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話題の都市建設シム「シムシティ」の先行プレイレポートを掲載。複数のプレイヤーが共に都市作りを行う“マルチシティ”とは
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印刷2013/03/05 02:00

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話題の都市建設シム「シムシティ」の先行プレイレポートを掲載。複数のプレイヤーが共に都市作りを行う“マルチシティ”とは

 「シムシティ ソサエティーズ」から約6年,ナンバリングタイトルである「シムシティ4」からは実に10年ぶりの最新作となる「シムシティ」。世界中の都市建設ファンの期待が集まる本作だが,このたび,2013年3月7日の国内発売に先駆けて,製品版とほぼ同じバージョンを先行プレイする機会を得た。2度にわたって行われたβテストでは確認できなかった「マルチシティ」を中心に,そのインプレッションをお届けしたい。

画像集#017のサムネイル/話題の都市建設シム「シムシティ」の先行プレイレポートを掲載。複数のプレイヤーが共に都市作りを行う“マルチシティ”とは

「シムシティ」公式サイト



街同士が相互に影響を与えるマルチシティは,
とっても新しい感覚


体験プレイはエレクトロニック・アーツ本社で,日本語版レビュー用バージョンを使って行なわれた
画像集#002のサムネイル/話題の都市建設シム「シムシティ」の先行プレイレポートを掲載。複数のプレイヤーが共に都市作りを行う“マルチシティ”とは
 先行体験プレイは,4Gamerだけでなく複数のメディアが同じリージョン(地域)に参加して街作りをしていく形式で行なわれた。ご存じのように,今回のシムシティの最大の特徴は,マルチプレイの存在だ。というか,オンラインは「必須」になっており,基本的にほかのプレイヤーと一緒にゲームを進めていく。これまで,一人であれこれ実験しながら街を作るというイメージの強かったシムシティシリーズにとって,大胆な方向転換ともいえ,「どうなんだろう?」と思っている人も多いはずだ。日本のメディアにとっても,実際にマルチプレイを体験するのは初めての機会で,非常に気になるところだった。
 さて,プレイにあたってまず行うのは,自分の都市をどこに作成するかの選択だ。広大な1つのリージョン(地域)に16個のエリアが用意されており,そこから1つを選んでゲームを始めることになる。つまり,最大で16人のプレイヤーが1つのリージョンに参加可能というわけだ。エリアは平地だったり山がちだったり中州だったりと,なかなかバリエーションに富んでおり,筆者は川沿いの土地を選んだ。

リージョンとエリアの選択画面。ゲームに用意された10個前後のリージョンから1つを選んでもいいし,すでにあるリージョンに参加してもいい
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 エリアを選んだら,街づくりスタート。市長として街を発展させていくことが目的であるのは,シリーズ従来作と同じだ。空き地に道路を引き,「住宅地区」「商業地区」「工業地区」を指定していけば,街は徐々に発展していく。
 操作は,道路に沿って地域を指定するだけと非常に簡単。やがて,住宅地域には家が,商業地区には商店などが,そして工業地域には工場が勝手に建っていく。集まってきた住民の要望はグラフやアイコンなどで分かりやすく表示され,彼らの要望に対応していれば,自然とゲームの流れが飲み込める仕組みになっている。ただし,「今は無理」という要望を述べる住民もいるので,そういう場合は,はいはいと思いつつスルーだ。

街づくりの基本は非常にシンプル。住民の要望にどれだけ応えられるかが,市長としての腕の見せどころ
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 ただし,簡単なのはあくまで序盤の話。しばらくすると都市の発展は頭打ちになり,やがて停滞してしまうはずだ。そうならない,うまい人もいるかもしれないが,多くのプレイヤーはある段階で停滞するものだと思ってほしい。
 そのとき重要になるのが,上記のマルチシティだ。画面を「地域ビュー」へ切り替えると,リージョン全体の様子を見渡すことができ,別の街とのやり取りが行えるアイコンが表示されるので,それを使って人の移動や資源の購入/販売などを行うわけだ。
 やり取りできるのは,電力や上下水道などの基本インフラ。加えて,交通機関を用意すれば,労働者や買い物客の呼び込みも可能になる。資金となる「シムオリオン」や資源をほかのプレイヤーにプレゼントすることもできる。

 地域同士のやり取りは,一度設定しておけばプレイヤーが止めない限り継続されるので,(体験プレイの時間内においては,となるが)マルチプレイであることを意識する必要はない。あくまで市政の1つとして用意されているという印象だ。

リージョン全体の様子が表示される地域ビュー。ほかの街に見学に行くこともできる
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画面下部に並んだアイコンを使って,ほかの街とのやり取りが行える。人や資源のほか,交通機関や警察,消防といったものに指示を与えることも可能だ
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 さて,シリーズ従来作に比べて,エリアの面積はそれほど大きくなく,またあらかじめ決まったエリアの外に出ることもできない。というわけで,限られたエリアを効率的に使うには,街を特定の産業に特化させたほうが有利になる。
 産業には,「鉱業」「掘削」「貿易」「電子機器」「文化施設」「ギャンブル」があり,例えば街にカジノを多数建築し,一大カジノシティとして観光客を呼び込み,お金がガッポガッポということが考えられる。ただし,エリアはそれぞれ,交通の便の善し悪しや,地下資源の多寡などに違いがあるため,そこに適した産業選択が重要になってくる。

 さらに視野を広げ,空いているエリアに新たな街を作り,あちらは住宅や商業地をメインにしたベッドタウン,こちらは電力や資源を生み出す工業都市といった具合に,マルチシティを前提にした発展も可能なのだ。ただ,全部を一人でやるのは大変なので,ほかのプレイヤーの協力を仰いだほうが便利なわけで……あれ,マルチプレイ,いいじゃないですか。

街の産業を特化させることで,リージョン内の役割をより明確にできる。筆者が選んだエリアは石油埋蔵量が豊富だったので,石油掘削施設を設置してみた
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 複数の特化した存在が,お互いの長所を活用しあって共存/繁栄していくエコシステム的な仕様は,今回のシムシティと非常に相性がいいようで,自分の街のリソースをどのように活かして地域の発展につなげていくかという,市長としての新たな目的を生み出したように感じる。現実世界において「1つの閉じた街」というのはありえない話であり,都市間で人や資本,資源の交流が必ずある。そういう意味で本作は,リアルさの階段を,また1つ昇ったと言えそうだ。
 従来作のように,自分一人で(リージョンを独占し)黙々と街作りを進めることもできるが,マルチでプレイしたほうが効率的だし,なにより面白い。人間がやることなので,おいおい,話が違うじゃないかということも起きるし,「おまえの街から犯罪者が次々と,うちの街へやってくる」などと文句をつけられることもあるだろう。というか,テストプレイではそういうことがあった。

緻密になったグラフィックスだけでなく,ゲームの本質的な部分に手が加えられている本作。その核となるマルチシティをぜひプレイしてほしい
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 せっかくなので,マルチシティ以外の部分で気づいたことを簡単に書いてみよう。
 まず感じたのは「ハードルの低さ」。前述したように,基本の街づくりはマウスでドラッグして地区を描いていくだけで,発電所や水関連の施設が道路とつながっていれば,勝手に各戸に供給されるので,そういう基本インフラをいちいち意識する必要はない。

 しかし,操作が簡単だからといって都市運営が楽チンというわけではない。最初から景気よくいろいろなものを作っていると,あっという間に資金がショートする。ハコモノ行政はいけません。資金については,税率の上昇や債権の発行(要は借金)でシムオリオンを得ることができるが,住民が減るなどのデメリットも当然ある。収入と支出のバランス感覚が大事というのは,これまでどおりだ。

 余談だが,筆者は今回のプレイ中に三回も地震に見舞われるという体験をした。地震が発生すると,震源地近くの建物は倒壊し,続いて大規模な火災が発生する。災害発生はあくまでランダムとのことで,要するに運が悪かったのだが,遭うと「そりゃないよ!」とマジヘコミすること請け合いだ。

ゲームシステムは複雑過ぎず,初心者に対するハードルは低い。災害が起きたときのムナしさはこれまで同様。ああ,俺の街が壊れていく……
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クリエイティブディレクターに聞く,
新生「シムシティ」の魅力


 体験プレイ後,本作のシニア・アートディレクターを務めるMaxisのオーシャン・クィグリー氏にインタビューが行われたので,以下に,その様子をまとめておこう。メディア合同でなおかつ電話インタビューということで,一問一答風になってしまったが,ゲームのディテールはお分かりいただけるはずだ。

Maxisのシニア・アートディレクターを務める,オーシャン・クィグリー氏
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――「シムシティ4」から10年が経過していますが,本作の開発は何年くらいかかっているのでしょうか。

オーシャン・クィグリー氏(以下,クィグリー氏)
 構想は,シムシティ4を開発していた頃から描いてました。実際の開発は4年前からで,3年半前からはノンストップで作業を続けています。

――ユーザーインタフェースが,かなり分かりやすくなっていますね。やはりそこに時間がかかったのでしょうか。

クィグリー氏
 ユーザーインタフェースはMaxisに15年間勤めている開発者が担当しています。彼はシムシティ4でもユーザーインタフェースを受け持ちました。実際に多くの時間を費やしたのは,基礎となるシミュレーションの構造で,ゲームエンジンの「GlassBox」は,まったく1から作っています。

――ゲーム開発にあたって,重要視した部分はどこでしょうか。

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クィグリー氏
 もっとも重視したのは,街をリアルに作り込むということです。歩道には人が歩き,道路には車が行き交う。抽象的ではなく,リアルさを求めました。これによって,プレイヤーが街に入り込んだような気持ちになってもらえると思います。
 私自身,もともと画家だったということもあって,なるべく美しい街を作り,その中に入ってみるという体験をしたかったのです。自分の理想ともいえる街に住む感覚は非常に楽しいですね。

――今回,マルチシティが導入されましたが,その理由を教えてください。

クィグリー氏
 これもまた,ゲームをなるべくリアルにしたいという発想からです。街というのは世界に1つだけで存在することはなく,ほかの街とつながっています。ある街の住人が別の街で仕事をしたり,電力を別の町から供給してもらったりという部分を,ゲームで表現したかったのです。また,プレイヤーそれぞれの街が専門分野に特化することで,ほかのプレイヤーとの役割分担が生まれるという点も楽しんでほしいですね。

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――「偉業」を達成する条件が難しそうですが。

クィグリー氏
 基本的に本作は,まったくの初心者でも段階的にゲームに慣れていけるような設計をしています。偉業は,十分に経験を積んだコアプレイヤーが最終的にチャレンジする要素なので,ゲームに関してのスキルを身に付けている必要があります。ですから,確かに難しいですね。

※今回の先行体験ではプレイできなかったが,「偉業」とは,複数のプレイヤーが協力して作り上げる,主として建築物。大量の資材や進んだ学術研究など,達成条件が非常に厳しい

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――中洲のエリアに街を作ったら,有効に使えるスペースが少なくてかなり困りました。街を作るエリアによってゲームの難度は変わりますか。

クィグリー氏
 変わります。平地で施設が建てやすいところなら,容易に人口密度が高くなるでしょうが,山のエリアでは道路が作りにくかったり,中洲なら橋が必要になったりと,エリアごとに難度は変わります。施設が作りにくい代わりに地下資源が豊富だったりしますので,メリットとデメリットを十分に考慮する必要があるでしょう。

――前作では可能だった「地形の変更」が,できなくなっていますね。

クィグリー氏
 そうです。プレイヤーは神様ではなく,あくまで市長ですので,山や海ではなく,ビルや高速道路を作ることに集中してほしいと考えました。

――テストプレイ中に,三回も地震に見舞われたのですが,災害の発生にはなにかトリガーがあるのでしょうか。

クィグリー氏
 それはまた,運が悪かったですね(笑)。例えば,住民の教育レベルが低くて発電所が事故を起こす場合などもありますが,基本的にはランダムです。また,自分の手で災害を起こすこともできますよ。

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――ゲームを作るにあたって,都市工学や社会学などに関する調査/研究はされましたか。

クィグリー氏
 ええ,イヤというほどね。医療や上下水道,警察,消防といったさまざまな都市システムを研究し,それらをなるべくシンプルな形でゲームに反映しています。社会学に関しては,住民の幸福度という形で取り入れてみました。

――これまで行なわれたβテストでは,どんなフィードバックが得られましたか。

クィグリー氏
 ゲームの感想からバグの報告まで,さまざまな意見が寄せられました。フィードバックの結果を受けて経済活動などのチューニングを行いました。

――コンシューマ機への移植予定はありますか。

クィグリー氏
 いいえ。シムシティはマウスとキーボードが必要なPCゲームで,コンシューマ機版は考えていません。今のところ,PC版に続いて,春に発売する予定のMac版を開発中です。

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――あなたの好きなプレイスタイルと,もしあるのなら「勝利の秘訣」を教えてくれますか。

クィグリー氏
 いいですよ。このゲームをプレイする人は2つのタイプに分かれると思います。人口を最大限に増やすこと,つまりゲームに「勝つ」ことを目的とする人と,街の景観をいじって,美しい街づくりを目指す人。私は後者のタイプですので,木を植えたり,石畳の道路をひいたりということが好きですね。テストプレイでは,そういうことばかりしています。

 うまくプレイするための秘訣としては,まず,道路は一番安い,舗装されていない道から始めて,徐々にアップグレードしていくこと。また工場を作る場合は,住宅地の風下に配置して,悪い空気が流れてこないようにすること。そして,教育施設を建築すること,などでしょうか。教育施設を作ることで,町の運営が長期的に安定していきます。

――「シムシティ」の生みの親であるウィル・ライト氏は,本作について何か言ってましたか。

クィグリー氏
 シムシティ4では,あまり彼の興味をひくことができなかったのですが,新しいシムシティには魅了されたようで,大変喜んでくれました。街にズームインすることで,何万人もの人が暮らす街の息吹きを感じてもらえたようです。

――本日はどうもありがとうございました。

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