プレイレポート
ファン待望のシリーズ最新作「英雄伝説 零の軌跡」ネタバレ心配無用の安心プレイレポート
シリーズ累計販売本数が90万本を超えたという点からも,多くのファンに支持されていることが容易く想像できるだろう。そして,そのファンの人達がまだかまだかと声高に待ち望んでいたのが,9月30日に発売となった,シリーズ最新作「英雄伝説 零の軌跡」だ。
なぜ,そこまで待望されていたのかは,もちろんファンの人にとっては言うまでもないこと。これまでのシリーズで大きな事件は解決されたものの,黒幕の組織の実態は解明されていないまま。クロスベルへ向かったというエステルとヨシュアの,その後も気になる。レンもあの後どうなったのか,考え出すとオチオチ眠れやしない。
……などなど,要するに現時点で明らかになっていない点がたくさんありすぎて,早く続きが知りたくて居ても立ってもいられない状態なのである。
それでは「零の軌跡」がどのような作品に仕上がっているか,ストーリー上のネタバレは極力避けながらレポートしていこう。
「英雄伝説 零の軌跡」公式サイト
日本ファルコム代表取締役 近藤季洋氏に訊く
「英雄伝説 零の軌跡」インタビュー
リベール王国の異変から1年……
新たな主人公による,新たな物語が幕を開ける
「零の軌跡」は空の軌跡シリーズの続編にあたり,リベール王国での異変が解決してから1年後という設定になっている。しかしながら,舞台となる地はリベール王国周辺を離れ,カルバード共和国とエレボニア帝国に挟まれるようにしてゼムリア大陸西部に位置する「クロスベル自治州」に移された。
そして主人公も遊撃士のエステルとヨシュアではなく,クロスベル警察特務支援課に所属する「ロイド・バニングス」「エリィ・マクダエル」「ティオ・プラトー」「ランディ・オルランド」の新顔4名となった。
クロスベル自治州は貿易と金融で発展を遂げてきたが,共和国と帝国の干渉を受け,政治汚職が広がり,マフィアや犯罪組織が台頭するという闇の面を抱えている。そんな場所なせいか,警察の看板は名ばかりで,市民からの信頼も地に落ちていた。
そうした中,クロスベル警察のセルゲイ・ロウが,市民からの依頼をなんでもこなしていくという「特務支援課」を新たに設立。この活動によって警察の地位向上を目指していこうというのであった。……と言えば聞こえはよいが,要は遊撃士の人気にあやかったパクリ業務であり,幸か不幸か,そこに招き入れられてしまったのがロイド達4人というわけだ。
見るからに曲者といった印象のセルゲイ・ロウ。特務支援課を立ち上げた張本人であり,ロイド達の上司。表向きは放任主義だが,裏ではいろいろと根回ししてくれている……のか? |
まったく統一感のない4人がいきなりチームを組まされ,市民のお助け隊をやることに。捜査官の資格を持っているロイドが釈然としない態度なのも,頷けるというもの |
本作は空の軌跡の直接的な続編ではなく,異なる視点から異なる物語を辿っていく過程で,次第に“空の軌跡のその後”の物語と軸が重なっていくことになる模様。本作において主人公でないとはいえ,エステルとヨシュアは凄腕の遊撃士として登場し,物語を盛り上げてくれるほか,空の軌跡に登場した人物がいろいろ絡んでくる。
空の軌跡と零の軌跡の物語が,どこでどのようにリンクしていくのか,また両作品の登場人物達がどのようにして接点を持っていくのか,そのあたりに注目しつつ,胸を高鳴らせながらプレイしてほしい。
11のエリアに分かれたクロスベル市は
施設の場所を覚えるだけでも大変?
物語を進めていくうえで拠点となるクロスベル市内は,中央広場,港湾区,歓楽街など11のエリアによって構成されている。こう見るとかなり広大な街のように思えてしまうが,各エリアはすぐに一回りできるほどの広さとなっており,移動だけで疲れてしまうようなことはない。
さすがにプレイ開始直後はエリアのつながりに戸惑ったり,どのエリアに何の施設があるのか分からなかったりして,そのせいで広く感じてしまう人もいるかもしれないが,それも最初の1〜2時間程度のこと。街全体として見ればシンプルなつながりとなっているため,エリアを行き来していれば,すぐに慣れてしまうはずだ。では,以下に各エリアの特徴を挙げておこう。
・中央広場
・西通り
・東通り
・行政区
・港湾区
・歓楽街
・住宅街
・旧市街
・駅前通り
・裏通り
・IBC
以上がクロスベル市の主なエリアとなるが,実はこの全体の位置関係がある程度把握できた頃合いで,ゲーム中でガイドマップが手に入る。これがあればエリア一覧から希望の場所を選択するだけで瞬時に移動可能となり,移動時間が大幅に短縮できるようになるのだ。
また市外への移動も,最初のうちは徒歩を余儀なくされるものの,物語が進めばバスに乗れるようになり,長い街道も魔獣に絡まれることなく楽に移動できるようになる。とはいえ,あまりバスにばかり頼っていると経験値やアイテムなどがなかなか得られず,あとあと困った状況にもなりかねないため,ご利用は計画的にといったところか。
ガイドマップ入手後は,市内にいるときに限り(建物内は除く)STARTボタンを押すことで,この画面が開き,エリアを選択すれば瞬時に移動できるようになる |
バスを利用すれば,街道の中間地点または終点まで簡単に移動できる。魔獣と戦ってもほとんど経験値が得られなくなったエリアなどでは積極的に利用していこう |
遊撃士のお株を奪うがごとく
市民の手助けを請け負うのが特務支援課の役目
冒頭でも述べたとおり,主人公達が所属する特務支援課の役割は,市民からの依頼に応えていくこと。たとえ遊撃士の真似事と言われても,結果として,市民に植え付けられた「役立たずの警察」というイメージを払拭できれば万々歳ということらしい。
各方面からの依頼は警察本部を経由したのち,支援要請という形で特務支援課の端末に送られてくる。このあたりは空の軌跡における遊撃士ギルドの掲示板と同等のものと考えればよいだろう。その端末の一覧の中から好きなものを選んで任務を遂行していくことになるのだが,「緊急」マークのついているものは物語が進行するメインクエストで,それ以外は進行に直接関係しないサブクエスト扱いとなるので,覚えておこう。
サブクエストには期限が設けられており,メインクエストの進行によって時間が経過していくため,やろうと思っていた依頼がうっかり期限切れにならないよう,メインの進め過ぎには十分気をつけたいところだ。
ちなみに市民からの依頼の内容はさまざまで,落とし物の捜索,食材集め,違法駐車の取り締まり,手配魔獣の討伐など多岐に及んでいる。なかには明らかな雑用と分かるものもあるが,クリア報酬として得られるお金はなかなかの額なので,軽視せずにしっかりこなしておくことが望ましい。
またクリア時には,成果に応じて「DP」(Detective Point)も与えられ,その累計が一定値を超えると階級が上がるようになっている。階級は基本15段階に分かれており,昇格するごとに特典アイテムが支給されるというボーナスもある。これを狙うためにも,依頼は一つでも多くクリアしておきたい。
さらに磨きがかかったATバトルで
戦闘の楽しさがパワーアップ!
「零の軌跡」の戦闘システムには,前作までと同様「AT」(Active Time)バトルが採用されている。すでに完成の域に達しているようにも思えたシステムだが,本作ではそこにさらなる改良を加え,より戦略性を高めることに成功している。
まずフィールド上にいる魔獣には,エンカウントする前に,そのままフィールド上で攻撃が行えるようになった。この攻撃を背後から命中させると魔獣が気絶し,そのまま自らエンカウントすると「奇襲攻撃」が成立。奇襲攻撃では先制のチャンスが得られるほか,ATボーナスのTEAMRUSH(チームラッシュ)が出やすくなるというメリットがある。このチームラッシュはパーティーメンバー全員で一斉に攻撃を行うというもので,戦闘の序盤に発動できればかなり有利になること間違いなし。
また相手を攻撃せずに背後からエンカウントした場合は,先手のみがとれる「先制攻撃」,正面からエンカウントした場合は通常の状態で戦闘に突入する。このとき,魔獣とのレベル差が大きければ,戦闘シーンに移ることなくフィールド上で倒してしまうことも可能だ。
どのメンバーを先頭にするかによって,フィールド上での攻撃方法も異なってくる。奇襲攻撃を狙うのであれば一振りで気絶させられるランディ,その場で倒してしまいたいときは遠隔攻撃できるエリィがオススメ |
奇襲攻撃を仕掛けてチームラッシュを発動させれば,広範囲の敵に致命傷を負わせたあと,さらに先制攻撃を行える。多少格上の相手でも,これなら楽勝! |
そしてもう1つの大きな追加要素が,「コンビクラフト」の導入だ。これは1人でもなくチームでもなく,特定のメンバー2人が力を合わせて強力なクラフトを発動するというもの。発動メンバーのCPを100ずつ消費するという大技なだけあって,Sクラフトよりもさらに高い威力を誇っているのが特徴だ。
ただし,このコンビクラフトはキャラクターレベルの上昇によって習得できるのではなく,物語が進む中でメンバーの絆が深まったときに開眼する。はたして,どのタイミングでコンビクラフトが使えるようになるのか,主人公達の絡みや心情の変化と合わせて楽しみにしていただきたい。
ゲーム中ではロイド達4人のほかに,NPCがパーティに入ることがある。このとき,5人目のメンバーはサポート要員となるが,NPCをメインの4人のいずれかと入れ替えて,戦闘中に操作することも可能だ。NPC特有のクラフトやSクラフトが使えるチャンスなので,戦力が著しく低下しないのであれば,ぜひ戦闘に参加させてみよう。
サポート要員となった5人目はATボーナスの1つとして登場し,タイミングが合えば戦闘を支援してくれるようになるのだが,こちらはこちらで,どんな支援を行ってくれるのか気になるところでもある。いろいろと入れ替えてみて,自分の好みの組み合わせを探すのもよいだろう。
また最後にもう1点,戦闘中の要素として新たに取り入れられた「カウンターアタック」についてもしっかり頭に入れておきたい。敵味方どちらにおいても,攻撃をミスしたときに相手の射程内にいた場合は,必ず反撃をもらうようになった。こちらがミスをしてしまうと,その反撃が時に致命傷となったりもするが,逆に相手を空振りさせれば思いも寄らぬ追加ダメージを与えられることになる。
これを誘発させるためには,装備やオーブメントの調整でメンバー(とくに直接攻撃主体となるロイドやランディ)の命中率と回避率を,しっかり高めておくのが効果的だ。
パーティに加わったノエル・シーカーを戦闘メンバーに組み込み,Sクラフトを発動したところ。ランディほどの火力はないものの,ダブルサブマシンガンと豊富なアーツでしっかりと活躍してくれる |
旧市外にある改造屋「ギョーム工房」では,強化用アイテムの「Uマテリアル」があれば既存の武器をさらに強化してもらえる。Uマテリアルは特定の魔獣がドロップするほか,釣りで手に入る場合も |
釣りに料理に読書にカジノ
「零の軌跡」でもやり込み要素は健在!
空の軌跡シリーズでお馴染みとなっていた「やり込み要素」は,本作においてもバッチリ引き継がれている。まず料理についてだが,素材を集めて「料理」を作るという基本的な部分は,従来どおり。しかしレシピについては食べて覚えるということが,できなくなってしまった。したがって料理を作るには,レストランの店員に話しかけてみたり,本を見たりして,まずレシピを手に入れなくてはならない。
さらには,同じ材料から通常の完成品のほかに,「大成功料理」「予想外料理」の3種類ができるようになったため,料理手帳のコンプリートにも熱くなれそうだ。
そして空の軌跡といえば,やはり「釣公師団」の存在も忘れてはならない。釣りシステム自体は前作までと同様で手軽に楽しめるものとなっているが,今回は段位認定制度が導入され,昇級すると特典アイテムまでもらえるようになった。釣り手帳のコンプリートだけでなく最高段位を目指すという目的も加わり,ポイント探しやエサ選びなど釣り要素だけでも,しばらく遊べてしまいそうなボリュームだ。
筆者は本稿執筆のため,一足先に「零の軌跡」を遊ばせてもらったが,システム面においてもゲーム内容においてもいたれり尽くせりといった印象で,プレイしていて非常に気持ちが良く,日本ファルコムらしさが滲み出る丁寧な作り込みに,あらためてうならされた。
このような遊び手のことを最優先に考えた作品が,世にもっと出てくれれば云々……と物思いにふけってしまうのは,筆者が歳をとった証拠だろうか。いやいや,仕事にも関わらず二徹してしまうほど夢中になれるクオリティだったからこそ,このような考えにも至るというもの。それだけ楽しめる作品であるという証拠だと思っていただければこれ幸い。それでは皆さん,零の軌跡を存分にご堪能あれ!
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