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「The Wonderful 101」の魅力をプラチナゲームズの神谷英樹氏が紹介。マフィア梶田も登場した発売記念トークイベントの模様をレポート
このイベントには,同タイトルのディレクターを務めたプラチナゲームズの神谷英樹氏が登壇し,デモプレイを交えながらゲームの魅力を紹介した。
ちなみにヨドバシカメラ マルチメディア Akibaでは,このイベントのために整理券50枚を用意していたのだが,同日の開店時間である9:30から30分と経たないうちに配布終了になったそうである。本稿では,そんな大盛況となったイベントの模様をお届けしよう。
100人のヒーローが合体するアイデアの原点にあったのは……?
それぞれが多くのファンを抱えるキャラクター達だけに,どう扱えばいいのか迷った神谷氏だったが,あるとき,全員一斉に登場するようなゲームにしてしまえばいいと思いついたのだそうだ。
結局,その企画そのものは実現しなかったのだが,それから1年ほど経った頃,同じアイデアを使って新しいゲームを作ろうと神谷氏は考えた。モチーフにしたのは,氏が「DNAに刷り込まれている」と語るほど好きなヒーローものだったが,そこには「戦隊ものでもヒーローの数はせいぜい5〜7人程度。それが100人になると前代未聞だろう」という思いもあったそうだ。
続いて,最大100人のヒーロー達がさまざまな形に合体する「ユナイト・モーフ」のアイデアの出どころを聞かれた神谷氏は,「自分でも,はっきりとは分からないけれど」と前置きしながらも,幼少の頃に読んだ絵本「スイミー」にインスパイアされたのではないかと話した。無数の小さな魚が集まって大きな魚の形を作り,敵を撃退するという部分から,小さなキャラクターが合体して別の大きなものを形成するイメージを得たというわけである。
神谷氏自身は,そのアイデアについて「当初の人気キャラクターを使う企画のままだと,実現しにくかったかも」とコメントし,「ヒーローものにしたことで,ユナイト・モーフが実現できたし,何より僕の好きな,地球の危機に立ち上がるような熱いストーリーを展開しやすくなったので,結果としてよかった」と語っていた。
また神谷氏は,ゲームとして考えたときに,ただ攻撃するだけではなく,そこに何らかの遊びを加えたいというゲームデザイン論を展開した。「The Wonderful 101」でいえば,大人数のキャラをバラバラに戦わせることも,1か所に集めて強力な攻撃をさせることもできるというように,プレイヤーが選択できるようなゲームデザインを重視しているとのことだ。
ユナイト・モーフのバリエーションに関しては,一般的なゲームセオリーから考えていったという。すなわち,剣であれば威力は劣るけれどもリーチが長い,ハンマーであれば動作は重いけれども一撃必殺と,それぞれ一長一短あり,かつ敵の特徴に合わせて組み合わせていくような設定となっている。
ユナイト・モーフはWii U GamePadの画面に図形を描いて発動させるのだが,タッチスクリーンに直接指で描く以外に,Wii U GamePadのRスティックを使うこともできる。神谷氏によれば,どちらも描きやすいよう調整しているので,プレイヤーの好みで選んで構わないそうだ。
この図形を描くというアイデアもまた,何か遊びを加えられないかと考えた結果生まれたとのこと。単純にアイコンを選ぶよりも,一手間かかることにはなるのだが,「それもまた必殺技ならではの要素と捉えて楽しんでください」と,神谷氏は話していた。
ユナイト・モーフのうち,敵の攻撃を弾いたり,回避したりするときに使う「ユナイト・ガッツ」「ユナイト・スプリング」は,プレイ上必須とも言える重要な存在だ。しかし,この2つは最初から使えるわけではなく,ゲーム内の「ワンダフルマート」にて購入しなければならない。
この点について神谷氏は,重要な存在だからこそ,意図的にそうしたと語った。これは,やり込むほど効果を発揮する細かいテクニックを,チュートリアルで説明しきれないほど仕込んでいるため,「ユナイト・ガッツ」と「ユナイト・スプリング」を最初から使えるようにしておくと,その威力を見落としてしまう恐れがあったからとのこと。
とはいえ,さすがにアイテム購入時にはプレイヤーもきちんと効果の説明を確認するだろうという判断から,最も重要なユナイト・モーフの2つを購入アイテムにしたわけである。
「The Wonderful 101」は,フィギュアが動いているかのような見た目のカジュアルさとは裏腹に,どちらかと言えば失敗を繰り返して攻略法を探るという,昔気質の硬派なゲームである。これは神谷氏自身が1980年代のアーケードゲームに感じたやり応えや手触りを,意識的にも無意識的にも再現している結果だという。
ただし,ゲームオーバーになってもステージの最初に戻されたりすることなく,その場からコンティニューでプレイを再開できるところは,神谷氏の過去作と大きく異なるポイントだ。また,難度「Very Easy」では,プレイヤーがさまざまなアシストを受けられるとのことである。
各ステージでは,いくつものミッションが次々にテンポよく登場し,普通に進んでいるだけでは見つからないような隠し要素も存在するとのこと。
またステージのギミックは,ユナイト・モーフを使って乗り越えることを前提としているが,あまり凝ったものにしてしまうと2周め以降のプレイで作業となってしまいがちになるため,アクション要素を絡めるよう心がけているそうだ。
世界観や設定は,往年の戦隊ものを「中二脳」でアレンジしていった
しかし,ゴレンジャーそのままかというと,もちろんそんなことはなく,たとえばグリーンは毒舌キャラで,神谷氏は「毎日,コイツの近くにいたら腹立つだろうな」とコメント。ほかにもピンクは女王様キャラ,レッドは真面目が行き過ぎた天然キャラ,ブルーは二枚目風だが実は三枚目キャラなど,どのキャラも独自の個性が光っている。
神谷氏は「あるとき,このチームにはまともなヤツが1人もいないことに気付きました。唯一,司令官のネルソンだけがまともに見えますが,彼にも特別なエピソードがあるのでお楽しみに」と笑っていた。
グラフィックスだけを見るとアメコミの影響が強いようにも思える「The Wonderful 101」だが,実際にプレイしてみると,全体的なテイストは前述した戦隊ものの要素に代表されるように,むしろ日本的である。したがって,歴代の戦隊ものや特撮ものを知っている大人ほど,ニヤリとできる部分も多いとのこと。神谷氏は,誰をターゲットにしているか尋ねられたとき,「自分自身です」と答えたそうだ。
無論,これはプレイヤーのことを考えていないということではなく,自分が面白いと信じるものを「これ,面白いでしょ?」と提案するという意味である。
ちなみにヒーローのコスチュームは,当初,一般的な戦隊もののようにデザインが統一されていたとのこと。しかし,絵的な面白みが少なかったために,メインデザイナーと「個性溢れたヒーローにしよう」と,それぞれのヒーロー独自のものを作ることに決めたそうだ。
その結果が,たとえばトイレを頭に被ったヒーローというわけだが,神谷氏は「まさに期待どおり。仮面を付けていれば仲間なのか? ってくらいに個性豊かになりました」と笑う。
なおヒーロー100人は,デザインを神谷氏と上記のデザイナー,設定を神谷氏ともう一人のスタッフが担当し,「中二脳」を駆使しながら,本名や武器の名前,身長体重などを決めていったという。中には,どう見てもただの女子高生といった感じのヒーローもいるが,100人とも“何かのヒーロー”という詳細な設定があり,彼女も何かしらのヒーローなのである。ただ,100人全員がどんな設定なのかは,神谷氏でもさすがに即座には答えられないようだ。
一方,敵となる「ゲスジャーク」のデザインは,土偶や古墳などをモチーフとしているが,神谷氏は「彼らが太古の昔に地球に襲来し,古の文明に影響を与えた……のかな? という,含みを持たせたある種の中二的ロマン」と説明。
また,女幹部を含め,幹部が続々とヒーローの前に立ちふさがるところや,主人公と同等の能力を持つライバルが登場するところなどは,まさに「戦隊ものにおける悪の軍団」の定番を踏襲しているとのこと。ボス戦はシューティングゲームを思わせるものや,野球をモチーフにしたものなどさまざまなギミックが施されており,必見ということだ。
そのほかにも,マフィア梶田から「The Wonderful 101」をプレイしての感想や質問が飛んだので,そこで紹介されたトピックをいくつか紹介しよう。
ストーリーとしては,100人のヒーローが織り成す人間模様も描かれていく。100人もいれば,複雑な人間関係があったり,あるいは敵との因縁があったりと,チーム内は一枚岩ではない。しかし本作では,そんな彼らが地球を危機から救うという共通の目的のもと,一緒に戦うというストーリーが描かれていくのだ。
ゲームオーバー時には,プレイヤーがメインで操作しているキャラの服が破れる演出があるが,神谷氏によれば,受けた攻撃が熱エネルギーに変換され,コスチュームが溶けてしまうのだという。ちなみに黒い下着は特殊素材でできているため,溶けないそうだ。
ちなみにマフィア梶田がチェックしたところによると,女性キャラはきちんと上半身も下着を着けているとのことだ。
ゲームの内容同様,開発中のスタッフのテンションは常に高く,当初の神谷氏の企画を70点とすれば,製品版は100点にも120点にもなる出来だという。とくに本作では,メンバー構成や企画力などのさまざまな要素がうまくかみ合ったとのことで,神谷氏は相当に満足しているようだ。
ボリュームに関しては,かつて神谷氏の公式Twitterでの「買った翌日にエンディングを迎えるゲームが嫌なら,『The Wonderful 101』は薦めない」という発言が,「『The Wonderful 101』は1日でクリアできるゲーム」とネガティブに解釈され,ネットで取りざたされていたが,実際にはそんなことはない模様だ。ちなみにマフィア梶田はテストプレイで5時間ほど遊んだが,1日でのクリアはまず無理だと感じたという。
イベントの最後で神谷氏は,自身が手掛けることが多い新規タイトル,中でも今回の「The Wonderful 101」のような作品は,実際にプレイしてみるまでよく分からないもので,購入するのに勇気がいるはずと語った後,それにもかかわらず会場に集まったファンに向けて感謝を示して,トークイベントを締めくくった。
「The Wonderful 101」公式サイト
- 関連タイトル:
The Wonderful 101
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