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[CEDEC 2014]PS4タイトルの開発にも着手したというCygamesの“もの作りの姿勢”とは。「Cygamesエンジニアが支えるヒットゲームの裏側!」レポート
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印刷2014/09/04 17:34

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[CEDEC 2014]PS4タイトルの開発にも着手したというCygamesの“もの作りの姿勢”とは。「Cygamesエンジニアが支えるヒットゲームの裏側!」レポート

Cygamesの取締役CTOである芦原栄登士氏
画像集#001のサムネイル/[CEDEC 2014]PS4タイトルの開発にも着手したというCygamesの“もの作りの姿勢”とは。「Cygamesエンジニアが支えるヒットゲームの裏側!」レポート
 2014年9月3日,パシフィコ横浜で開催されているCEDEC 2014にて,Cygamesの取締役CTO 芦原栄登士氏による講演「Cygamesエンジニアが支えるヒットゲームの裏側!」が行われた。

 Cygamesといえば,国内だけでなく海外でも大ヒットを記録した「神撃のバハムート」や,皆葉英夫氏/植松伸夫氏が制作に関わっていることで話題を集めた「グランブルーファンタジー」などを代表作とするメーカーだが,講演の最後には,「PlayStation 4向けゲームの開発に着手した」という驚きの発表もあったので,本稿で詳しくレポートしよう。

Cygamesの代表作「神撃のバハムート」(左)と「グランブルーファンタジー」(右)
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Cygamesが語る,もの作りに対する心構えと注意点


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 講演は,芦原氏によるCygamesの概略紹介からスタートした。
 同社は2011年に設立されたメーカーで,芦原氏を含む取締役4人の全員が,家庭用ゲーム機での開発経験を持っている。「神撃のバハムート」や「グランブルーファンタジー」のような大作を手がける一方,社内企画コンペの入選作品を実際に制作し,カジュアルゲームブランド「ちょゲつく」で展開するといったフットワークの軽さも持ち合わせている。

“「ちょ」っとした時間を,「ちょ」っと幸せにする。”ことがコンセプトのカジュアルゲームブランド「ちょゲつく」(左)。本職のプランナーだけでなく,人事やデバッガーまで,職種を問わない社内企画コンペの入選作がゲーム化される。同社の新卒社員が2週間で作った作品(右写真)も「ちょゲつく」で展開されている
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「ちょゲつく」発のゲームである「O'REILLY COLLECTION」は,ゲーム内で仕事をし,オライリー・ジャパンの技術書を集めるという作品。本棚に収めた書籍は自由に並べ替えられる。労働時には打鍵音が聞こえるが,これは実際のキーボードから採録したもの。録音後にスペースバーの音が入っていないことに気付き,あらためて収録したという
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Cygamesによる,ゲームサービスに特化した投資支援「Bring Your GAME Ideas to Life」。先日,PS Vita向けサンドボックスアクションRPG「Airship Q(仮称)」への投資が行われた
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 そんなCygamesのエンジニアが,ゲームを制作するときに気を付けているのは,シンプルながらも実行が難しい,以下のような点だという。

・「当たり前のことを当たり前にやる」
 芦原氏は,これが最も重要な原則であるという。「チーム間で情報を共有し,エラーの再発防止策をまとめる」「メンテナンスの際には予め手順書を作り,二人一組で作業する」「バグのないコードを書く」「新しいことをしているか常に自問する」など,言われてみれば当たり前のことばかりなのだが,スタッフ全員の「当たり前のレベル」を上げていくことが,同社のビジョンである「最高のゲームを作る会社」への近道なのだという。

・「物事の本質を考える」
 もの作りには,物事の本質を追い求める探求心が必要だと考える芦原氏は,エンジニアに向けて「表面だけを見て過ごしていないか」という問いかけを頻繁に行うそうだ。
 例えばバグをひとつ修正するにしても,「なぜそのバグが発生したのかを理解した上で直す」のと「場当たり的に作業を行い,とりあえず異常動作が収まったことをもって良しとする」のでは,作業の性質がまったく異なる。もちろん目指すのは前者だ。

・「技術的に正しいことがプロジェクト的に正しいとは限らない」
 エンジニアは「技術的に正しいことこそが正しい」と考えがちだ,と前置きしつつ,芦原氏は「技術の追求とプロジェクトの目的は必ずしも一致するものではない」と語る。
 例として氏が挙げたのは,プログラムの内部構造を整理するリファクタリングだ。エンジニアからは,リファクタリングを求める声がたびたび上がるが,「何のためにリファクタリングをするのか」を考え,プロジェクトの目的と照らし合わせることが大切だと芦原氏は述べる。Cygamesにとって,多くの場合は「面白いゲームを作ること」がプロジェクトの目的なので,リファクタリングでゲームの面白さが向上しないのなら,行うべきではないということになる。つまり,ここでのリファクタリングは「技術的には正しいが,プロジェクト的に正しいとは限らない」行為。プロジェクト的な正しさ(本来の目的)を見失うことなく行動することこそが重要だというわけだ。

・「より速く,より大量に,常に安定稼働」
 芦原氏は,常日頃からエンジニアに「技術力を向上させよう」と働きかけているそうだが,その具体的な目標が「より速く,より大量に,常に安定稼働」であるという。「より速く」とは,プログラムのレスポンスを速くしてユーザーを待たせないことと,効率良くプログラムを開発すること。「より大量に」は,多くのユーザーや大量のデータを捌くこと。「常に安定稼働」とは読んでそのまま,トラブルのない安定した動作のことを指す。単に技術的に高度なところを目指すのではなく,ゲームメーカーとしての業務を円滑に行うことこそが,Cygamesにおける「技術力向上」であるというわけだ。

・「車輪の再発明はしない」
 これは,Cygamesの社内に標語として掲げられているスローガンでもあるそうだ。例えば,ゲームに新機能を追加したい場合,エンジニアとしては当然,そのためのプログラムを書くことになるが,芦原氏は「同じような働きをするプログラムを複数の場所で作っても意味がない」と指摘する。
 追加したいと考える機能が他のタイトルにあるなら,これをもらってくるのが一番。なぜなら,他のタイトルで使われているということは,すでに動作試験が行われたようなものであり,バグが出る可能性が低いからだ。芦原氏は「バグを出さない一番良い方法はプログラムを書かないこと。プログラムを書くということは,バグを生んでいるとも言える」と考え,不具合の出ていないプログラムには極力手を加えないようにし,どうしても改修が必要な場合には,充分なテストを行うようにしているそうだ。

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・「面白くなければ意味がない」
 ゲームは面白くなければ意味がない。そして面白いゲームを作るための近道は,とにかく作って動かす,トライアンドエラー的な作業を繰り返すことだと芦原氏は語る。ゲームを作る過程で,プランナーから仕様書が上がってこないことを理由にエンジニアが作業を進めないというケースがあるが,これはおかしな姿勢であると芦原氏は指摘する。とにかく何かを作って動作させないと,改良すべき点は見えてこない。仕様書の有無に関わらず,最初に作ったものがそのまま採用されることはなく,結局は何度も作り直すことになるため,とにかく動くものを,あとから変更しやすい形で作ってしまうのがベターというわけだ。
 面白さを追求していく過程では,仕様書に書かれないような感覚的な部分も重要になってくるが,こうした感覚を理解するためには,既存のゲームで遊ぶことが大切だという指摘もなされた。
 例えば,同社の「三國志パズル大戦」のマップ選択画面で採用されているダイヤル型のUIは,回しきったところで跳ね返るような挙動を見せるが,「どのくらい跳ね返るか」という指定は仕様書には書かれておらず,エンジニアの目分量と感覚で調整されたという。ゲーム制作では,このように「面白さ」や「気持ちよさ」に関わる部分をエンジニア自らが調整することもあるため,芦原氏はCygames社内にゲームライブラリを用意し,エンジニアがさまざまなゲームに触れられる環境を整えているそうだ。

Cygames社内のゲームライブラリ。さまざまなハードウェアが揃えられている
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プラットフォームに関わらず,「面白いものを作る」という根本は同じ


 コンシューマゲームとスマートフォン向けゲーム,両方の開発を経験している芦原氏だが,両者の最大の違いは,プレイヤーの反応が伝わってくる速度にあると語る。コンシューマゲームの場合,マスターアップから発売まで1か月ほどの時間がかかり,発売後には,プレイヤーからの反応がジワジワと返ってくるそうだ。

Cygamesのサーバー構成はいわゆる「LAMP」環境で,特殊なことはしていないという
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 対するスマートフォン向けゲーム(ソーシャルゲーム)では,リリースした瞬間から「ユーザー数」や「インストール数」「課金しているユーザー数」といったさまざまな反応がダイレクトに伝わってくる。もしネガティブな反応が目立つようでも,アップデートという形で改良を加えられるため,「挑戦をした上で新たなものを作る」という試みを実効に移しやすいのだそうだ。

 こう書くと,両者は大きく異なったものに見えるかもしれないが,最近ではコンシューマゲームにも,DLCやF2Pタイトルなどが増えてきており,プラットフォームによる差はいずれなくなっていくのではないか,と芦原氏は予想している。
 また,ブラウザゲームとネイティブアプリを比較した場合,実はブラウザゲームのほうが改良を加えやすいのだという。ネイティブアプリでは,アップデート内容をすべてアプリ内に収めたうえで再リリースすることになるので,大規模な改良を行うと,アプリそのもののサイズが目に見えて膨らんでしまう。一方ブラウザゲームの場合,プレイに必要なデータのみをダウンロードする形になるので,大胆な改良も行いやすいそうだ。

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 なお,芦原氏は講演の最後に,CygamesがPlayStation 4向けのゲーム開発に着手したことを発表し,「やる気のある人,新しい時代を切り拓きたい人,歴史に残るゲームを作りたいという人がいたら,一緒にやっていきませんか? 家庭用ゲームでもソーシャルゲームでも,最高のものを作りたいという人をお待ちしています」と呼びかけ,講演を締めくくった。同社がPS4というプラットフォームに対し,どのような作品を投入するのかは不明だが,ゲームは「面白くなければ意味がない」。芦原氏率いるCygamesは,「当たり前のことを当たり前にやる」従来どおりの開発スタイルで,我々ゲーマーを楽しませてくれるに違いない。

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