レビュー
GALAXYの白いOC版は,上位モデルにどこまで迫るか
GALAXY
GF PGTX560TI-SPOC/1GD5 WHITE
では実際のところ,リファレンスクロック比で10%以上の引き上げを果たしたモデルだと,上位モデルや競合製品との力関係はどのように変わってくるのか。今回は,この条件を満たすカードのなかから,発表からそれほど間を置かずに登場したGALAXY Microsystems(以下,GALAXY)製の「GF PGTX560TI-SPOC/1GD5 WHITE」(以下,GALAXY GTX 560 Ti WHITE)を取り上げ,その実力を明らかにしてみたい。
なお,カードは,GALAXYの販売代理店であるエムヴィケーから貸し出しを受けている。
白,というかクリーム色が目を引く基板
クロックをリファレンス比+約16%
厳正を期せば,この色は白ではなくクリーム,あるいはライトイエローあたりが近いような気もするが,ただ,一般的な基板と比べて白いことだけは確かである。
そして,冒頭でも述べたとおり,GALAXY GTX 560 Ti WHITEの動作クロックはリファレンス比で大きく引き上げられているのも,大きな特徴となる。
具体的な値は以下のとおりで,コア&シェーダクロックは約16%,メモリクロックは約10%引き上げられている計算だ。
- コア:950MHz(←リファレンス822MHz)
- シェーダ:1900MHz(←リファレンス1644MHz)
- メモリ:4400MHz相当(←リファレンス4008MHz)
外部給電コネクタは8+6ピン仕様となった。グラフィックスカードをマザーボードに差したとき,コネクタはマザーボードと並行方向を向く |
GPUクーラーを外したところ(※GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為です。外すとメーカー保証が受けられなくなりますので注意してください) |
ちなみに筆者が試したところ,8ピンコネクタに正常な電力が供給されていない,要するに6ピンケーブルを2本つないだ状態では動作しなかった。
白い基板を覆うGPUクーラーは,GPUパッケージと接触する面が銅で,そこから4本のヒートパイプが放熱フィンへと伸びる仕様。リファレンスカードだと3本だったので,ヒートパイプの本数だけ見ても,冷却能力の引き上げが図られていると想像できよう。
搭載するファンのサイズは実測する限り82mm角相当で,これはリファレンスカードと同じ。9枚という羽根の枚数も同じだが,羽根1枚1枚が小さいのが特徴だ。
気になる回転数は,後述する今回のテスト中だと,最大で55%設定,回転数2700rpmまでの上昇を確認できている。同条件でリファレンスカードだと回転数は1700rpmに留まったので,ファンの回転数も引き上げられているようだ。ただ,毎度筆者の主観だと断っていて申し訳ないが,聞き比べる限り,動作音は2製品で大差なく感じられた。少なくとも,2700rpmという数字の大きさから感じられるほどのうるささはない。
三洋電機製の導電性高分子タンタル固体電解コンデンサで,耐熱性が高く,大容量で,背が低い特徴を持つ「POSCAP」がズラりと並んだPWM回路は,最大240Aの電流量に対応するという。
また,先ほどカード背面の写真を紹介したときに気づいた人もいると思うが,GALAXY GTX 560 Ti WHITEは,NEC製トーキン製のデカップリングデバイス(≒デカップリングコンデンサ)で,広い周波数帯域でフラットなインピーダンス特性を発揮でき,既存のデカップリング回路よりも面積を取らないとされる「プロードライザ」を4個搭載している。4基は,「0D158」が3基,「0D108」が1基と,公称静電容量が異なっているので,前者がGPU用,後者がメモリ周り用ではなかろうか。
かなりぜいたくな仕様になっている電源周り。PWMコントローラはVolterra Semiconductor製だった |
カード背面。GPUを囲むように3基,少し離れたところに1基のプロードライザを搭載している |
いずれにせよ,高クロック動作を実現すべく,電源周りには相当なコストが投下されているわけだ。
GTX 570など上位陣にどこまで迫れるか
ドライババージョンが異なる点に注意
今回用意した比較用GeForceは,GTX 560 Tiのリファレンスカードと,上位モデルである「GeForce GTX 570」(以下,GTX 570),GTX 560 Tiが置き換える対象となる「GeForce GTX 470」(以下,GTX 470)と,グラフィックスメモリ1GB版の「GeForce GTX 460」(以下,GTX 460 1GB)の計4製品。また,競合製品からは,「Radeon HD 6950」(以下,HD 6950)と「Radeon HD 6870」(以下,HD 6870)も用意している。
そのほかテスト環境は表のとおりだが,CPUやマザーボードなどはGTX 560 Tiのレビュー記事とまったく同じであり,それを受けて,GTX 560 TiとGTX 570,GTX 470,GTX 460 1GBのデータはレビュー記事から流用することにした次第だ。
なお,Radeonのスコアは,1月27日に公開された「Catalyst 11.1」で取り直している。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション10.2に準拠。レビュー記事から一部のスコアを流用する都合上,テスト解像度はレビュー記事と同じく1920×1200&2560×1600ドットの2つとなる。グラフは基本的にモデルナンバー順で並べたが,グラフ画像をクリックすると,別ウインドウで1920×1200ドットのスコアを基準で並び替えたものを表示するようにしてあるのも,レビュー記事と同じだ。
950MHz駆動で,HD 6950と同等以上の性能を発揮
GTX 570との間にあるギャップはかなり大きい
スペースの都合上,グラフ内に限り,GALAXY GTX 560 Ti WHITEを「GALAXY 560 Ti」と表記することをお断りしつつ,さっそく「3DMark06」(Build 1.2.0)から見ていこう。
テスト結果はグラフ1,2のとおりだが,GTX 560 Tiに対するGALAXY GTX 560 Ti WHITEのスコア向上率は最大で11%。よく言えば,「まずまずの伸びを見せており,DirectX 9アプリケーションでHD 6950と同じレベルに達したのは大きい」。一方,意地悪く言えば「動作クロックほどの伸びはなく,GTX 570にも届いていない」といったところか。
グラフ3,4は,「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)の「Day」シークエンスにおける平均フレームレート。ここでGALAXY GTX 560 Ti WHITEのスコアはGTX 560 Ti比で13〜15%高く,動作クロックどおりの順当な結果が出ている。その効果もあって,「標準設定」ではHD 6950に対しても11〜15%高く,「高負荷設定」に至っては,1920×1200ドットでわずかながらGTX 570も上回るスコアを示した。
同じSTALKER CoPから,描画負荷の最も高い「SunShafts」シークエンスの結果がグラフ5,6だ。全体的な傾向はDayシークエンスを踏襲するが,DirectX 11世代のエフェクトが多くなっている関係で,GALAXY GTX 560 TiはHD 6950より安定的に高いスコアを示すようになっている。
グラフ7,8は,「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2)のテスト結果となる。ここでもGALAXY GTX 560 Ti WHITEのスコアはGTX 560 Tiより13〜14%高く,STALKER CoPの結果に近いといえる。HD 6950に対しても15〜28%高いスコアで,完勝といえるが,一方でGTX 570のスコアと比べると93〜98%で,あと一歩届かない。
DirectX 11特化型であるFermiアーキテクチャが苦手とするDirectX 9世代のタイトル,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のテスト結果がグラフ9,10だ。
Call of Duty 4でも,GALAXY GTX 560 Ti WHITEとGTX 560 Tiとのスコア差は13%前後。標準設定でHD 6950に届かないのはGTX 560 Tiと変わらないものの,当然ながらその差は縮まっており,むしろ高負荷設定では安定的に高いスコアを示すに至った。また,その高負荷設定では1920×1200ドットでわずかながらGTX 570をかわしている点も要注目だ。
なお,VLIW4アーキテクチャを採用するHD 6950のスコアが全体的にいま1つ奮わないのは,正式対応版グラフィックスドライバであるCatalyst 11.1を用いた今回も,先のGPUレビュー記事から変わっていない。
続いてグラフ11,12は「Just Cause 2」のテスト結果となる。
Just Cause 2では,高負荷設定において,動作クロックの高いGTX 560 Tiが健闘するとレビュー記事で判明しているが,それだけに,より動作クロックの高いGALAXY GTX 560 Ti WHITEのスコアは良好。HD 6950に対しても優勢だ。
グラフ13,14の「バイオハザード5」でも全体的な傾向そのものはこれまでと同じだが,しかしGALAXY GTX 560 Ti WHITEがGTX 570にかなり近いところまで迫っており,2製品で第1グループを形成している点は押さえておきたい。
3D性能検証の最後はグラフ15,16の「Colin McRae: DiRT 2」(以下,DiRT 2)だが,ここでもバイオハザード5と同様,GALAXY GTX 560 Ti WHITEはGTX 570にかなり迫っている。
GTX 560 Tiから消費電力は20Wほど増加
GPUクーラーの冷却性能は良好
動作クロックの引き上げによって性能が上がったのは歓迎すべきだが,一方で,外部給電コネクタの仕様も“引き上げ”られているのは気になるところ。実際にどの程度,リファレンスカード比で消費電力は上昇しているのだろうか。
今回も,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を計測することにした。テストにあたっては,OSの起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
その結果はグラフ17のとおり。アイドル時こそGALAXY GTX 560 Ti WHITEの消費電力値はGTX 560 Tiとあまり変わらないが,アプリケーション実行時は,やはり目に見えて高くなる。タイトルによって最小で9Wから最大で51Wとブレはあるのだが,平均では21W高い計算で,やはり,動作クロック引き上げの対価は安くない印象だ。
ただそれでも,GTX 570よりも消費電力が確実に低い点は評価してよいポイントだろう。
グラフ18は,3DMark06の30分間連続実行時点を「高負荷時」として,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 0.5.1)からGPU温度を取得した結果だ。テスト時の室温は,GPUレビュー時と同じ約20℃である。
搭載するクーラーが異なるため,横並びの比較に意味はほとんどないのだが,それでも,3D性能が上がり,消費電力も20W程度上がっている一方,GPUクーラーの動作音はほとんど変わっていないGALAXY GTX 560 Ti WHITEが,リファレンスカードとほぼ同等の冷却能力を確保できている点は歓迎できそうだ。最近のGALAXYが積極的に採用する,メカメカしい印象のカバーを採用したオリジナルクーラーだが,GALAXY GTX 560 Ti WHITEが搭載するものは優秀と述べていい。
「あと数千円でGTX 570が買える」事実は軽くないが
ポテンシャルの高さと消費電力の妥当さは魅力
ただ,「単に電圧を盛って動作クロックを引き上げただけ」でなく,高クロック動作に向けてしっかり設計されていることと,GTX 570にいいところまで迫り,HD 6950に対しては同等以上の性能を発揮しつつ,消費電力はGTX 570より低いことも考えるに,納得できる人はいるだろう。
2万円台後半から3万円強のラインでグラフィックスカードを探しているのであれば,大きく動作クロックが引き上げられたGTX 560 Tiカード――GALAXY GTX 560 Ti WHITEは選択肢になる。また,時間が経って3万円を割り込んでくるようだと,かなり魅力的なカードになるのではなかろうか。
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GeForce GTX 500
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