レビュー
元ポケモントレーナーにも声を大にしてオススメ。単純に一つのRPGとしても高い完成度を誇っているポケモンシリーズ最新作
ポケットモンスターブラック
本作は,言わずと知れたポケットモンスターシリーズの最新作。プレイヤーは,ポケットモンスター(ポケモン)とよばれる不思議な生物をパートナーとし,数々の冒険とバトルを繰り広げながら,最強のトレーナーを目指していくことになる。そのあたりは過去のシリーズ作と同様だが,国民的RPGのシリーズ最新作に相応しく,さまざまな部分がパワーアップしているのは言うまでもない。予約本数が,NDSソフト史上最多となる188万本を記録し,現時点での売り上げが400万本を超えているという,まさに“モンスター”タイトルである。
発売日からしばらく経ってしまったが,本稿では,実際にプレイした感想を交えつつ,その魅力をお伝えしていこう。
「ポケットモンスターブラック・ホワイト」公式サイト
新たな冒険の舞台と,新種のポケモン達
世界の“タブー”に切り込んだストーリー
その中でも大きな特徴となっているのが,ポケモンの一新だ。新たな冒険の舞台となる“イッシュ地方”には,これまで見たことのない新種のポケモンが多数生息しており,古くからのファンでも,まったく新しいゲームを遊んでいるかのような気持ちで楽しめるのだ。
その半面,「俺の相棒がいないなんて!」とガッカリした一途なトレーナーもいるだろうが……心配ご無用。過去作に登場した一部のポケモン達も,エンディングを迎えたあとでちゃんと登場するし,“ポケシフター”という施設を利用すれば「ポケットモンスターダイヤモンド・パール・プラチナ・ハートゴールド・ソウルシルバーから,お気に入りのポケモンを連れてくることも可能だ。
また,敵役のポケモン解放組織“プラズマ団”も,「分かりやすい悪役」では終わらない妙味を醸しだしており,過去作で主人公達の前に立ちはだかった“ロケット団”や“ギンガ団”などと比べても,見劣りしない独特の存在感を放っている。ぜひ注目してほしい部分だ。
加えて,ストーリーには直接関係しない「ミニスカート」や「やまおとこ」といったトレーナー達の個性までパワーアップしている。時折見せる行動や発言が実にエキセントリックかつブラックで,思わず「俺の知っているポケモンと違う……」と呟いてしまうほどハジケている。詳しくは実際にプレイして確認してほしいのだが,つい吹き出してしまったり,色々な意味でドキッとさせられたりというような場面が多かった。脇役一人にも手を抜かない徹底した“キャラ立て”は,もはや職人芸の域に達しているといえよう。
本作ではポケモンセンター,グローバルトレードステーション,フレンドリィショップが一か所に統合されており,利便性が大きく向上した |
従来シリーズでは使い捨てだった“わざマシン”が,何度でも使用可能になった点も見逃せない。しかしその分値段が跳ね上がっている |
バトルに関しては,主にジムリーダー戦の歯応えが増しており,NPC相手でもスリリングな駆け引きが楽しめる,見事なバランスに仕上がっていると思うのだが……さすがに草むらを2,3歩移動するたびに野生ポケモンが飛び出してくる出現率の高さには驚いた。この点に関しては,「お目当てのポケモンを狙いやすくなった」とポジティブに捉えることもできるし,一概に気になる点とも言えないのだが,ストレスを感じることがあったのも事実だ。筆者はプレイ中,ポケモンの出現率を下げる“むしよけスプレー”をフレンドリィショップで購入しまくって対応したが……財布にとってはノーフレンドリィであった。
より戦略性を増したポケモンバトル
通信要素も大幅にパワーアップ
システム面では,新たに追加された“トリプルバトル”と“ローテーションバトル”に注目したい。3vs.3で戦うトリプルバトルは,ポケモンの配置によって攻撃できる相手が変わるのが特徴で,ローテーションバトルは前衛1匹と後衛2匹を順次入れ替えながら戦うというルールだ。どちらも“読み合い”が非常にアツく,シングルバトルやダブルバトル以上に,二手三手先を考えて動くことが重要となる。
なお,通信対戦ではバトル中に“ミラクルシューター”というコマンドを選択可能。ターン経過でエネルギーが溜まっていき,そのポイントに応じてさまざまな道具を使用できるというシステムだ。上手く使えばバトルを有利に運べるだろう。
本作では,全国のプレイヤーと対戦する“ランダムマッチ”も可能となった。独自ルールとして制限時間が設定されており,待ったなしの真剣勝負を楽しむことができる |
設定した条件に見合った相手を自動検索し,ポケモン交換を行うGTSネゴシエーションも搭載。残念ながら旧作との互換性はない |
“ポケモンドリームワールド”では,眠らせたポケモンの夢に入り,そこで特殊なポケモンや道具を手に入れてゲームに持ち込むことができる |
また,ワイヤレス通信を利用してほかのプレイヤーの世界に行く“ハイリンク”というシステムも新たに追加されており,さまざまなミッションをクリアすることで得られる“デルダマ”を消費して“デルパワー”を発動可能。デルパワーには「獲得経験値アップ」や「道具値下げ」といったさまざまな種類があり,自分だけでなく近くのプレイヤーにも効果を発揮するので,積極的に利用すれば,プレイの幅が大きく広がる。
もちろんすれちがい通信にも対応。周囲にいるトレーナーのステータスがチェックできたり,ちょっとしたチャットを楽しめたりもするのだが,ストーリーを進めていけば,趣味や仕事に関するアンケート調査なども行える。
なおこれは余談だが,東京在住の筆者は電車に乗るたびに,大体30人前後のプレイヤーとすれ違っており,そのたびに,ポケモン人気の凄まじさに驚かされる。座っているだけでみるみるすれちがいログが更新されていくので,しまいには周りの人々がみんなポケモントレーナーに見えてくるのである。一瞬,本当にポケモン世界に入れたような気がして,ガラにもなく子供のようにワクワクしてしまった。
そしてもうひとつ,“ポケモングローバルリンク”(PGL)についても触れておくべきだろう。PGLはWebと連動したサービスで,Wi-Fi通信を通じてゲームのレポートをサーバーにアップロードすることで,各種データやランキングを確認したり,ブラウザゲームをプレイしたりできる。さらに,ポケモン図鑑やCギアをカスタマイズするスキンが配信されているほか,フレンド間でのメールのやりとりも可能となっており,コンテンツの充実度はかなりのものだ。
PGLは,(大人気ゆえの)アクセス集中によるシステム障害で,9月19日からサービスを停止していたが,現在ではメンテナンスを終えて復旧。サービスは再開されているので,安心して利用してほしい。
新たな一歩を踏み出した「ポケモン」
今後の展開からも目が離せない!
あえて重々しいテーマを主軸に据えた挑戦的なストーリーや,歯応えの増したバトル……これまで築き上げてきたブランドイメージを抜きにしても,単純に一作のRPGとして高い完成度を誇っている。食わず嫌いでスルーしたら,確実に後悔することになる傑作だ。
シリーズファンにオススメしたいのは当然として,ポケモントレーナーとしてデビューするのにも最適なタイトルである。また,長らくポケモンから離れていたという“元”トレーナー達にも,ぜひ本作をプレイしてもらいたい。ポケモンバトルに明け暮れた子供時代と同じように……いや,あの頃以上に,ポケモンという作品を楽しむことができるはずだ。とくに通信要素周りのパワフルさに,驚かされること請け合いである。
間違いなく,ポケットモンスターシリーズのターニングポイントになったといえる「ポケットモンスターブラック・ホワイト」。本作はお世辞抜きでも1年くらいは遊び続けられる作品なので,次回作(やはり……3DS用?)の姿をアレコレ妄想しつつ,ポケモントレーナーとしての腕を磨き続けたいと思う。
「ポケットモンスターブラック・ホワイト」公式サイト
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(C)2012 Pokémon. (C)1995-2012 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
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