インタビュー
プライドに懸けて死んでもらいます。「DARK SOULS」には「Demon's Souls」の魂が引き継がれているのかを宮崎ディレクターに聞いてきた
想定プレイ時間はDemon's Soulsの1.5倍〜2倍
敵や魔法,武器などもボリュームアップ
4Gamer:
マップがかなり広いということですが,今回はどのぐらいのプレイ時間を想定しているんですか?
宮崎氏:
まだ完成しているわけではないので正確なことはいえませんが,おそらく60時間ぐらいかかっちゃうかと思います。ちなみに,Demon's Soulsは30〜40時間を想定していました。
4Gamer:
つまり,時間的にはDemon's Soulsのさらに1.5〜2倍ですか,すごいボリュームですね。それだけの内容であれば,敵やアイテムなども相当増えていそうですね。
宮崎氏:
そういう意味で一番のポイントは,僕は敵だと思っています。Demon's Soulsでは40種類ぐらいだったんですが,今回は100種類近いですから。
4Gamer:
敵の数は2.5倍ですか。Demon's Soulsも,シチュエーションごとにいろいろな種類の敵が登場したので,特別少ないと感じたことはなかったのですが……。確かにそれは,かなりのボリュームアップですね。
ええ,それらすべてがマップに蠢いているので,いろいろな敵を攻略していく楽しみを十分に味わってもらえると思います。
ほかにも,プレイヤーのバトルスタイル,もしくはロールプレイスタイルをひろげられるように,魔法や武器,防具なども相当数用意していますよ。
4Gamer:
プレイヤー側もボリュームアップというわけですね。例えばどういった魔法が増えているんですか?
宮崎氏:
マップ中のオブジェクトに変身できる魔法があったりしますね。マルチプレイで,変な場所に壷があると思ったら人が化けていたりとか。
4Gamer:
うわ,楽しそうですが嫌らしい魔法ですね。根気よく化けて待っていたら,それはそれで感心してしまいそうです。
宮崎氏:
そんなバカな,と笑える魔法だと思ってもらえれば(笑)。
武器の話もしておくと,Demon's Soulsでは直剣というカテゴリなら攻撃モーションは同じでしたが,DARK SOULSでは同じカテゴリの武器でもモーションが異なるので,バリエーション豊かですよ。
4Gamer:
武器単位でモーションが違うということですか?
宮崎氏:
すべての武器が異なるモーションというわけではないですが,かなりの数を用意しています。例えば,ロングソードを使っているプレイヤーが,聖剣のようなアイテムを手に入れたとしても,自分のバトルスタイルに合わないからロングソードを使い続ける,というような選択肢を取れます。
4Gamer:
おお,渋いですね。使う武器をパラメータだけでなく,モーションからも選べるというわけですか。
また,キャラクターのパラメータによって,モーションの速さや隙の大きさなどが変わったりもするので,同じ武器を使っていてもキャラクターによって違いが生まれます。マニアックな話をすると,いわゆる“スーパーアーマー”(※注)の要素についても,武器固定でなく,アナログに表現していますね。
※注:攻撃モーション中に敵の攻撃を受けても,のけぞったりすることなくモーションを続行できるという,無敵時間のような概念
4Gamer:
うーん,武器の選択が悩ましくなりそうです。そういえば,DARK SOULSでも武器の強化システムはあるんですか?
宮崎氏:
はい。ただ,実はDemon's Soulsの武器強化システムは失敗だったかなと思っていて,もうちょっと整理したいですね。とくに海外のプレイヤーから,分かりにくいと言われていますし。
4Gamer:
そんなに複雑なシステムでしたっけ……。強化の派生先はいろいろありましたが,そこまで分かりにくい印象もなかったような。
宮崎氏:
日本人からすればよくあるシステムという感覚なんですけど,海外のプレイヤーには馴染みがないらしいです。「俺は強化やらずに終わった」「何か石みたいなのが手に入ったんだが,これはどう使うんだ」というようなメールがいっぱいきて,むしろどうやってクリアしたの? って思うんですけど。
4Gamer:
逆に驚きますね(笑)。
宮崎氏:
そんなわけで,強化システムはもうちょっと分かりやすくしたいですね。
ともかく,魔法にせよ武器にせよ,DARK SOULSではかなりのバリエーションを持たせています。先ほど,探索感というキーワードを出しましたが,実はこれはキャラクターについても当てはまるんですよ。自分なりのプレイスタイルを探索して,自分だけのキャラクターを育てていってもらえればと。
DARK SOULSのオンライン要素には
2つの新たなコンセプトが
4Gamer:
Demon's Soulsといえば,非同期的なオンラインシステムや,シングルプレイの延長線上にあるマルチプレイなどが特徴的でしたが,DARK SOULSでのオンライン部分に新しいフィーチャーはあるのでしょうか。
宮崎氏:
オンラインについては,新しい2つのコンセプトがあります。1つめは,「プレイ体験の共有」ですね。この困難なゲームに挑んでいる仲間がほかにいるということを実感してもらって,お互いのプレイがちょっとずつ影響を及ぼしあうようなイメージです。
昔,「ドラゴンクエスト」なんかをプレイしているとき,プレイヤーは皆バラバラに攻略していましたけど,情報交換をして一緒に苦労しているヤツがいることが分かると,なんとなく嬉しかったですよね。それをDARK SOULSなりのやり方で表現してみようかなと。
4Gamer:
ああ,1人で頑張るより,一緒に苦労してる仲間がいたほうが楽しいですよね。自分も頑張ろうという気にもなる。Demon's Soulsの場合,血痕システムなどでほかのプレイヤーの様子を確認できましたけど,それとはまた別のシステムですか?
宮崎氏:
はい,今はまだ,詳しい情報はまだ公開できないので,今後の続報をお待ちください。
4Gamer:
えええ……それは残念です。では,せめてもう1つのコンセプトについて教えてください。
宮崎氏:
もう1つのコンセプトとしては,各自のロールプレイの延長で,相互作用として協力や対戦が発生するようにしたいと思っています。我々は「相互ロールプレイ」と呼んでいるんですが。
4Gamer:
うーん,あまりピンとこないワードですね。Demon's Soulsにあった,ほかのプレイヤーがボスとして召喚されるような要素に,ロールプレイが加わるイメージでしょうか。
ええ,お互いがお互いのロールプレイの中で,対戦や協力が局地的に発生するわけです。
指輪物語を例にすると分かりやすいですかね。指輪を発見したフロド役と,ずっと指輪を探している黒の乗り手役がいた場合,指輪をめぐる攻防が発生します。かたや黒の乗り手を勝手にやっているだけですし,かたやたまたま指輪を手に入れてしまった不幸な人……という感じです。
4Gamer:
それは興味深いですね……。あくまでロールプレイの一環であれば,協力や対戦もスムースに楽しめそうです。
ちなみに戦闘バランスは,対戦プレイ向きに調整されているんですか? Demon's Soulsでは対戦をガツガツプレイする人達もいましたけど。
宮崎氏:
ええと……変な話ですけど,そもそもDemon's Soulsの対戦をあそこまで遊んでもらえるとは思っていなかったんですよね。まずそこにびっくりしました。戦闘システムに深みは持たせてますけど,対戦向きのバランスにはなっていないですし。
4Gamer:
システム的に対戦もできたのであって,対戦を重視してはいなかったということですか。
宮崎氏:
ローリングなんか,対戦だけで考えると強すぎますしね。それは分かっていたのですが,当時の僕らは,これで対戦をやってくれる人がいれば大成功でしょ,なんて思っていました(笑)。
DARK SOULSについても,対戦向きの仕様に振るつもりはなくて,シングルプレイの延長で対戦を楽しんでほしいという思いはあります。もちろん対戦メインのゲームとして作るという方法もあったと思いますが,今回はそれよりもアクションRPGとして作りたかったので。
4Gamer:
対戦ゲームとして作るとなると,ゲームデザインそのものから検討する必要が生じてしまいそうですね。
でも,対戦が好きな人達を切り捨てるという話ではぜんぜんないですよ。やりこんでくれているゲーマーがいるのはすごく嬉しいですし,今回もシステム的には十分対戦できるものを用意しているつもりです。我々としては,失礼な言い方かもしれませんが,そういったやりこんでくださる皆さんを,ほかのプレイヤーが楽しくプレイするための資源として利用したいとも考えていますし。
4Gamer:
資源……ですか?
宮崎氏:
とてもやりこんでいて,強くて,いろいろなことを考えて,面白く遊んでいるプレイヤーがいる。そんな彼らの存在が,そこまではやりこんでいない大多数のプレイヤーの適度な刺激になり,「DARK SOULS」全体の価値につながればよいなと。それぞれがそれぞれによい刺激を与えあうことができれば,Win-Winじゃないかと思うんですよ。
とはいえ,DARK SOULSのオンライン要素もかなり実験めいたところがあるので,実際に発売され,多くのプレイヤーにプレイしてもらって,実際にどう動くのが,我々にも正確には分からないんですけどね(笑)。
4Gamer:
またチャレンジャーですね。Demon's Soulsでも,斬新なシステムだっただけにどう機能するか分からない部分があったということを,以前のインタビューでお聞きしましたけど。
宮崎氏:
まあ今回も何とかなるだろうと(笑)。どうなるのかすごく楽しみですね。
4Gamer:
少しDARK SOULSからは離れますけど,最近ではオンライン要素が当たり前のように,さまざまなゲームに用意されていますが,あえてコミュニケーションを省いたオンライン要素について,あらためて思うことはありますか?
宮崎氏:
うーん,やはりオンラインゲームといえば,ロビーでチャットというスタイルでないと受け入れられないのかな……とは,Demon's Soul発売前は思っていました。でも多くのプレイヤーに,Demon's Soulのマルチプレイを受け入れてもらえて,こういうアプローチもアリなんだなとは実感しました。
4Gamer:
Demon's Soulのオンラインに会話はありませんでしたが,プレイを通じて自然と連帯感のようなものが伝わりましたしね。
宮崎氏:
はい。今は逆に,会話ができないからこそ見えてくる可能性もあるんじゃないかと思ってます。
例えばロールプレイにおいて,プレイヤーという存在が薄いので,照れなく悪役を演じるたりできると思うんですよ。ボイスチャット付きのところで,「フフフ……」とか言って悪役やるわけにもいかないじゃないですか。
4Gamer:
確かにそれは照れるというか,周りから“痛い”人扱いされてしまうかも……。
宮崎氏:
ですよね。プレイヤーからも,会話が出来ないからこそおもしろいという声があって,僕らの作ったシステムは可能性があったんだなと,あらためて感じます。実はその声からヒントを得たのが,DARK SOULSのオンライン要素におけるコンセプトなんです。
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