レビュー
北米No.1のゲーム機向けヘッドセットブランドは本物か
Ear Force PX5
北米のゲーム機向けヘッドセット市場で9割のシェアを持つメーカーのハイエンドモデルは,ワイヤレス対応と,「PS3向け」ながらXbox 360やPCにも対応するという点がユニークだが,完成度はどれほどのものだろうか。
PS3向けを謳うだけあり,接続性は抜群
Xbox 360とも良好だが,PCでは制約あり
ワイヤレスヘッドセット製品ということもあり,製品ボックスには,PX5本体のほか,「Digital RF」と呼ばれるトランスミッタが用意されている。PX5用のスタンドも兼ねるトランスミッタは,5.1chサラウンド機能「Dolby Digital」とマトリックスデコード機能「Dolby Pro Logic IIx」,そしてバーチャルサラウンドヘッドフォン機能「Dolby Headphone」に対応しており,光角形のデジタル,もしくはアナログRCA×2からサウンド信号を入力すると,2chや5.1ch信号はDolby Pro Logic IIxで7.1chへ拡張され,最終段でDolby Headphone準拠の2ch信号へとダウンミックスされて,PX5へ伝送される仕掛けになっている。
また,冒頭で紹介したとおり,PX5は「PS3向け」ながらXbox 360にも対応しているが,Xbox 360との接続時も,トランスミッタ周りの仕様は共通。なら,Xbox 360用コントローラ側に用意されたマイク入力端子とはどう接続するかといえば答えは簡単で,PX5には,Xbox 360用コントローラと接続するためのマイク出力端子がちゃんと用意され,「Xbox 360 Talkback Cable」というケーブルも付属しているのである。“PS3向けヘッドセット”としては,相当に思い切った仕様といえるだろう。
で,ここからがゲーム機優先のTurtle Beachらしいところなのだが,PCとは,ヘッドフォン部分こそPS3やXbox 360と同じ手順で接続できるものの,マイクは,「PCとのBluetooth接続は可能だがサポートしない」と,非対応扱いになっているのだ。
■PS3&Xbox 360側の設定
PX5とPS3やXbox 360を接続するにあたって,ゲーム機側で何をすべきかは,付属のマニュアルだけ読んでも分かりにくい。そこで,「接続後にどうすればいいのか」を簡単にまとめておこう。
●PS3
光デジタルケーブルで接続が済んだら,PS3側の音声出力設定を「光デジタル→Dolby Digital 5.1ch」に指定しておく。
次に,初回のみマイクをPS3とBluetoothペアリングしなければならない。PS3の「設定→周辺機器設定→Bluetooth機器管理」を選ぶと,Bluetoothデバイスを登録するかどうか聞かれるので,[はい]を選択。PS3がBluetoothデバイスを探索する状態にしたうえで,PX-5の[BT MFB]ボタン(※詳細は後述)を長押しする。すると,ヘッドフォン部から「Bluetooth Pairing Start」というアナウンスが流れ,その後すぐにPS3側で「TURTLE BEACH PX5」が見つかったという説明が表示されるはずだ。
ここで[はい]をクリックすると「パスキー」を求められるから,「0000」と入力後[確定]で,ペアリング完了。さらに,「設定→周辺機器設定→音声機器設定」を選び,入力機器および出力機器で「TURTLE BEACH PX5」を選ぶと,マイク入力とヘッドフォンモニタリングが可能になる。
●Xbox 360
光デジタルケーブルで接続したら,Xbox 360側のサウンド出力設定を「Dolby Digital」に指定。マイクは,付属のXbox 360 Talkback CableでXbox 360用コントローラと接続するだけだ。
非常に作りのいいPX5本体だが
用意されたボタン群は押し分けにくい
エンクロージャの“頂上”部分にはTurtle Beachのロゴが入り,右エンクロージャにはそれに加え,PX5のロゴもプリントされている。
ヘッドバンドは太くも細くもない,“普通”の太さ。外側は,Turtle Beachの文字がエンボス加工された合皮製になっており,頭頂部と接触する内側は,メッシュ加工の布製で肌触りはいい。
バンド長調整機能周りの作りはしっかりしている | |
ヘッドバンドは“普通”と述べたが,クッションは意外に薄い。ただ,クッションとしての機能は十分だ |
全体の装着感はかちっとしており,きつすぎず緩すぎず,ほどほどよりもやや軽めの強さで締めてくれる。それでいて,よほど頭を激しく振ったりしない限りはズレる心配もない。ヘッドバンドが太くない割にはかなりしっかりしていると述べていいだろう。
電池は右耳用エンクロージャ部に収める仕様。ちなみに重量は公称233gで,左右の重量バランスは気にならない。「ひょっとしたら右が少し重いかも?」くらいだ |
左耳用エンクロージャ部に用意された電源ボタン。電源オン/オフの長押し時に点灯し,利用時はゆっくり点滅する |
……その場合でも,PX5単体で充電できるわけではないから,いちいち電池を入れ替える作業は必要で,正直,けっこう面倒だが。
ちなみに,左耳用エンクロージャの外側中央部には電源ボタンがあり,これを長押しすると電源がオンになる。オーディオ信号が入力されない状態が5分続いた場合には自動的に電源がオフとなるため,その後は再度の電源投入が必要だ。
面白いのは,電源オン時に軽く押すと,PS3とXbox 360,どちらの動作モードなのかを,英語音声で教えてくれるようになっていること。さらに,ダブルクリックよろしく連打すると,PS3→Xbox 360→PS3→……といった具合で,順繰りに切り替わるようにもなっている。「あ,モード間違えた」という場合にも,頭にかけたまま,簡単に切り替えられるようになっているというわけである。
まず左耳用エンクロージャだが,こちらには装着時に前のほうからMicro USBポート,Xbox 360用コントローラとの接続用2.5mmミニピン端子,[PRESETS]ボタン,「GAME VOL」ダイヤルが並ぶ。右耳用エンクロージャ側には順に[MAIN][MIC MUTE][BT MFB]ボタンと,[BT VOL]シーソーボタンといった並びだ。[BT MFB]ボタンの隣に見える“ぽっち”は,Bluetooth接続のインジケータLEDである。
[PRESET]ボタンあたりでピンと来た人もいるだろうが,PX5では,搭載するDSP(Digital Signal Processor)により,音響設定を変更できるようになっている。プリセット周りの詳細は後述するが,とりあえずは,「どんなプリセット設定になっていても,[MAIN]ボタンを押すと,Turtle Beachの第一推奨プリセットに戻る」ことを憶えておいてほしい。Micro USBポートは,このプリセットを編集するとき,PCとPX5を直接つなぐためのもので,USBケーブルに差しても,USB接続のヘッドセットとして使えるようになったり,USBケーブル経由で充電できるようになったりはしないのでご注意を。
というわけでプリセット以外の話をすると,まず「GAME VOL」ダイヤルは,ゲームサウンド全般のボリュームをコントロールするものだ。フレンドなどの音声もヘッドフォン部経由で聞くことになる仕様上,ここで音量を絞ると,ゲームサウンドだけでなく,チャット相手のボイスも相対的に下がる。
次に[MIC MUTE]ボタンだが,これは文字どおりマイクミュートのオン/オフを切り替えるもの。Xbox 360モードでは,Xbox 360用コントローラとのマイク接続ケーブル側のインラインリモコンにもマイクのオン/オフスイッチとボリュームダイヤルが用意され,どちらを使ってもミュートは機能する。
PX5には,最大2台のBluetoothデバイスとペアリングできるようになっており,たとえばPS3とBluetooth対応の携帯電話をペアリングしておけば,どちらか片方を使っているときに,もう1台のデバイスから割り込みをかけられる。この場合,PS3のゲームをプレイしている最中に携帯電話へ着信があると,PX5がそれを着信音で知らせてくれるようになっており,そこで[BT MFB]ボタンを押すと,PX5を携帯電話用のワイヤレスヘッドセットとして利用できるようになるのだ。
もちろん,「2台のうち1台はPS3でなければならない」という決まりはないため,PCとPS3といった組み合わせや,PCと携帯電話なんていう組み合わせも行える。Xbox 360はBluetooth接続に対応していないが,携帯電話をペアリングさせておけば,Xbox 360に対しても割り込みは可能だ。
さらに,携帯電話側が対応していれば,番号を音声入力したり,リダイアルしたり,マイクをミュートしたり,着信拒否したりもできる。その仕様上,携帯電話のヘッドセットとして利用している間,ゲーム側のサウンドは一切再生されなくなるものの,ヘッドセットやヘッドフォンを使ってゲームをプレイしているときの最大のネックともいえる「携帯電話が鳴っていても気づきにくい」問題が解決できそうなのは,人によっては相当に魅力的だろう。
なお,[BT VOL]シーソーボタンは,Bluetooth接続時(≒PS3接続時)におけるマイク入力音量の調整用。言うまでもなく,Xbox 360接続時は機能しない。
最後にマイクブームだが,ブームは細く柔らかく,狙ったところにぴたりと設置できる,取り回しのよいものだ。
マイクスポンジを外してみると,穴は1か所にのみ用意されており,シンプルなモノラルマイクであることが分かる。公式な仕様は「コンデンサーマイク,周波数50Hz〜15kHz」だが,まあ,これ以上に書くことがないのだろう。
外付け機器はUSB給電で動作
光デジタル/アナログRCA入力に対応
前面には,デジタル入力やDolby Pro Logic IIx,Dolby Digitalが有効かどうかを確認できるLEDインジケータと,Dolby Laboratoriesの各種機能を無効化するボタン[BYPASS],ヘッドフォンボリューム調整用ノブ,ミニピンのアナログヘッドフォン出力端子が用意されている。
もちろん,ミニピン接続のヘッドフォンは接続できるうえ,Dolby Laboratoriesが提供する各種効果も得られるのだが,ここにボリュームコントローラがあるのは,いたずらに混乱を招くだけではなかろうか。接続の多様性を謳いたいのは分かるが,ことPX5においては混乱の元にしかならないように思う。
デジタルサウンド出力は入力されたデジタル信号をそのままスルー出力するものなので,PX5以外のサウンド出力デバイスを使いたいときにつなぎ替える必要がなく,便利だ。アナログ入力は,少なくともPS3やXbox 360をどちらか片方しかつながないなら使わないと思われるが,使う人には,入力レベルをやや低めにしておくことを勧めておきたい。出力デバイス側との組み合わせ次第で,歪みの発生することがあったからだ。
給電はUSBベースなので,PS3やXbox 360,あるいはPCのUSBポートに接続すれば動作する。別途電源コネクタを確保しなくていいのは便利である。
プリセットエディタのダウンロードで
オリジナルプリセット作成が可能
また,Turtle Beach公式サイトの「CUSTOMIZE」ページでメンバー登録を行うと,プリセットエディタのダウンロードが可能になる。本アプリケーションをPCにインストールした状態でPX5をUSB接続すれば,規定プリセットを除く8プリセットすべての編集が可能になるのである。
フラットと言えばフラットな周波数特性
豊富なプリセットで別製品のような音質傾向に
ようやくという感じだが,テストに入ろう。前述のとおり,PC接続時のマイク入力はそもそも公式に非対応で,無理矢理使う場合にも大きな制約が入るため,その結果をいつものようにグラフで示すのはフェアではないと判断し,今回はヘッドフォン部,マイク部とも試聴テストのみを行う。
ヘッドフォン出力品質のテストでは,「iTunes」によるステレオ音楽ファイルの再生と,PCでは「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)マルチプレイのリプレイ再生,PS3では「Call of Duty: Black Ops」(以下,Black Ops),Xbox 360では「Halo: Reach」のそれぞれマルチプレイを判断基準とした。
電源ボタンから切り替えられる動作モードは,試した限り,マイク入力の切り替えや入力レベルの最適化など,音質傾向とは関係ない部分を処理しているようなので,今回は,PS3とPCではPS3モード,Xbox 360ではXbox 360モードでのみテストを行うことにしている。
PC接続時に用いたPCの構成は表のとおりで,PC接続時は,「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium HD」(以下,X-Fi Titanium HD)の光デジタル出力端子を用いることとなる。
まずは音楽を用いた試聴。前述のとおり,プリセットは標準状態だけで[MAIN]+8の計9つ存在するが,音楽ソースということで,プリセット1の「Flat」を選択した。Flat選択時はDolbyの機能がすべて無効化されるので,Turtle Beachが考えるフラット,つまり“素の”ステレオ再生能力をチェックできるはずだからである。
また,そもそも論として,人間の耳は一直線にフラットな音質傾向を,「よい音」とは感じにくい。筆者のレビューで繰り返してきているように,やや“右肩下がり”な低強高低のほうが,(もちろん程度にはよるものの)かえってフラットに感じられ,よい音に感じられるものなのだ。「周波数特性で見たときフラットなのが最高」なのではなく,「聴感上フラットに感じられる程度の低強高低がよい」のである。
Noise GateとMulti-Band EQに関してはマイク入力テストの段で語ったほうが分かりやすいので,ここではそれ以外を簡単に紹介しておくと,まずSonic Lensは,適用するバンド幅を制限しつつ,自動でダイナミックレンジ補正を行うツールだ。AGC(Auto Gain Control。声の音量差を緩やかに補正していくダイナミックレンジコントローラで,携帯電話などの民生機器で必須のプロセッサ)の帯域制限バージョンといったところだろうか。個人での設定は難しいので,設定変更は勧めない。
Sound Field Expanderは,おそらくプリセット5「Stereo Expander」で適用されているステレオエンハンサのこと。サラウンドでは動作しないステレオ入力用プロセッサなので,サラウンドタイトルで使用するのは厳禁だ。
Blast Limiterはいわゆるトータルリミッタ――ダイナミクスレンジ補正プロセッサの一種――で,「最大音量を下げつつ,それ以外はそのまま保持することで,結果としてダイナミックレンジが圧縮される」という,CDマスタリングに使われるプロセッサのようなものであろう。筆者の予想に過ぎないことを断ったうえで続けると,Sonic Lensが全体の音量を上げ下げするのに対し,Blast Limiterは音量のピークだけを下げるものとして区別されているように思われる。
プリセットの話に戻ると,広く勧められそうなのはプリセット4の「Bass Boost+Treble Boost」。プレゼンス帯域が少し強く感じられる欠点はそのままながら,重低音の迫力が十分にあり,2万円台半ばで販売されているヘッドセットを使っている実感を得やすい。
プリセット6〜8はゲーム用途に特化したプリセットなので,音楽やムービーなどには不向きだ。
では,そのゲーム用途ではどうなのか。
ゲーム用途では,プリセット1のFlatをベースに,Dolbyの各機能がすべて有効化されており,Turtle Beachもゲーム用として最初はこれを使うよう推奨しているMAINプリセットを使ってテストする。
後方の効果音はきちんと後方に定位にする一方,音の空間が横に広がるという“Dolbyらしさ”は健在。4Gamerのインタビューに対して,Turtle BeachのFred Romano(フレッド・ロマノ)上級副社長は「ゲームに特化した音づくりをDolby Laboratoriesに依頼している」という旨の発言をしていたが,PX5の音を聞く限り,Dolby Headphoneの効果は他社製品と大きく異なるものではない。
やや気になったのは,全体的にエコー感が強く,「タッタッ」という足音が「ダララ,ダララ」とモジュレーションがかかって聞こえること。ちょっと後ろが広がり過ぎの感じもする。
で,プリセットはゲームでも4の「Bass Boost+Treble Boost」がオススメ。高域が多少強めに聞こえるものの,高域をロストせず「さすが50mmドライバー」という重低音を楽しめるのはプリセット4であり,これは「2万円台半ばという投資に見合った音質傾向」といってよさそうだ。
もっとも,このあたりは好みなので,ゲームで使う場合は,MAINとプリセット4を聞き比べて,気に入ったほうを使うのが恐らく正解だろう。
面白かったというか興味深かったのは,先ほど「ゲーム用途に特化した」と紹介したプリセット6〜8。例えばBlack Opsのゾンビモードなどは,プリセット6や7を選択しておくと,相当にわずかな音量でもガンガン持ち上がってくるため,「あ,何か来たぞ」とすぐ気づけるようになる。
ただ,プリセット6&7でも,近い足音と遠い足音は区別なく大きくなってしまうので,Black Opsにおける通常のマルチプレイだと遠近感が分かりにくくなってしまう。また,Halo: Reachの場合は,プリセット6&7だと,低音感溢れるアンビエントなどが全部削られてしまって,なんだか損をした気分になるし,8もコンプレッション設定がマッチしない印象で,少なくとも筆者はこれらを使ってHalo: Reachをプレイしたいとは思わない。
要するに,プリセットの音質傾向はゲームによってはまったりはまらなかったりするので,一度試してみるのがいいということになる。
マイク入力にはさまざまなプロセッサが
こっそりかかっている模様
マイクのテストに移ろう。
前述したとおり,今回,PC接続時の周波数&位相特性のグラフ掲載は見送り,PS3およびXbox 360接続時に実際に担当編集とボイスチャットを行っての評価となる。
両動作モードでは,Bluetoothかコントローラ経由の2.4GHz帯かという伝送方式の違いはあるものの,PlayStation NetworkやXbox LIVEに接続した時点で「携帯電話よりはいくらかマシ」という程度の品質になってしまうため,接続方式による音質の違いのようなものはないといっていい(※テスト時は筆者も担当編集もFTTH接続しているので,この部分のロスは考えにくい)。
Noise Gateはそのままノイズゲートで,先方がしゃべっていないとき,オーディオ信号自体をミュートして聞こえなくするプロセッサ。ボイス入力用としては極めて一般的な機能だ。Chat Boostは,Turtle Beachが「Dynamic Chat Boost」としてとくに推しているプロセッサで,端的にいうと,ゲームサウンドの音量に応じてチャット音声の音量も大きくするというものなのだが,今回試した限り,そうは聞こえなかった。動的ではなく,常に+何dBかブーストされている(≒音量が上げられている)印象である。
最後のMulti-Band EQは,複数の周波数帯域を増減するイコライザーだと思われる。こちらもボイス品質向上には必須の機能だ。
一方,PX5のユーザーがしゃべって,ネットワーク越しに自分の声を相手へ伝える場合は,Chat Boostが無効になり,代わりに「Level Control」「Voice Morph」「MIC Monitor」が有効になる。
といっても,声の高さを変えてくれるプロセッサで,モンスターのような声や,ヘリウムガスを吸ったような声にできる,いわゆるピッチシフター機能を提供するVoice Morphは初期値のMAIN+8プリセットでは無効。プリセットエディタを使って有効化して初めて利用可能になる。
また,Level Controlは,常識的に考えればAGCなのだろうが,情報がないので何ともいえない。
最後にMIC Monitorはマイク有効時,常に自分の声を小さくヘッドフォンに返す機能である。レイテンシは感じられないので,これを聞く限り,マイク自体の品質は非常に高いような印象を受ける。計測できないので,あくまでも印象レベルでしかないが。
ただ,PS3,Xbox 360接続時のどちらも,しゃべりはじめとしゃべり終わりで音が切れることがあるのは少々気になった。ネットワーク品質とか,ゲーム機側の仕様という部分もあるので,完全にPX5のせいというわけではないのだが,他社製品と比べるとノイズゲートのかかり方に明らかな違いがあるので,PX5のノイズゲートがやや効き過ぎているのではなかろうか。
正しいプリセット選択が幸せの秘訣
自分でいろいろ試せる人向け
びっくりするほど長くなってしまった。
PX5は,プリセットの選択次第で,ダイナミックレンジはおろか,聞こえる音質傾向をもがらりと変えてしまうヘッドセットだ。なので,プリセットの選択を前提にすると,プレゼンスがやや強い以外は,プリセットでどうにもでなる。ある意味,非常に便利な製品である。音楽試聴時には「あり得ない」ような音質傾向が,Black Opsのゾンビモードではアリだったりしたあたりは,今さらながら「ゲームだけに向くチューニングというのはあるのだなあ」と感嘆させられる。
ただ,これは,「日本語の説明がほとんどないまま放り出されたような状態になる」のと同義でもある。Turtle Beachは,将来的な日本語サポートの拡充を予告しているが,少なくとも現時点で日本語サポートは皆無に近く,そういうのを不親切だと思う人には向かない。そして,その場合には,イマドキのワイヤレスヘッドセット,しかも高級品であるにもかかわらずバッテリーが充電式でないとか,マイクの周波数特性や聞こえ方は十分なのだが,ノイズゲーティングがやや強すぎるとか,そういった細かい部分も気になってくるだろう。
また,音楽をメインに考えている場合,2万5000円も払うなら,もっといい製品が多くある。PX5はあくまでもゲーム特化型ヘッドセットである考えておいたほうがいい。
その意味でPX5は,英文ドキュメントをじっくり読みながら設定を追い込んでいくような作業を,「自分でいろいろ試せる」とプラスに捉えられる人に向いた製品だといえる。Bluetooth 2台同時ペアリング機能も含め,使い勝手は非常に高いので,いま挙げた条件をクリアできる人なら,購入して後悔することはないはずだ。
Turtle Beach公式サイト
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