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“カジュアル”も“ルナティック”もプレイヤー次第。世紀をまたいで愛され続ける人気シリーズの一つの完成系「ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 〜光と影の英雄〜」をレビュー
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印刷2010/09/04 16:03

レビュー

“カジュアル”も“ルナティック”もプレイヤー次第。世紀をまたいで愛され続ける人気シリーズの一つの完成系「ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 〜光と影の英雄〜」をレビュー

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 2010年7月15日に発売されたニンテンドーDS用ソフト「ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 〜光と影の英雄〜」は,2008年に発売された「ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣」の続編にあたる,シリーズ最新作だ。見方を変えれば,1994年に発売されたスーパーファミコン用ソフト「ファイアーエムブレム 紋章の謎」の第2部をリニューアルした作品で,英雄マルスと,その英雄に憧れて入隊した若き騎士の二人の視点で物語が展開していく。

 20年以上も愛されてきたシリーズ(第1作目は1990年4月20日発売)だけに,各種システムがブラッシュアップされていたり,往年のファンへのサービス要素が盛り込まれていたりと,見どころの多いタイトルに仕上がっている。本稿では,それらを順にチェックしていきつつ,ゲームの魅力をたっぷりとお伝えしていこう。

「ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 〜光と影の英雄〜」公式サイト



ファイアーエムブレムならではのシステム


RPGの物語性や成長要素と,シミュレーションゲーム(ストラテジーゲーム)の戦術/戦略性を併せ持った,シミュレーションRPGの原点ともいえるシリーズ
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 ファミコン版の「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」から始まったこのシミュレーションRPGシリーズ。死んだ仲間は基本的に復活しないうえ,ユニットをきちんと育てないと,中盤以降手詰まりになる可能性もあるという高難度に加え,キャラクターの織りなすドラマや掛け合いの魅力が人気を博し,世紀をまたいで愛され続ける人気シリーズに成長している。思い起こせば,現在では定番となっている“シミュレーションRPG”というジャンルの先駆けでもある。

 ゲームの世界観/物語を端的に説明するなら“ファンタジー戦記もの”とでもなるだろうか。騎馬ユニットであるソシアルナイトを中心に,剣の使い手である剣士や,防御力に優れたアーマーナイト,間接攻撃ができるアーチャー,通常の防御力を無視してダメージを与えられる魔道士,癒しの杖が使える僧侶(女性はシスター)など,さまざまなクラスのユニットが登場する。プレイヤーは,主人公のマルス王子とその仲間達を操作し,各章に定められたマップを順番にクリアしていくことになる。

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戦術面では,戦闘前に被ダメージや与ダメージが分かるなど,不確定要素が少ないのが特徴である。その分,綿密にユニットを動かしていかないと,クリアはおぼつかない
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敵として登場するユニットを説得して仲間にできるなど,味方ユニットがどんどん増えていくのも本作の特徴だ。最終的に,仲間はかなりの数になっていく
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計画的にキャラクターを成長させる戦略性も,攻略に欠かせない重要なポイント。これをおろそかにすると,のちのち手詰まりになる可能性もあるくらいなのだ
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さまざまなキャラクターの中から,自分好みの編成で遊べるのも「ファイアーエムブレム」の特徴。強いユニットを中心に起用するのが基本だが,愛情さえあれば,弱いユニット達で頑張ることもできる


プロローグは今回も秀逸


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前日編の見習い達の物語はコミカルに描かれているが,やがてそこに「ファイアーエムブレム」らしい影が投げかけられることになる
 NDSの「新」シリーズではおなじみとなった,前日編となるプロローグ部分。前作では,マルス王子が本編のスタート地点であるタリスへ落ちのびるまでが描かれていたが,今回は新たなアリティア騎士団となる見習い達の物語となっている。これのおかげで,アリティア騎士団の若雛達への思い入れが増すようになっているのは面白い。連続で遊ぶことになるSFC版では,どうしても新顔よりも,先の戦いでの仲間を頼ってしまう傾向があったので,この前日編は,シリーズファンを新しいメンツでのプレイへ誘導する,良いきっかけとして機能することにもなるだろう。

 また,「新」での追加要素であるサイドストーリーが,この前日編での出来事と絡んだものになっているのも,注目すべきポイントだろう。主人公やその仲間と関係した,もう一つの新しい物語を,本編と並行して楽しめるようになっているのだ。

 また,このサイドストーリーと絡んで,マルス以外の主人公が設定されているのも面白い。もちろん,本作から「ファイアーエムブレム」を始めるプレイヤーのため,という側面もあるだろうが,「もう一人の主人公」が登場してきても違和感がないのは,群像劇としても楽しめるファイアーエムブレムシリーズならではの特徴とも言えそうだ。

 この新主人公は,兵種のほか,性別や髪型,髪の色などを自由に選べるようになっている。しかもこの主人公,なんと本編が始まると,出撃メンバーから外すこともできてしまう。旧メンバーへのこだわりが強いシリーズファンへの配慮ともとれるし,マルス王子以外は自由に編成できる,シリーズ独特の自由度の表れとも考えられるだろう。

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実は影でマルスを護っていた人物がいた……という新設定で登場する主人公。プレイヤーの分身的立場になるキャラクターだ
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デフォルトの名前があるが,名前を変えると違うコメントがもらえたりと,芸が細かい

 ちなみにこの前日編だが,前作ではチュートリアルのためのパートという印象だった。しかし今回は,ただのチュートリアルではなく(実際,チュートリアル機能はオフにもできる),ともすれば本編より難しいかも? と思わせるものとなっており,ずいぶんと驚かされた。
 ファイアーエムブレムは,もともとパズル的,詰め将棋的な綿密なユニットの配置と運用が要求されるシリーズだ。マップこそ小さいが,地形のデザインや敵の配置にも,そういった開発者の意図のようなものが込められている。こうした傾向は,今作で登場したサイドストーリーの部分にもしっかりと現れており,かなり歯ごたえのある仕様となっている。

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外伝マップでは,本編と並行して外伝ストーリーが展開するので,従来のファンも新作ストーリーとして楽しめる
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主人公がらみでは,髪型などを変えるイベントが何度も発生する。本人は至って真面目なのだが,それゆえにその奇行が笑える


ここから「ファイアーエムブレム」を始められるのか?


 冒頭でも述べたように,本作は「新・暗黒竜と光の剣」の続編である。本作では,前作で何があったのか,丁寧な説明がなされるほか,世界観やキャラクターを解説するコンテンツ「ガイド」がいつでも閲覧可能など,新規プレイヤーにも親切な作りになっている。
 しかし個人的には,前作を実際にプレイしておかないと,各キャラクターに秘められた“深み”の部分を理解するのは難しいとも感じた。もし,本作がシリーズ初体験だというプレイヤーで,本作のストーリー展開や登場キャラクターが気に入った人がいるなら,(順番は前後してしまうかもしれないが)ぜひ「新・暗黒竜と光の剣」もプレイしてみてほしい。

前作での暗黒竜との戦いはもちろん,ゲーム中に登場する人物などについては,登場ごとに前作の回想シーンが入る
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 とはいえ,本作をプレイしたあとに「新・暗黒竜と光の剣」をプレイすると,そのあまりの難度の高さに衝撃を受けることになるかもしれない。逆にいうと,「新・紋章の謎 〜光と影の英雄〜」は,前作と比べて非常に遊びやすくなっている。
 前作では,戦闘中にユニットのHPが0になると,そのユニットはロストしてしまった。しかし本作では,戦闘でHPが0になってもユニットがロストせず,次のマップでそのユニットを使えるようになるという“カジュアルモード”というオプション設定が選べるようになっているのだ。
 それにしても,本作の難度が若干高めであることに変わりはない。マップデザインや敵の配置は,前作に比べてさらに絶妙なものになっているし,「これ」と決めたキャラクターをしっかりと育てていく戦略も必要だ。ほかにも,“近づいてきた敵を一撃で倒さないことで連戦を避ける”“回復するボスで経験値を稼ぐ”などなど,シリーズ独特のセオリーも存在する。こうした数々のセオリーを駆使し,勝率を高めていくことが,ファイアーエムブレムシリーズの面白さなのだが……ハードルの高さでもあるのは,繰り返し述べているとおりだ。

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本作にはカジュアルモードが用意されているものの,前作よりも高度な戦術/戦略が要求される
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武器を強化する錬成は,能力値の成長が足りない際の大きな助けになる。また,足りないアイテムをWi-Fi通信で購入することもできる

 しかしながら,本作にはカジュアルモード以外の救済措置も用意されている。前作と同様,友人の育てたユニットをレンタルできるほか,Wi-Fi通信で接続できるオンラインショップでは,本来ゲーム内での入手数が限られている貴重なアイテムが購入できる。また,キャラクター同士が仲良くなることで手に入る「絆」系のアイテムは,一時的とはいえユニットの能力を向上させるので,手詰まり回避の手助けになるはずだ。


カジュアルモードは許せない?


 前述のカジュアルモードについては,古くからのシリーズファンからすれば「こんなのファイアーエムブレムじゃない!」と言いたくなるかもしれない。しかし,往年のファンも大人になり,何かと忙しくなっているだろうし,これくらいの緩和があったほうがプレイしやすいのも事実だろう。少なくとも筆者はそう感じている。
 それに,たとえカジュアルモードでプレイしていても,マップ攻略の序盤でユニットに戦線離脱された場合,その後の戦力不足や,そのユニットの成長機会の減少などのデメリットも依然存在する。「ファイアーエムブレム」のゲームとしての歯ごたえをスポイルするものではないと思うのだ。

カジュアルモードでも,キャラクターを成長させる楽しみや,難度の高いマップを攻略する醍醐味は変わらない
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 また,あくまでカジュアルモードはオプションなので,キャラクターロストからくる緊張感が好きだというファンは,従来どおりのクラシックモードで遊べばよいだけだ。目くじらを立てるほどのものでもないだろう。
 実際のところ,今回から新たに追加された,最上級難度のルナティックモードの難しさを一度でも体験すると,プレイアビリティを向上する数々の仕様変更がなければ,とてもじゃないがやってられないのではないか? というのが正直なところだ。

ハードモードでさえ,半端な成長では本当に詰みかねない難度になっている。趣味的な編成をするような“遊び”の要素はかなり薄れていく
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ハードでは敵が強くなるほか,配置される敵ユニットの数も増えたりする
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往年のファンも大満足の追加要素


 シリーズ最新作であると共に,旧作のリメイク作品でもある本作には,実にさまざまな要素が追加されている。システム面に関しては,この20年の間に“ほぼ完成した”といえるものになっており,前作からの目立った追加要素はカジュアルモードくらいだ。
 細かいところでは,キャラクターの掛け合いや,エピソードを楽しむための追加要素が充実している。オリジナルには存在しなかった,主人公を含むキャラクター同士の会話が数多く追加されているほか,ダウンロードコンテンツとして,特殊なマップを楽しめたりもする。サテラビューでしか遊べなかった,懐かしの「アカネイア戦記」のマップがプレイできるのも,往年のファンにはうれしいサービスと言えるだろう。

システムは最新のものになっているため,オリジナルとまったく同じというわけではないが,「アカネイア戦記」がプレイできるだけでもファンには嬉しい
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 本作では,新規プレイヤーへの配慮がしっかりなされたうえで,従来のファンが喜びそうな要素がたっぷりと盛り込まれている。20周年を迎えた「ファイアーエムブレム」の完成度の高さと面白さを,あらためて思い知ることができる秀作だ。遊びやすさと挑戦しがいのある難度を両立させた,満足度の極めて高いシミュレーションRPGに仕上がっているので,
本稿を通じて興味を持った人,あるいは若かりし頃の思い出が蘇ったという人には,ぜひ一度はプレイしてほしいと思う。

敵の行動範囲表示などは,プレイアビリティを大幅に向上させている。これに慣れてしまうと,旧作の難しさがあらためて実感できる。またユニットの兵種変更は,戦略の幅を大きく広げてくれる。成長確率の変化により,キャラクターのポテンシャルも変わるので,攻略の面でも見逃せない
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