。

 

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・職業が豊富
 だいたい10種類前後の職業が用意されている。世界樹の迷宮IIIでは10種類+隠し職業が二つ。パーティ枠は5名だが,「ギルド」として30名前後を登録できる。

 

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・スキルが豊富
 一つの職業あたり20種類近い固有スキルが用意されている。キャラクター内部でスキルのシナジーも存在するが,パーティ単位での連携の構築も重要。

 

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・武器/防具の種類が豊富
 敵を倒してもお金を落としてはくれず,「販売できる素材」をドロップする。こういったドロップ品を一定種類,商店に販売すると,次第に強力な武器や防具がアンロックされていく仕掛けだ。レアドロップでのみアンロックされる武器なども存在し,種類はたいへん豊富。

 

・序盤の資金繰りがシビア
 序盤では宿屋に泊まって回復することすら危ぶまれるほど,資金繰りが苦しい。

 

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・キャラクターはすべてプレイヤーが作成
 あらかじめ用意されたNPCからプレイヤーキャラクターを選択するような仕掛けは,まったくない。もっとも,キャラクターを作るといっても名前と職業,そしてグラフィックス(1職業あたり4種類)を決めるだけなので,手間はさほどでもない。

 

・やりこみ要素が満載
 単純なレベル上げはもちろん,上記のとおりアイテムコンプリートは相当にやりこまないと不可能。モンスターコンプリートも割と大変。

 

・初手からプレイヤーキャラクターを襲う
 最初の階は,世界樹の迷宮シリーズにおいてチュートリアル的な性格を帯びている。にも関わらず,ちょっとした不運と油断で,パーティは簡単に全滅する。まあ,このシリーズの厳しさを思い知るチュートリアルと思えば適切だとも言えるが。

 

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・「見敵必殺」=全滅必至
 各フロアにはFOEと呼ばれる,格段に上のレベルの敵が配置されている(彼らの動きはマップ上で確認できる)。よほど強くならない限りは戦っても死ぬだけなので,頭を使って回避する努力が欠かせない。

 

 世界樹の迷宮IIIにおいては,さらにいくつかの要素が増えている。

 

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・大航海モード
 今回は舞台が「海都アーモロード」ということで,船を操り大海原の冒険ができる。マッピングの要領はダンジョンと同じだが,ゲームはどちらかというとパズル的な構成。大航海モードで探索領域を広げると,ダンジョンでの冒険も有利になっていく。

 

・大航海クエスト
 マルチプレイが可能。複数人で協力して,ボス級の敵と戦うことができる。

 

・武器のカスタマイズ
 武器には「鍛冶」によって,さまざまな属性や特徴を与えることが可能。

 

・「サブクラス」の追加
 大雑把に言うと1キャラで二つの職業を兼ねられる。いわゆるマルチクラス。

 

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 以上のような感じだ。ともあれ,ボリューム的には毎度毎度の大ボリュームである。

 

 

クラスとその特徴

 

 せっかくなので,世界樹の迷宮IIIにおける職業の紹介もしておこう。隠しの二つの職業は,公式ホームページでしっかり紹介されているというおおっぴらな隠し方だが,スペックに関しては伏せておく。

 

プリンス/プリンセス

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支援系。強力なbuffを多数保有する。一定のヒール能力もある

ウォリアー

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物理系ダメージディーラー。シンプルだが,高いDPS(Damage per Second=1秒あたりのダメージ)を誇る

ファランクス

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槍を使う防御系ヘイトディーラー。後衛からの攻撃も可能

パイレーツ

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物理系ダメージディーラー。単体でのDPSではウォリアーに譲るが,連携と速度,そして長時間の戦いに優れる

シノビ

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攻防ともにソツなくこなすワイルドカード的な職業。ただし軽装甲。マルチクラスで真価を発揮

モンク

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軽装甲のヒーラー。素手での攻撃もこなす

ゾディアック

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キャスター。スペルの威力も高いが,パーティ支援も凶悪

ビーストキング

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召喚系キャスター。野獣を呼び出す

バリスタ

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弓使い。継戦能力は低めだがDPSは驚異的

ファーマー

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これといった強みはないが,フィールドでの活動を大幅に強化してくれる。マップ上に散在する資源採取エリアで大活躍。パーティの資金源の一つ

 

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 サブクラスは,ゲームをある程度まで進めなくては取得できないことに注意が必要だ。基本的にはヒーラー系(プリンスとモンク)が1名はいたほうがいいと思うが,ゼロでもなんとかなる。
 クラスに共通したスキルが用意されていて,その中に簡単な治癒呪文が存在することと,体力回復のアイテムが比較的安価に買える(序盤ではそのはした金すら絶望的に苦しいが)のが大きい。
 パーティ編成はかなり柔軟にできるので,自分なりの連携を模索してみるといいだろう。どう見てもそりゃ無茶なんじゃないかと思うような編成でも,シナリオクリアまでは可能っぽいので,頑張ってみる価値はありそうだ。保証はしませんが。
 各職業のスキルはレベルアップごとに得られるスキルポイントを消費して取得するが,割り振ってしまったスキルポイントはあとあと再配分可能(レベルが5下がるペナルティがあるが,あまり問題ではない)だ。

 

 

というわけで,シリーズ最新作の特徴

 

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 さてさて,ゲームとしての世界樹の迷宮IIIであるが,どちらかというと防御メインの作品(強力な防御buffを2枚展開すると,受けるダメージが1桁とか)だった初代「世界樹の迷宮」,そして攻撃メインの作品(大火力でドカドカ押すと,敵が絡め手を成功させる前に倒しきれる)だった「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯」と比較して本作では,少なくともメインシナリオをプレイする範囲において,攻防のバランスがそれなりに安定している印象だ。

 確かにDPSが爆裂している職業(およびコンボ)はいくつもあって,そういったグループをメインのダメージディーラーにするのは基本なのだが,ピンポイントでしっかりと防御を張れないと,ザコ敵相手でも簡単にパーティが崩壊しうる。また,これといったダメージディーラーはいないが鉄壁の防御を誇るパーティでも,戦闘時間は若干かかりがちだが問題なくプレイ可能なようだ。

 

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 サブクラスによって1パーティが10職業からスキルを選択できるようになったため,パーティ全体での連携構築の幅は大きく広がった。「とりあえず強いスキルだけ全部」で問題なく強いが,そうでなくてもきちんと戦えるので,「俺コンボ」を煮詰めていくのも良いだろう。マルチプレイが存在するとはいえ,基本はシングルプレイのゲームであり,職業間のバランスについては,あまり気にする必要はないだろう。「このスキル/この職業は強すぎる!」と思ったら,使わなければいいだけの話だ。
 世界樹の迷宮シリーズはそういった縛りプレイを許容してくれるし,「どう見たってこれが最強だろ」と思う布陣はあっても,意外と「そうではないが十分に強い構築」もゴロゴロしていたりする。
 世界樹の迷宮IIIでは敵とフィールドのバリエーションが豊富なので,あらゆる局面においてこれが最強という構築は,多分存在しないと思われる――定石といえるレベルに達しているビルドはあるが。

 

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 シナリオについては多くを語らないが,とりあえず全体に出血量が多いとだけはいっておこう。世界樹の迷宮,世界樹の迷宮II 諸王の聖杯と比べても,明らかに出血量は増えたが,個人的には好ましく思っている。迷宮探索はそうじゃなくちゃね!

 

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 また,ゲームシステム的な面においては文句のつけようがない。
 まず,とにかくダンジョンが多彩だ。これでもかというほどアイデアが盛り込んであるし,それが過度にパズル的にもなっていない。「こう来たか!」という新鮮な驚きを感じられるのは,迷宮探索において重要な要素だろう。
 「シナリオ演出に完全に組み込まれた戦闘」が存在しないのもいい。「強力無比なNPCが出てきて強敵を一刀両断」「一定ターン耐えていたら強力無比な(以下略)」「シナリオ進行で手に入るアイテムを使うと事実上,敵が即死」「シナリオ進行で手に入るアイテムを使わないと敵が倒せない」といった類の演出は,まったくないのだ。

 

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 世界樹の迷宮IIIにおいては,どれほど無理ゲーに思えても,迂回できない敵は,パーティが持つ力を振り絞って倒すしかない。外野の救援や,シナリオ的な都合は,一切存在しない。
 そして,ある程度までレベルが上がっていないと,ボス級の敵は果てしなく「無理ゲー」だ! どれくらい無理かというと,筆者でさえ「これってシナリオ的な救済があるんじゃないの」とか思ってしまうくらい。

 

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 だが,素晴らしいことに,この「無理ゲー」は,レベルを上げなくてもたいていの場合において解決できる。どう見ても無理,明らかに無理と思える状況を,工夫によって克服する――これこそ,世界樹の迷宮IIIの醍醐味であるといえるだろう(ただ,何の予兆もなく強敵との戦闘に巻き込まれる展開がところどころ発生するのはちょっと辛いが)。

 

 

シリーズ中,最も洗練された作品となった世界樹の迷宮III

 

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 世界樹の迷宮IIIは,シリーズのなかでは最も洗練された作品になった。「だいたいここらで小休止入れていいか」と思える迷宮のデザイン,気分転換に最適かつメインの進行にもご利益のある航海,ゲーム進行にはまったく寄与しないが存在することが嬉しいすれちがい通信,抱腹絶倒のマルチプレイなど,非常に美点の多い作品だ。
 もしまだこのシリーズをプレイしたことがないなら,世界樹の迷宮IIIから手をつけてみることをお勧めしたい。前2作とのストーリー的な連携はないので,「いきなりIIIから……」という心配はまったくない。
 レベルの上限は70(条件クリアでキャップが外れ,最終的には99)だが,シナリオクリアの範囲でいうならレベリングは必要のないゲームだ。むしろ思うに,レベリングしてしまうとこのゲームの面白みが減ってしまう。
 携帯ゲーム機とダンジョンハックの意外な相性の良さも含めて,ゲームを愛する人にこそ,ぜひ一度プレイしてほしい作品である。

 

■■徳岡正肇(アトリエサード)■■
 「ウィザードリィ」を必要以上の熱意でやり込んで以来,3Dダンジョンものに並々ならぬ熱意を見せるライターの徳岡氏。だが,このようなポップなキャラクターグラフィックスのタイトルを,しかもニンテンドーDSでやり込んでいるとは思わなかった。電車の中でDSを取り出し,ペンでツンツンしながら「む,そうきますか。なかなかやりますね。ふふふ」とかつぶやいているのだとしたら,それはそれで「さすが!」と言うしかないだろう。
  • 関連タイトル:

    世界樹の迷宮III 星海の来訪者

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