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[CEDEC 2010]水森亜土さんみたいに絵が描けるゲーム……だと!? SCE JAPANのスタッフが解説するPlayStation Move対応タイトルの作り方
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印刷2010/09/03 19:11

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[CEDEC 2010]水森亜土さんみたいに絵が描けるゲーム……だと!? SCE JAPANのスタッフが解説するPlayStation Move対応タイトルの作り方

 ゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2010」において,「PlayStation Moveタイトルの作り方」と題されたセッションが,SCE JAPANの開発スタッフによって行われた。
 このセッションでは,10月に発売される予定のPS3用モーションコントローラー「PlayStation Move」に対応したタイトルを作る際に知っておくと良いことや注意点などが,実際にゲーム開発を行ったSCE JAPANの実経験を絡めつつ,紹介された。

ソニー・コンピュータエンタテインメント制作部エグゼクティブプロデューサーの池尻大作氏
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 SCEの池尻大作氏によれば,ファーストパーティであるSCEのJAPANスタジオでは,Moveの面白さを多くの人に知ってもらえるようなゲームを作るために,開発時には以下の2点を強く意識したそうだ。

  • 直感的な操作で簡単に遊べる
  • ゲームが不得意な人でも気軽に遊べるゲーム体験

そして,「直感的操作とは何か?」ということをさらに考えた結果,Moveではコントローラーを現実にある何かに「見立て」ることが,もっとも素直なアプローチであるという考えにたどり着いたという。

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 すると次は「何に見立てるか」という話になる。アイデアは色々存在した。まず考えついたのは“バット”“ラケット”といったスポーツ用具とシューティングゲーム用の“銃”だったという。しかしこれらを使ったゲームは,サードパーティが有名IPとからめたりしつつゲーム化する可能性が高いので,SCE JAPANとして取り組むことはしなかったそうだ。

 そのほか日常にある道具に見立てるアイデアもたくさん出たが,やはりすべての道具や行動が面白いゲームになるわけではなく,それらの中にはゲーム化に至らなかったものもたくさんあったそうだ。最終的には“ペン”“ライト”“あみ”が残り,SCE JAPANではこれらを使ったゲームを作ることになった。


■「Beat Sketch!

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 「Beat Sketch!」はコントローラーを“ペン”に見立てる作品。これはもともとのアイデアは“絵描き歌のゲーム”であり,“水森亜土さんみたいに遊べるゲーム(!)”だったそうだ。しかし調査を進めていくと,なんと,海外には日本の絵描き歌に該当するものが存在しないということが分かった。それならばカラオケのように文化の輸出を――という風にも考えたが,さらに調べるうちに,絵描き歌のニュアンスを翻訳して外国の人に分かってもらえるようにするのはとても難しいという結論に至る。そこで方向を大きく転換して,最終的には“歌に合わせて絵を描く”ではなく,“描くことで音楽を奏でる”ゲームになったそうだ。

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 PlayStation Moveは先行他社のモーションコントローラーとは違い,カメラ(PlayStation EYE)とセットで使用する。「Beat Sketch!」では,このカメラで自分の姿を画面に映して,その状態で画面に絵を描くことになる。この辺はなんか亜土ちゃんっぽい!。
 プレイ中は,BGMがループするリズムを刻んでいる。そしてプレイヤーが何かを書くと,そのとき音が発生し,発生した音はループの中に組み込まれる。本作は,そのようにしていろいろな音色をミックスしていくことで“音作り”や“リズムアクション”などを楽しむゲームとなるようだ。

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ソニー・コンピュータエンタテインメント制作部プロデューサーの椎名 寛氏
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 舞台上では,SCEの椎名 寛氏によってゲームが実際にプレイされ,画面上に絵を描く様子が実演された。通常の線を画面に描いていく様子は,なんとなく事前にイメージしていたものに近かったが,スプレーとハケを使う様子は印象的だった。MoveはZ軸(上下左右ではなく“前後”の軸)の検出精度が高いらしく,スプレーを使う際には,コントローラーを画面から話すと塗料が散らばり気味になり,近づけると集中するようになっていた。また傾きの検出も行われるので,ハケでは太い線も描けるし,そのまま90度ひねれば細い線も描ける――という具合になっていた。


■「無限回廊 光と影の箱

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 「無限回廊 光と影の箱」は,“だまし絵”を利用したパズルゲーム「無限回廊」の続編にあたる作品だ。本作では,Moveを「懐中電灯」に見立てて,画面に映るオブジェクトを照らし,その向こうに影を作る。そしてこの影の上を歩く人形をゴールへと導いていく。

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ソニー・コンピュータエンタテインメント制作部アソシエイトプロデューサーの鈴田 健氏
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 SCEの鈴田 健氏によれば,本作開発の際には,ゲーム内の“光”の動かし方に苦戦したそうだ。アプローチには2とおりあり,一つは「カメラを恒星,コントローラーを惑星に見立てる方法」,もう一つは「対象を直接,スポットライトのように照らす手法」だという。
 前者はプレイヤーの動きを大きく(つまり遊んで面白く)できるが,感覚的に仕組みを理解しづらい。後者は素直にルールを理解できるが,プレイヤーの動きは小さくなってしまう。この両者をどうゲームとして消化していくかという部分で,苦労があったとのことだ。

 また,Moveは精度が高いために,手を止めたときの震えといった動きまで拾ってしまう。それで影がぷるぷるしてしまうといけないので,そこはわざと検出に“遊び”を持たせることで対応したそうだ。


■「フリフリ! サルゲッチュ

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 「フリフリ! サルゲッチュ」ではMoveをアミに見立ててサルを捕まえて遊ぶ。だがこの作品ではアミ以外にも,Moveをいろいろなものに見立てるシーンが登場するとのことだ。

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 今回Move用のサルゲッチュを作るに当たっては,Moveでしかできない体験を追求するために試行錯誤を繰り返し,その結果,これまでのシリーズに共通していたルールを変更するに至ったという。これまで三人称だった視点は一人称視点となり,プレイ内容は“サルを追いかけるゲーム”から“向かってくるサルと対決するゲーム”に変わった,そうしたおかげで,簡単な操作で誰もが遊べる作品になったとのことだ。


■「街スベリ

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 「街スベリ」は,キャスターの付いたイスに逆さにまたがって,坂道を滑り降りていくという作品。ルックス的にかなりインパクトのあるタイトルだ。

 先に出た3作がMoveを何かに「見立て」ていたのに対し,街スベリではコントローラーを何にも「見立て」ていない。操作系は,コントローラを振ると足で漕いで加速,上に突き上げるとジャンプ,水平に突き出すとダッシュといった感じで,身体を大きく動かすことを楽しめるゲームになっている。“突き出す”という動きは,先ほどもあった精度の高いZ軸を利用した,Moveならではのものだろう。

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「フリフリ! サルゲッチュ」と「街スベリ」の事例紹介をしたソニー・コンピュータエンタテインメント制作部シニアゲームデザイナーの飯島貴光氏
画像集#021のサムネイル/[CEDEC 2010]水森亜土さんみたいに絵が描けるゲーム……だと!? SCE JAPANのスタッフが解説するPlayStation Move対応タイトルの作り方
 開発において苦労したのは,自分の動きとゲーム内のキャラクターの動きを違和感なくつなげることだったそうだ。例えばひと口に「振り上げる」といっても,人によってその距離は40センチだったり1メートルだったりする。すべての人の動きを検出できる判定方法を見つけだすために,何度も何度も調整を重ねたとのことだ。その結果,街スベリはまるでアーケードの体感ゲームのようなプレイ感覚を持つ作品に仕上がったそうだ。


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 努力の甲斐あって,これら4作品はすでに,日本のみならず海外でもリリースされることが決まっているそうだ。セッションの最後に再び登場した池尻氏は,Moveではアイデア重視のコンパクトなゲーム制作も可能であり,そのようなMoveの性質は,小規模なチームとひねりのきいたアイデアで勝負する“日本のゲーム作りのスタイル”に向いているとまとめ,参加した開発者達に,Moveの持つ可能性の大きさをアピールした。

 モーションコントローラーとしては後発となるMoveだが,検出精度が高いという特徴を活かし,PS3自体が持つ高い描画性能と組み合わさることで,新しい楽しさを生み出すポテンシャルを持ったデバイスであるようだ。見たこともないようなアイデアが使われる,興味深い作品が多く生まれることを期待したい。
  • 関連タイトル:

    PlayStation Move モーションコントローラー

  • 関連タイトル:

    フリフリ! サルゲッチュ

  • 関連タイトル:

    Beat Sketch!

  • 関連タイトル:

    街スベリ

  • 関連タイトル:

    無限回廊 光と影の箱

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