インタビュー
対戦メカアクション「HAWKEN」のOBTの現状と日本での展開は? 来日したMeteor Entertainmentのプロデューサー,Paul Loynd氏にズバリ聞いた
今回4Gamerでは,6月18日に開催された「NVIDIAテクニカルセッション」で「HAWKEN」のプレゼンテーション(関連記事)を行うために来日したMeteor Entertainmentのプロデューサー,Paul Loynd(ポール・ロインド)氏に同タイトルの現状と日本での展開,そして今後の展望などを聞いた。以下にその模様をお伝えしたい。
「HAWKEN」公式サイト
トッププレイヤーのデータと意見を参考に
ゲームバランスを調整
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。Loyndさんは,「HAWKEN」のシニアプロデューサーとのことですが,具体的にはどういったことをされているんですか。
主にスケジュール管理と,クオリティコントロールになります。
また外部パートナーの要請に応じて,各種のヘルプを行うのも私の役割です。今回,「NVIDIAテクニカルセッション」でHAWKENのプレゼンテーションを行ったのも,その一環ですね。
4Gamer:
アカウント数など,現在のHAWKENのステータスを教えてください。
Loynd氏:
6月19日現在で,112万4568アカウントを記録しています。4月に新機体の「Technician」や新マップを導入したことで,大きく伸びましたね。
4Gamer:
なるほど。では,これまでのテストにおける反響や,寄せられたフィードバックなどを教えてください。
Loynd氏:
非常に好評です。とくにビジュアル面に対する評価が高いですね。
一方で,ゲームバランスに対する不満は寄せられています。そういった不満に対しては,トップクラスのプレイヤーの意見を参照しながら対応しています。
4Gamer:
初心者の意見ではないんですね。
Loynd氏:
ゲームを始めたばかりのプレイヤーの意見は,あまりにも多岐におよんでしまうので,対応しようとしても収拾がつかなくなるんです。しかし,トップクラスのプレイヤー達の意見は,おおよそ内容が一致しており,ゲームで何が起きているのかを把握するときに信頼が置けます。これは「League of Legends」の運営開発でも採用されているもので,非常に効果の高い手法なんです。
4Gamer:
なるほど。差し支えなければ,実際の事例を教えてもらえますか。
例えばヒートキャノンですね。この武器は,着弾点の周囲にもスプラッシュ効果をおよぼすのですが,以前は一定範囲内の敵すべてに等しくダメージを与えていました。したがって,きわめて強力な武器だったわけです。
それに対してトッププレイヤーから,着弾点から距離が離れるにつれて与えるダメージは少なくなるべきだという意見が寄せられ,我々はそれに従って「フェザリング」と呼ばれる効果を施しました。HAWKENでは,プレイヤーが集団で行動すると有利になるのですが,このフェザリングによって,近づきすぎず離れすぎない適切な距離感を考える必要性が生まれたわけです。
4Gamer:
単なる武器バランスの調整に留まらず,戦術上の変化ももたらしたと。
Loynd氏:
もちろん,寄せられる意見からだけでなく,データからゲーム内に何が起きているのかを読み取るといったこともしています。例えばトップクラスのプレイヤーが特定の機体や武器の組み合わせを偏向して使っているようであれば,そこには何かしらの理由があるはずですから。仮にそれがゲームバランスを崩すようなものなら,きちんと調整しなければなりません。ゲームバランスは,ゲームを楽しくするための核ですからね。
テキストの読みやすさまで考慮する日本語ローカライズ
現在の進捗は50%
4Gamer:
それでは,日本における展開について教えてください。まず,先日発表された完全日本語化はどの程度進んでいるのでしょうか。
50%というところでしょう。未翻訳なのは,主に次回アップデートに関したもの,具体的には新しいユーザーインタフェースおよび新コンテンツのテキストです。ほかに,文字の大きさや改行位置などが適切かどうかということも含め,さまざまなチェックを行っています。それらをすべてクリアし,ゲームとして楽しめる環境を整えたところで,はじめて100%ローカライズ完了となります。
4Gamer:
日本語化には,何名くらいのメンバーが携わっているんですか。
Loynd氏:
Meteor EntertainmentのQAスタッフと,外部のベンダーを含めて,全部で50名くらいです。その中には日本語を話せるネイティブスタッフもいます。
4Gamer:
2013年7月に日本語対応というアナウンスもありましたが,間に合いそうですか。
Loynd氏:
もちろんです。
4Gamer:
期待しています。ところで日本における決済手段に,WebMoneyが加わるとのことですが,ほかの手段を考えていますか。
Loynd氏:
基本的に,ポピュラーな決済手段はすべて検討の対象になります。
4Gamer:
日本でサービスを展開するにあたり,日本のパブリッシャと提携することは考えなかったのでしょうか。
Loynd氏:
これまで何件かのオファーを受けていますが,合意には至っていません。
しかし私達は日本の市場を非常にユニークなものだと捉えており,日本のプレイヤーに訴えかけるには,日本に根ざしたパブリッシャと協力するのが一番だと考えています。したがって今後も,ビジネス的な面や,日本における評価などを検討しながら,パートナーを探していきます。
クイックマッチングやエフェクトによるフレームレート低下
などの問題は随時解消していく
4Gamer:
それでは,HAWKENを実際にプレイした上でいくつか疑問に感じた部分について質問させてください。まずクイックマッチングですが,初心者であっても上級者と対戦することになるケースが多いと感じました。もう少し配慮があってもいいんじゃないでしょうか。
その点は,我々も重要な課題として認識しています。HAWKENでは,プレイヤーの戦績や腕前に応じて一定の幅を持った「スキルバンド」を設定し,その範囲内でマッチングを行っています。しかしマッチングのタイミングによっては,どうしても上位または下位のスキルバンドからプレイヤーを引っ張ってきて,人数を揃えなければならないという事態が生じるんです。私達は,その状態を「小魚の群れに鮫が入る」と表現しています。
この問題を解決するために,現在,同じスキルバンドで人数が揃わない場合には,AI機体を登場させるという機能を準備しています。実現すればマッチングのバランス問題が解決するほか,待ち時間なくスムーズに対戦を始められるようになるはずです。
4Gamer:
それは嬉しいですね。ちなみに実現はいつ頃を予定していますか。
Loynd氏:
もう開発は始まっていますから,準備が出来次第,なるべく早く実装します。
4Gamer:
分かりました。それでは次に「PhysX」についても教えてください。PhysXアクセラレーションをオンにしていると,激しいエフェクトが出てくるときにフレームレートが落ちます。例えば編集部では,GeForce GTX TITANを使ったPCでも,通常の60fpsが30fps前後まで落ちてしまうことを確認しています。これでは対戦中,非常に不利になってしまいそうです。PhysXアクセラレーションは,あくまで技術デモとして考えたほうがいいのでしょうか。
Loynd氏:
そういうわけではありません。その問題はPhysX専用に,もう一つGPUを用意することで解決できるはずです。
4Gamer:
ああ,やっぱりそういうことなんですね。
Loynd氏:
ええ。例えばGeForce GTX 680を使っているPCに,PhysX対応のグラフィックスカードをもう一枚挿せば機能します。
とはいえ,我々開発チームも,ハードに依存しなくとも高いパフォーマンスを得られるような解決手段を模索しています。可能なかぎりポリゴン数を抑えるとか,日々いろいろ試していますよ。
4Gamer:
それでは,メニューを日本語化すると,一旦ゲームを再起動しないとテキストが読めなくなる点はどうでしょう? せめて再起動を促すダイアログが出るといいのですが。
Loynd氏:
当然,対策を考えています。そもそも再起動しなくてもいい状態にしなければいけません。クライアントをダウンロードした地域に応じた言語に自動設定することも含めて,現在,いろいろと検討しています。
破壊可能マップやPvEモードなど新要素を準備中
次世代コンシューマ機での展開も視野に
4Gamer:
それでは,今後のゲームとしての展開についても教えてください。2013年末に,APEX Destructionを用いた建造物などのオブジェクトを破壊できるマップが登場するとのアナウンスがありましたが,このギミックはゲームバランスにどのような影響を及ぼしますか。
Loynd氏:
建物を破壊する前とあとでは,マップの構造が変わります。機体が隠れられる場所も変わりますから,ゲームバランスを根底から見直さなければなりません。
4Gamer:
破壊可能マップは,今後追加される新マップのみですか。
Loynd氏:
いえ,最終的には既存のものも含めて全部のマップを破壊に対応させる予定です。ただし,今も言いましたように,基本からゲームバランスを見直さなければなりませんから,既存マップの破壊対応には時間が掛かるでしょう。とくに既存マップでは,敵味方が対峙するポイントをきちんと決めたデザインを施していますので,オブジェクトの完全破壊が可能になると大きな影響を受けることになります。
4Gamer:
破壊後のマップに,瓦礫などは物理的に残りますか?
Loynd氏:
残ります。最終的には,そういった瓦礫も戦術に生かせるような内容にしたいですね。無論,そこにはリアルな表現へのこだわりと,技術的な面とのトレードオフが生ずるでしょうが。
4Gamer:
技術的な側面といえば,マップの変化に伴ってデータのトラフィックも相当増えると思うのですが。
Loynd氏:
サーバークライアント形式を採用しているので,データは一括してサーバーで管理します。さらに,トラフィックを軽減する手法を採用しているので,大きな問題はないと思います。
4Gamer:
分かりました。それでは,将来的に実装を予定しているシステムやコンテンツがあれば教えてください。
Loynd氏:
PvE(Co-op)モードの開発を進めています。HAWKENのPvEモード向けにAIを開発しているのは,「Gears of War」シリーズのHordeモードを担当したスタッフです。マップの構造はもちろん,そのAI機体が今持っている武器や,残弾数に応じた挙動を行いますので,最もハードな設定にすると,上級者でも苦戦するかもしれません。
4Gamer:
なるほど,それは期待できそうですね。
また,PvEモードで練習を積むことで,対戦をより楽しめるのではないかとも考えています。
先ほども初心者向けの施策について話をさせていただきましたが,HAWKENはプレイするうえで,覚えるべきことが多いので,トレーニングの場を用意することも考えなければなりません。とくにHAWKENは,人間キャラが戦う一般的なFPSと異なり,50トンにも達する機体を操作するという設定です。当然,機体の動きには大きな慣性がかかりますから,それを踏まえた操作をしなければなりません。例えば路地の角を曲がるためには,一度速度を落としてから方向を変える必要があるわけですが,いちいち止まっていたのでは,いい標的になってしまいます。そこで常に動き続けるためには,慣性をうまくコントロールする必要があります。私達は,そのトレードオフを「Economy of Battle」と表現しています。
4Gamer:
そういえばコンシューマ機への対応も早い段階で言及されていたと記憶していますが,PlayStation 4やXbox One向けの展開は考えていますか。
Loynd氏:
もちろん視野に入れています。ただ,会社の規模が大きくないので,すべてを並行して行うことはできません。今はPC版をより良いゲームに仕上げるべく,全力を注いでいます。
4Gamer:
少し話が逸れますけれど,HAWKENの開発チームは,元「Project Offset」のメンバーが中心になっているということですよね。当時のリソースはどうなっているのでしょう。
Loynd氏:
すべてIntelが管理しています。
4Gamer:
と言うと,HAWKENには「Offset Engine」の技術は一切使われていない?
Loynd氏:
(唇に指を当てて)シーッ(笑)。
4Gamer:
了解です。それでは最後に,HAWKENの日本展開に期待している人達に向けて,メッセージをお願いします。クールでカッコいい一言をぜひ。
Loynd氏:
クールなメッセージですか? 困ったな(苦笑)。「HAWKENは驚くべきゲームだぜ。クールなゲーマーでありたければHAWKENをプレイしろ。プレイしないヤツとは,オレは一緒にランチを食べないよ」……って感じで,どうです。
4Gamer:
最高にクールです。ありがとうございました。
「HAWKEN」公式サイト
キーワード
(C)Adhesive Games Ltd. All rights reserved.
(C)Adhesive Games Ltd. All rights reserved.
(C)Adhesive Games Ltd. All rights reserved.