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テンポの良さ,爽快感,そしてバカバカしさ。「NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE」はなぜ最高峰のアクションゲームになったのか,須田剛一総監督にズバリ聞いた
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印刷2010/10/21 10:00

インタビュー

テンポの良さ,爽快感,そしてバカバカしさ。「NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE」はなぜ最高峰のアクションゲームになったのか,須田剛一総監督にズバリ聞いた

 ついに本日(10月21日),マーベラスエンターテイメントから,Wii用殺し屋アクションゲーム「NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE」(ノーモア★ヒーローズ2 デスパレート・ストラグル。以下,NMH2)が発売された。

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 先行発売された北米およびヨーロッパでは高い評価を受け,満を持して日本での発売となる本タイトルについて,開発元のグラスホッパー・マニファクチュアのCEOにして,本作の総監督を務めた須田剛一氏に話を聞いた。

 なお,このインタビューはNMH2のネタバレ要素も含んでいる。予備知識なしにゲームを楽しみたい人は,クリア後に読んでいただけると幸いだ。また,ゲームの詳しい内容については,以前掲載したファーストインプレッション記事も併読してほしい。

「NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE」公式サイト



続編のテーマは「仁義なき戦い 広島死闘篇」バリの

“復讐”と“死闘”


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 まずは基本的なところで,NO MORE HEROES 2の企画意図や,開発に至る経緯などを教えてください。

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須田剛一氏(以下,須田氏):
 前作「NO MORE HEROES」が,海外も含め想像以上に高い評価をいただいて,売り上げに関してもいい数字を出せたんです。そこで自然に,マーベラスさんと「もう一回やりましょうか」という雰囲気になりました。
 また,前作のプロモーションでヨーロッパを回った際にも,続編の要望をいろんな方からいただいていたんです。そういったことを受けて,2を作る雰囲気が出来上がっていったんです。

4Gamer:
 ということは,前作の開発中には続編の構想はなかったんですか?

須田氏:
 漠然と,「三部作にできたらいいなあ」ぐらいに思っていましたけれどね。
 ただ,それよりは,まず1本のゲームとして結末まで完成させようという気持ちが強かったので,その時点では具体的に考えていませんでした。

4Gamer:
 前作のエンディングは,そこで終わりとなってもおかしくない内容でしたよね。なので,NMH2でストーリーが続いていることに少し驚きました。
 NMH2の開発自体は,いつ頃から始まったんですか?

須田氏:
 前作が終ってから,しばらく時間が経っていましたね。
 当時は「零 〜月蝕の仮面〜」の開発も始まっていましたから。

4Gamer:
 そちらが一段落してから動き出したと。
 では,NMH2の舞台を前作の3年後に設定したのは,なぜですか?

須田氏:
 主人公であるトラヴィス・タッチダウンの物語を続けるにあたって,そのくらいがちょうどいいんじゃないかと考えました。
 発売時期が前作からリアルタイムで3年後ですし,プレイヤーさんにも,この3年の間にトラヴィスの身に何が起こったのか,思いをめぐらせてゲームを始めてほしいという意図もあります。

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4Gamer:
 では,前作に引き続き,トラヴィスを主人公に据えた理由を教えてください。

須田氏:
 トラヴィスの物語を書きたかったんですよ。
 なので,ビデオゲームの続編を作るというよりも,もう一度,彼の物語を描きたいという思いのほうが強かったですね。

4Gamer:
 トラヴィスは,前作だと結局いい思いをできませんでしたよね……。最後に衝撃的な事実も明らかになりましたし。
 NMH2には,そういった部分を回収する意味もあったんですか?

須田氏:
 うーん,というよりは,純粋にトラヴィスの闘いをもう一度書きたかったんです。
 彼の激情的な部分,闘いに向かうシンプルな原動力を描きたかった……ちょうど,「仁義なき戦い 広島死闘篇」のようなイメージのものを作りたかったんです。

4Gamer:
 なるほど。それで今回,“復讐”がテーマに据えられているわけですか。

須田氏:
 まさにそうです。“復讐”と“死闘”をテーマにしています。「サンタデストロイ」の町を広島に見立てて。

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4Gamer:
 えっ? 町のモデルは広島だったんですか!

須田氏:
 ええ,激化した戦後の広島のイメージなんです。

4Gamer:
 それは気付きませんでした……。


ボスバトルへの特化とテンポの向上を優先し

オープンワールド形式を廃止


4Gamer:
 町といえば,前作ではオープンワールドを採用していたのに対し,NMH2では自由に歩き回れなくなりましたよね。

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須田氏:
 オープンワールドをどう扱うかは,今回,一つの大きなテーマでした。前作のオープンワールドには賛否両論ありました。

4Gamer:
 ですよね。

須田氏:
 作る側としては,まず密度の濃いゲームにしたいという思いがありました。
 「NO MORE HEROES」を一つのアクションゲームとして見た場合,コアとなるのはボスバトルです。そこを強化するためには,オープンワールドである必要はないという結論に至ったんです。
 その結果,ストーリーもバトルもテンポよく進む構成に仕上げることができて,満足しています。

4Gamer:
 確かにテンポは凄く良くなりましたよね。

須田氏:
 はい。それだけ闘いに没頭できるようになりました。

4Gamer:
 そこで印象深いのが,「ジョブミッション」の「サソリ駆除」です。今回登場する中で,唯一,8bitゲーム風ではなく,前作における「バイトミッション」のサソリ駆除と同様のものをそのまま入れてますよね。

須田氏:
 あれは僕が好きで,残したかったんですよ(笑)。
 個人的には,前作の「バイトミッション」の中で一番よくできたと思っています。もう,それだけですね。

4Gamer:
 ゲーム本編から町をバッサリ削る一方で,サソリ駆除のためにあの空間のデータを残しているという部分に気付いたとき,ちょっと笑いました。

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須田氏:
 ええ,町のデータはあるっちゃあるんですよ。サンタデストロイという舞台自体は同じですから。
 欲をいえば,サソリ駆除はもっと膨らませたかったんですよね。世界中のサソリが出てきて,捕まえていくとサソリ図鑑を作れるくらいまで風呂敷を広げたかったんですが,やめときました(笑)。

4Gamer:
 個人的には,一番難しいジョブミッションだと感じています。

須田氏:
 え,そうですか?

4Gamer:
 サソリの背後からそっと近づいても,ササッと逃げられて刺されてしまうという。しかも,回復ポイントが遠くにあったりして(笑)。

須田氏:
 ああ,確かに遠いですね。細かい部分まで遊んでいただいてありがたいです。

4Gamer:
 話を戻すと,全体にテンポ感がよくなった半面,昨今のゲームにしてはエンディングに到達するまでの時間が短いと感じました。

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須田氏:
 実は前作は,海外で「長い」と評価されるケースが多かったんです。
 近年海外では,スタンドアロンでプレイ時間が短いものがスタンダードになっているんで,むしろ長すぎにならないよう気をつけていました。エンディングまで到達できるゲームの需要が確実に増えていて,テンポが良くて,ある程度早くクリアできるけれども,いろんな遊びを仕込んでいるような構成にしたいと考えました。


4Gamer:
 なるほど。そう考えると,町中の移動が要素として引き継がれていたとすると,プレイ時間だけならさらに長いものになっていたかもしれませんね。
 そういう意味では今回,最後まで遊んで,非常にスッキリとした感覚を得られました。

須田氏:
 それは良かった。朝はやっぱりスッキリですよね(笑)。


登場キャラクターの気になるアレコレを

ネタバレにならない程度に聞いてみる


4Gamer:
 それではストーリーについて,ネタバレにならない範囲で教えてください。
 まず……,ヘンリーとシルヴィアの関係は,完璧に切れているんですか?

須田氏:
 設定上は離婚しています。
 ゲーム中でも,そういうセリフがありますよ。

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4Gamer:
 では,シノブはあのシーンのあと,どこへ行ってしまったんでしょう?

須田氏:
 まあ強い娘ですから,どんな形でも生きていけるでしょうね。
 シノブはピン立ちできるんじゃないかと思うので……。

4Gamer:
 シノブを主人公にした,スピンオフ作品も作れそうなぐらい,キャラクターとして濃いですよね。

須田氏:
 ありがとうございます。
 ただ今のところ,そこまでは考えていません。凄く要望があれば,もしかしたら……。

4Gamer:
 ちょっとだけ楽しみにしています。
 敵キャラクターについても教えてください。まず前作のファンとしてニュー・デストロイマンの存在が嬉しかったんですが……あれ,動作原理は何なんですか?

須田氏:
 あれは……何というか,“超”テクノロジーですよ(笑)。

4Gamer:
 じゃあしょうがないですね! カッコイイので,細かいことは気にしないでおきます。

須田氏:
 デストロイマンって,いいキャラなんですよね。
 前作では,コザキさん(コザキユースケ氏,キャラクターデザイン担当)がノリノリでデザインしたのをはじめ,スタッフ内部での人気が非常に高かったんです。それで今回も出そうということになりました。
 さらにトラヴィスではなく,シノブと戦わせよう,と。結果,いいボスバトルに仕上がったと思います。

4Gamer:
 あ,そういえばNMH2ではストーリー展開に合わせて,プレイヤーキャラクターが変わる場面がありますよね。なぜ,トラヴィスだけではない形にしたんでしょうか。

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須田氏:
 開発当初,マーベラスさんから,シノブとヘンリーもプレイヤーキャラクターに加えたいというオーダーがあったんです。それを踏まえてシナリオを作り,その流れで,誰が誰と戦うのかを決めていきました。

4Gamer:
 確かにキャラクターごとに操作感が異なるので,全体的なテンポの良さの中にも変化を感じられて,飽きさせないような作りだと感じました。

須田氏:
 そこは思っていた以上に大きな効果がありましたね。
 大きなリズムの変化や要素が登場するので,贅沢な作りになっています。自分達でやっておきながら,こういうのもなんですが,詰め込んだと思いますよ。
 操作でいえば,今回,初めてジャンプの概念を採用しましたが,その調整にはかなり気を使いました。これがうまくできないと,ゲームのテンポ感を崩してしまうんですよ。

4Gamer:
 ジャンプが軽快なんですよね。
 でも,そのジャンプを使うシーンでうまく操作できずに,何度も落下してやり直しました……。

須田氏:
 ああ……すいません。失礼しました。

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難度上昇のカーブは,テンポの良さと

プレイヤースキルの向上を計算に入れた


4Gamer:
 さて話を戻しますが,個人的にはランカーの中で,アリス・トワイライトとマーガレット・ムーンライトが好きなんです。二人ともキレていて。

須田氏:
 実はもともと,アリス・ムーンライトとマーガレット・トワイライトだったんです。しかし,アリスが登場するのは夕方ですし,月が見えているのはマーガレットのシーンだと気づいて,入れ替えたんです。

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4Gamer:
 二人に血縁関係はあるんですか?

須田氏:
 姉妹です。嫌な姉妹ですよね,二人とも殺し屋ランキングに入ってるって(笑)。

4Gamer:
 二人とも綺麗なのに,殺人狂というのが残念きわまりないという(笑)。
 ところで須田さんにとって,とくに思い入れのあるランカーは誰ですか?

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須田氏:
 やはり今回,象徴的なボスとして設定した,ジャスパー・バット・ジュニアですね。
 あとは……それぞれ思い入れがありますが,ロボットバトルもいいものにできましたし……。意外とウラジミール船長が好きですね。そんなに分厚いシナリオではないんですが,何となく雰囲気があって,余韻の残るものにできたんじゃないかと。

4Gamer:
 ちょっと切ない感じがいいですよね。

須田氏:
 ええ。バトルそのものも面白く仕上げられた実感があります。うまく回避を使う必要があって。
 あとは龍司が好きです。龍司では,“無言の闘い”を表現しました。ボイス収録の手間が減るという事情もあるんですが(笑),日本人のキャラクターに英語を使わせたくなかったんです。男同士が,どちらが強いか無言で戦うところと,バカみたいなぶつかり合いを作りたかったんですね。

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4Gamer:
 ああ,あのバイクバトルもかなりバカバカしいですよね。

須田氏:
 あれも8bitっぽい,いい感じに仕上がって。

4Gamer:
 ただ,その後のバトルが難しいんですよね。一番苦戦しました。


須田氏:
 あの技は汚いですね。

4Gamer:
 ゲームだと,一般的にステージを追うごとにボスが強くなっていきますよね。
 でもNMH2では,必ずしもそうなっていない印象を受けます。特定のボスは非常に強いんですが,直後のボスはあっさり倒せたり。

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須田氏:
 意図的に,前半部分で山を一つ作るということをやっています。前作ではその位置にシノブを配置していましたが,今回はマット・ヘルムズがそうですね。

4Gamer:
 強いうえに気味が悪いんですよねぇ,あいつ……。

須田氏:
 イヤな敵でしょう?(笑)
 で,そういう山を越えると,しばらくは苦労せずに進めて……といった難度のカーブを作っているんです。

4Gamer:
 意図的にそういう構成にしているんですね。

須田氏:
 ええ,これがゲームのテンポを向上させるための工夫の一つなんです。
 またゲームを進めていくとプレイヤー自身も,うまくなっていきますよね。例えば,マット・ヘルムズを倒せるぐらいの腕前になった状態で次のボスと戦うと,あまり強く感じないでしょう。

4Gamer:
 決して弱くはないですけど,マット・ヘルムズを倒したあとで,「あれ? オレ,上手くなった?」みたいには感じました。

須田氏:
 つまりそういう具合に,スポーツや格闘技における成長体験を味わってほしかったんです。

4Gamer:
 完璧に手のひらの上で転がされていたわけですね。

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