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[GDC 2014]エリザベスの“動き萌え”はこうやって作られた。「BioShock Infinite」のAI制作を解説するプレゼンテーションの模様を紹介
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印刷2014/03/20 15:21

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[GDC 2014]エリザベスの“動き萌え”はこうやって作られた。「BioShock Infinite」のAI制作を解説するプレゼンテーションの模様を紹介

画像集#015のサムネイル/[GDC 2014]エリザベスの“動き萌え”はこうやって作られた。「BioShock Infinite」のAI制作を解説するプレゼンテーションの模様を紹介
 2013年に発売された「BioShock Infinite」PC / PS3 / Xbox 360)は,舞台をこれまでの海底都市から空中都市コロンビアへと移し,時代背景も登場人物も新しくなった「BioShock」シリーズの最新作だ。なかでも,とくに印象的な登場人物が,コロンビアに捕らえられていた女性,エリザベスである。主人公と常に一緒に行動するエリザベスは,戦闘ではプレイヤーの手助けをし,さらには彼女の持つ特殊能力「ティア」によって,困難を乗り超える手段をプレイヤーに提供してくれる。そういう意味では,同作で最も重要な登場人物の一人といって過言ではないだろう。
 見た目は海外産ゲームそのままといった姿形なので,スクリーンショットを見る限り,今一つピンとこないという人がいるかもしれないが,彼女が動いてしゃべるのを見るとかなり魅力的で,巷では“動き萌え”と言われているとかなんとか。

 そんなエリザベスがどのように作られたかをプレゼンテーションする「Creating BioShock Infinite's Elizabeth」が,Game Developers Conference 2014で行われたので,概要をかいつまんでお伝えしたい。「作られたか」と書いたが,このレクチャーはエリザベスのAIに焦点を絞ったもので,グラフィックスについてはとくに触れられていない。ちょっと残念である。

画像集#018のサムネイル/[GDC 2014]エリザベスの“動き萌え”はこうやって作られた。「BioShock Infinite」のAI制作を解説するプレゼンテーションの模様を紹介 画像集#017のサムネイル/[GDC 2014]エリザベスの“動き萌え”はこうやって作られた。「BioShock Infinite」のAI制作を解説するプレゼンテーションの模様を紹介
画像集#016のサムネイル/[GDC 2014]エリザベスの“動き萌え”はこうやって作られた。「BioShock Infinite」のAI制作を解説するプレゼンテーションの模様を紹介

 レクチャーを担当したのは,デベロッパであるIrrational GamesでAnimation Directorを担当するShawn Robertson氏だ。Shawn氏はまず,エリザベスのAIは本物のAIではないという話から,レクチャーを切り出した。ここでいう本物のAIとは,自律的に学習したり,多数の情報から結論を類推したりする「人工知能」のことではなく,ゲームの中だけで本物に見え,プレイヤーに彼女がそこにいると思わせるようなもののことであり,ディズニー映画のキャラクターのような,ある種のイリュージョンである。

画像集#019のサムネイル/[GDC 2014]エリザベスの“動き萌え”はこうやって作られた。「BioShock Infinite」のAI制作を解説するプレゼンテーションの模様を紹介

 冒頭にも書いたように,エリザベスはプレイヤーの操作する主人公と一緒に行動する。プレイヤーがどういう行動をするか分からないので,A地点からB地点までスクリプトで移動する「Borderlands」クラップトラップのような存在では成り立たない。また,こっちへ来なさい,あっちへ行きなさいと指示する「Half-Life 2」アリックスのようでは,プレイヤーがエリザベスを「パートナー」と感じることは難しいとShawn氏は述べた。

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 個人的には,アリックスもなかなかのパートナーぶりだったような気がしないでもないが,それはともかく,エリザベスには「Goal Side」というテクニックが採用されているという。これは(ステージの構造にもよるが)プレイヤーの動きをある程度予想して移動し,プレイヤーキャラクターの行くべき場所(ゴール)との間に立って,間違った場所に移動しようとすると,さりげなくブロックするというもの。
 当然,サッカー選手のようなアグレッシブなブロックをするわけにはいかないし,立ち位置がプレイヤーに近すぎると,なんとなく不気味な印象を与えてしまう。逆に遠すぎると,今度はよそよそしく感じられてしまいかねないわけで,その調整はかなり難しかったとのことである。


公開されたプレα版の映像
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「Goal Side」の解説とパスラインの事前予測
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プレイヤーキャラクターの動きに合わせて,現在地と目的地を結ぶ,見えないパスラインが生成される。エリザベスはこのパスラインなども参照して,動きを決めているという
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 もちろん,これだけでは彼女を本物と感じるには不十分だ。そこで,エリザベスをより人間らしくするため,さまざまなルーチンが組み込まれている。
 例えば,人はときどき立ち止まって興味あるものを見たりする。これを再現するために,マップにはいくつかのマーカーが設置されていて,エリザベスはときどきそっちの方向を見るようになっている。見る行為はランダムで発生し,いつも同じものを見るわけではない。また,あらかじめ設置されたもののほか,自動生成されるマーカーもあるとのことだ。
 もっとも,一口に「見る」といっても,これもまた調整が難しい。マーカーに近すぎると,奇妙な感じになるし,遠すぎてもいけない。加えて頭や目の動きにも,いろいろと工夫が施されているそうだ。

視線や頭の動きなどが,細かく検討された
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 これ以外にも,まだ仕掛けはある。本作のプレイヤーなら,エリザベスが,例えば機械仕掛けの人形に興味を持って覗き込んだり,驚いて声を上げたりすることをよく知っているだろう。これは「Smart Terrein」と呼ばれる機能によるもので,決められたオブジェクトに対して,なんらかのインタラクションを行う仕組みだ。
 ただ,先ほどの「Goal Side」があるので,あまりパスラインから離れたオブジェクトには,「Smart Terrein」が働かないようになっている。また基本的には,プレイヤーが見ていなければ「Smart Terrein」は発生しなどの工夫が凝らされているそうだ(例外的に,エリザベスが声を出してプレイヤーの注意をひくケースがある)。
 Shawn氏によれば,エリザベスの動きは全体にややおおげさで,これは舞台俳優の所作を参考にしているという。動きを誇張することで,彼女の感情や伝えたいことがプレイヤーに届きやすくなったそうだ。

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右は「Smart Terrein」を可視化した映像。正面の椅子にエリザベスが腰を下ろす。そのためのモーションや音声は,特別に用意されたものだという
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「Smart Terrein」の実装例。プレイヤーキャラクターが見ているとインタラクションが発生するという
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 Shawn氏は続いて,戦闘時のエリザベスについての説明を行った。開発初期の段階では,戦闘時,エリザベスの姿を常に画面上に置いてみたものの,敵味方が入り乱れる戦いでは,彼女が邪魔で戦いに集中できなくなってしまった。
 しかし,彼女の姿がまったく見えないようでは,プレイヤーからパートナーと思ってもらうことは難しい。そこでまず,戦闘中はプレイヤーからある程度遠い位置をキープするようにしてみた。これは,プレイヤーの周りに丸いゾーンを作り,プレイヤーが彼女に近づくと,ゾーンを感知したエリザベスが自動的に遮蔽物などの影に隠れるというものだ。ただ,これではまだ物足りない。

 というわけで,エリザベスには戦闘中,ジェスチャーや音声でプレイヤーに危険を知らせ,さらに,弾が切れるなどしたら,新たな武器をトスしてくれるという機能が追加された。ただ,これもなかなか一筋縄では行かない。例えば武器のトスは遠く離れていると実行不能だし,ジェスチャーは分かりにくい場合もある。
 そこで,ジェスチャーの代わりにアイコンを使ったり,プレイヤーから見えない場所でエリザベスをリスポーンさせたりする処理も加えられている。戦闘に気を取られていると気づきにくいが,「そういえばこいつ,どっから来たんだ」と思うような場面もあったりなかったり。また,「危ない」や「あそこに狙撃手が」などといった音声による支援も追加されて,ようやくプレイヤーにとって頼もしい存在になったという。

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 細かいところをだいぶはしょってしまったが,おおむね以上のような開発を経て,エリザベスのAIは完成したとのこと。Shawn氏によれば,エリザベスをプレイヤーの真のパートナーにするためさまざまなテクニックを使ったが,将来的には,さらに新しい技術を使っていきたいと結論した。
 プレイ中,「あっ,エリザベスがマーカーを見ているな」とか「パスラインをチェックしているな」と考えてしまうのはちょっと興ざめだが,大規模なリストラで,BioShockシリーズの新作を手がけるチャンスは非常に少なくなってしまったIrrational Games。Shaw氏ら「Liz Squad」の努力に報いるためにも,これらを念頭に置きつつ,もう一度本作をプレイしてみるのも一興かもしれない。

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