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[GDC 2012]意外? それともやっぱり? ゲーム業界の大御所の人生を決めた1本とは
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印刷2012/03/10 20:53

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[GDC 2012]意外? それともやっぱり? ゲーム業界の大御所の人生を決めた1本とは

 ウィル・ライト(Will Wright),シド・マイヤー(Sid Meier),クリフィB (Cliff Bleszinski),そしてジョン・ロメロ(John Romero)という,もはや何の説明も必要ないであろうゲーム業界の重鎮達が,自分のキャリアを決定付けるほど入れ込んだゲーム1本を紹介するという,かなり興味深いプレゼンテーション「Forgotten Tales Remembered」(忘れられた物語を思い出して)が行われていたのでレポートしたい。この4名を知らない人は,まずは4Gamerでその人名を検索し,彼らの作品や偉業について知っておくといいだろう。

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●ウィル・ライト
「Pinball Construction Set」 by Bill Badge (1983)

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 トップバッターとして登場したウィル・ライト氏が選んだのは,ピンボールゲーム制作ソフト「Pinball Construction Set」という,Apple IIやAtari 800向けに1983年にリリースされた作品だ。ビル・バッジ(Bill Budge)という,現在Googleに在職している人物が開発したこのソフトは,「ゲーム制作ゲーム」というジャンルを開拓したことで知られ,ライト氏自身が明らかにしたところでは,「SimCity」とインタフェースの形状がまったく同じといっていいほど,ライト氏が入れ込んだゲームである。

 バッジ氏は,Electronic Artsの創業時に,黒い服装で撮影された有名な広告「Can A Computer Make You Cry」に写る気鋭デザイナー7人のうちの1人であり,黒い手袋を付けて右奥に座る人物だ。ライト氏はこのゲームで遊んでいたとき,すでに働いていたお姉さんの家に転がり込んでいたらしいのだが,Pinball Construction Setの箱の裏の住所から,かなり近い場所にバッジ氏が住んでいることを知って,実際に彼を訪ねたという。バッジ氏はその後も,Electronic Artsで「Derby Construction Set」などを次々に仕掛けていたが,ある時,友人となったライト氏に対して「Construction Set Construction Set」を作るなどと言い出し,「バッジ氏は考えすぎて妙な世界にたどり着いたのでは」と心配したそうだ。

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●シド・マイヤー
「Seven Cities of Gold」 by Dan Bunten (1984年)

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 シド・マイヤー氏が選んだのは,こちらも「Can A Computer Make You Cry」広告の気鋭デザイナーだったダン・バンテン氏が開発した「Seven Cities of Gold」である。15世紀のフランス船団のキャプテンとして,マップ中に散らばる7つの黄金の都市を探して回るというアドベンチャーゲームで,探索して視界を広めつつ,現地の人とやり取りするという作品だ。すでにゲーム業界入りしていたマイヤー氏が作り始める「Pirates!」や「Civilization」に,たしかに通じるものがある。その頃は,ゲーム業界がここまで成長すると考えていなかったマイヤー氏が,歴史について深く興味を持ち始める機会になったとのことだ。

 とくに,Pirates!への影響は絶大なものがあるという。「Seven Cities of Gold」では,砦を築くために,現地住民を排除するか,何らかの方法で改宗させることが必要となる。改宗させる際に,「原住民を感動させたまえ」(Amaze the Natives)というメッセージが表示されるのだが,それをはじめて見たときの「自分の中にパワーが満ちたように感じた」という錯覚が,今でもマイヤー氏の心に深く焼きついているという。

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●クリフ・ブレジンスキー
「ゼルダの伝説」 by 宮本 茂 (1986)

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 ボストン郊外の,いかにもニューイングランド地方というような落ち着いた自然の中で育ったクリフィBことクリフ・ブレジンスキー氏。彼はG.I.ジョーやレゴなどで遊ぶ普通の子供だったが,13歳でスーパーファミコンに出会ったのが運命の始まりだ。「スーパーマリオブラザーズ」に熱中して最高得点を収めた写真を雑誌に送り,名前が雑誌に掲載され,どこに行ってもゲームの話しかしなくなったことで,学校では「ニンテンドーボーイ」と呼ばれていじめられたりもしたという。

 そんな13歳のクリフィB少年にとって,ゲーム雑誌の「ゼルダの伝説」の広告に描かれた金色のカートリッジは,大きな衝撃を与えたという。それを購入するために,新聞配達やカントリークラブの掃除などをして,自分で資金調達をしたほどだ。ゼルダの伝説の広々としたゲーム世界で駆け回ることは,今となっては,ゲームに熱中する前にボストン郊外の森を駆け回っていた体験と重なるのだという。
 ちなみに,最近では「The Elder Scroll V: Skyrim」をプレイしたときに同じ感覚が蘇ったそうで,マッチョなゲームの制作が得意なクリフィBにしては,ちょっと意外なエピソードと言えるだろう。

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●ジョン・ロメロ
「パックマン」 by 岩谷 徹 (1980)

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 今回の4人の中で一番意外だったのが,ジョン・ロメロ氏の選んだ「パックマン」だ。

 「DOOM」「Quake」「Daikatana」など,FPSのゲームデザインを牽引したことで知られるロメロ氏は,最近ではソーシャルゲームの会社であるLoot Dropを起業。今回は,26年の歴史を持つGDC史上初めて,iPhoneを大モニター用のスイッチャーに接続してスライドショーを披露するというマニアぶりを見せ付けた。

 そんなロメロ氏は70年代,まだ10代にも満たない頃に,アーケードゲームにハマっていたそうだが,「パックマン」で初めて目の当たりにした「複数の色で構成されたグラフィックス」や,個性/名前の設定された憎めない敵(ゴースト),攻略しがいのあるマップなどに,ひどく感動したのだという。
 アメリカでは,ローンチから最初の18か月で10億ドルの売上を達成したという大ヒット作品だが,ロメロ氏自身,最初の3面は目を閉じていても攻略できるほどやり込んだらしい。彼のゲーム愛が良く分かるエピソードである。
 実際,DOOMには隠しマップとして,パックマンを連想させる迷路マップが盛り込まれており,彼の思い出にしっかり刻み込まれた作品であるのは間違いなさそうだ。

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