レビュー
リバティーシティのお楽しみは,まだまだ終わらないよ
グランド・セフト・オート: エピソード・フロム・リバティーシティ
6月10日,Take Two Interactiveの日本法人,Take-Two Interactive Japanより,Rockstar Gamesの「グランド・セフト・オート:エピソード・フロム・リバティーシティ」(PlayStation 3/Xbox 360。以下,GTA: EFLC)が発売された。GTA: EFLCは世界中で大ヒットした,「グランド・セフト・オートIV」(PlayStation 3/Xbox 360。以下,GTAIV)用の外伝的エピソード2本をワンパックにしたものだ。
2本のエピソードとは,バイカーギャング「ザ・ロスト・モーターサイクル・クラブ」(以下,ザ・ロスト)の副リーダー,ジョニー・クレビッツとしてミッションをこなしていく「ザ・ロスト・アンド・ダムド」(以下,TLAD)と,ナイトクラブを経営する実業家,トニー・プリンスのビジネスパートナー兼用心棒のルイス・ロペスを主人公にした,「バラッド・オブ・ゲイ・トニー」(以下,BOGT)のこと。
ゲームの舞台はもちろんリバティーシティ。時間軸はGTAIVと同じで,ストーリーを進めていくと本編で登場したキャラクター(主人公のニコや,彼の友人ローマン,そしてハイテンションなマッチョマンのブルーシーなど)も登場する。街を探索すると,GTAIVと同じ場所に銃や防弾チョッキといったアイテムが落ちていたり,ニコの隠れ家となっているマンションや,とある事件で焼かれて廃墟になったローマンのタクシー会社なども見られる。すでに本編を終わらせたプレイヤーにとって,別の主人公の視点でリバティーシティを見直すという,なかなか新鮮な体験ができるのだ。
現時点では,TLADはオンライン配信されているものの,日本語版のBOGTは未配信。したがって,どちらも日本語版で遊びたいのなら,これを買うのが手っ取り早い。また,GTA: EFLCは単体で起動するので,GTAIV本編を持っていなくてもプレイ可能だ。
ちなみに,海外ではTLADが2009年2月に,またBOGTが同年10月に配信されているので,日本語版が出るまでかなり待たされた感がある。しかし,その分ローカライズは丁寧に行われており,会話やインタフェースまわりなどがしっかり日本語に置き換えられている。GTA4はシリアスなストーリーが面白さの大きな要素なので,そういった意味でも,世界観を壊さずにゲーム内容がきちんと和訳されているのは嬉しい話だ。
というわけで,今回のレビューは,シングルプレイを中心に見ていこうと思う。使用したのはXbox 360版だ。
ザ・ロストのメンバーとして,リバティーシティを生き抜く
TLADの主人公,ジョニー・クレビッツは,バイカーギャング団の副リーダーを務める人物だ。GTAIVでもいくつかのミッションで登場し,ニコと行動を共にしたこともあるので,覚えている人も多いのではないだろうか?
TLADのプロローグは,ドラッグ関係の犯罪でリハビリ施設に収監されていたリーダー,ビリー・グレイを迎えに行くところから始まる。ビリーはやたらと好戦的で,敵対するものは容赦なく殺し,力を誇示するような男だが,対するジョニーはビジネスに励んで組織の拡大を図ったり,敵対するギャング「デス・エンジェルズ」と停戦協定を結んだりと,どちらかといえば穏健派だ。
この二人の考えの違いからメンバー間で不和が起こり,とあるミッションを契機にザ・ロストは分裂する。
バイカーギャングの生き様に焦点を当てていることもあり,バイクは重要な要素だ。チームで移動するときは全員が隊列を組んで走るのだが,きれいに隊列が組めるとザ・ロストのエンブレムが路上に描かれ,体力や防弾チョッキの残量が回復していくという効果があるのだ。集団で風を切って走るのは気持ちがよく,ラジオからDeep Purpleの「Highway Star」が流れてきたりして,ベタな演出だがニヤっとさせられる。
バイク以外に自動車やヘリコプターなどを運転することも,もちろん可能だが,バイクに乗っているときのみ発生するイベントがあるなど,彼らの足を生かした作りになっている。
バイクで移動中,隊列が決まればこのようにザ・ロストのエンブレムが出現する |
クラブハウスでは,メンバーがカードゲームや,腕相撲などをしている |
新たな武器が登場するのも魅力だ。アサルトショットガンは,とにかく強力そのもの |
ミッションの中には,囚人護送車を強奪し,指定の場所まで送り届けるといったモノも |
ザ・ロストの溜まり場となっているクラブハウスは,ヘヴィ/デスメタルが鳴り響き,ビリヤードやハイ&ロー(カードゲーム),あるいは腕相撲などを楽しむことができるという,いかにもな場所。またここはセーブポイントも兼ねているので,利用頻度は非常に高い。
GTAIV本編に比べて,さまざまな武器が追加されたのも特徴の一つといえるだろう。銃身をカットして片手でも扱えるようにしたソウンオフ・ショットガン,連射可能な9mmオートマチック,グレネードを撃ちこむグレネードランチャーなど,かなり物騒だ。そんな追加武器の中でもとくに強力なのが,アサルトショットガンだ。これはアサルトライフルの連射性能と,ショットガンの威力を併せ持つ武器で,凶悪そのもの。人間相手にはもちろん,パトカーやバイクなどもあっという間に破壊してしまう。こうした強力な火器を用いて,数々のミッションに挑んでいくわけだ。
待ち受けているミッションとしては,ザ・ロストのメンバーをゆすっている汚職警官達をおびき出し,仲間の協力を得て始末したり,リバティーシティの政治家,トム・スタッブスの依頼で彼の叔父を暗殺したりと,実にバイカーギャング向きのダーティーな仕事の数々が用意されている。
個人的には,ドラッグディーラーのエリザベータから請け負う最初のミッションが面白かった。ミッションを進めていると,なんとニコとサブキャラクターのプレイボーイXが登場するのだ。GTAIVでこなしたミッションをジョニーの立場でプレイするわけだが,「あのとき,同じ場所でこんなことが起きていたんだ」という驚きが味わえた。
仲間に協力を依頼して,メンバーの絆を強めていこう
GTAIVから携帯電話を使って仲間と連絡をとれるようになったが,それはTLADでも同じ。ジョニーはザ・ロストのメンバーのうち,ジム,テリー,クレイの三人と仲がよく,彼らと一緒にレストランやストリップバーに行ったり,ビリヤードやエアホッケーで対戦したりできる。三人のうち,誰かに連絡を入れると残りの二人もついてくるので,四人で行動することになり,一気に三人分の好感度を上げられるのも便利だ。
ジム,テリー,クレイは,武器を配達してくれたり,指定したバイクを届けてくれたりといった特殊能力をそれぞれが持っている。GTAIVでは,一定レベルまで好感度を上げないとフレンドの特殊能力が使えなかったが,TLADでは最初から使用可能なのだ。
ストーリーミッションのほかに,「ギャングウォー」というサブミッションも用意されている。これはザ・ロストのメンバーを引き連れ,敵対するギャング(デス・エンジェルズ以外にも,いくつかの敵対勢力がいる)を襲撃するというもの。
これをクリアすると,生き残ったメンバーのタフネス(体力)さがアップするほか,テリーとクレイが所持する武器がアップグレードされるというRPG的っぽい仕掛けがある。
ちなみにギャングウォーを10回クリアするごとに,クラブハウス内に新たな武器が置かれ,クリア回数が増える(最大で50回)ほど,強力な銃を入手できるようになる。つまり,メンバーを鍛えることが,自分のメリットにもつながるわけだ。
ほかにもバイクレースや,携帯電話で引き受ける数多くの秘密のお仕事(指定されたバイクを盗んでクラブハウスに届けたり,トム・スタッブスの依頼で,ライバルの政治家のスキャンダルの証拠を見つけて届けるなど)も用意されており,やり込み要素は相変わらずたっぷりだ。ストーリーに絡むものではないので必ずしもやる必要はないが,報酬は悪くない。
敵対するギャングを倒す「ギャングウォー」 |
バイクレースは,もちろんただのレースではない |
バラッド・オブ・ゲイ・トニーでは,伝説のクラブオーナー
トニー・プリンスの右腕として,さまざまなミッションに挑む
BOGTの主人公であるルイス・ロペスは,名前こそ出ていないが,ジョニーと同様,GTAIVにも姿を見せる人物だ。ドラッグの密売で逮捕され服役。出所後は,リバティーシティで二つのナイトクラブを経営するトニー・プリンス(通称:ゲイ・トニー)のビジネスパートナーとして,クラブの用心棒や厄介ごとの対処に活躍している。
一見華やかに見えるクラブ稼業。その中心にいる伝説的なオーナーのトニーだが,クラブ運営のため,危ない組織を含めてさまざまなところから借金をしており,そのストレスから精神的にかなりボロボロになっているようだ。ルイスはトニーの借金返済を手助けするため,金の貸主から突きつけられる,さまざまな仕事に駆り出されることになるのだ。
ミッションではトニーのほか,GTAIVに登場したブルーシーの兄であるモーリや,リバティーシティで不動産開発をしているドバイ出身の超大金持ち,ユスフなど,強烈な個性を持つキャラクターが数多く登場する。筆者はGTAIVをかなりやりこんだ口であり,キャラクターの中ではとくにハイテンションなブルーシーがお気に入りなのだが,BOGTに出てくるブルーシーは,兄モーリの前ですくんでしまい,どこかオドオドしている。彼の意外な一面を見る思いだ。
用意されたミッションには,かなりぶっ飛んだものが多く,リバティーシティ内でトライアスロン(ヘリからのパラシュート降下→ボートレース→自動車レースの三種をこなす)をしたり,「警察がヘリで輸送しているAPC(装甲車)を強奪し街でひと暴れしたあと,所定の場所へ届ける」「指定されたターゲット(建設現場のクレーン,地下鉄,プライベートジェット)を破壊する」など,爽快感満点のド派手なものが目立つ。
これらミッションに挑むために,改良型マシンガン,当たると爆発する榴弾も発射できるオートショットガン,ゴールドSMG(純金のウージー),リモコンで起爆する粘着爆弾など,TLAD同様にさまざまな武器が追加されている。この中では,やはり榴弾を使えるオートショットガンが強烈で,攻撃ヘリでもあっという間に破壊してしまう。
また,上でもちょっと触れているように,シリーズとしては久しぶりに装甲車が登場する。例によって耐久力は非常に高く,弾数無限のキャノン砲も装備しているという強力ぶりなので,これで暴れてみるのも一興だ。ただし,BOGTの警官はかなり手強くなっており,手配度が星4つになるとドライブバイ(車両に乗ったままこちらを銃撃する技)までしてくるので,振り切るのはかなり面倒だ。TPOを忘れずに暴れよう。
BOGTでは,ミッションクリア時に,達成した目標(クリア時間や受けたダメージの量,ヘッドショットの回数など)が表示され,それらが多いほど高評価が得られる。そのため,リプレイアビリティは相当高いといえそうだ。しかも,再挑戦のミッションに,ゲームクリア時に装備していた武器をそのまま持ち込めるため,序盤のミッションなどは強力な装備であっという間に終わらせられるはずだ。
ただ,全体的に難度の高いミッションが多く,高い評価を獲得するのはなかなか厳しい。一回のプレイですべての目標を達成しなければならないわけではないので,「最速クリアを目指す」「ヘッドショットを達成する」というように,目標を決めてプレイしていけば,いつか100%を達成できるはずだ。
ベースジャンプ,クラブマネージメント,ドラッグウォー
リバティーシティには,お楽しみがいっぱい
BOGTに導入された新要素からいくつか紹介しよう。まずは「ベースジャンプ」だ。これはいくつかのパターンがあるが,ヘリで飛び立ってダイブしたり(ベースジャンプではないような気がするが),バイクに乗ってジャンプ台から飛び,空中でバイクを乗り捨ててパラシュートを開いたりなど,スタント的なアクションが楽しめる。ただ飛び降りればいいというわけではなく,空中にあるチェックポイントを通過したり,決められた着地点に降りなければ失敗となるなど少々難しい。パラシュートのコントロールには慣れが必要だが,メインミッションでもパラシュートを使ったものがいくつもあるので,ベースジャンプで練習するとよさそうだ。
続いて「クラブマネージメント」。これは,ルイスの本業であるクラブの用心棒という役割を体験できるもので,指定された場所で客同士のトラブルが起きてないかチェックしたり,クラブの外に出て,パパラッチに取り囲まれているセレブを助けたりなど,さまざまなイベントが起こる。
なお,クラブのダンスフロアでは,客と一緒に踊ることも可能で,集団で踊るのはとても面白い。
「ドラッグウォー」はストーリーを進めるうちに解除されるもので,ルイスの親友でディーラーのアルマンド,エンリケの三人で行うサブミッションとなる。
ミッションが始まるとリバティーシティのいたるところにギャングが現れるので,彼らからドラッグを強奪し,定められたポイントに運べばクリアだ。
ギャングは徒党を組んで武装しているので,激しい銃撃戦となりがち。そのため,強力な銃や防弾チョッキなど,事前の準備も大切になる。なお,ドラッグウォーで登場するギャングの車は,彼らオリジナルのカラーが施されているレア車なので,それを強奪するのも面白いだろう。
なお,ドラッグウォーも,TLADのギャングウォーと同様に,クリアした回数によって武器が隠れ家に置かれるようになっている。
マルチプレイには対戦,協力プレイなどが用意され
豊富なルールで楽しめる
最後に,マルチプレイについて軽く触れておくことにしよう。TLAD,BOGTともに,携帯電話でメニューにアクセスすればマルチプレイが楽しめる仕組みだ。
マルチプレイには,対戦結果がランクに影響するランクマッチ,ランクに影響しないプレイヤーマッチ,パーティーを組んでマッチングするパーティーモードなどがあり,最大16人のプレイヤーが参加できる。ルールは「デスマッチ」などオーソドックスなものから,N.O.O.S.E.(警察の特殊部隊)とザ・ロストに分かれて戦う,「証人保護プログラム」など,さまざまなものが用意されている。
プレイしたところ,やはり目的を決めずにワイワイ騒げる「フリーモード」に人が集まっているようだった。車を奪って街を爆走したり,戦闘ヘリに乗ってほかのプレイヤーを攻撃したり,みんなでベースジャンプをしたりと,なんでもありのお祭りのようで面白い。
デスマッチなど対戦系のルールでは,銃を撃って相手を倒しまくり,倒されたら即リスポーンで,また撃ち合うといった感じで,ちょっと大味な印象だ。
以上,二本のエピソードが収録されたGTA: EFLCだが,エンディングを迎えるのにそれぞれ10時間ほどかかり,さらにやりこみ要素もたっぷりあるので,ボリューム的には十分だ。
とくにBOGTは,エンディング後にミッション単位でのリプレイが可能になっており,実績にも「すべてのミッションで80%以上(もしくは100%)のスコアを獲得する」というものがある。こうした実績の達成を目指せば,かなり長く遊べるはずだ。
GTA: EFLCはもともとDLCでありながら,本編以上に遊びごたえのある内容になっており,非常にお買い得なコンテンツだといえる。GTAIVのプレイヤーはもちろん,未体験の人はぜひともGTAIVと一緒に購入して,魅力に触れてほしい。
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(C) 2010 Rockstar Games, Inc.
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