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NVIDIA,ワークステーション向け新GPU「Quadro GP100」を発表。「NVLink」によるデュアルGPU構成が可能に
- Quadro GP100
- Quadro P4000
- Quadro P2000
- Quadro P1000
- Quadro P600
- Quadro P400
を発表した。いずれも価格は未公表で,2017年3月に発売予定という。
なかでも注目はQuadro GP100で,本製品は,「GP100」コアを採用する初のグラフィックスカードにして,NVIDIA独自の高速接続インタフェース「NVLink」によるデュアルGPU構成に対応した初のグラフィックスカードとなるのが大きな特徴だ。
ゲーマーと直接関係する製品ではないが,とくにQuadro GP100は今までにない特徴を備えたGPUなので,その概要をレポートしよう。
NVLinkによるデュアルGPU構成をサポートするQuadro GP100
Quadro GP100が搭載するGP100は,3584基のFP32用CUDA Coresを集積したGPUコアに,総メモリバス帯域幅が720GB/sに達する積層メモリ技術「HBM2」(High Bandwidth Memory 2)を組み合わせたGPUである。GP100を搭載する製品としては,数値演算アクセラレータ「Tesla P100」がすでに発売済みだが,ディスプレイ出力を持つグラフィクスカードでGP100を採用したのは,今回のQuadro GP100が初めてだ。
気になる主なスペックと演算性能値は以下のとおりで,少なくとも理論演算性能値は2016年4月に発表されたNVLink対応版のTesla P100「Tesla P100 for NVLink-enabled Servers」と完全に同じだ。PCI Express(以下,PCIe)版のTesla P100である「Tesla
- FP32用CUDA Core数:3584基
- FP64用CUDA Core数:1792基
- グラフィックスメモリ容量:16GB(※HBM2 4モジュール)
- マルチGPU対応:NVLink(※最大2-way)
- ビデオ出力:DiplayPort 1.4
× 4,DVI × 1 - 対応解像度:4096
× 2160ドット@120Hz, 5120 × 2880ドット@60Hz - VR Ready:対応
- FP16理論演算性能:最大20 TFLOPS
- FP32理論演算性能:最大10 TFLOPS
- FP64理論演算性能:最大5 TFLOPS
さて,先ほど筆者はQuadro GP100をNVLinkに対応する初のグラフィックスカードと述べたが,実のところ,PCIe版Tesla P100であるTesla
なお,Quadro GP100がサポートするマルチGPU構成は上述のとおり2基まで。NVLinkのコネクタが2基分しかないので,3〜4基のマルチGPU構成は物理的に対応しないとのことだ。
もう1つ,Quadro GP100で注目すべき点は,ディスプレイ出力にある。Qua
また,VRヘッドマウントディスプレイへの出力にも対応しているという。NVIDIAは,建築や工業設計,医療といった分野でフォトリアリスティックなVR技術が求められているとのことで(関連記事),VR対応もQuadro GP100のアピールポイントになっている。
GP100を搭載するQuadroシリーズの登場は予想の範囲だったが,NVLinkによるデュアルGPU構成に対応してきたのには,少々驚かされた。
NVLinkは,1リンクあたり双方向40GB/s×のバス帯域幅を持つ高速インターコネクト技術である。それをQuadroとはいえグラフィックスカードが採用してきた以上,将来的にゲーマー向けのGeForceでもSLIに代わってNVLinkを採用する可能性が出てきたとは言えるだろう。
もちろん,ゲームグラフィックスも進化し続けているので,将来的にはGeForceシリーズでもNVLinkや類似技術を採用する可能性はある。ただ,それはもう少し先の話になるのではないだろうか。
エントリー向けQuadroには新開発のGPUを採用か?
本稿の冒頭でも紹介したとおり,NVIDIAは今回,ミドルクラスからエントリー市場向けとなるQuadroも5製品発表した。今回の発表により,Quadroはすべての市場セグメントに向けてPascal世代への移行が完了したことになる。
順に見ていこう。ミドルクラス市場向けで,VR ReadyでもあるQuadro P4000は,1792基のCUDA Coreを統合したGPUを採用するグラフィックスカードだ。
NVIDIAは,各製品が搭載するGPUの詳細を明らかにしていないのだが,1792基のCUDA Coreに容量8GBのGDDR5メモリというスペックから推測すると,「GeForce GTX 1080」と同じ「GP104」コアから,演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を6基分を無効化したものではないだろうか。
続くQuadro P2000は,CUDA Core数が1024基,Quadro P1000は640基となっている。こちらも筆者の推測であることを断ってから続けると,Quadro P2000は,「GeForce GTX 1060」で採用する「GP106」コアから,2基分のSMを無効化したGPU,Quadro P1000は,「GP107」コアから1基分のSMを無効化した,「GeForce GTX 1050」相当のGPUをそれぞれ採用するものと思われる。
さて,ここまでは既存のGPUをベースにしたものだろうと推測できるのだが,エントリー市場向けのQuadro P600とQuadro P400が搭載するGPUは,正体が分からない。CUDA Coreの規模は,Keplerベースの「GeForce GT 730」(GK208)に相当するが,2製品ともPascalアーキテクチャなので,当然ながら別物だ。
コンシューマ向けにはまだ登場していないPascalベースのGPU――“GP108”あたり?――を採用しているのではないだろうか。
Quadroシリーズのエントリー市場向けだけのために,GPUコアを新たに開発するというのも考えにくいので,Quadro P600やQuadro P400と同じGPUが,たとえばノートPC向けGPUなどとして登場してくる可能性はあるかもしれない。
以上,おおまかにQuadroシリーズの新製品を紹介してみた。2016年に登場したHBM2やNVLinkといった技術が,ついにグラフィックスカードへ“下りて”きたということで,Quadro GP100は1つのマイルストーンになったとまとめることができるだろう。
これらの技術を使った製品が,ゲーマー向け製品として登場するのか,するとしたらいつか。今後の動きに注目したい。
NVIDIAのQuadroシリーズ製品情報ページ
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NVIDIA RTX,Quadro,Tesla
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