インタビュー
「GODS#5」「ぶるれぼ」の2大イベントをひかえた「BLAZBLUE」。アークシステムワークス森Pに,格ゲーコミュニティのありかたについて聞いてみた
また同作では,初の公式全国大会である「ぶるれぼ」の店舗予選も,先週1月21日よりスタートしている。「GODSGARDEN #5」と「ぶるれぼ」という二つの大イベントをひかえ,BLAZBLUEコミュニティは今もっとも“熱い”瞬間を迎えようとしているのだ。
そこで4Gamerでは,この度アークシステムワークスを訪れ,同作のプロデューサー森 利道氏に話をうかがってきた。また両イベントの直前ということで,アークシステムワークスの開発プランナー関根一利氏,そしてGODSGARDENを主催する稲葉央明氏,運営スタッフの神園氏にも同席してもらった。二大イベントを控えたBLAZBLUEが何をめざし,どこへ向かおうとしているのか。BLAZBLUEファン,GODSGARDENファンの読者は,ぜひご一読を。
「GODSGARDEN」とは
「ストリートファイターIV」シリーズや「鉄拳」シリーズなど,さまざまな格闘ゲームタイトルで定期的にゲーム大会を開催しているプレイヤーコミュニティ。その活動の一端は,Ustreamやニコニコ生放送などで見ることができる。現在は,同イベントでは初となる「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT EXTEND」での大会「GODSGARDEN #5」に向けて準備を進めている。なお詳細については,以下の公式サイトを参照してほしい。
■「GODSGARDEN #5」イベント概要
日程:2012年1月28日(土) 16:00 〜 翌 5:00(予定)
会場:東京・秋葉原「AKIHABARA 85」
入場料:2500円+1ドリンク/500円(税込)
協力:アークシステムワークス / HORI / Razer / Mad Catz
「GODSGARDEN」公式サイト
「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT EXTEND」公式サイト
公式全国大会「ぶるれぼ」公式サイト
「森さん,これがやりたいんですよ!」
本日はよろしくお願いします。今回は「GODSGARDEN #5」(以下,GODS#5)の直前企画ということで,アークシステムワークスとGODSGARDENの双方のキーマンにお集まりいただき,コミュニティの話を中心にうかがっていきたいと思っています。それでは人数も多いことですし,まず自己紹介からお願いします。
アークシステムワークス 森 利道氏(以下,森P):
はい,アークシステムワークスで「BLAZBLUE」(以下,BB)のプロデューサーをしている森です。「GUILTY GEAR X(ゼクス)」で格闘ゲームの制作に関わって以来,「XX(イグゼクス)」「#RELOAD(シャープリロード)」「SLASH(スラッシュ)」「Λ CORE(アクセントコア)」,それから今はBBシリーズと,本当に格闘ゲームだけを作り続けてます。
4Gamer:
ありがとうございます。森さんについては,読者の皆さんもよく知っているとは思いますが(笑)。ちなみにすべての作品でプロデューサーを務めていたんですか?
森P:
プロデューサーとしては「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT」(以下,BBCS)からですね。元々はディレクターをやっていたので。
アークシステムワークス 関根一利氏(以下,パチ氏)
開発部プランナーの関根です。でもパチのほうが通りが良いかな(笑)。元々は格闘ゲーム系の攻略ライターとして,ギルティギアの攻略本なんかを作っていたんですが,それが縁で開発に関わるようになりまして。BBCS以降は正式にアークシステムワークスの社員として,バトルデザインを担当しています。
GODSGARDEN 稲葉央明氏(以下,稲葉氏):
GODSGARDENの稲葉です。本業はテレビの放送作家なんですが,趣味が高じて格闘ゲームのイベントを主催しております。
4Gamer:
GODSGARDENの顔役ですね。
稲葉氏:
いや,顔役は総師範KSKという,もっと適任な人がいますんで。まとめ役とか,そんな感じでお願いします(笑)。
GODSGARDEN 神園氏:(以下,かみちゃん)
GODSGARDENの神園です。元はBBのプレイヤーなんですが,とある格闘ゲーム道場に入門しまして。気がついたら“総師範見習い”ということになっていました。
4Gamer:
今回のGODS#5における総師範,ということでいいんでしょうか。
かみちゃん:
それでお願いします(笑)。
4Gamer:
ではまず今回のGODS#5に至る経緯からお聞きしていきたいと思います。これまでストリートファイターIV(以下,ストIV)シリーズや鉄拳6といったタイトルをテーマにしてきたGODSGARDENですが,今回は初のBBでの開催ですね。
稲葉氏:
そうですね。GODSGARDENというのは,元々僕と総師範――先ほども名前の挙がった総師範KSKと2人で始めたイベントなんですが,その総師範の元に集った若い人達の中には,BBが好きな子が多かったんです。なのでBBでGODSGARDENを開いてほしい,という声はずっとあがっていたんですよ。僕らとしても興味があるタイトルだし……ほら,ほかのむさ苦しいタイトルに比べたら。
4Gamer:
むさ苦しい(笑)。
稲葉氏:
でもなかなかきっかけがないな,と思っていたときに,とある方からパチさんを紹介していただいて。「やっていいですかね?」って聞いてみたら「やったらどうですか?」ってことに(笑)。
やっぱりメーカーさんから公認をいただけるというのは,励みになるというか,すごくモチベーションが上がるんです。最近のイベントは,動画配信が前提になっている部分もありますし,法律的にクリアにしなきゃいけないことも多い。そこでOKがもらえるんだったら,これはもうやるしかないだろう,という。
僕が元々ガチ勢出身ということもあって,GODSGARENは個人的にもずっと追いかけていたんです。動画配信を中心とした最近の大会文化であるとか,ゲームの盛り上がり方はやっぱり見逃せない流れですし,BBに足りていないのはこれだ,という思いもありました。
稲葉氏:
そう言われると,すごく勇気づけられますよね。なんというかこう,「みんなでゲームを楽しんでいいんだよ」って許された気がして。
パチ氏:
それで,ちょうどGODSGARDENをやっているタイミングに森の部屋まで行って,「森さん,これがやりたいんですよ!」って指差しながら言ったんですよ。そしたら「じゃあ,話を決めてきてよ」ってあっさり言われて。
4Gamer:
森さんはそのとき,GODSGARDENの配信を見てどう思われましたか?
森P:
いやもう,僕自身もこういうのがやりたいって思ってましたからね。というか,なぜ今までうちのタイトルが選ばれなかったのか不思議なくらいですよ(笑)。
4Gamer:
なるほど(笑)。ではメーカー側から見たGODSGARDENの魅力というのは,どんなところでしょう。
パチ氏:
プレイヤーにスポットが当たりやすい大会である,というところが大きいですね。GODSGARDENで優勝となれば,すごく箔が付くじゃないですか。これだけ強いやつが集まって,これだけ厳しいルールで勝ったら当然ですけど。
4Gamer:
それはGODSGARDENの大会ルールやブランド,ということでしょうか。
パチ氏:
そうですね。格闘ゲーマーって,やっぱり誰が一番強いのか白黒つけようぜ,というのが一番のモチベーションになるわけで。
あと,基本的にプレイヤー主導の大会の方が,箔が付く感がありますね。これは昔からですが,その時代時代を象徴する大会ってのがあったじゃないですか。新宿西口スポーツランドの大会にめちゃくちゃ人が集まるとか。それが今はGODSGARDENなのかな,という風に思っています。
4Gamer:
なるほど。ではGODSGARDEN側から見たBBのコミュニティというのはいかがですか。やっぱりストIVや鉄拳6とは違いを感じますか?
イメージ的にはプライドが高いプレイヤーが多い気がしますね。さっきの白黒つけたい,ではないですが,自分のプレイに絶対の自信を持っているんですよ。これはギルティギアから引き継いだ風潮かもしれませんね。
4Gamer:
勝ちへのこだわり,ということですか?
かみちゃん:
うーん,勝ち負けももちろんありますが,それよりも自分のスタイルへのこだわりですね。「あいつのスタイルは,俺は認めねー」みたいな。
4Gamer:
ああ,つまり同じキャラクターでも,プレイヤーによって全然違うと。
パチ氏:
それはありますね。とくにバングなんかはプレイヤーの個性が出やすい。風林火山を使うタイプと設置系をメインに戦うタイプとか。本当に使う人によって違うバングになります。
それはキャラクターを作るときから,狙っていたことなんですか?
パチ氏:
やれることはとにかく多いほうがいいだろう,というのはありましたね。元々のコンセプトが,色々できるキャラクターにしよう,というものでしたので。バング以外もそれぞれの長所が色濃くなるよう意識しています。
4Gamer:
そういう下地があって,さらにその動きを研究するプレイヤーがいて,というわけですか。
パチ氏:
これは僕自身プレイヤー時代から思っていたことなんですけど,プレイヤーは常に開発者の上をいくんですよ。「今はこういう意図で作っているけど,どうせプレイヤーはもっと上に行くんだろうな」と思いながら作っています。だから「遊び」の部分というのは,ちゃんと残しておきたい。
4Gamer:
「遊び」の部分というのは,「ここは研究してくれよ」というメッセージだと。
パチ氏:
ですね。ここから先は作っている自分でもどうなるか分からないけど,まあいいや,っていう(笑)。
4Gamer:
でもその結果,やりすぎちゃったということも?
パチ氏:
もちろんなくはないですけど,それはそれで楽しむのが格闘ゲーマーじゃないですか。「やりすぎだろ」っていいながら,それをネタにしてギャーギャーやるっていう。
森P:
「ほんとクソだな!」とか言いながらね(笑)。
パチ氏:
でも顔はすごい嬉しそうなんだ(笑)。そこは自分がそうだったので,大事にしたい要素です。想像できる範囲で作ってしまったら,ゲームは面白くないんですよね。あとはただ精度を上げていくだけの作業になっちゃう。プレイヤーの想像力とか関係なく,ただ決められたルールの中で綺麗に点を取るようなね。
森P:
押し付けが嫌なんだよね。この技はこう使え! みたいな。なんか鼻に付くじゃないですか。そうじゃなくて,斜め上の予想できない領域に到達できるようなプレイヤーの想像力を大事にしたいです。
GODSGARDEN #5の見どころは?
4Gamer:
ではそんなBBですが,大会ではここを見てほしい,というのところはありますか? とくに今回はGODSGARDENということで,これまでBBをプレイしたことがない人も,たくさん見ると思うんですが。
パチ氏:
うーん,BBはキャラクターごとの特徴がすごく大きいゲームなので,難しいですね……。そう考えると,やっぱりプレイヤーを見てもらうのが一番なんじゃないでしょうか。
4Gamer:
なるほど。すでに決まっている招待選手だと,ぶっぱ選手(ラグナ)と辻川選手(タオカカ),レン選手(ジン)の3人になりますが,とくに注目している選手はいますか?
ラグナ |
タオカカ |
ジン |
かみちゃん:
この3人だったらやっぱり辻川選手でしょう。皆が知っているトッププレイヤーだし,この人が使うと,そのキャラクターが伸びるんですよね。あとは,招待選手以外だったら少年選手(ライチ)とか。この人はとにかくコンボが気持ち悪い(笑)。
パチ氏:
上手いプレイヤー達が雁首そろえて「あいつはわけわかんねー」っていうくらい上手いですね(笑)。格ゲーはやっぱりキャラじゃなくて,人ですよ。
4Gamer:
当日予選への参加が決定している人だと,ほかにはどんなプレイヤーがいるんでしょう。
稲葉氏:
かなり豪華ですよ。名の通ったプレイヤーでいうと……ソウジ選手(アラクネ),客選手(カルル),マトイ選手(タオカカ),アキラ選手(テイガー)とか。
パチ氏:
ソウジ選手のアラクネは,気持ち悪いくらいうまいですね。客選手はBBの仙人みたいな人で,とにかく知識量がハンパない。アキラ選手は投げキャラ使い特有の,読み勝ったときのドヤ顔が見てみたい(笑)。
※初出時,ミツルギ選手の名前を記載しておりましたが,出場されないとのことで修正させていただきました。訂正してお詫び申し上げます。
ライチ |
アラクネ |
カルル |
テイガー |
ハザマ |
4Gamer:
名前の挙がった選手は,さっきお話しされていた,想像力を持ったプレイヤー達,というわけですね。
パチ氏:
そうです。ただBBのコミュニティは,まだ成熟していないという印象があって。皆シャイというか……。
4Gamer:
シャイ,ですか?
パチ氏:
うーん,前に出たがらないというか,もっとアピールすべきだと思うんです。自分がギルティギアのプレイヤーだった時は,みんなもっと前に前に出ようとしていました。せっかく楽しんでやっているんだから,自分の腕とゲームの面白さを,色んな人に見てもらえるようにもっとアピールしてほしい。GODS#5をきっかけに,そういう文化が根付いてくれるといいんですけど。
かみちゃん:
皆,目立ちたがりだとは思うんですけどね。でも言えない,恥ずかしいみたいな。例えばプロになりたいと思っている人だって,BBプレイヤーの中にも少なからずいると思うので。だとすればもっと声を大にして,アピールしていくべきですよね。
GODSGARDENが個人戦なのも,そういうアピールの場として機能してくれればいいなと思ったから,という部分もあります。
4Gamer:
そういう意味だと,スパIVなんかのプレイヤーは,ゲーム外でもパフォーマンスがすごく上手い気がしますね。
パチ氏:
平均年齢が高いんですよ。BBのプレイヤーは高校生から大学生くらいが中心で,まだ若いんです。
森P:
先日4Gamerさんの記事で,タイトルごとの平均年齢を掲載していたじゃないですか。ストIVは28.3歳で,BBのプレイヤーは22.5歳で,僕はあれは間違ってないと思う。BBはそういう若い層に向けて作ったタイトルなので,実際にそういう人達がプレイしてくれているというのは,すごくありがたいです。彼らがどんどんアピールできる場所を提供していくのが,これからの僕らのお仕事ですよ。ギルティギアだって,盛り上がるのに何年もかかったんですから。
4Gamer:
ちょっと脱線してしまうんですが,プロゲーマーについてはどうお考えですか?
森P:
これは僕の個人的な意見ですけど,僕はもっとプロゲーマーに出てきてほしいと思っていますよ。ただ現実問題として,どうやって食うのかって問題がある。だから気軽になってくれ,とは言えないし,言いたくない。
4Gamer:
プロ野球の場合はある程度レールがあるけど,いまの格ゲーのプロって,それすらまったくないわけですし。
森P:
そう,だからその場は僕らが作らなきゃいけないわけです。……ぶっちゃけるとストIVだけじゃダメなんですよ。もちろんBBだけでもダメだし,もっともっと色々な格闘ゲーム――いや格闘ゲームだけでなくても良いので,競技性のあるゲームが文化として認められて,それで食っていける状況っていうのが,あってしかるべきです。
それにプロゲーマーって,ただ強いだけじゃダメですよね。プロ野球でもゴルフでもそうですけど,「客が呼べて何ぼ」じゃないですか。成績を残したうえで,さらに魅せるプレイができる人達。シーンを盛り上げて初めてプロと呼べるんじゃないかな。
稲葉氏:
まあプロゲーマーがあこがれの対象になるっていう状況はいいですよね。プロがどんなものか分からないけどなってみたい,くらいの距離感が。それくらい無邪気なのも悪くない,と思います。
4Gamer:
そういう状況が続いている限りは大丈夫だと。
稲葉氏:
もしプロゲーマーの資質のようなものがあるとしたら,ゲームの楽しさを伝えられる,見ている人が楽しい気持ちになるというのが一番大事なんじゃないかと。だから有野課長とか,スーパーマリオクラブで司会をやってた渡辺 徹さんとか,ああいう人達こそプロゲーマーと呼ばれるべきなんじゃないか,と最近は思ってますね。
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