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「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」「ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜」(&「喧嘩番長」)で,“学園モノはスパイク!”の時代に。その仕掛け人に,ネタバレから今後の展開まで根掘り葉掘り聞いた
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印刷2011/07/09 00:00

インタビュー

「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」「ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜」(&「喧嘩番長」)で,“学園モノはスパイク!”の時代に。その仕掛け人に,ネタバレから今後の展開まで根掘り葉掘り聞いた

 2010年11月発売の「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」(以下,ダンガンロンパ),2011年4月発売の「ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜」(以下,ガチトラ)。スパイクからリリースされたこの2作は,どちらも“学園モノ”という共通点を持つものの,どちらも異なる方向性で新しさを追求した作品として,高い評価を得ている。
 スパイクの学園モノといえば,2005年の第一作以来,作を重ね続けている「喧嘩番長」シリーズを真っ先に思い浮かべる人も多いだろうが,ふと気付けば同社は,毛色の異なる学園モノのタイトルを3種類も抱えているのだ。そうしたこともあり,最近では「学園モノはスパイク!」というキャッチコピーも使用されている。

画像集#002のサムネイル/「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」「ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜」(&「喧嘩番長」)で,“学園モノはスパイク!”の時代に。その仕掛け人に,ネタバレから今後の展開まで根掘り葉掘り聞いた
「ダンガンロンパ
希望の学園と絶望の高校生」
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「ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜」

 今回は,ダンガンロンパとガチトラのプロデューサーである寺澤善徳氏,そしてガチトラで総監督を務めた松本朋幸氏に,両タイトルの開発裏話を聞きながら,なぜ今,学園モノなのか? そしてなぜこの短い期間に,二つの新たな学園モノがリリースされたのか? スパイクは何を目指しているのか? といったあたりをまとめて聞いてみた。発売からだいぶ時間が経過しているということもあり,ネタバレ要素も満載になっている点は,あらかじめご了承いただきたい。
 なお,このインタビューの聞き手は,「今やスパイクは,私にとって『幸せ請負会社』」と言って憚らない(関連記事),男色ディーノが担当する。

寺澤善徳氏(左)と松本朋幸氏(右)。後ろ姿は男色ディーノ
画像集#001のサムネイル/「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」「ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜」(&「喧嘩番長」)で,“学園モノはスパイク!”の時代に。その仕掛け人に,ネタバレから今後の展開まで根掘り葉掘り聞いた

「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」公式サイト

「ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜」公式サイト



ストーリーを追うだけだと物足りない

だから「ガチトラ」は,ミニゲームに力を入れた


男色ディーノ(以下,DD):
 初めまして。今日はよろしくお願いします。

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松本朋幸氏(以下,松本氏):
 初めまして。先日は「ガチトラ!」の釣りゲームをお褒めいただいて,ありがとうございました(関連記事)。

DD:
 いえいえとんでもないです。ガチトラは釣りゲームに限らず,ミニゲームにかなり力を入れているように感じたんですが,やはりそこは狙っていた部分なんでしょうか?

松本氏:
 はい。ミニゲームに関しては,ほかの似たようなタイトルとかぶらないもの,あえてかぶっているようなものを含めて,とにかく詰め込んでいこうと。

寺澤善徳氏(以下,寺澤氏):
 部活のミニゲームに関しては,学園モノであるガチトラならではですよね。でも,松本が最後まで入れたがっていたのは,競馬なんです。

DD:
 お,競馬ですか?

寺澤氏:
 ゲーム内のイベントシーンで,トラ(主人公の梶 虎男)が,ラジオで競馬中継を聴いているシーンがあるんですけど,実はあれは競馬のミニゲームを作ろうとしていた名残なんですよ。

松本氏:
 かなり凝った競馬ゲームを作るつもりで,もの凄いボリュームの仕様書を用意しました。ゲーム内に競馬新聞を出して,予想して楽しめるようなものにしようとしていたんです。

寺澤氏:
 でも,僕がNGを出したんです(笑)。

DD:
 え,なぜNGに?

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寺澤氏:
 学園モノとしては必然性がありませんし,それだけで一本のゲームになるぐらいのボリュームになりそうだったんです(笑)。それに,スケジュール的にも正直厳しかったですから。
 松本は競馬ゲームを作るために,部活などのほかの要素を削ろうとまでしていましたからね。「競馬を作れなくなっちゃうんで,こっちの部活を削ってもいいですか?」って。それは学園モノとしてダメだろ,と(笑)。

松本氏:
 それぐらいやりたかったんですよ!

DD:
 ちょっと気の早い話ですが,もしもガチトラの続編を作ることになったとしたら……?

松本氏:
 絶対に競馬を入れたいですね!

DD:
 凄い気合いだ(笑)。では,ほかに入れられなかった要素はありますか?

松本氏:
 ミニゲームに関しては,削ったものばかりですね。当初は現在の倍ぐらいあったんですが,容量やスケジュールなどの関係で泣く泣く削っていきました。

寺澤氏:
 開発を担当したスタジオ斬さんが,ミニゲームを作るのがうまいんですよ。細かい部分まで説明しなくても,ネタだけをポンと振ったら,それできっちり作ってくれるんです。

松本氏:
 開発スタッフがノリノリで作ってくれたのは嬉しかったですね。ああいうミニゲームって,作ろうとしても作業的になりがちなんですよ。例えばテニスのミニゲームを作ろうとなると,「テニスっぽければいいんでしょ?」みたいなことになりがちなんですが,ガチトラに関してはそういった妥協がなく,きっちり作り込んでもらえました。

DD:
 それは遊んでいても感じました。やっつけ的なミニゲームがないな,と。

松本氏:
 ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいですね。

DD:
 今って,次から次へと新作ゲームが出る時代じゃないですか。だから新作を買ったら,とりあえずメインストーリーだけをさくっと終わらせて,次のゲームを遊ぶみたいな人も多いと思うんです。でもガチトラの場合,ミニゲームのおかげでずっとガチトラだけを遊びたくなっちゃうんですよね。これはやはり……思うつぼってやつでしょうか?

松本氏:
 ええ(笑)。メインストーリーだけだと,どうしてもプレイが単調になる可能性もあるので,遊びの幅を持たせることで長く楽しんでほしいという狙いはありました。

寺澤氏:
 少し詳しくいうと,ガチトラって「喧嘩番長」シリーズと比較される作品だと思うんですが,喧嘩番長シリーズと比べるとかなりストーリー寄りの作りになっているんです。その結果,喧嘩番長シリーズほどの自由度を作れなかったのも事実なんですよ。
 そこで,ストーリー以外の部分で何を楽しめるようにするか? ということを考えて,ミニゲームの比重を大きくしたんです。

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松本氏:
 自由度と一言で言っても,いろいろな表現があるんですよね。例えば,自由にマップをどこまでも行けることだったり,なんでも壊せることだったり,行動によってストーリーが変わることだったり,ストーリーに関係なく色々なミニゲームで遊べることだったり。それぞれ違うものなんですけど,どれも「自由度が高い」という表現になりますから。
 そんな中,ガチトラでは自由度を高めるためにミニゲームを用意して,それを遊ぶか遊ばないかの“自由”はプレイヤー次第という形を取りました。

DD:
 では,プレイヤーにはガチトラのメインストーリーとミニゲームを,どれぐらいの時間配分で遊んでほしいと思っていましたか?

松本氏:
 プレイ時間のうち6割ぐらいは,ミニゲームで遊んでほしいというぐらいの気持ちで作りました。

DD:
 そこまで本格的に,ミニゲームを重視していたというわけですね。


「喧嘩番長」シリーズとは違うものを作るため

ストーリーとグラフィックスを重視した


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DD:
 喧嘩番長と比べてガチトラはストーリーに寄っているとのことですが,ではなぜ,ガチトラをストーリーに寄せて作ることになったんですか?

寺澤氏:
 喧嘩番長シリーズは,プラットフォームがPSPになってから,よりゲームシステムで楽しんでもらうように,イベントを簡素化した部分もあって,ゲームとしてシステム寄りになっているんですね。そのことで,多くのプレイヤーに喜んでいただけるようになったんですけど,それとは違うものを作ろうというのが,最初のコンセプトでした。

松本氏:
 喧嘩番長シリーズとは別の方向性で,新しいものを作ろうとなったわけです。それで,ストーリー寄りにしたという流れですね。

寺澤氏:
 イベントボイスも入れて,しっかりカメラワークも取り入れて,見るだけでも楽しめるものにしよう。そのクオリティは,妥協せずに追求していこう。これが最初に決まったコンセプトです。

松本氏:
 グラフィックスのクオリティに関しても,できる限り綺麗にしようと頑張りました。喧嘩番長シリーズとは,キャラクターモデルの作りも違うんですよ。ガチトラの場合,髪の毛も細かく分かれていますし,指も全部がちゃんと動くようになっています。細かい部分ではあるんですが,こういったディテールには気を配りました。結果,同時に出せる人数に制限が生じたりもしたんですけど。

寺澤氏:
 カメラの固定も早い段階で決めましたね。PSPが持つ性能を考えると,綺麗な絵を出すにはそのほうがベストだろうと。
 今まではカメラをフリーに動かせることを重視したゲームを作ってきたので,最初のうちは少しだけ抵抗感もありました。でも今回は,その部分の自由度を多少犠牲にしてでも,絵として綺麗にしたかったんです。

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松本氏:
 例えば,「海の見える公園」の夕日の描写などの風景を,ちゃんと綺麗に見えるようにしようというのは,凄く意識して作っています。実は,もともとマップの広さは現在の5倍ぐらいあったんですけど,細かい部分までこだわってグラフィックスの質を上げていこうとすると,容量であったり工数であったりの問題で,マップを小さくせざるを得なくなってしまいましたが,その分綺麗に作れたんじゃないかなと思います。

DD:
 ちなみに喧嘩番長とガチトラって,同じぐらいの年齢層のプレイヤーが遊んでいるイメージですか?

寺澤氏:
 喧嘩番長シリーズは中学生がボリュームゾーンで,ガチトラではその少し上の高校生ぐらいをメインターゲットとして考えていたんですけど,実際には18歳以上の方が多く遊んでくれているようです。

松本氏:
 年齢的には上のほうに広がっている印象ですね。欲を言えば,もっと下の現役の学生さん達にも遊んでほしいですね。

DD:
 ガチトラを作るにあたって,イメージしたドラマやアニメなどの作品はありますか?

松本氏:
 よく言われているのが,「GTO」や「ごくせん」でしょうね。このあたりは,ガチトラの情報を初めて世間に出した段階から言われていました。実際に意識はしていますし,全部見ました。
 でも,GTOやごくせんに限らず,学園モノのドラマはほとんど全部を見ましたし,とにかく研究に研究を重ねて,あの形に持って行ったんです。

DD:
 学園モノで教師を主人公にした作品の面白さって,どこにあると思いますか?

松本氏:
 ……説教するところ?

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寺澤氏:
 やっぱり,わがままで自分勝手な子供達に,大人の経験や価値観を伝えて,物事にはもっといろんな見方があるんだよということを理解してもらう……というところなのかな? と思いますね。それを考えると,今,あまり現役の学生さんに遊ばれていないっていうのも理解できるんです。彼らは常日頃,それを言われている側なので,ゲームでまで説教されたくないでしょうし(笑)。
 僕らとしては,トラのやっていることは凄く分かりやすいし,共感できる部分もあるんですけど,自分も学生だったら,トラの言うことでもうるさく感じるのかな? って。

松本氏:
 それはあるかもしれないですね。でもトラの場合,正しいことを言っているとは限らないんですけど。

DD:
 そこがいいんですけどね(笑)。

寺澤氏:
 遊んでもらって,「こんな先生がいたらいいのにな」って思ってほしいですね。今,ああいう男気のある先生というか,はちゃめちゃな先生っていないですしね。「こんな先生がいたらいいのに!」という気持ちを叶えてあげたいな,という思いで作ったんで。

DD:
 現時点では,大人達が「俺達が学生の頃にこういう先生がいたらなぁ」と思っているのかもしれませんね。
 教師を主人公にした作品って,キャラクターを通してクリエイターが伝えたいと思っていることを,ストレートに伝えられるジャンルでもあると思います。本来,それはゲームを遊びながら感じればいいことではあると思うんですが,あえてここで言葉にするならば,この作品にはどんなメッセージを込めましたか?

松本氏:
 「悩むことはいろいろあるだろうけど,明るく楽しく生きていこうよ!」というのを出したかったんです。「悩んだってしょうがないじゃん!」というノリですね。

DD:
 先ほどのミニゲームの話題にも繋がりますが,世の中にはいろいろな楽しいものがあって,決して学園生活だけが人生のすべてではないし,どれを選ぶかは自由だ,みたいなノリは感じました。

松本氏:
 そこを感じていただけると嬉しいです。でもこれは,スタジオ斬さんの力なんですよ。僕は大風呂敷をざっと広げて,はい作って! みたいな感じなんですけど,それをうまく綺麗に繋げていってくれましたから。

寺澤氏:
 松本は,広げられるだけ広げるタイプのプランニングディレクターなので,とにかくネタの宝庫なんです。ただ,それをすべて実現しようと思うと,いくら時間があっても足りないし,バグも生むし……みたいなね。そういうところがありながらも,今回はうまくパッケージングできたかなという気がします。

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対極にあるものをミックスさせる面白さを狙い

教師モノに極道モノを組み合わせた


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DD:
 ガチトラは学園モノではありますが,同時に極道モノでもありますよね。この二つをなぜ組み合わせようと思ったんですか?

松本氏:
 根っこにあったのは,学園モノで教師モノという部分です。教師モノのゲームがあまりないのはなぜかという話からスタートして,じゃあなぜ教師はゲームにならないのか? と考えていくと,ゲームにしづらいのは確かなんですよね。アドベンチャーゲームやシミュレーションゲームであれば,まだ作りやすいと思うんですが,それだと真面目になりすぎてスパイクらしくないですし,僕のカラーでもないんです。
 真面目一辺倒じゃないカラーを出すためにはどうするべきか? となったときに,教師の対極にある極道をミックスさせることで,面白いものが生み出せるんじゃないかとひらめきました。極道が教師になるなんて,まずあり得ませんからね。ただ,私立であれば前科さえなければ,教師になることが可能ではあるということなので,よし,いけると(笑)。

DD:
 現実にはあり得ないけど,不可能じゃないギリギリのラインということですね。
 “あり得ない”繋がりというわけではないんですが,ソウルヌードバトルのシステムもぶっ飛んでいますよね。どう見ても殴り合いなのに,精神世界の出来事という設定で。これはいくら元極道とはいえ,教師が生徒を直接殴るのはまずいというところから生まれたものなんでしょうか。

寺澤氏:
 そのとおりです。学園モノでアクションアドベンチャーにしようとなったとき,そのためにはバトルが必要だと,松本が言い続けていたんです。バトルがないと,ゲームとしてのメリハリに欠けてしまう,と。
 でも,今の時代に教師が生徒を実際に殴るゲームなんて出したところで,社会的に許されないですよね。

松本氏:
 実はソウルヌードバトルって,もともとは精神世界ではなく,説教しながら殴るというものだったんですよ。でも,それだと実際にぶん殴ることになるわけで,これではまずい。じゃあ精神世界にすればいいんじゃない? ということになりました。

寺澤氏:
 でも最初のうちは,精神世界という設定があっても,絵的にはぶん殴っているだけにしか見えないんですよ。精神世界なんだという説明が必要になって,現実世界を背景に敷いたんです。これも後付けなんですよ。

松本氏:
 そこで工夫して,背景で二人が話し合っているシーンを表示するようにしたところ,今までに見たことのない絵になったんで,これは面白いね,と。

DD:
 では,決着が着いたときにヌードになるのは,なぜですか?

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松本氏:
 もともとは脱いだりすることもなかったんです。当初は単に“脳内バトル”とか“精神バトル”と呼んでいたんですけど,これではインパクトがないんですよね。そこで,バトルの名前をどうする? という話を会議でして,ホワイトボードにいくつも候補を書いていったんですが,たまたま「ヌード」という言葉が出てきたんです。

寺澤氏:
 たまたまね(笑)。

DD:
 相当,煮詰まっていたんでしょうね(笑)。

松本氏:
 そうなんですよ。そこでぽーんとヌードという言葉が出てきて,そこから「魂を裸にするじゃん,じゃあヌードバトルにしたら?」「ヌードバトルなら脱がないとおかしいよね?」ということになって(笑)。
 その時点でゲームはだいぶ出来上がっていたんですけど,急きょ,スタジオ斬さんに「すみません,脱がしてください」と伝えたんです。さすがに先方も「えー?」ってなっていたんですけど,出来上がったものを見たら,キャラクターごとにプロポーションが違うというこだわり具合のものになっていたんですよ。

DD:
 脱ぐということ繋がりでいうと,ガチトラにはちょっとエッチな要素もありますよね。そういうものって,どこからがエッチなのかみたいなラインは,人それぞれだと思うんですけど,そのバランスはどう考えていったんですか。

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松本氏:
 僕は割りと,勢いに任せて作るタイプなんですけど,今回に関してはスタジオ斬さんも……エッチなんですよ,もの凄く(笑)。なので,出来上がったものがエッチすぎて,僕が制限をかけることもありました。ただ,僕が制限をかけた状態でも,寺澤に見せると「まだエッチすぎるだろ」みたいな話になって,最終的に今の状態に何とか収めたという感じです。

DD:
 ああ,でもそういう姿勢があるからこそ,スタジオ斬さんはソウルヌードバトルの脱ぐシーンも気合いを入れて作れたのかもしれませんね。最後に脱ぐというのがあるかないかで,プレイヤーに与えるインパクトはかなり変わってきますし。

松本氏:
 どうやってインパクトを出すかと悩みに悩んで,最後にあれがバチッとはまったんで,それまで悩んだ甲斐がありました。

DD:
 インパクトという点では,演出面でもキャラクターの表情がアニメのようにコロコロ変わったりといった点にも驚かされました。ああいう細かい顔芸を入れた意図を教えていただけますか?

松本氏:
 ストーリーを重視したゲームにするとなると,イベントを見ている時間が長くなるのは避けられないんですよね。そこで,飽きられることなく,楽しんで見ていただくにはどうするべきか? ということで,ああいったアニメ的な演出を盛り込んだんです。


生徒の悩みを解決するだけでは盛り上がりに欠ける

だからこそ,物語は次第に学園の外へ広がっていく


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DD:
 ガチトラでは,ストーリーが龍ヶ峰学院の内側だけにとどまらず,龍ヶ峰市を舞台とした利権がらみの陰謀にまでエスカレートしていきますが,これは最初から決めていたことなんですか?

松本氏:
 物語として徐々にスケールアップしていこうというのは,最初から考えていました。生徒一人一人の悩みを聞いて解決するだけで終わってしまうと,ゲームとしてちょっと盛り上がりに欠けてしまいますからね。
 そこで,裏にもう一本太いお話を用意して,それを引っ張りつつ,生徒の悩みを解決していくという形であれば,盛り上げられるだろうと狙っていました。

DD:
 それによって,ただの学園モノとは違うテイストにもなっていますよね。

松本氏:
 ゲームである以上,はちゃめちゃな展開のほうが面白いかなとも思いますし。そもそも虎男も元極道ですし,はじけたほうがいいだろうなと。
 ただ,ストーリー自体は奇をてらっているわけでもなく,「こんなエピソード,どこかにあったなぁ」というのを繋げています。そういう分かりやすさも大事だと思っていますので。

DD:
 設定だけでなくストーリーも突飛にしてしまうと,ついて行けるプレイヤーも少なくなりますしね。
 極道といえば,ゲームだけでなくさまざまな作品で抗争が描かれていますよね。ガチトラの場合も,ストーリーが展開していくうちに抗争へと繋がっていきますが,これも最初から考えていた流れなんですか?

松本氏:
 いえ,何となく繋がっていった感じですね(笑)。

DD:
 それでも破綻なくまとまっているのは凄いですね。

寺澤氏:
 松本って,思ったとおりにどんどん筆を進めていくタイプのシナリオライターなんです。でも,僕はそれを読むと,バックボーンなんかが気になっちゃって,整合性をきちんと取りたくなるんですよ。「こことそこの繋がりが理屈に合わないけど?」って(笑)。その部分には時間をかけましたね。

松本氏:
 僕は細かい部分が適当なんです。伏線を張っておいたのに忘れちゃったり。キャラクターに関しては,きっちり固まらないと書けないタイプなんで性格がぶれたりはしないんですけど,細かいところがどうも(笑)。

寺澤氏:
 この事件は何年前なの? みたいな部分を全然考えてないんです。

松本氏:
 たぶん2〜3年前じゃないかなぁ,ぐらいで。

寺澤氏:
 そうすると,結衣の年齢がおかしくないか? みたいに,いろいろとツッコミどころが残っちゃうんですよね。

DD:
 最終的には,そういった齟齬はほとんど潰せてますよね?

松本氏:
 相当時間はかかりましたけどね。寺澤に突っ込まれていなかったら,プレイヤーからたくさんの不平不満をいただくことになっていたと思います(笑)。

DD:
 それは名コンビってやつですね。

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寺澤氏:
 ダンガンロンパの小高(和剛氏)も,わりとそういうタイプなんですよ。がーっと書くタイプなので,整合性が取れてなかったり,ツッコミどころが残っていたりして。だからそんなときは必ず,年表と相関図を書いてもらうんです。……っていうことをしない人達なんで,時系列がおかしかったりするんですよね,まあそこまで詰める時間的余裕を与えていないからっていうのもあるけど(笑)。
 でもそういう部分を時間をかけて綺麗にしていくと,結果的に追加して書くべきことも増えてきて,それが作品の深みになったり,スパイスになったりするんです。そこは一緒に作っていて面白いところですよね。

DD:
 とはいえ,やっぱりプレイヤーさんが思わず突っ込みたくなる部分もあると思うんですが,そういうのはあえて残しているわけですよね?

松本氏:
 とくに最後のシーンは,ツッコミどころかもしれませんね。
 バスが爆発して,完全にトラも死んだだろうと思いきや,生きていたという。あの爆発で何で生きているの? というのは,けっこうあちこちで書かれていました(笑)。

DD:
 でも,冒頭で車に轢かれても無傷だったことを考えると,あの爆発でも怪我で済むのは不思議じゃないですよね。

松本氏:
 そうです! 本当はそうなんですけど,もうちょっと頑丈さをアピールするエピソードを入れておくべきだったかなぁとは思っています。

  • 関連タイトル:

    ガチトラ! 〜暴れん坊教師 in High School〜

  • 関連タイトル:

    ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生

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