レビュー
前作の不満点を解消し,遊びやすくなった「トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士2〜」は,腰を据えてじっくりと遊びたい一本だ
タイトルにあるように,今作は前作「ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜」(以下,ロロナのアトリエ)に引き続き,アーランド王国を舞台にしたシリーズの2作め。
初のPS3タイトルとなった前作「ロロナのアトリエ」では,キャラクターデザインに岸田メル氏を起用したことが起爆剤となり,数多くの新規ファンを獲得。今回もキャラクターデザインを,岸田メル氏が引き続き担当しているのだが,氏のイラストがほぼそのまま3Dで動いている! と,前作以上に感じられる仕上がりになっているのが最大の特徴だ。
このシリーズに限らず,これまでもイラストレーターの描くイラストを,忠実に3Dで再現しようという試みは行われてきているが,どうしても雰囲気を損なってしまい,狙ったような効果をあげられないことが多かった。しかし本作では,本当の意味で2.5次元世界を旅しているような気分になれるのだ。
念のため,あらかじめ断っておくが,本作は“ギャルゲー”ではなく,れっきとした“RPG”だ。見た目だけで判断し,ギャルゲーだから……ということで,何となく本作を避けている人がいるかもしれないが,先入観を捨てて一度プレイしてみるといいだろう。
「トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士 2〜」公式サイト
ストーリーは,母をたずねて三千里?
本作の目的は,冒険者として活躍していたものの,数年前から音信不通となってしまった母親を捜すこと。
そのために主人公のトトリは,前作の主人公であるロロナに教えてもらった錬金術を駆使し,一緒に冒険へ出かけてくれる仲間達と共に旅しながら,母親の手がかりを探していく。
とはいえ,トトリは13歳のか弱き錬金術士。1人では冒険者としてやっていけないので,何人かの仲間と共に旅をしていくことになる。
ゲームが始まると,ジーノと一緒にパーティを組み,
というチュートリアルをプレイしていく。トトリが新しいアイテムを創り出すには,その材料となるアイテムを入手しなければならないのだ。
ゲームを進めていくにあたり,頻繁に採取地へと繰り出すことになるのだが,今作では歩き回った日数に応じて「LP」と呼ばれるパラメータが少しずつ減っていく。これが最大値の25%以下になると,戦闘に関係するパラメータにペナルティがかかってしまうので注意しよう。
採取地に到着したら,いよいよ採取開始。方法は簡単で,フィールドに見える吹き出しの部分へ近づき,○ボタンを押すだけ。すると,いくつかの材料がまとめて入手できるので,欲しいアイテムにチェックを入れてOKを押すと,手持ちのカゴへと収納される。そして,これと同時にゲーム内で一定時間が自動的に経過していく仕組みだ。
このあたりはニンテンドーDS版のアトリエシリーズに似ていて分かりやすく,子供の頃に田舎の山でアミを持って虫取りをしていたときのように,“採取している気分”を味わえるのが嬉しい。
フィールドにはモンスターがうろついており,接触すると戦闘が始まる。先に□ボタンを押して杖で相手を殴れば,先制攻撃も可能だ。
戦闘は,素早い順に行動するコマンド式バトル。画面左下に表示されているイラストの順にターンが回ってくるので,先を見越してアクションを起こそう。
前作は,戦闘が遅い・テンポが悪いとの評判も一部にはあったが,本作ではそれを見事に払拭している。あくまで個人的な感想だが,こちらの予想以上にサクサクとターンが進んでいく様は,今どきの2D RPGの戦闘シーンにも劣らないと思えたほど。正直,かなり爽快だ。
戦いでは,トトリはただの幼い少女なので,周りのサポートがないと簡単にやられてしまう。逆に,敵がトトリを攻撃してきたとき,条件を満たしていればパーティメンバーの助け(アシスト)を受けることができるのだ。また,トトリがアイテムを使ったときは追加攻撃もできるので,上手にサポートして被害の少ないうちに戦いを終わらせたい。
アシストするには,画面にセリフが表示されている間にボタンを押さなければならないものの,思った以上に時間的余裕があるので,焦らなくてもいいのは評価すべき点。これなら,反射神経が鈍くて……という人でも,安心して楽しめる。
何度でも楽しめる採取と調合
採取地にて材料を採り終えたら,村にある自室に戻って調合開始だ。村に入ると自動的に自室に移動するだけでなく,採取したアイテムを自宅にあるコンテナに入れますか? と聞いてくるので,もの凄く楽である。些細なことながら,こういった細かな部分への配慮が行き届いているため,ストレスなく気持ちの良いプレイが楽しめた。
調合には,その手順が書かれたレシピが必要となる。レシピは,ダンジョンにある宝箱で見つけたり,お店で売っているものを買ったりすることで,入手可能だ。トトリの自室にある釜の前で○ボタンを押すと調合メニューが表示されるので,創りたいアイテム,および数を選択。
すると,画面中央にカードが表示され,必要となる材料を選ぶ画面に変わる。ここで,カードを選択してボタンを押すと,右上に材料一覧が出てくるので,そこから使いたい材料を選んでしまえば終了だ。
調合と聞くと難しそうに思えるかも知れないが,プレイヤーがするべきことは創りたいアイテムと数,材料を選ぶだけ。単純明快で,複雑な操作も必要としないので,頭を空っぽにしても楽しめる。
調合に成功すれば,めでたく新アイテム誕生! だが,トトリのレベルが足りないと失敗することがある。とはいえ,今作では“失敗すること”も重要で,従来シリーズのように失敗したら即,前のセーブデータをロード……なんてことをしていると後悔することになる,とアドバイスしておこう。
なお,完成したアイテムには特徴を付与できるので,一覧の中からピックアップして付けておこう。同じアイテムでも,違う特徴を与えることで,性質の異なる効果を持たせることが可能なのだ。例えば,攻撃範囲が広い爆弾,ピンポイントに大ダメージを与える爆弾など,プレイヤーの都合に合わせたアイテムを創れるというわけだ。
これにより,プレイヤーがゲームに合わせるのではなく,ゲームをプレイヤーの攻略スタイルに合わせられるため,納得のいく方法でゲームを進められるのも嬉しい配慮といえよう。
この後,冒険者となるためにアーランドの街へと出向いて冒険者免許を発行してもらうと,一気に移動できる範囲が広がる。そうなると,街などでの移動に少々面倒くささを感じるようになるかもしれないが,スタートボタン一つでショートカット移動も可能になるのでご安心を。
ここから先は一定期間ごとに冒険者免許を更新するため,依頼をこなしながら必要になるポイントを稼ぎつつ,母親の手がかりを求めて世界中を歩き回っていく。移動先によって出現する敵が違うのはもちろん,採取できる材料も異なるので,すべての場所を効率的に回りながら調合しつつ,依頼をこなしていくことになる。
どこまでもやりこめる本格派RPG,それが「トトリのアトリエ」
逆に,テンポ良く進みすぎるため,止め時がなかなか見つからないのには正直悩まされた。世間での盛り上がり方を見ると,ギャルゲー的な要素ばかりが注目されているようだが,実際には最初に書いたとおり,かなり奥深いRPGとして仕上がっていることがよく分かるはず。
数多くのイベントや,10種類以上にも及ぶエンディングが用意されているなど,一度のプレイですべてを見ることは不可能なボリュームに加え,調合できるアイテムも多いため,コンプリートを目指すといったやり込み要素も数多く盛り込まれている。もちろん,これまでのシリーズ同様,ガストサウンドスタッフによる,心に残る渾身のBGMも健在だ。
手軽にゲームが遊べる媒体として携帯ゲーム機や携帯電話が普及している今日この頃だが,トトリのアトリエは腰を据えてじっくりと遊びたい一本といえるだろう。
「トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士 2〜」公式サイト
- 関連タイトル:
トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士 2〜
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(C)GUST CO., LTD. 2010