AMDは,米ワシントン州ベルビュー市のMeydenbauer Centerにおいて現地時間2011年6月14日〜16日に開催された「AMD Fusion Developers Summit 11」(以下,AFDS11)で,
先に発表済みの次世代グラフィックスコアアーキテクチャに関するアップデートを行った。
Eric Demers氏(CTO and Corporate Vice President, Graphics Business Unit, AMD)
|
同社でグラフィックス製品の技術部門を統括するEric Demers(エリック・デメル)CTOいわく,
「次世代グラフィックスコアアーキテクチャ採用の製品を年内に投入する」。
つまり,2011年の第4四半期に市場投入が計画されている次世代GPU,
「Southern Islands」(サザンアイランド,開発コードネーム)世代の一部で,この新しいコアアーキテクチャが採用されるというわけだ。
ところで,Demers氏の発言は,AFDS11最後の基調講演におけるものだったが,氏は,ATI Technologies時代からの3Dグラフィックスチップの進化を世代単位で分類しつつ,時代時代のゲームタイトルやアーキテクチャを下記のとおり振り返った。
・第1世代:固定機能時代 (〜2002年)
第1世代のグラフィックスは,固定機能をベースとしたものだった。スライドに写っているゲームタイトルは「Shogun: Total War」 |
ATI Radeon 7000〜8000時代も固定機能ベース。代表作としてCodemastersの「Colin McRae Rally 2」が紹介された |
・第2世代:シンプルシェーダ時代(2002〜2006年)
DirectX 9に対応したATI Radeon 9700 Proで,グラフィックスはシンプルなシェーダ構成を採用した第2世代へ。マスコットキャラクター「Ruby」が誕生したのもこの頃だ |
最初のシェーダユニットは,IEEEが定める浮動小数点演算標準への対応などはなく,ただただグラフィックス性能を向上させることを念頭に開発された |
・第3世代:グラフィックスパラレルコア時代(2007年〜現在)
第3世代のグラフィックスは,統合型シェーダユニットの採用により,演算コア数を増やすことで並列処理性能を高めていった。GPGPUへ続いていく道の始まり,といったところか。代表作として紹介されたのは「Colin McRae: DiRT 2」 |
統合型シェーダ時代に,グラフィックス性能を高めるべく開発したのが「VLIW5」アーキテクチャだと,Demers氏は説明する。同時に,その並列処理性能を活かすべくIEEEの浮動小数点演算標準への対応も図られたとのこと |
・第3.5世代:GPUコンピューティング時代(2010年〜)
第3世代の拡張版となるRadeon HD 6970では,並列コンピューティング性能を向上させるため,VLIW5から「VLIW4」への移行が図られた。なお,ここで紹介されたのは「DiRT 3」だ
|
|
そして,以上を踏まえつつ,次世代グラフィックスコアアーキテクチャを
「第4世代」と位置づけている。
次世代グラフィックスコアアーキテクチャの3Dグラフィックス周りを示したスライド。固定機能の強化なども盛り込み,グラフィックス性能を高めていくという
|
CPUとGPUのシリコン統合だけでなく,最終的にはプログラミング環境やOSがシームレスにCPUとGPUを利用できるようにすべく,「Fusion System Architecture」を提唱。そのロードマップとして披露されたのが本スライドだ
|
AMDは,今回のAFDS11で,CPUとGPUとをシームレスに連携できるようにすべく,プログラミング環境などを整え,一般的なプログラマーでもGPUアプリケーションを開発できるようにする構想「Fusion System Architecture」(以下,FSA)を提唱している。FSAの詳細は後日あらためてお伝えしたいと思うが,Demers氏は,この第4世代GPUが,FSAを実現させるべく,コンピューティング性能を追求したものであるとも明言。同時に,“FSA世代”のGPUでも3D性能は当然のことながら重視していくとして,毎年,高性能なGPU製品を展開していくと予告した。
Fusion System Architectureに最適化された次世代グラフィックスアーキテクチャの「Compute Unit」(演算ユニット)
|
次世代グラフィックスコアアーキテクチャでは,キャッシュからの読み出しだけでなく,書き込みにも対応。よりCPUに近いデザインとなる
|
|
次世代グラフィックスコアアーキテクチャはx86仮想メモリに対応し,GPUコアとCPUコアでシームレスなデータのやりとりを実現(左)。また,Fusion System Architectureが実装する機能をフルサポートし,その機能を今後も毎年増やしていくとされている(右)
|
|
さらに,GPUとCPU間でデータを共有しやすくする仮想メモリのサポートや,シームレスなプログラミング環境などを実現し,ヘテロジニアスコンピューティングへの移行を推進する
|
|
|
なお,この次世代GPUや,Southern Islands世代以降のGPUロードマップに関する情報は,10月に台北で開催される「AMD Fusion Developer Summit 11 Taipei」で明かされるとのこと。今から4か月後が楽しみだ。