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13周年を迎えたグラスホッパー・マニファクチュアの新たな決意とは? イベント「GRASSTREAM2 TRAVIS VS. GARCIA」レポート
これは,同社の設立13周年を記念して開かれたイベントだが,東北地方太平洋沖地震の発生を受け,その収益は被災者に向けた義援金として日本赤十字に寄付されることとなった。
「グラスホッパー・マニファクチュア」公式サイト
今,エンターテイメントに携わるグラスホッパー・マニファクチュアだからできるイベントとして開催
しかし,時間の経過とともに被災者が奮い立っていく姿を見て,エンターテイメントに携わるGhMが今できることは,必ずしもイベントの自粛ではないとの考えが芽生えていったという。最終的に,同社CEOの須田剛一氏が「皆さんに“元気”を送りたい」と,イベント開催を決断したとのことだ。
その経験から「今,世界中が日本を応援している」ことを感じ取った山岡氏は,その思いをより多くの人が共有できるように,チャリティーアルバム「Play for Japan -THE ALBUM-」の発売を企画しているという。このアルバムには,世界中のゲームミュージッククリエイターが参加を表明しているとのことで,山岡氏はイベントの終盤,「Red Dead Redemption」のWoody Jackson氏と「Halo」シリーズのMarty O'Donnell氏,植松伸夫氏,光田康典氏らの名前を挙げていた。
なお,このアルバムの制作や販売は山岡氏個人の活動となり,詳細などは近日中に発表される予定だ。
飯田氏は,そうした中で「やはりゲームを作りたい」という思いが強くなり,ゲーム音楽家の中村隆之氏らとともに「なぎ -nagi-」というソフトを制作した。
このソフトは,取り込んだ周囲の音にディレイやフィードバックといったエフェクトを適用して穏やかな音に変換し,再生するというもの。まさに,風がなくなり,海面が穏やかになる「凪」の様子をイメージさせる内容で,例えば,緊迫した事態を伝える報道の音声をも,心を落ち着かせるサウンドに変えてしまうのだ。
飯田氏は,「これが地震に対抗する力になり得るかは分かりませんが,災害の恐怖を抑える役に立つのではないでしょうか」と説明した。
なお,このソフトはPC/Mac向けに無償配布されており,イベント開催前は3000ダウンロードを記録していたそうだ。飯田氏は,「これが5000,1万と多くの人に広がっていけば,ひょっとすると奇跡が起きるかもしれない。夢みたいな話だが,続けていきたい」と意気込みを見せた。
GhMのCEOである須田氏は,NO MORE HEROESシリーズのプロモーション用に作った「ビーム・カタナ」(制作費は約80万円)や,同シリーズに携わったコザキユースケ氏とコヤマシゲト氏,そして須田氏自身のサインが入ったWii本体2台を,ネットオークションのeBayに出品すると発表した。
さらに,須田氏のかつての同僚の実家が営む岩手県の喜久盛酒造(GhMのゲームにも登場する)をモチーフとしたTシャツを,GhMが制作・販売することを発表。これらの収益もまた,震災の義援金として寄付される予定だ。
そして須田氏は,「この新宿から,ロフトプラスワンから“元気”を届けましょう!」とイベント本編の開演を高らかに宣言した。
「NO MORE HEROES」「FROG MINUTES」「シャドウ オブ ザ ダムド」がフィーチャーされたイベント本編
イベントの第1部「おつかれトラヴィス! 『NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE』」では,NO MORE HEROESシリーズのキャラデザインを担当したコザキユースケ氏と,メカデザインを手がけたコヤマシゲト氏をゲストに迎え,トークショーが行われた。
企画段階から数えると,同シリーズとは5年ほどの付き合いになるというコザキ氏だが,「まだまだキャラが出てくる。もう2本くらいはいける」と述べた。
それを受けた須田氏が「またいつかトラヴィスの世界を描きたい」と続けると,コザキ氏は「シノブを主人公にしたスピンオフタイトルをやらせてほしい」と立候補していた。
一方,コヤマ氏は,NO MORE HEROES 2に登場する武器のデザイン作業に取り組んでいた当時,自身にロシアブームが来ていたことを明かした。人工衛星をモチーフにした武器などは,その影響を如実に受けているとのことだ。
トークでは,普段からサングラスを着用しているコヤマ氏との初対面のとき,須田氏とコザキ氏は「感じ悪い。いけすかない」という印象を抱いたと告白する一幕も。しかし実際に話してみると,面倒見がよく,熱い人物であることが分かったという。
シルヴィアのフィギュア |
チャリティーオークション用のサイン入りWii |
まず,GhM初の試みとして「シルヴィア」のフィギュアが発売される。会場では,原型師の吉沢光正氏が制作した未着色サンプルや,着色済み画像が公開された。
なお,このサンプルの睫毛には,吉沢氏自身の腕の毛が使われているとのことだ。発売日や価格は,近日発表予定となっている。
次に,NO MORE HEROESシリーズの影響を受けた映画,「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」が,4月29日から公開されることも紹介された。
この映画は,ミステリアスな女性に一目惚れしたゲーマーの主人公が,その女性の元カレと次々に対決するハメになるというストーリーで,須田氏も「少しNO MORE HEROESっぽい」とコメント。
また原作コミックには,NO MORE HEROESのトラヴィスをモチーフにしたキャラが登場する場面もあるという。会場では,監督を務めるたエドガー・ライト氏から「NO MORE HEROESシリーズが好きなら,きっと気に入る映画になっている」というビデオメッセージも披露された。
このほか第1部では,NO MORE HEROES 2が第14回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 審査委員会推薦作品に選出されたのをはじめ,国内外でさまざまな賞を受賞したことが紹介されたほか,コザキ氏によるトラヴィスのラフデザインなどが公開された。
また須田氏は,第1部の終わりに,「すぐというわけにはいかないが,NO MORE HEROESに続くトラヴィスの話をいつか実現したい」と話していた。
トークショーのあとには,飯田氏のバンド「The Riot −怒りの十代−」のアコースティックライブが行われた。バンドは,NO MORE HEROES 2の主題歌「NO MORE NO」や,カバー曲を披露。とくに,飯田氏が震災で心を痛めている人に向けて選曲したという,岡林信康「私たちの望むものは」のカバーでは,会場が一体となって盛り上がっていた。
グラスホッパー・マニファクチュア 能丸氏(中央)による「FROG MINUTES」のプレゼンテーション |
実際に「FROG MINUTES」をプレイした佐藤かよさん(左)と,バニラビーンズの二人 |
本作は,カエルに餌を与えて捕まえるというシンプルなゲームだ。ディレクター/デザイナーを務めた能丸氏は,「ゲームのジャンルは,作った自分でもよく分からない。教育ソフト的な面もある」と説明した。FROG MINUTESは,App Storeで115円で販売されており,この売り上げによる収益は義援金として寄付される予定だ(関連記事)。
続いて,イベントのMCを務めるタレントの佐藤かよさんと,ゲストのアイドルユニット「バニラビーンズ」が実際にFROG MINUTESをプレイ。
その中で,声優の坂本真綾さんがガイドボイスを担当していることや,ゲームにさまざまな種類のカエルが登場すること,捕まえたカエルの最大/最小サイズなどが随時記録されていくことなどが紹介された。
佐藤さんとバニラビーンズの二人は,「いっぱい食べさせてあげたくなります」「本物のカエルは苦手でしたが,これを遊ぶと可愛らしく思えてきます」と,口々に感想を述べていた。
FROG MINUTESの紹介のあとは,バニラビーンズによるミニライブが行われ,ピチカート・ファイブ「東京は夜の七時」のカバーソングが披露された。
第3部「ようこそガルシア! 『Shadows of the DAMNED』」では,須田氏と山岡氏が,エレクトロニック・アーツから発売されるGhMの次回作「シャドウ オブ ザ ダムド」(以下,ダムド)についてトークを繰り広げた。
本作は“サイコロジカルアクションスリラー”と銘打たれているが,「地獄を舞台にしたロードムービーまたは冒険活劇」といった雰囲気の作品に仕上がっているそうで,須田氏は“どパンクホラー”“どパンク地獄ホラー”と表現していた。
また,主人公のガルシアが,さらわれた恋人のポーラを救出するというシンプルなストーリーは,かの「スーパーマリオブラザーズ」を意識したものになっているという。
なおガルシアの姓である「ホットスパー」は,「hot spa」(温泉)ではなく,イングランドプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーから取っているとのこと。
サッカー好きの須田氏は,2010年にトッテナム・ホットスパーが出場した試合を観戦したそうで,「フーリガンによる暴動に巻き込まれそうになって,慌ててホテルに帰ったときの印象が残っていて」と,命名のエピソードを明かした。
この発言に対して山岡氏は,「悩まないから」と理由を明かし,さらに「須田さんが多くの注文を付けてくるんですが,全部応えようと思ってやっています」と前向きな姿勢を見せていた。
ダムドの制作はほぼ終わっており,欧米では6月7日,日本では8月末から9月頃までに発売される予定とのこと。日本版のボイスを担当するキャストは非常に豪勢だそうだが,イベントでは,ガルシアの持つ銃「ジョンソン」役に,俳優業などで活躍する我修院達也さんを起用していることのみ発表された。
収録に立ち会ったという須田氏と山岡氏は,声のトーンの使い分けなどに,我修院さんの“役者魂”を感じたと絶賛していた。
イベントの終盤,リニューアルされたGhMの公式サイトが紹介され,続いて同社の今後の展開についても言及された。
飯田氏は,まだ,どうなったとはっきりとはいえないが,震災を経たことで,GhMのゲーム制作に対する意識は確実に変わっていると述べる。その一環として,「日本の未来を考えるゲーム」を,東京・お台場にあるまったく新しいハードで開発していることがアナウンスされた。
このプロジェクトには,元宇宙飛行士で,現在は日本科学未来館 館長を務める毛利 衛さんも協力しており,ゲームは8月に公開される予定だ。
また山岡氏は,自身がチャリティーアルバムの制作に取り組んでいることにあらためて触れ,ゲームには国境を越える力があると述べた。そして今回の震災が,ある意味で世界の人々が一緒になって物事を盛り上げていく契機になるとの考えを示した。
続いて須田氏は,飯田氏と山岡氏の言葉を受けて,1980年代にイギリスで起きたテロ事件や,2001年のアメリカ同時多発テロ事件を例に,これまで各国が危機に陥ったとき,音楽やゲームといったエンターテイメントが人々の心を救ってきたことに言及した。
さらに,「3月11日の14:45まで日本は平和を謳歌してきた。今回の震災の被害を乗り越えたとき,日本は平和というものを本当に実感できるだろう」と述べ,「そのとき,必要になるのはエンターテイメント。GhMは,これからもより楽しくてエキサイティングな,そして少しクレイジーなゲームを作っていきます。それがGhMの使命です」と続け,イベントを締めくくった。
「グラスホッパー・マニファクチュア」公式サイト
- 関連タイトル:
NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE
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シャドウ オブ ザ ダムド
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(C)2011 GRASSHOPPER MANUFACTURE INC. Shadows of the Damned is a trademark of GRASSHOPPER MANUFACTURE INC. EA and the EA logo are trademarks of Electronic Arts Inc. All other trademarks are the property of their respective owners.
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