インタビュー
「FFXIV」のドマ式麻雀でレート2200を達成した山田史佳プロに聞く,麻雀の魅力とプロの世界
横方向に広いFFXIV
4Gamer:
ドマ式麻雀はFFXIVのアカウントと紐付いているので,いわゆる「捨てアカで適当に遊んで,ヘコんだら捨てる」みたいな雑な打ち方ができないのも重要な特徴だと思います。一局一局を丁寧に打たねばならない。
山田プロ:
その点については,「自分のキャラクター」で打っているからこそ,僕はレーティング2200に到達できたのかなと思っています。
麻雀のプロとして称号の獲得を目指すのはさておいて,称号を得たあとって,もうその先の報酬がないんですよね。2200に達しても何があるというわけではない(笑)。
でも自分のキャラクターが頑張ってくれている姿って嬉しいですし,「この世界に生きているキャラクター」として麻雀の高みを目指すしかないという気持ちになっちゃうんですよ。まあ,僕は麻雀バカなので,特殊な気持ちかもしれないですが。
4Gamer:
逆に,レートが下がり切っちゃうと,それはそれで辛いものがありますよね。キャラデリしてレートを戻すとかちょっとできませんし。
山田プロ:
そうですね。レートが下がっちゃったからもうドマ式は打たない,ということになると,これはこれで寂しいです。このあたり,まず最初の目標はレート1600だと思うんですが,多くの人がここを目指し続けられるようアシストがあるといいなと。そのほうがもっとみんなが楽しめるんじゃないかなと感じますね。
4Gamer:
あるいは,シーズン制のような形で,一定期間ごとにレーティングをリセットする……とかですね。
山田プロ:
それもアリですね。でも,リセットされたらされたで,また上を目指すんだろうなあ……FFXIVのPvPもシーズンでリセットされますが,PvP愛好家は毎回上を目指して再スタートしていますし。
4Gamer:
山田プロはPvPはプレイされているんですか?
山田プロ:
僕はやっていないです。あれはアクション要素が強すぎて,僕の実力ではまだまだ及ばないですね。でもレイドは大好きなんですよ。最新レイドは絶対に最先端でこなしたいし,今ある“絶アルテマ”もクリアしたくてずっとやっています。PvPだと駆け引きの要素が強いじゃないですか。そこは麻雀も同じなんですけど,ちょっとそこまで割く能力がなくて(苦笑)。それに,PvPを始めると,きっとのめり込むとは思うんですが……何かこぼれそうな気がします(笑)。なので,ウィークリーボーナスをもらうためにPvPルーレットくらいはやりますが,それくらいですね。
4Gamer:
FFXIVは横方向への広がりがすごくて,これを全部やるのは無理だな,という感覚は強いですね。
FFXIVは麻雀が来るずっと前から,いろんな人が楽しめるコンテンツが,一種の「入口」として用意されてきたと思います。
PvPは,対人ガチ勢が楽しめるコンテンツ。高難度レイドは,いわばマスゲーム的なものを極めたい人たち向け。RPGを純粋に楽しみたい人には,ストーリー。それ以外にもキャラクターの写真を撮るとか,FFXIV世界で暮らすとか,そういう選択肢もあって。そこに今回,麻雀が加わったのかなと。
なので麻雀がやりたくてFFXIVを始めたという人が結構いるということにも,さして驚きはないです。その上で,全体として見たときの入口の広さってものすごいと思います。なにせ僕,280日遊んでいますが,PvPはあまりやっていないわけですから。
4Gamer:
とくにPvPを忌避しているわけではないのに,ですよね。
山田プロ:
ええ。ほかのジョブのレベリングもあるし,ギャザラーに,クラフターもありますから,PvPにまで手がまわらないんですよ。レイドが終わったら終わったで,次のレイドに備えることになりますし。
「さあ薬を作っておくか」とか「今度パッチ5.0来るから分解スキル上げておくか」とか,それでさらに「麻雀もやらなきゃ」となりますから,これはもう全部を網羅するのは無理かな,と。
4Gamer:
まあ,無理ですよね(笑)。
山田プロ:
でもそういう意味では,僕はレイド中心のグループにいますけど,グループ内では麻雀の話はしないんです。やっぱりレイド中の動きだったりスキル回しだったり,自然とそちらの話題だけになります。
僕もそういうときは完全に麻雀のことは忘れてますし。動画で自分の動きを見てると,「ここはこう動いたほうがいい」とかいうことを検証することで手一杯になるんです。
4Gamer:
動画で自分の立ち回りを検証する……本当に,ガチ勢ですね。
山田プロ:
僕はモンクをやっているので,位置取りが重要なんですよ。ここでこう動くんじゃなくて,こっちでこうしたほうが後々効率がいいだろうとか,そういうところはチェックしてます。そうやってレイドの検証に集中してるときは,頭の中はレイドでいっぱいですね。
4Gamer:
ですが,そうやって「ゲームに対してガチで挑む」という姿勢は,麻雀でもレイドでも一貫されているように見えます。
山田プロ:
かもしれません(笑)。僕,ゲームそのものが好きなんじゃないかなと思うんですよ。仕事でもそうなんですけど,目標を立てて,それを踏破するのが好きな人種なのかな,と。
4Gamer:
そういう人にとって,MMORPGは大好物ですよね……。
山田プロ:
そうなんですよ。目標が用意されていて,挑戦権を突きつけられたら,「やってやるよ!」って気持ちになっちゃうんです(笑)。
しかもFFXIVだと,その目標が3.5か月に1回やってくるわけで。次は7月に突き付けられるわけですよ。こうなったら挑むしかないじゃないですか。
だから麻雀で思ったより早く称号を取れたことは良かったと思ってます。次のレイドに備えられるので!
「自分ならこうする」と「他人はこうした」の違いを探る
4Gamer:
目標を立ててクリアしていくというのは,ゲーマーとして確実にプラスになる素養かと思うのですが,競技麻雀の世界においてもその姿勢はプラスになるものでしょうか。
山田プロ:
競技麻雀であれば1年を通じての勝敗が決まるわけで,「勝ちたい」という気持ちはより高まります。もちろん友達4人と打っても「勝ちたい」という気持ちはあるんです。でも1年を通して昇級したい,優勝したいという気持ちは大きなモチベーションになりますし,そのために「こうしたほうがいいだろう」と研究し検証するというのは実力の向上にもつながると思います。
4Gamer:
「勝ちたい」とか「1位になりたい」というのは,多くの人にとって共通する望みかと思います。そして「そのために何かをしなくてはならない」ということも分かっているんです。でも,何をすべきなのかというのは,けっこう難しい問題ですよね。ゲームだと「そこを手探りする」こと自体が楽しかったりするんですが……。
山田プロ:
その楽しさを誰もが感じられるわけではないですし,「あなたはなぜ真剣にやらないんだ」と言うのって,レイドのガチ勢がストーリーを楽しんでいる人に向かって「そんなんじゃダメだ」って言うようなもので,顰蹙(ひんしゅく)を買うだけですもんね。
4Gamer:
となると,何か最初の手がかりが必要かなと思うのですが,その手がかりにするために,どんなものを見れば良いんでしょうか。
山田プロ:
僕が麻雀で「強くなりたい」と思ったのは,憧れからですね。先ほど話したように,僕の師匠である大貝さんにカッコいいと感じさせてもらえたから。強い弱いじゃなくてとにかくカッコいい。そして,リーグ戦を観戦して真剣に打つ人達を見て「こんなふうになりたい」と思ったのが,僕にとっての手がかりだったんだと思います。
4Gamer:
なるほど。
山田プロ:
例えばドマ式麻雀でレート1200〜1400くらいの人であれば,「でも頑張りたい」と思ったときに,2000を目標にしたらキツイと思うんです。数字を追っかけるだけではつぶれるだろうと。
僕のオススメは,「他人が打つ麻雀を見てみる」ことでしょうか。他人の打牌を見ながら,「自分ならこうする」と考えつつ,自分の考えとは違ったことを誰かがしたときに,「なぜそうしたのか」を聞いてみる。これはかなり効果的です。
4Gamer:
「自分ならこうする」を考えながら,「自分と違ったことをしている」ところに注目して,その理由を聞くというのは,仮説と検証という感じで面白いですね。
「自分ならこうする」でうまくいくなら,それでいいんです(笑)。でも,うまくいかないときが問題で。それを解決するために,「なぜそこでそんなことをするのか?」,または「なぜそこでコレをしないのか?」に注目するというのは,良い入口だと思うんです。どうしてその考えになるのかというプロセスまでは,自分だけじゃなかなか気づけないものですから。
4Gamer:
だいたい思考の袋小路にハマりますよね。
山田プロ:
なので,判断の違いに対して「なぜ?」と聞いて,納得できれば,「じゃあ自分もそうやってみようか」というのが引き出しになって,これが上達につながると思うんです。
もっともそこで自分から「なぜ?」と聞ける人って,もともとゲーマー気質なので勝手に上達してしまうという側面もあるんですよね。ですから,こうした点を踏まえながら,「初心者にうまく教えてあげる」ことも大事だと思いますよ。
4Gamer:
そう考えると,ドマ式麻雀にも観戦モードがあれば……と思う半面,オンライン麻雀に観戦モードがつくと,いろいろ問題も起こるんですよね。
山田プロ:
そのとおりで,天鳳でも完全リアルタイムではなく,5分後からしか見られないです。これでコーチングが通らなくなるので。そういうモードをドマ式麻雀が追加してくれれば,それはそれで素晴らしいと思います。あるいはフレンドリーマッチの中で,リアルタイムに観戦できるモードとかも良いですね。
4Gamer:
ああ,レートの変動に関係しないところで,観戦の許可を出す,もしくはパーティを組んだ人が観戦できるみたいなのがあると良さそうですね。
山田プロ:
ええ。そうすると「後ろで見て楽しむ」ことができますし,「いまの打牌はなんで?」をリアルタイムで聞いて解答を得たりもできます。そうなると楽しみの幅が広がるんじゃないかなと。
4Gamer:
観戦するときって,競技者がどうすごいかを解説してもらう楽しさが結構大きな割合を占めているんですよね。
山田プロ:
「観戦」については,いろいろ思っていることがありまして。野球とかサッカーってスタジアムでプレイされて,観客がいっぱいいて,点が入ると一斉に盛り上がるじゃないですか。でも麻雀は見ている人が盛り上がらない。
麻雀の試合を中継するテレビ番組はありますが,「ロン,8000点」とかいうことが起きても観客席が大興奮で大盛り上がりとかにはならないですよね?
4Gamer:
かなり派手なルールで,芸能人が打つような番組でも,基本的には静かに,淡々と進行しますね。
山田プロ:
囲碁とか将棋もそうです。観客がプロの一挙一動にスタンディングオベーションとか,ありえないじゃないですか。麻雀の場合はとくに,選手と同じ会場にいる観客が「すげえ! テンパイした!」とか絶叫すると非常にマズいですが,試合が別室で進んでいて,観客は画面の前で大騒ぎするというのはあっていいだろう,と。
4Gamer:
最近だとネット配信を利用した観戦はありますね。
山田プロ:
そうなんです。例えばMリーグだと,パブリックビューイングを行っていて,そこで応援しているチームが勝つと観客が大いに盛り上がったりするので,やればできるんだ,と。あれを見る限り「こんな感じで楽しんでいいゲームだったんだ」と安心もしたんです。
そうやって観戦者が互いに「ここはこうだろう」と盛り上がったひとときもまた,麻雀が提供してくれた時間の1つだと思うんです。ドマ式麻雀って,Mリーグのパブリックビューイングみたいな楽しみ方が実現しやすいと思うので,頑張って要望を出そうと思います(笑)。
「教わる」ことの難しさ
4Gamer:
話は少しさかのぼりますが,「自分から『なぜ?』と聞ける人はゲーマー気質なので,勝手に上達してしまう」というご指摘がありました。実際,「人に聞く」「人に教えてもらう」ことには,一定のハードルがあるように感じます。このハードルは,どう越えたら良いのでしょうか。
教えてもらうというのもそうなんですが,「教わる」というのも本当に難しいんです。僕もFFXIVで体験したんですが,レイドがあまりにもうまくいかなかったとき,うまくやれている人にいろいろ教えてもらうと,なぜか固定パーティが解散しちゃったり,あるいはメンバーチェンジが起こったりするんですよ。
でもこれはある意味で仕方ないところもあって,「今までのやり方ではうまく行かなくなったとき,どうしたらいいかを教わる」ことって,ほぼ必ず「あなた達がやっていたスキル回しや立ち回りは間違っていた」と受け取ることになるんです。教わるということには,今までの自分が否定される側面もありますから。
4Gamer:
SNSでの「論争」などを見ていると,思い当たる節がたくさんあります。
山田プロ:
もちろん,頭ごなしに「お前らはダメだ」みたいな言い方をすることはないし,アドバイスする側だってそんなつもりがないのも分かるんです。しかし,聞く側としては「自分が否定された」という意識につながってしまいがちで。それを受け入れられるかどうかというところが難しいんです。
これはレイドでも麻雀でも,あるいはそれ以外のことでも共通すると思うんですが,“うまくやりたい”なら,まず一度自分の意見を折って,他人の意見も試してみることが大事だと思います。
4Gamer:
それで,自分が納得できたほうでやればいい,と。
山田プロ:
そうです。ただ,教えたタイミングで裏目に出ることもあるんですよ。とくに麻雀の場合は運による揺らぎがありますから,確率論で言えば正しい方向に進んでも,それが裏目に出てしまうことは,ままあります。というか,不思議なくらいによくそういう裏目を引きます(笑)。
4Gamer:
そういうものですよね……。
山田プロ:
教わった側にとってみると「うまい人の言う通りにしたのに,なんだこりゃ! やっぱり自分のほうが正しいじゃないか」になりがちで。
4Gamer:
それなりに自分の技量に自信があると,教わって裏目に出た結果として元のやり方に固執する,といったことは起こりそうです。
山田プロ:
結局のところ,信頼関係に基づくのかなと。「間違いなのでは?」と思っても,やっぱり一度は聞くという心構えが大事だと思うんです。
僕も師匠の麻雀を見ていて,「俺ならこうするけど師匠は違う方向に行くな」と思っていたら「ほら,やっぱり裏目に出た」みたいなことは何度も見ています。でも,それで師匠のことを弱いと思ったことはないし,今でも僕より強いと思っています。ただ,「そういうこともある」ってだけの話です。
4Gamer:
毎回,100%うまくいくなんてことはないんですよねぇ。
山田プロ:
失敗するかもしれない。でも,とりあえずいろいろ試して,今より上を目指そうという心構えがあれば,そのうち自分にぴったりハマったものは見つかりますよ。
それから,例えば「振り込んでもいいから上がりを目指したい人」と,「一位を狙いたい人」で,それぞれ「こうしたほうがいい」というアドバイスは変わってきます。だから個々人がまず,「自分が麻雀を打っていて何が楽しいのか」を見つけてもらい,それに向かって進んでいくのが,麻雀を楽しむためには大事だと思いますね。
4Gamer:
自分が“何を楽しんだのか”を発見する,というのはとても大切だと,自分も仕事がら痛感します。ゲームのレビューを書くときに「楽しかったです」しか書けなければ間違いなくリテイクになりますし(笑)。
でも「何か楽しいんだけど,なぜ楽しいかは特定できない」ということは結構多いように感じます。
山田プロ:
やっていて何が楽しいかは人それぞれですし,強制されることでもないから,基準点が見つけづらいんですよね。同じように,楽しさを伝えることも難しくて。「麻雀は楽しいよ」と友人に言ったとき,「何が楽しいの?」と返されることはよくあるんです。とくに,麻雀を遊んだことがない人はそこを聞いてきますから。
4Gamer:
それはゲームでもよくありますね(笑)。
山田プロ:
それで「押し引きがあって,リーチがあって,闇テンがあって」みたいなことを言っても伝わらなくて。間違いなく僕はそれが楽しいんですけど……これは一人で舞い上がってるだけだよなと(笑)。
4Gamer:
大変に耳が痛い……。
山田プロ:
なので,とりあえずは「やってみてほしい」というところはあります。とくに麻雀を遊んだことがない人に向けた話ですが,まずは実際に遊んでみて,そのなかで自分が楽しいと感じるものを発見してもらいたいなと。別にそれがポンすることでもいいですし,ひたすら鳴きまくって裸単騎になったけど牌がきれいに揃った,というのでも構わないので。そこがスタート地点になるんです。
「麻雀は難しい」というのは事実ですし,場合によっては「いろいろやってみたけどつまらない」ということもあると思います。でもそれは仕方ないことで,その人には麻雀が合っていなかったということです。
4Gamer:
合う,合わないは当然ありますね。
山田プロ:
そこで無理に続けようというものではないんです。ゲームは楽しい時間を過ごすために遊んだほうがいいですから。
でも何かしら「楽しい」と感じられたら,そこからもっと楽しめる方法を見つけて,楽しさを積み上げていく。そこで「どうしたらこれができますか?」という疑問があれば,ぜひ聞いてください。答えられると思います。
4Gamer:
「聞く」ということでもう1つ,「こんな初心者が質問してもいいんだろうか」という疑念だったり,恥ずかしさだったりというのはあると思うんです。聞いて構わないし,むしろ積極的に聞くべきだと分かっていても,なかなか行動に移せないというパターンですね。
山田プロ:
あるあるですが,そもそも「初心者」という言葉には注意が必要だと思います。
4Gamer:
と,言いますと?
山田プロ:
本人の中の初心者の区切りって,人それぞれなんです。逆に言うと,初心者かどうかは,自分が決めることなんですよ。「俺はもう初心者じゃない」と思えば,初心者ではありません。
その上で,「まだこんなものがあったのか! ならまだ俺は初心者だわ」と思ったら,また初心者に戻ったらいいじゃないですか。初心に戻るという言葉がありますが,それでいいと思うんですよ。自分自身,いつまでたっても自分は未熟者だなと,痛感していますから。
4Gamer:
なるほど。誰だって初心者足り得るのだから,「初心者だから云々」を気にする必要はない,と。
山田プロ:
あと「他人を初心者認定する」っていうのは本当に怖いところがあって。例えばFFXIVで新しいマクロが注目されると,初めはイマイチ使い方が分からなかったり,今までの動きと合わなかったりして,「なんだこれ,どんな初心者が作ったんだ!」とか言っちゃうんです。
でも使い方が分かってくると手のひらを返して「これを使わないヤツは初心者」だとか言っちゃったりして。
いやもうそこで過去発言を掘り返されると恥ずかしくて「仕方ないじゃないにんげんだもの」以外に何も言えなくなるんですが,本当に人間って面白いなと思ってしまう瞬間ですね(苦笑)。
「楽しむ」ことのプロとして
4Gamer:
大きく話は変わるのですが,山田プロがしている「麻雀プロ」としてのキャラクターをファンに覚えてもらうための努力,みたいなものはありますか。
もちろんあります。麻雀をどう打つかにおいても当然ですし,装いにおいてもそこは意識しています。
僕は対局するときは必ずスーツを着ているんです。たとえ友達と遊びで打つときでも,スーツで打つようにしています。それこそ友人に「またスーツかよ」って言われるくらいに。それは僕が「麻雀に関わるときは正装」と決めているからなんです。
それはドマ式麻雀でも変わりません。僕はドマ式麻雀を打つときのキャラクターも,そのときの装備も決めています。
あとはやはり「ゲームが好きな麻雀プロ」というのは,1つの肩書でしょうか。直球で「FF廃人」と言われることも多いんですが(笑)。実際,この2年間,麻雀とFFXIVどっちを長くやってるんだと聞かれると……。
4Gamer:
それは聞いてはいけない質問だと思っていました(笑)。
山田プロ:
ヤバイんですよ。それくらい280日って重い時間だと思うんです。それでも麻雀はしっかりやる,というのが僕にとっての1つのキャラクターになってくれればいいなと(笑)。
だから,道場に来てくれる人と話をするなら麻雀がメインの話題になりますが,そうではなくてゲームが好きという人でしたら,「麻雀プロだけど,もちろん他のゲームもやりますよ!」と言いたいですね。「キングダムハーツ3」を早くやりたいんだけど,時間がなくてできないんです(笑)。
4Gamer:
山田プロはTwitterにFFXIVのスクリーンショットや,ドマ式麻雀の戦績などを掲載されていますが,これもプロとしてのサービスなのでしょうか。
山田プロ:
実は僕,すごく人見知りなんですよ。これだけしゃべっておいてなんですが,人と話すのがすごく苦手なんです。
今はスーツを着て,麻雀という状況があるから,「麻雀プロとしての山田」としてしゃべることができるんです。普通の山田史佳になると,人見知りで口下手な人間が登場します。なので僕,Twitterのアカウントでもほとんど投稿したことはなかったんです。
でもドマ式麻雀が実装されて「これなら僕でもTwitterでいろいろ発信できるかもしれない」と思ったので,TwitterでFFXIVやドマ式麻雀について発信し始めたという感じですね。
せっかくプロとしてやっているのだから,プロとして発信していきたいとも思いましたし。
4Gamer:
そしてレーティング2200まで到達した,と。
山田プロ:
そうなんですが,先程も少し触れましたが,最近はもうレーティングに固執しない打ち方をしています。というのもレートに固執すると,麻雀がいささか歪むんですよ。1位を取らないとレートが上がらないから,何がなんでも1位を取るみたいな打ち方になって,無理な打牌をすることにもなってしまう。そのせいで取れるはずのトップを取りそこねたり,4位に落ちたりしているので,いろいろ良くないんですよね。
そんなわけで,今はもうレートにこだわらないようにしています。ちゃんと2200まで行ったんだから,それでもういいかなと。それより,自分の普段の打ち方を崩してしまうほうが嫌なんです。
4Gamer:
なるほど。麻雀のプロとして,自分の麻雀を大事にするべきだ,と。
山田プロ:
もっとも「自分の麻雀」が完全に確立するのがいつなのかは,ちょっと分かりません。ただ,今は,今やっている麻雀が僕の麻雀なんだと信じて打っています。とはいえ,ですね……。
4Gamer:
とはいえ?
山田プロ:
まあその,高レーティングで自然体で楽しく打っていたら,レートは下がるんです。レートにはこだわらないとか言っておきながら,実際に下がってくると,「山田プロ,2200に到達するも2000に戻ってきた」みたいに言われちゃうので,それも嫌だなと!
あちらが立てばあちらが立たずをTwitterで公開してると,いやもうお腹痛い! みたいな気持ちで楽しく打ってます(笑)。
4Gamer:
すごく楽しまれているのがよく伝わってきます(苦笑)。
山田プロ:
はい,すごく楽しんでいます。今は暗黒騎士のレベリングをしながら,隙を見て麻雀をしてます。暗黒騎士,楽しいですね!
4Gamer:
ここまでお話を聞いてきて,「楽しむ」というのも,山田プロの大きなキャラクターのように感じます。
山田プロ:
そうですね,僕は「自分が楽しい」と思いたいんです。どんな強さの相手と勝負するのであれ,まずは自分が楽しむ。そこが僕の根っこにあります。
麻雀の世界では,「俺は強くなってきたぞ」と思っている人のなかに,ときおり「こんな下手なのとは卓を囲んでいられない」と言い出す人がいますが,こういうのは好きじゃないんですよ。
たとえ自分と相手の実力がかなり離れていたとしても,その相手と打ったときに100%勝ってトップを取れるかというと,そんなことありません。100%勝てるようになるまでは,どんな対局でも絶対に勉強できる部分があると思っているんです。
麻雀って,ときどき常識ではあり得ないことが起こりますから。普通に打っていれば絶対に作らないような薄い待ちを作ってリーチをかけた挙げ句,一発でツモって裏も乗って跳満(はねまん),みたいなことがあったり。
4Gamer:
ありますね。
山田プロ:
「そんなのアリか!?」と思いはするんですが,それが起こるということは,自分もそれができる可能性がある。それを探ってみたくなるんですよ。
一方で,やられた側としてもできることはあったはずで,それはすべて反省点になるはずです。最終的に「あのリーチはない」ということになるとしても,それを検証する。そのこと自体が楽しくて。
4Gamer:
検証って楽しいですよね。
山田プロ:
「こんな戦い方もできるようになった」というのが楽しいです。FFXIVで言えば,タンクと言えばナイトしか扱えなかったのが,暗黒騎士もできるようになった,みたいな。そんな感じでどんどん引き出しが増えていくのは楽しい。それが,僕が麻雀をやるなかで一番大事にしているところですね。
そういう意味では,「麻雀」でできる“ジョブ”はまだまだあるので,もっと育てていきたいと思いますね。とくに火力が足りないので,DPSを育てたいです(笑)。
4Gamer:
そうやって自分の引き出しが増えてくると,似たようなことをしてくる相手の行動が予測できるといったメリットもありますよね。
山田プロ:
ええ,「この動きに似ているから,こう動いてくるんじゃないか?」と想定できるようになります。
4Gamer:
FFXIVでも別のロールやジョブで遊んでみると,ほかのパーティメンバーが,何をしたいのか,どう動いてほしいのかが分かってきますし。
山田プロ:
そうなんですよ(笑)。一方で,「あいつは弱いからもう一緒に打たない」とか「あんなのは見る価値がない」とか決めつけちゃうと,そこでもう道が途絶えてしまいます。
4Gamer:
自分で可能性を狭めてしまうのはもったいない気がします。
さて,かなりの長時間(※編注:インタビューは3時間)になってしまいましたが,最後にこれは聞いておきたいです。もしドマ式麻雀の大会があったら,山田プロは参加されますか?
山田プロ:
もちろんします! サーバが違っていても,馳せ参じます!
公式大会は当然ですが,プレイヤーズイベントとしての大会でも,可能な限り参加したいと思っています。麻雀普及の一環でもありますし,勝負バカとしては「戦いがあるところなら,行かねばならぬ!」という気持ちもありますので(笑)。レイドが来るなら倒さねばならぬ,大会があるなら行かねばならぬ,です。
同様に,Twitterでお誘いを受けることもありますが,これも基本的にすべてお引き受けしています。結果はすべて公開していますので,負けると恥ずかしいのは間違いないのですが……それはそれとして!(笑)。
4Gamer:
ドマ式麻雀のおかげで世界的にも麻雀に対する興味が高まったことですし,リアル・ドマ式麻雀のエキシビションマッチみたいな企画にも期待したいですよね。本日は長時間,ありがとうございました。
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