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日本人選手も4人出場! 「マジック:ザ・ギャザリング」世界選手権とド派手な新セット発表会の模様をお届け
PAX WESTはいくつもの会場にまたがって開催されるが,マジックはパラマウントシアターという,シアトルでもっとも古い劇場を舞台とし,写真からも分かるように,豪華な雰囲気がただよっていた。本稿ではその模様を,大会と同時に開催された9月末発売の新セット「カラデシュ(KALADESH)」発表会の情報と合わせてレポートしていこう。
「マジック:ザ・ギャザリング」公式サイト
マジック世界選手権2016
マジックの世界選手権は,優勝賞金7万ドルと世界一の名誉をかけ,4日間にわたり3つのフォーマット(スタンダード・モダン・ブースタードラフト)で戦われる。
出場できるのは,世界で選び抜かれた24人のみ。年4回の国際大会であるプロツアーの優勝者や,大会で上位入賞すると獲得できるプロポイントを1年間で多く稼いだ人に出場権が与えられ,そのほかに,オンラインでの予選勝ち抜きによる枠なども用意されている。
日本からは,以下の4人の選手が出場した。
このうち玉田選手を除いた3人は,スポンサーのついたプロ選手だ。ここ数年,マジックの世界でもe-Sportsのようにプロ選手にスポンサーがつくことが一般的になってきている。
プロ選手の多くはカードゲームショップなどの関連企業で働いたり,記事を執筆したりしながら,カードや交通費などの提供を受ける形だが,4人のうちTeam Cygames所属の渡辺選手は,ほぼ「マジック」だけで生計を立てているプロとして知られる。また,八十岡選手の所属するHareruya Prosは,カードショップ晴れる屋が擁するプロチームだが,日本国内だけでなくヨーロッパのトッププロが多数加入しており,国際的な大規模チームとなっている。
以前は,大会前の調整は個人がそれぞれで行うのがほとんどだったが,最近はチームごとに泊まり込みで合宿をおこない,10人以上で集中的に練習することも珍しくなくなってきた。
今回の出場選手には,スポンサー企業のロゴと国旗入りのユニフォームが配布された。
世界選手権では,安定性が高く,プレイングがものをいうタイプのデッキが多く選ばれた。
さすがに最強プレイヤーしかいないということでハイレベルの戦いが繰り広げられ,日本人選手の中では八十岡選手がぎりぎりでトップ4入りを果たし,決勝ラウンドに進出した。
優勝したのは,Brian Brawn-Duin選手。もともとは渡辺雄也選手が作り出した,「バント人間」デッキを使用し,デッキに噛み合うドローに恵まれたことと,ほかの選手の選択したデッキに天敵が少なく,相性がよかったことに助けられた。
準決勝で彼と対戦した八十岡翔太選手は,デッキ相性の悪さに相手のブン回りもあって,圧殺されてしまった。
Marcio Carvalho選手との決勝は,2時間以上におよぶ長期戦になった。カードがずらりと並び合う複雑怪奇な盤面で一進一退を繰り返すも,Brian Brawn-Duin選手は一貫して集中力と冷静さを失うことなく,相手のわずかなミスをついて勝利した。世界中のグランプリを回って培われたタフさが生きた結果と言えるのではないだろうか。
「プレインズウォーカーの炎」を模したトロフィーが激戦を見守る |
決勝ラウンドでは会場の雑音は聞こえず,相手の会話は聞こえるヘッドセットを着用して対戦 |
新セット「カラデシュ」発表会
冒頭にも書いたように,世界選手権の合間には,9月30日発売の新セット「カラデシュ(KALADESH)」の発表会も大々的におこなわれた。また,開発者や世界設定担当者によるパネルディスカッションや,有名人とお客さんが対戦できる各種イベントも開催されていた。
「カラデシュ」は魔法と機械文明が融合した世界を舞台にした,色鮮やかで明るい雰囲気の新セットだ。魔法機械「アーティファクト」がテーマで,今までのマジックには存在しなかったカードタイプとして「機体」が登場する。最初はただの置物だが,クリーチャーを「搭乗」させることで動き出し,強力な効果を発揮するという趣向になっている。
今回の世界選手権では,カラデシュ同様に「発明博覧会」が開かれているという設定で,会場横の通りがテントを連ねた祭りになっていた。発明品として新カードが陳列されたり,金属製の大きな像を走らせて街中をパレードしたりといった趣向である。
劇場内のもともとの装飾に,カラデシュの金属製の動物などが意外とマッチしている |
スタッフもみなカラデシュをイメージした衣装を着用 |
雨模様の中,動く金属製の鹿の像とともに街中をパレード |
いかにもお祭りという風情の通り。テントの中では,ガラス細工や鍛冶職人の作業が見物できた |
新カードの陳列。黒い部分にはストーリーの核心が表記されていたが,最終日まで隠されていた |
マジックのコスプレイヤーが集合 |
また,会場には世界各国から「特務大使」と呼ばれるインフルエンサーが招待され,それぞれ自分のYouTubeチャンネルなどで情報を発信していた。筆者もその枠で参加し,大会だけでなくWizards of the Coastのオフィス見学など,さまざまな体験をさせてもらった。
アメリカではマジックの知名度が高いこともあり,会場内のサイドイベントで遊ぶ観客も多く,会場は毎日熱気に満ちていた。また,今回は「カラデシュ」に向けた全体的な演出にかなり力が入っていた。発表会などで新カードが1枚発表されるたび,日本時間では深夜にもかかわらずTwitterなどで一気に拡散され,世界が同時に盛り上がっているのを感じられたのも,貴重な体験だった。
なお,「カラデシュ」は9月30日の発売が予定されている。9月24〜25日には,発売前にこの商品を遊べる「プレリリース・イベント」が全国のカードショップで開催されるとのことだ。
PAX WESTとシアトルの風景
PAX WESTのほかの会場も少しだけ見学できたので,写真で簡単に紹介したい。
このイベントは各メーカーの新情報や発表もあれど,どちらかというとそれはメインではなく,アナログゲームや観客参加型イベントが多いことが特徴だ。コスプレイヤーや配信ブースの多さと言う点では,日本で言うところのニコニコ超会議のような雰囲気もある。
世界選手権の合間に,郊外の大規模ゲームショップ「Mox Boarding House」を訪れてみた。
広いフロアがボードゲーム,TCG,ミニチュアゲームに分かれ,さらにレストランまで併設されている。入ってすぐのボードゲームエリアには,最近ドイツゲーム大賞を受賞した注目作や,少し古くなって5割引になったものなどが置かれていた。
TCGエリアにはデュエルスペースがあり,日本のカードショップと似た雰囲気だ。とくにアメリカらしいのが,ミニチュアゲームエリア。塗装されたフィギュアやゲーム用のテーブルがあらかじめ準備されており,大量のミニチュアを持ち込んで対戦している人の姿も見られた。
レストランでは無料でボードゲームの貸し出しも行われていて,食事をしながら自由にゲームを遊べる。こちらの人達は,カードやゲームが汚れることをあまり気にしないようだ。
食事の値段もお手頃で,ドリンクバーがわずか2.5ドル,しかも時間制限なし。日本にあったら永遠に滞在できてしまいそうである。
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