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[COMPUTEX]AMD,ノートPC向けKaveriを正式発表。3系統9種の多彩なラインナップ,FXはi7キラー?
- AMD FX-7600P with Radeon R7 Graphics
12 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×8),TDP 35W,CPUコア定格クロック2.7GHz,CPUコア最大クロック3.6GHz,GPUコア定格クロック686MHz,デュアルチャネルDDR3-2133
- AMD A10-7400P with Radeon R6 Graphics
10 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×6),TDP 35W,CPUコア定格クロック2.5GHz,CPUコア最大クロック3.4GHz,GPUコア定格クロック654MHz,デュアルチャネルDDR3-1866
- AMD A8-7200P with Radeon R5 Graphics
8 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×4),TDP 35W,CPUコア定格クロック2.4GHz,CPUコア最大クロック3.3GHz,GPUコア定格クロック626MHz,デュアルチャネルDDR3-1866
- AMD FX-7500 with Radeon R7 Graphics
10 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×6),TDP 19W,CPUコア定格クロック2.1GHz,CPUコア最大クロック3.3GHz,GPUコア定格クロック553MHz,デュアルチャネルDDR3-1600
- AMD A10-7300 with Radeon R6 Graphics
10 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×6),TDP 19W,CPUコア定格クロック1.9GHz,CPUコア最大クロック3.2GHz,GPUコア定格クロック533MHz,デュアルチャネルDDR3-1600
- AMD A8-7100 with Radeon R5 Graphics
8 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×4),TDP 19W,CPUコア定格クロック1.8GHz,CPUコア最大クロック3.0GHz,GPUコア定格クロック514MHz,デュアルチャネルDDR3-1600
- AMD A10 PRO-7350B with Radeon R6 Graphics
10 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×6),TDP 19W,CPUコア定格クロック2.1GHz,CPUコア最大クロック3.3GHz,GPUコア定格クロック553MHz,デュアルチャネルDDR3-1600
- AMD A8 PRO-7150B with Radeon R5 Graphics
10 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×6),TDP 19W,CPUコア定格クロック1.9GHz,CPUコア最大クロック3.2GHz,GPUコア定格クロック533MHz,デュアルチャネルDDR3-1600
- AMD A6 PRO-7050B with Radeon R4 Graphics
5 Compute Cores(Streamroller Module×2+GCN Compute Unit×3),TDP 17W,CPUコア定格クロック2.2GHz,CPUコア最大クロック3.0GHz,GPUコア定格クロック533MHz,デュアルチャネルDDR3-1600
AMDは,2014年1月14日にKaveriを発表済みだが,あのときデビューしたのは,デスクトップPC向けモデルだけだった(関連記事)。Kaveri自体は「ノートPCのためにデザインした」と位置づけられるAPUであるにもかかわらず,これまで数か月も,デスクトップPC向けモデルしかなかったわけだが,ようやくこれで出揃ったことになる。
今回は,COMPUTEX TAIPEI 2014の会期中に行われた,アジア地域の報道関係者向け説明会で語られた内容を基に,ノートPC向けKaveriの概要をまとめてみたいと思う。
Kaveriについての復習
まず,Kaveriは,「Llano」や「Trinity」といったAMD製APUにおける,ひとまずのゴールとも言うべき製品である。
最初の世代のAPUは,プロセッサとしてCPUとGPUを統合させただけのものであり,CPUプログラムとGPUプログラムの双方から同一のメモリアドレスッシングによるメモリアクセスは行えなかった。
続く「Trinity」と,そのマイナーチェンジ版となる「Richland」では,CPUプログラムとGPUプログラムの双方から同一のメモリ空間を透過的にアクセスできる「hUMA」(heterogeneous Uniform Memory Access)が実現された。ただし,CPUからのメモリアクセスとGPUからのメモリアクセスはそれぞれが完全に独立した経路で処理されるようになっており,CPUとGPUとで同じメモリアドレスへのアクセスが起きたとしても,それを知る術がなかったのだ。
CPUとGPUは内部に互いにキャッシュメモリを持っていて,特定のメモリアドレスの内容を保持しているわけだが,相手側のプロセッサによるメモリアクセスを知らないとキャッシュメモリの内容に不整合が出てきてしまう。この不整合を,Trinity&Richland世代では回避のしようがなかった。よって,もっぱらCPUのみが明示的にGPU管理下の共有メモリをアクセスするという方法でデータの受け渡しが行われていたのだ。
しかしKaveriでは,この「不整合」を回避することができる仕組み,つまりはメモリ内容のコヒーレンシを維持する仕組みをハードウェアレベルで実現する「HSA」(Heterogeneous System Architecture)が搭載されたのであった。
Kaveriでは,CPUコアのマイクロアーキテクチャに,「Bulldozer」系の第3世代モデルとなる「Steamroller」を採用。GPUコアのアーキテクチャには,Radeon R9&7 200シリーズと同じ「Graphics Core Next」(以下,GCN)をAPUとして初めて採用している。
ちなみに,Kaveriコアのフルスペックだと,CPU側が「Steamroller Module」を2基搭載した4コア仕様,GPUは「GCN Compute Unit」を8コア搭載する仕様となっている。念のために補足しておくと,1基のGCN Copmute Unitが,32bit単精度浮動小数点演算に対応したスカラ演算ユニットである「Stream Processor」(以下,SP)を64基統合しているのは,GCN世代のRadeonとまったく同じだ。
Kaveriのダイサイズは245mm2。総トランジスタ数は約24億1000万個だ。製造はGLOBALFOUNDRIESで行われ,プロセスルールは性能重視製品向けプロセスである「28nm SHP」(Super High Performance)が採用されている。
AMD独自のグラフィックスAPI「Mantle」はKaveriでも利用可能。極薄抽象化レイヤーの採用によって,DirectX比で最大2倍の性能を発揮するとされる |
ノートPC向けKaveriとは何か
ここで言う「ノートPC向けに最適なコンフィギュレーション」とは,具体的には,有効なコア数や動作クロック,省電力制御のことで,それらの組み合わせによって,冒頭でも示したとおり,デスクトップPC向けモデル以上の細かなラインナップが生まれている。
上のスライドには「SV」「ULV」「Commercial ULV」という表現が見えるが,SVは「Standard Voltage」(標準電圧)のことで,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)に余裕のある,大型筐体のノートPC向けという位置づけ。ULVはUltra Low Voltage(超低消費電力)の意味で,こちらは薄型筐体のノートPC向けに設定されるモデルとなる。
AMDが示した,Kaveri搭載ノートPCのバッテリー駆動時間テスト結果 |
冒頭でも触れたように,ノートPC向けKaveriでは,これまでのAMD A-Series APUにおける命名規則から外れた,AMD FXブランドのモデルが,FX-7600P with Radeon R7 Graphicsとして設定されている。
AMDによると,今回FXブランドを採用したのは,「APUにおけるこれまでのトップモデルである『A10』よりさらに上位であることをアピールするため」とのこと。デスクトップPC向けにはCPUとしてのFXが存在するため,KaveriにFXブランドを与えてしまうと混乱のもとになるが,ノートPC向けではその心配が無用というわけである。
FXブランドのAPUが,Ultrabook向けのCore i7プロセッサキラーと位置づけられているのも特記すべき点と言えるだろう。
KaveriコアAPUの最上位モデルには「FX」ブランドが配されることに |
業務用ノートPCでは,保守性や長期入手性(Longevity)が重視される。そこでAMDは,そうした要求に応えるため,PROブランドのAPUについて,最低でも2年間の製品製造継続を保証するとしている。また,動作の安定性を重視する目的から,十分にテストされたバージョンのファームウェアやドライバとセットで提供することになるという。
とはいえ,機能的に見ると,“通常の”ULV版に対して何かの機能が追加されたり削減されたりしているわけではない。「**50」という型番が示していることからも分かるように,性能的には,ULV版各モデルの中間グレード的なものという理解でよさそうだ。
業務用PCにおいてもグラフィックスやサウンドなどを高速に処理することができるよう,高いメディア性能が求められてきた |
スペック的にはULV版の中間的なスペックに相当 |
総括するならば,今回のノートPC向けKaveriのラインナップ発表は,ターゲットとなるユーザー層を明確にして,各ユーザー層がどのモデルを購入すればよいかを分かりやすくするため,細かくブランディングを行ったということになる。
今回発表されたノートPC向けKaveriを搭載するノートPCやタブレットPCなどは,今後,順次リリースされる予定とのことだった。
ノートPC向けAPUは,FXになったりPROが付いたりと,いろいろ種類が増えることになる |
- 関連タイトル:
AMD A-Series(Kaveri)
- 関連タイトル:
AMD FX(Kaveri)
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