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[GDC 2015]「飛び出す絵本」をゲーム画面に再現するまでの努力。「TENGAMI」のグラフィックスがどのように開発されたのかをクリエイターが解説
和紙で作られた「飛び出す絵本」のようなグラフィックスが特徴で,プレイヤーは絵本のページをめくるようにゲームを進めていく。
主人公は,散ってしまった花びらを探すために,仕掛けがたくさん組み込まれた世界を冒険していくという内容だ。
Schneidereit氏はドイツ生まれで,長らく日本のゲームメーカーで働いたあと,イギリスのRareに勤め,その後,Nyamyamを立ち上げたという。少人数のメーカーだが,何人かの日本人スタッフもいるとのこと。
Schneidereit氏によれば,彼らの最初の作品のテーマを日本にすること,そして「飛び出す絵本」をモチーフにすることは初めから決めていたという。プレイヤーに懐かしさを感じさせるとともに,これまでになかったような作品を目指したわけだが,どうやって「飛び出す絵本」をゲームのグラフィックスに落とし込むのかには,かなり苦労したようだ。一つ一つ手間をかければ作れるかもしれないが,上にも書いたようにNyamyamは開発者の人数が少ないため,できる限りシステマティックにグラフィックスを作成したいという希望もあった。
というわけで何か月にもわたって,たくさんのペーパークラフトを作ってみたというSchneidereit氏。しかし,「飛び出す絵本」とペーパークラフトは同じ素材とはいえかなり異なるため,やがて,この方向はちょっと間違っていると気がついた。
また,木の生え方や水面がどうなるのかを検討するために,CGでいくつかの3Dモデルを作成し,合わせてアートワークなども多数描いたが,「飛び出す絵本」をゲーム画面に再現する方法は見つからないままだったという。2012年に制作が発表されて以来,しばらく本作の情報が出てこなかった背景には,こうした理由があったのかもしれない。
テストのために制作したペーパーワーク |
こちらはCGで作った3Dモデル。実際のゲーム画面とは異なり,動かすことはできない |
転機は,開発を始めてから約1年後,1冊の本に出会ったことだ。2010年に出版されたDuncan Birmingham氏の「Pop-Up Design and Paper Mechanics」には,「飛び出す絵本」の仕組みや機能などが細かく説明されており,この原理をグラフィックスツールに援用することで,ようやく「飛び出す絵本」をゲーム上に再現することができたという。ちなみに,ネットで調べると欧米では類似の書籍が何冊も出ており,向こうでは「飛び出す絵本」が一つの趣味として楽しまれていることが分かる。
ここで制作過程を収録した何本かのムービーが公開された。掲載した写真にもあるとおり,その大雑把な仕組みは,基本となる紙の上にさまざまな形状のオブジェクトを組み合わせるというものだ。
ページをめくるたびに背景が変わり,驚くほど複雑な建物が飛び出したり,前のページとはまったく違う世界が広がったりする。実際のゲーム画面を見れば,ああ,きれいだなあ,ぐらいで終わってしまいそうだが,その背後には長期間の模索があったわけで,そういう話を聞けるところがGDCの面白いところだ。彼らの次回作にも期待したい。
「TENGAMI」日本語公式サイト
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