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BenQ ZOWIE「RL2460S」レビュー。新しくなった「格闘ゲーマー向けディスプレイ」は今回もユーザーの鉄板となるか
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印刷2019/02/04 00:00

レビュー

新しくなった「格闘ゲーマー向けディスプレイ」は今回もユーザーの鉄板となるか

BenQ ZOWIE RL2460S

Text by 米田 聡


 BenQ ZOWIE(以下,ZOWIE)ブランドの格闘ゲーマー向けディスプレイ「RL2460S」が,2018年末に発売となった。2014年に登場した格闘ゲーマー向けディスプレイ「RL2460HT」,そしてそのZOWIEリネーム版となる「RL2460」の後継となるマイナーチェンジモデルだ。

RL2460S
メーカー:BenQ
問い合わせ先:お問い合わせ窓口
実勢価格:2万5000〜2万7000円程度(※2019年2月4日現在)
画像集 No.002のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「RL2460S」レビュー。新しくなった「格闘ゲーマー向けディスプレイ」は今回もユーザーの鉄板となるか

 4GamerではかつてRL2460HTの評価を行ったことがあるが,その後継製品はどのあたりが格闘ゲーム向けなのか。そして,ゲーマー向け液晶ディスプレイとしての基本性能はどの程度か。
 格闘ゲームの60fps動作に最適化することで,「ただの」エントリーゲーマー向けディスプレイとは一線を画し,結果として息が長くなっているRLシリーズの最新モデルをレポートしたい。


新たに左右回転(スイーベル)が可能になったRL2460S


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 冒頭でマイナーチェンジモデルとお伝えしたので想像はつくと思うが,RL2460Sではそのデザインやサイズ感で,RL2460と比べて大きく変わっている部分はない。24インチ,解像度1920×1080ドット,最大垂直リフレッシュレート76Hz,中間調(gray-to-gray)応答速度最小1ms,標準応答速度5msのTN型液晶パネルを搭載し,表面をノングレア(非光沢)加工してあるという基本仕様は完全に同じだ。
 おそらくは同じパネルか,同じ系統で新リビジョンのパネルを採用していると思われる。

 そのほかの主なスペックは下にまとめたので,参考にしてもらえればと思う。

●RL2460Sの主なスペック
  • パネル:24インチ,TN方式,ノングレア(非光沢)
  • バックライト:LED
  • パネル解像度:1920×1080ドット
  • 最大垂直リフレッシュレート:76Hz(@1920×1080ドット)
  • 輝度(通常):250cd/m2
  • 表示色:約1677万色
  • コントラスト比:1000:1
  • 視野角:左右170度,上下160度
  • 中間調応答速度:最小1ms(※標準応答速度は5ms)
  • フリッカーフリー:対応
  • 接続インタフェース:HDMI 1.4入力×2,HDMI出力×1,DVI-D入力×1,アナログRGB(D-Sub 15ピン)入力×1,3.5mmミニピンライン入力×1,3.5mmミニピンヘッドフォン出力×1
  • チルト(上下回転):対応(−5〜+15度)
  • スイーベル(左右回転):対応(−45〜+45度)
  • ピボット(縦回転):対応(90度)
  • 高さ調整:上下110mm
  • 消費電力:40W(通常時),0.5W以下(スタンバイ時)
  • 公称本体サイズ:579(W)×213(D)×392〜502(H)mm
  • 公称本体重量:5.2kg
  • 保証期間:3年(※パネルとバックライトは1年)

製品ボックスから取り出したRL2460S。本体にスタンドが付いた状態になっていた
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 RL2460Sは,本体とスタンド,スタンド台座からなる3ピース構成だ。ただし,製品ボックスから取り出した時点で本体にスタンドは取り付け済みなので,100×100mm仕様のVESAマウンタでディスプレイアームに取り付けるというのでなければ,2ピース構成だと考えてしまっても構わない。
 製品ボックスから本体(とスタンド)を取り出して平らな場所へ置き,スタンドに対して台座を填め込み,蝶ネジを回せば組み立て完了だ。工具不要なので,場所さえ確保できれば造作もないだろう。

台座には標準で蝶ネジが付いているので,ここをスタンド側の穴と合わせるようにして差し込み,蝶ネジを回せば固定完了だ
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 接続インタフェースはHDMI 1.4 Type A×3,Dual-Link DVD-D×1,アナログRGB(D-Sub 15ピン),3.5mmステレオミニ×2(ヘッドフォン出力およびライン入力用)および3ピン電源。このうち最もユニークなのは,3系統あるHDMI Type A端子のうち1系統がパススルー出力になっているところだろう。

「1台のゲーム機で2画面対戦」のイメージ(出典:BenQ)
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 ちなみにBenQはオリジナルモデルであるRL2460HTの発売当初,これを「表示遅延を気にすることなく配信に利用できる」と訴求していたのだが(関連記事),すぐに「2枚用意すれば,1台のゲーム機を使って2画面対戦が可能」と言い換えた経緯がある。もちろんRL2460Sにおいても訴求は「1台のゲーム機で2画面対戦」のほうだ。

本体正面向かって左側にビデオ入出力系,右側にアナログサウンド入出力と電源の端子が,いずれも下を向いて並ぶ。刻印があるので,どれが出力かは見て判断できるだろう。なお,ライン入力はあるが,スピーカーは搭載していない
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 製品ボックスにはHDMIケーブルとアナログRGBケーブル,電源ケーブルが付属しており,スタンドの根元付近にあるケーブルマネジメント機構を使うことである程度までまとめることができる。

付属のケーブル一式(左)と,樹脂製部品よる簡易的なケーブルマネジメント機構(右)
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本体側の点とスタンド側の目盛りを活用することで高さ調整の再現を容易に行えるようになっている。最近は他社がマネしだしたが,このアイデアのオリジナルはZOWIEだ
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 組み立て,配線も終わり,机上に立てた状態で本体サイズは実測約580(W)×210(D)×400〜510(H)mm。つまり,110mmの範囲で無段階に高さ調整が可能ということだ。
 スタンドの側面には5mm刻みで等間隔に並んだ23段階の目盛りがある。BenQはこれを「Scale Design」(スケールデザイン)と呼んでいるが,仮にどこかへ持って行くときは,どの目盛りのところに高さを調整したか分かるようにスマーフォンで撮影するなどしておけば,すぐにベターな高さへ再調整を行えるというわけである。

高さ自体は約110mmの範囲で自由に調整できる
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 RL2460Sが上15度,下5度の上下回転(チルト)と90度の縦回転(ピボット)に対応するのは既存のRL2460シリーズと同じ。ただしRL2460Sでは新たに左右各45度の範囲で左右回転(スイーベル)が可能になっており,ここがマイナーチェンジモデルの大きな特徴と紹介することができる。

上下回転(左,中央)と縦回転(右)の例。上下回転時に角度の目安となる目盛りがないのと,縦回転時に0度と90度が分かるクリック感的なものがないのはちょっと残念だ
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RS2460Sの新要素である左右回転の例。左は0度(=正面)から見たカットで,右は同じ位置から45度回転させた状態のカットとなる
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額縁部に寄ったところ
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 太く,マットな額縁デザインを採用しているのも,もちろん従来同様だ。額縁のサイズは実測で上部が約25mm,左右が約23mmとなっており,さらに液晶パネルから約2mmせり出したデザインになっている。
 最近のゲーマー向けディスプレイではいわゆる狭額縁化がトレンドになっているが,画面と背景をはっきり分割する目的で太く,画面の光が額縁で反射しづらくなるようマットにしているというのがZOWIEの主張で,そこは変わっていないわけだ。
 筆者レベルだと狭額縁のディスプレイとの間でプレイ感が異なる印象は受けないが,このあたりはプロの格闘ゲーマーとは違うのかもしれない。

本体正面向かって右手側の側面に並ぶ操作ボタン群。いちばん下が電源ボタンでLEDが埋め込んである。どれかを押すと写真のようにOSDメニューが立ち上がり,それぞれのボタンが何の機能に対応しているかは示してくれるが,ボタンはただ縦に並んでいるだけなので使いづらい。しかも硬いため,押すたびにディスプレイ本体が動いて傾く
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 なお,RL2460Sの操作系は本体の額縁部,正面向かって右側面のところに並んでいる。この仕様も従来同様なのだが,それゆえに使い勝手は悪い意味で「昔ながら」となっており,スイッチの“誤爆”は多発する。お世辞にもOSDを操作しやすいとは言い難い。
 しかもスイッチが硬いのが厄介で,OSDを操作すると画面が傾くというおまけまで付いてきてしまう。

 XLシリーズで採用している「手元で操作できるOSDコントローラ」こと「S.Switch」はコストの関係で付属させられないにしても,せめて他社が一部製品で採用している背面スティックのような,操作性を向上させる工夫のようなものは欲しかったところだ。


彩度の調節が可能になったRL2460S。「格闘」ゲーム向けのプリセットはゲームを選ぶ


 繰り返すが,RL2460SはRL2460シリーズのマイナーチェンジモデルだ。なので,ZOWIEブランドで定番となっている以下の5機能はRL2460Sでも利用できる。

  1. Black eQualizer:ガンマ値などを内部的に変更して暗部を浮き上がらせ,FPSやTPSにおける暗所でも敵などを見やすくする機能。設定値は0〜20の範囲で1刻み
  2. インスタントモード:ディスプレイ内部における映像処理回路の処理を一部バイパスして遅延を低減する機能。他社のディスプレイで「パススルーモード」「ゲームモード」などと言われる機能と同じである。選択肢は「オン」「オフ」の2つ
  3. AMA(Advanced Motion Accelerator):液晶パネルの駆動電圧を高めて液晶パネルの応答速度を上げるオーバードライブ機能をZOWIEではAMAと呼んでいる。選択肢は「オフ」「高」「プレミアム」の3段階だ
  4. ブルーライト低減:青系の光を抑えて目の疲れを防ぐとされる機能で,ゲーム用途には関係ないと言ってしまっていい。0〜10の11段階で強度を調節できる
  5. 画面モード:表示画面のスケールを変えて他のサイズのディスプレイパネルをエミュレートする機能が「画面モード」だ。大会規定のディスプレイサイズに切り替えてトレーニングを行う用途が想定されている

 なお,ZOWIEのゲーマー向けディスプレイはインスタントモードをオンにした状態でも画面モードの設定が利用できるが,これはRL2460Sでも同様だ。昨今,大会の現場では23.5〜24.5インチクラスの画面サイズで1920×1080ドットという環境が標準的になっているため,いまとなってはあまり使う機能ではないかもしれないが,機能として併用可能なことは押さえておきたい。

RL2460Sにおける画面モードの選択肢は「17”(4:3)」「19”(4:3)」「19”W(16:10)」「21.5”(16:9)」「22”W(16:10)」「23”W(16:9)」の6とおり
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 ZOWIEは画質設定のプリセットのことを「画像モード」と呼ぶが,その選択肢は「標準」「動画」「写真」「sRGB」「エコ」という非ゲーム向けのものに「RTS1」「RTS2」「格闘」「FPS」を加えた計9プリセットと,これらをベースにエンドユーザーがカスタマイズを行ったうえで保存できる「ゲーム1」「ゲーム2」「ゲーム3」の3つがある。
 従来のRL2460シリーズにはBattlefieldシリーズ専用と思しき「Bf」というプリセットもあったのだが,RL2460Sだとそれがないので,これも“刷新された要素”ということになる。

プリセットの画像モード一覧
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 格闘ゲーマー向けディスプレイたるRL2460Sで最も重要なのは格闘プリセットだが,こちらは従来製品同様,米国のプロ格闘ゲーマーであるJustin Wong(ジャスティン・ウォン)氏が監修したものになっている。いわく,画面からキャラクターを浮かび上がらせることができ,見やすくなっているとのことだ。
 というわけで,実際に「ストリートファイターV」の画面を表示させ,プリセットを変えながら撮影した結果を下に並べてみた。

ストリートファイターVは従来の格闘ゲームに比べると落ち着いた渋めの色合いなので,ともするとキャラクターが背景に沈みがちだ。格闘モードはキャラクターが浮かび上がる画質プリセットとされているが,全体として,ストリートファイターVでは狙った効果が出ていないように感じられる。なお,これらのサンプルの撮影にはパナソニック製デジタルカメラ「DMC-GX8」を用い,マニュアルの設定で,絞り,シャッタースピードをすべて揃えている
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 下段中央の格闘プリセットを見ても,キャラクターが特段浮かび上がって見えるかというと,正直,微妙だと思った人は多いのではないだろうか。個人的にはむしろ写真プリセットのほうが見やすい。
 ストリートファイターVの絵は「ストリートファイターIV」やほかの格闘ゲームと比べると落ち着いた色合いになっているので,それが影響しているようにも思う。

 ZOWIEは格闘プリセットをストリートファイターIVに最適化しているとしているので,ここを更新できていないのが裏目に出て,狙いどおりの効果が出ていない可能性がある。Bfプリセットを外した代わりに“SFV”プリセット的なものを用意すべきだったのではなかろうか。

 ちなみに,RTS1とRTS2の両プリセット間にある違いはBlack eQualizerの設定値だけで,前者は5,後者は15となっている。RTS2のほうが少し白っぽく見えるのはそのためだ。
 FPSプリセットのBlack eQualizerは5,格闘はBlack eQualizerは0で無効となる設定になっていた。

RL2460SのOSDメニューでは,画像モードのプリセットを構成する設定項目の1つという位置づけだが,すべてのプリセットで設定値は標準の10で,変更されていなかった
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 さて,そんな「見栄え」のカスタマイズ項目として,「Color Vibrance」という設定が追加となったのも,RL2460シリーズの新作となるRL2460Sのトピックである。日本語のOSDメニュー上だと項目名は「色の鮮明さ」となっており,強度は0から20までの21段階で調節できる。
 これは一般的に「彩度」と呼ばれることが多い設定で,0にするとモノクロに,20にすると色が不自然に強調されたような見た目になる。どの画像モードでも色の鮮明さのデフォルトは10だった。

ディスプレイやテレビでいう彩度の設定にあたるのが「色の鮮やかさ」の設定だ。0にするとモノクロに,20にすると不自然に色が強調された画面になる。デフォルトは中間の10だ
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 いろいろ試した感じでは,仮にストリートファイターVで使うのであれば,格闘プリセットをたたき台にして,コントラストと色の鮮やかさをそれぞれ若干上げ気味にすることで,相対的に地味な色合いの背景にキャラクターが沈み込むのを抑えることができる印象がある。このあたりを弄って,ゲーム1〜3のプリセットに登録してみることを勧めたい。


スケール変換を行う「画面モード」を有効にしても低遅延


 さて,格闘ゲームでももちろん重要となる表示遅延の測定結果をまとめてみたい。
 4Gamerではディスプレイデバイスの表示および操作遅延を測定するために「4Gamer Input and Display Latency Checker」というシステムを構築している。その概要は2017年12月28日掲載の記事を参考にしてほしいが,簡単に言えば,「マウスクリックからディスプレイに変化が現れるまで」の時間を1ms未満の精度で計測するためのものである。

 それに,マウスクリックを検出して画面中央に白い四角を描く,筆者自作のWindows用ツール「Display Latency Tester」を組み合わせる。「Display Latency Testerがマウスクリックから白い四角を描くまでの時間」を4Gamer Input and Display Latency Checkerで1ターン100回計測し,測定された時間を頻度解析することにより,ディスプレイの典型的な表示遅延比較を行えるというわけだ。

 ただし,このシステムで測定対象となる「遅延」にはPC内部で生じる操作遅延なども含むまれるため,ディスプレイの表示遅延を調べるためには同条件で測定した比較対象が必要になる。頻度解析したデータを比較対象と比べることで,比較対象と比べて表示遅延が小さい,あるいは大きいと判断できるわけである。

 その比較対象としては,4Gamerのリファレンス機でもあるZOWIE製ディスプレイ「XL2430T」を今回も用いる。XL2430T側の設定は画像モードを「FPS1」としたうえでインスタントモードをオン,AMAをプレミアムとした。
 一方,本稿の主役であるRL2460Sでは画像モードとして,FPSではなく格闘を選択した。横並びであればFPSを選ぶべきなのだが,格闘ゲーマー向けディスプレイという位置づけなので,あえて選んだ次第だ。それ以外はXL2430Tと同じで,インスタントモードがオン,AMAがプレミアムとなる。

 というわけで,垂直リフレッシュレート60Hz,Vsync有効時の解析結果がグラフ1だ。縦軸は測定された頻度,横軸は測定された時間を示す。最も測定頻度の高い遅延が,当該テスト対象における典型的な表示遅延という理解でいい。

 さて,グラフを見ると,RL2460SとXL2430Tはいずれも最初のピークが18〜20ms付近,2回めのピークが32〜34ms付近に出ていることが分かると思う。
 リフレッシュレート60Hzでは60分の1秒,つまり約16.7ms(ミリ秒)に1回のタイミングで画面が更新される。なので最初のピークがマウスクリック後,最も速く画面が更新されたフレームで,2つめのピークはその次のフレームを意味している。
 両製品を比較すると2つのピークが同じところに出ているので,格闘ゲームにおける基本設定となるVsync有効時において,両製品の遅延に違いはないと言ってしまってよさそうだ。

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 続いて垂直リフレッシュレート60Hz,Vsync無効時のテスト結果がグラフ2となる。
 RL2460Sのピークは18msで,XL2730Tのピークは16ms。2msだと測定ブレの可能性が否定できないので,「Vsync無効時の遅延はひょっとするとRL2460Sのほうが若干大きいかもしれないが,おそらく同じ」と見ておくべきだろう。垂直リフレッシュレート60Hz時に16〜18msで表示ということは,マウスをクリックした次のフレームでは表示がなされるという意味なので,極めて高速と言える。

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 さらに,画面のスケール変換が入る画面モード利用時におけるRL2460Sの表示遅延測定結果もお伝えしたい。グラフ3はVsync有効時のもので,若干のブレこそあるものの,2か所,ほぼ同じところにブレが出ていると言っていいだろう。画面モードを変更しようがしまいが,遅延に有意な違いが生じていないのは目を惹くところで,画面モードの変更による遅延面のペナルティは無視していいということになる。

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 続いてグラフ4はVsync無効時におけるテスト結果である。
 アスペクト比19:10の19インチ設定(=19”W)でそれ以外と比べて遅延が約4ms小さくなると同時に32ms周辺にも小さな山が出ている。前述のとおり垂直リフレッシュレート60Hzは1フレームあたり約16.7msなので,32ms周辺にある小さな山は最初のピークから1フレーム遅れのフレームが検出されたのだろう。一方,約4ms速く出ている最初のピークは,16.7msという1フレームあたりの時間と比較するとブレの可能性を否定できない。
 それ以外のテスト条件ではおおむねどの設定でも同じところにピークが表れているので,全体として遅延時間の有意な違いはないという理解でいいはずだ。

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 遅延に関してはもう1つ,遅延なしとされるHDMIパススルー出力で本当に遅延がないのかも簡易的に調べてみることにした。
 今回のテストにあたって2台めのRL2460Sは用意できなかったため,RL2460Sのパススルー出力とXL2430Tをつなぎ,そのうえでPCから「LCD Delay Checker」(Version 1.4)を実行。その様子を,ハイスピード撮影対応のソニー製コンパクトデジタルカメラ「RX100IV」で960fpsで撮影して比較することにした。

 RL2460SとXL2430Tの設定は先ほどと同じ。テスト結果は下に示したビデオのとおりで,コマ送りしてもらうと分かるように,遅延はないと断言できる。安心して2画面出力を使えるという理解でいい。


 なお,960fpsでハイスピード撮影した上のビデオを再生すると分かるが,RL2460Sでは画面のチラツキが出ていない。最近では珍しくないが,RL2460SもフリッカーフリーのLEDバックライトを採用しているため,1秒あたり960フレームという高速度で撮影しても認識できるようなチラツキは出ていないわけである。


液晶パネルの応答速度も問題なし


 冒頭でも述べたとおり,RL2460Sが採用している液晶パネルはTN方式だ。画面の見え方は下に写真で示したとおりで,まさにTN方式といったところだが,ノングレアで映り込みが少なく,ゲームに集中しやすいディスプレイと言っていい。

高級TNパネルを採用するディスプレイらしく,正面から見たときの違和感はほぼない。斜めにすると,TNパネルの特性,そしてノングレア加工の特性から,色は暗く黄色くなっていく
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 TN方式のメリットは1にも2にもパネルレベルの応答速度が速いところにある。さらに前述したとおり,RL2460Sでは応答速度を引き上げるためにAMA機能を利用可能だ。
 そこで今回は,「画面のリフレッシュに合わせて点滅する白い四角」を描く自作ツールを実行し,それを光学センサーで検出し光学センサーの出力をRigol Technologies製のオシロスコープ「DS1054Z」で測定することにより,AMA設定による応答速度の違いを検証してみることにした。

 テスト時の垂直リフレッシュレート設定は60Hzで統一するが,まず下に示したのはAMA無効時の測定結果だ。横軸が時間,縦軸は光学センサーの出力電圧で,画面が明るいほど出力電圧は高くなる。点滅する四角形を画面に描くため,光学センサーの出力電圧は16.7ms周期で高くなったり低くなったりを繰り返すわけだが,それはスクリーンショット上のグラフ波形が示している。

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 波形の立ち上がりは液晶が暗→明に切り替わるときの反応を示し,線の立ち下がりは明→暗に切り替わる反応を示す。スクリーンショットの下部にある「Rise=5.200ms」とあるのが暗→明の実測値で,要するに約5.2ms前後かかるというわけだ。
 本稿の序盤でお伝えしているとおり,RL2460Sの応答速度は中間調が最短で1msな一方,標準では5msなので,後者のスペックどおりな結果を観測できたことになる。

 もう1つ注目してほしいのが,やはり下部にある「Max=1.74V」という表示で,これは画面が最も明るくなったときのセンサー出力電圧だ。この数字がAMA無効時における明るさの最大ということになる。

 続いて,下に示したスクリーンショットはAMAを高に設定したときのテスト結果だ。一見して分かるように,波形の山が高くなっている。Maxの値も2.44Vに上がっているが,これは「AMA無効時と比べて光学センサーの出力電圧が上がり,『白い四角が描かれたときの画面がAMA無効時よりも明るくなった』」ことを意味している。

 とはいえ,AMAを無効から高に切り換えてもバックライトの輝度が高くなるわけではない。ここで輝度が高くなったのは「液晶の透過度」が上がったためだと考えるべきだろう。つまり,オーバードライブによって,最も明るくなったときの液晶の開度が上がった(=光をよく通すようになった)のである。
 Riseの値が4.45msとなった点も押さえておきたい。液晶パネルの反応も,オーバードライブによって約0.75msの高速化を果たしたわけだ。

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 最後はAMAをプレミアムにした状態だが,Max値は2.55Vにまで上がった。より強力なオーバードライブ動作となり,Rise値も3.95msまで小さくなっている。

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 ただ,ならAMA設定はプレミアム一択かというと,残念ながら話はそう単純ではない。
 下に示したのは,EIZOが公開している「Motion Blur Checker(Beta)」を利用して,4Gamerのロゴ壁紙を1フレーム単位で横スクロールさせ,その様子を前出のRX100IVから960fpsのハイスピード撮影したビデオだ。AMA無効時と比べて高が,さらにプレミアムのほうがロゴの横スクロールはシャープになるが,プレミアムだとロゴの縁がやや荒れて見えてしまう。


 実のところ,AMAプレミアムで映像が若干荒れるのはRL2460S固有の弱点ではなく,AMA伝統のトレードオフだったりする。画質と液晶パネル応答速度のバランスを考えると,AMA設定は基本,高がベターではないかと筆者は考えている。


垂直リフレッシュレート60Hzを求めるゲーマーにはお勧めできる,手堅い選択肢


製品ボックス。ゲーム機でのeスポーツ向けディスプレイ(Monitor for Console e-Sports)という位置づけなのが分かる
画像集 No.049のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「RL2460S」レビュー。新しくなった「格闘ゲーマー向けディスプレイ」は今回もユーザーの鉄板となるか
 以上,RL2460Sを見てきた。RL2460という,ほぼ完成された製品シリーズのマイナーチェンジモデルということで,対応可能な垂直最大リフレッシュレートを除けば,上位モデルのXLシリーズと何ら遜色のない遅延かつ応答速度のディスプレイと断言していい。HDMIパススルー出力も謳い文句どおりに機能してくれるので,格闘ゲームを中心に,ゲーム機と組み合わせて使える高速なディスプレイとして,RL2460Sは極めて手堅い選択肢だと言える。

画像集 No.050のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「RL2460S」レビュー。新しくなった「格闘ゲーマー向けディスプレイ」は今回もユーザーの鉄板となるか

 ただ,それだけに残念なのは,OSDメニューの操作系,そして格闘ゲーム向け画像モードが古いままというところだ。今回,いくつか新要素が入っていて,それ自体は歓迎できるのだが,ディスプレイとしての基本的な使い勝手,そして格闘ゲーマー向けディスプレイとしての使い勝手に味噌が付いているのは,本当に惜しいと言わざるを得ない。

 というわけで,RL2460Sは,よくも悪くもRL2460シリーズの新型である。垂直リフレッシュレート60Hzに特化したゲーム用ディスプレイを探しているのであれば,間違いなく本命視できる存在だ。

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BenQのRL2460S製品情報ページ

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    XL,XR,RL

  • 関連タイトル:

    ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)

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