テストレポート
「Nexus 6」ファーストインプレッション。大きさとスペックはピカイチのGoogle製6インチファブレットは買いなのか
発売済みのNexus 9は,すでにファーストインプレッションを掲載済みなので,今回はNexus 6に絞ってインプレッションをレポートしよう。
なお,Nexus 6は12月上旬以降の発売を予定しており,直販価格は内蔵ストレージ容量32GBのモデルが7万5170円,同64GBモデルが8万5540円(いずれも税込)となっている。
6インチサイズのファブレットだが,持ちやすさへの配慮はステキ
約6インチというパネルサイズからすると,「持つと重いのではないか」と思うかもしれないが,意外にそうでもない。重心はほぼ中央にあるうえ,背面にあるMotorolaロゴ部分に凹みが設けられており,ちょうどそこに人差し指をもっていくと自然と持ち方が決まる。この持ち方では,体感的に重量を感じにくくなるのだ。
側面から見た場合の形状は,下端側が若干薄くなっているという独特のデザインを採用している。加えて,背面は横方向に大きなカーブを描くラウンドフォルムを採用しており,6インチでも持ちやすく使えるように考えられている。
本体背面(左)。カラーバリエーションは「クラウド ホワイト」と「ダークブルー」の2色を用意。右写真は背面の拡大で,[M]のロゴマーク部分が凹んでいるのが分かるだろう。アウトカメラを囲むように配置された2基のLEDライトは、光らせると,デジタルカメラ用のアクセサリーにあるリングライトのような配光になるようだ |
左右のベゼルが細い正面からのビジュアルは,スマートフォンとしては珍しいものではないが,前面上下端に装備されたステレオスピーカーが,パネル表面から少し出っ張ったデザインとなっているのは変わっている。「Xperia Z3」もステレオスピーカーを備えているが,ファブレットでは標準的な装備となっていくのだろうか。ゲームや動画再生に利用するのであれば,喜ばしい傾向ではある。
本体上下端にあるステレオスピーカーはタッチパネル表面からわずかに出っ張っており,初見ではホームボタンと勘違いする可能性が高い |
本体右側面には[電源/スリープ]ボタンと音量調節ボタンがあり,上側面側にはヘッドフォン端子,下側面側にUSB 2.0(Micro-B)端子が用意されている。いずれの端子もキャップレス防水仕様だ。Nexus 6は,Nexusシリーズとしては初の防水対応端末でもあるのだ。これでmicroSDカードスロットがあれば文句なしといったところだが,Googleはその必要性を認めていないようなのが実に残念だ。
本体上側面。キャップレス防水仕様のヘッドフォン端子とnanoSIMカードスロットがある |
本体下側面。キャップレス防水仕様のUSB 2.0(Micro-B)端子があるだけ。microSDカードスロットはない |
本体左側面(左)には何もなし。本体右側面(右)には,音量調節ボタンと[電源/スリープ]ボタンがある。このボタンもアルミ合金製とのこと |
現行スマートフォンでは最高峰のスペック
一部繰り返しになるが,Nexus 6の5.96インチ有機ELパネルは,画面解像度が1440×2560ドットというスペックを備えている。画素密度は493ppiと非常に高いが,同じ解像度でこれよりもパネルサイズが小さく画素密度の高いスマートフォンもあるので,オンリーワンの特徴というわけではない。
有機ELパネルの視野角は非公開だが,見たところ上下左右170度くらいはあるようだ |
左からGALAXY S5 ACTIVE(5.1インチ),Nexus 6(5.96インチ),iPhone 6 Plus(5.5インチ)。パネルサイズの違いが分かるだろう |
搭載SoC(System-on-a-Chip)は,Qualcomm製の「Snapdragon 805」。CPU動作クロックは最大2.7GHzとなっている。このSoCを採用するスマートフォンは,ほかに「GALAXY Note Edge」があるくらいで,現行製品としてはトップクラスのハイエンドSoCを採用しているわけだ。
ちなみに,SoCの位置は本体下寄り,背面のNexusロゴでは「Ne」あたりにあると思われる。先に掲載したつまみ持ちをすると手の平がSoCのある部分には触れないので,高負荷時の熱を感じにくいようになっているわけだ。
メインメモリ容量は3GBで,内蔵ストレージ容量は32GBまたは64GB。バッテリー容量は3220mAhというスペックとなっている。こちらはハイエンドスマートフォンとしては一般的なレベルといったところか。SoCが優秀だからなのかは分からないが,触ってみると実にレスポンスがいい。画面の切替時のもたつきはまったく感じられなかった。
バッテリー駆動時間は,Wi-Fi利用時で最大9.5時間,LTE利用時は最大10時間とされている。ちなみに急速充電機能も備えており,専用充電器のTurbo chargerで充電する場合,15分程度で60%ほどの充電が可能だという。急速充電対応のスマートフォンは今や目新しいものではないが,ユーザーにとってはあると嬉しい機能であるのは間違いない。
搭載OSはAndroid 5.0(Lollipop)だ。GoogleのリファレンスモデルあるNexusシリーズだけに,メーカー独自アプリもとくにない。素のAndroid 5.0搭載端末だ。OSやいくつかのアプリケーションに「Material Design」と称するフラットなデザインが採用されたといった違いはあるものの,Android 4.x世代と比べて操作や設定面での劇的な変化はないらしい。Android 4.x世代のスマートフォンを使っていた人が触っても,戸惑うことなく使えるのではないだろうか。
ゲームの場合,Android 5.0でアプリケーション実行環境が「ART」(Android Run Time)に変更されたことが,大きなポイントになるかもしれない。詳しくは2014年6月に掲載された開発者イベントのレポート記事を参照してほしいが,端的にいえば,同じスマートフォンでもAndroid 4.xからAndroid 5.0に移行するだけで,アプリケーションの実行効率が上がったり,わずかだがバッテリー駆動時間の延長といった効果が期待できる。
とはいっても,ARTに変わることでアプリケーションの動作に問題が起こる可能性もあるので,Android 5.0搭載端末を買ったり,OSのアップデートでAndroid 5.0に移行したりする前には,使っているアプリケーションの動作検証情報をきちんと確認したほうがいいだろう。
さて,筆者によるテストレポートでは定番のベンチマークテストに始める前に,詳細な仕様や動作状況をシステム情報表示アプリ「CPUーZ」で確認してみた。
CPUコアの動作クロックは,300MHzから2.65GHzの間で変動するようだ。Snapdragon 805は,CPUコアの「Krait 450」を4基集積しているのだが,負荷が低い場合は,CPUコア2基で動作するようになっていた。ちなみに,Webブラウザを起動したり,アプリケーションをダウンロードしたりするといった場合は,2〜4基程度のCPUコアが1.4GHz前後で動作している。2GHzを超えるのはまれで,CPU性能が高い分だけ低い動作クロックでも大抵の処理はこなせてしまうようだ。
ベンチマークアプリケーションの「3DMark」を起動して,計測用コンテンツをダウンロードしている最中にCPU-Zの画面を動画で撮影してみた。CPUコア数や動作クロックの変化が見えて興味深い。
それではベンチマークテストでNexus 6の性能をチェックしてみよう。今回使用したのは,Android版「3DMark」によるグラフィックス性能の計測と,連射測定アプリケーション「ぺしぺしIkina」による連打の応答性計測,それに加えて今回は,メモリ・ストレージ性能テストアプリケーションの「A1 SD Bench」によるテストも行ってみた。似たようなベンチマークアプリケーションはいくつか存在しているのだが,microSDカードでテストを繰り返した結果,同種のアプリケーションとしてはその結果に最も信頼がおけると判断してのものだ。ただ,メモリ性能のテストはまだ結果に疑問が残る点もあるため,今回は参考値としている。
まずは3DMarkだが,「Ice Storm Unlimited」プリセットのスコアは「23066」で,スマートフォンとしては最高クラスの結果を記録した。同じSoCを搭載するはずのGALAXY Note Edgeが同プリセットで「15312」程度だったのに比べると,とくにGraphics test 1と2が格段に高い。アプリケーション実行環境がARTに変わった効果だろうか?
「Tegra K1」を搭載する「SHIELD Tablet」には及ばないものの,あちらはタブレット。スマートフォンとしてはトップクラスといって間違いない。
Ice Storm Extreme(左)とIce Storm Unlimited(右)のスコア(クリックすると詳細スコアを表示します)。Physics testがいずれも好成績だ |
新テストのA1 SD Benchだが,通常の計測モードでは途中でエラーが出たため,「Setting」から「Ad
結果だが,RAM copyはかなり速く,Internal memory Writeもやや高速。ただし,Internal memory Readがなぜか低い――というよりもGALAXY S5 ACTIVEが異常に速い――となっている。
Nexus 6 | GALAXY S5 ACTIVE | |
---|---|---|
RAM copy | 8369.77MB/s | 6787.69MB/s |
Internal memory Read | 56.23MB/s | 171.09MB/s |
Internal memory Write | 62.77MB/s | 57.91MB/s |
体感的にもNexus 6の動作は,GALAXY S5 ACTIVEよりも軽く、かなりサクサクしたものであった。これはメインメモリへのアクセス性能差が反映されているのではないだろうかと筆者は考えている。
価格は高いがゲーム用としても優秀なスマートフォン
まとめに入ろう。Google製であるNexusシリーズは,リファンレンス端末として扱われることが多く,動作検証済み端末としてNexusシリーズを挙げているゲームも多い。Nexus 6もAndroid 5.0のリファレンス端末として扱われる可能性は高く,自分のAndroidスマートフォンでゲームが動くかどうかという心配をしたくないのであれば,Nexus 6は有力な選択肢となるだろう。
ベンチマークテストで見る限り,グラフィックス性能,タッチのレスポンスはともに優秀だ。スマートフォンの機種変更を考えているのであれば,iPhone 6やXperia Z3ではなく,Nexus 6を選ぶというのも悪くないと思われる。
内蔵ストレージ32GBモデルでも約7万5000円という価格は,従来のNexusシリーズのイメージからすると,やはり高いと言わざるを得ない。SIMロックフリーのiPhone 6 Plusが内蔵ストレージ16GBモデルで7万9800円(税別)なので,スペックを考えれば妥当な値段ではあるのだが……。
先述したとおり,Nexus 6はY!mobileでの取り扱いも予定されているので,そちらなら分割払いで入手することもできるかもしれない。サイズの問題もあるので,Nexus 6の購入を検討している人は,店頭で実機や分割購入金額を確認してみることをお勧めする。そのうえで,サイズや価格が受け入れられるというならば,Nexus 6はゲーム用途でも優れたスマートフォンとなるだろう。
●Nexus 6の主なスペック
- OS:Android 5.0(Lollipop)
- ディスプレイパネル:5.96インチ有機EL,解像度1440×2560ドット(493ppi),「Gorilla Glass 3採用」
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 805」(クアッドCPUコア「Krait 450」+「Adreno 420」,最大CPU動作クロック2.7GHz)
- メインメモリ容量:3GB
- ストレージ:内蔵(32GBもしくは64GB)
- アウトカメラ:有効画素数約1300万画素(オートフォーカス対応,LEDスピードライト内蔵,開放F値2.4,4K/30Hzビデオ撮影対応)
- インカメラ:有効画素数約200万画素(開放F値2.4)
- バッテリー容量:3220mAh
- バッテリー駆動時間:待ち受け時最大250時間(※「画面を常に表示」機能有効の場合),待ち受け時最大330時間(※「画面を常に表示」機能無効の場合),Wi-Fi利用時最大9.5時間,LTE接続時最大10時間,通話時最大30時間,動画再生時最大10時間
- SIMスロット:Nano SIM
- 対応通信規格(北米モデル):GSM 850/900/1800/1900MHz,CDMA Band Class 0/1/10,WCDMA Band 1/2/4/5/8,LTE Band 2/3/4/5/7/12/13/17/25/26,LTE-A DL CA Band:B2-B13/B2-B17/B2-29/B4-B5/B4-B13/B4-B17/B4-B29
- 対応通信規格(グローバルモデル):GSM 850/900/1800/1900MHz,CDMA非対応,WCDMA Band 1/2/4/5/8/9/19,LTE Band 1/3/5/7/8/9/19/20/28/41,LTE-A DL CA Band:B3-B5,B3-B8
- 無線LAN対応:IEEE 802.11ac(2x2 MIMO)
- Bluetooth対応:4.1(NFC対応)
- 搭載センサー:GPS,周辺光,ジャイロ,加速度,磁力,気圧
- 本体サイズ:82.98(W)×159.26(D)×10.06(H)mm
- 本体重量:約184g
- そのほかの搭載インタフェース:USB Micro-B(USB 2.0)3.5mmミニピン,デュアルスピーカー(「HTC BoomSound」機能搭載))
GoogleのNexus 6製品情報ページ
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