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ゼンハイザーに聞く,「ゲーマー向けサウンドデバイス」市場への本気度と新製品ロードマップ
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印刷2017/11/01 00:00

インタビュー

ゼンハイザーに聞く,「ゲーマー向けサウンドデバイス」市場への本気度と新製品ロードマップ

画像集 No.007のサムネイル画像 / ゼンハイザーに聞く,「ゲーマー向けサウンドデバイス」市場への本気度と新製品ロードマップ
 以前から日本のゲーマー向け市場へ参入こそしていたものの,その活動は「細々」という印象が否めなかったSennheiser(ゼンハイザー)。ゲーマー向け周辺機器の事情に詳しい人でも,「Sennheier Communicationsという会社がヘッドセットを出していて,その一部がゲーマー向けモデルとされている」くらいの認識がせいぜいだったのではないかと思う。
 ただ,ここにきてSennheiserのゲーム部門は,明らかにその活動が活発になってきた。地元である欧州からのゲーム配信でe-SportsプレイヤーやストリーマーがSennheiserブランドのヘッドセットを見る機会が増えてきただけでなく,日本市場でも,店頭で見かける機会が増えているのだ。また,「GSP 300」のような,比較的手頃な選択肢も出てきている。

 そもそもがプロオーディオ用ブランドで,ヘッドフォン市場でも確固たる地位を築いているSennheiserだが,そのゲーム部門は今,何を考え,どこへ向かおうとしているのか。。今回4Gamerでは,そのゲーム部門のセールスディレクターであるTim Völker(ティム・ボルカー)氏と,ビジネスマネージャーであるMichal Tempczyk(ミハル・テンプチェック)氏に話を聞くことができたので,今回はその内容をお届けしたい。

Tim Völker氏(Director Sales & Marketing, Gaming, Sennheiser Communications,右),Michal Tempczyk氏(Business Manager, Gaming, Sennheiser Communications,左)
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国内初公開!? 「Sennheiserが抱えるゲーム部門」の立ち位置


Sennheiser Communications公式Webサイト
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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まず確認なのですが,お二人とも,デンマークのコペンハーゲンにあるSennheiser Communicationsの所属ということでいいのでしょうか。

Tim Völker氏:
 ええ,2人ともコペンハーゲンの“Sennheiser Gaming”――つまりはゲーム部門――を拠点にしています。私の場合は,ドイツのベルリンにあるSennheiser本社にいることもありますが,基本的にはコペンハーゲンですね。

4Gamer:
 ゲーム部門は,なぜ本社から分かれているんでしょう? ドイツにはSennheiserのヘッドフォン部門もマイク部門もあるのに,ゲーム部門だけがコペンハーゲンという理由がどうしてもよく分からないのです。

Tim Völker氏:
 それは弊社の歴史が理由です。Sennheiser Communicationsが,Sennheiserと,William Demant Holding Group(以下,WDH)の合弁だということはご存じですか?

4Gamer:
 Webサイトにある情報レベルでは把握しています。ヘッドセットのための合弁会社ということですよね。

画像集 No.004のサムネイル画像 / ゼンハイザーに聞く,「ゲーマー向けサウンドデバイス」市場への本気度と新製品ロードマップ
Tim Völker氏:
 ええ。Sennheiserと,補聴器などの医療機械を作っているWDHが50%ずつ出資して,ヘッドセットにフォーカスする会社として10年以上前に立ち上げたのがSennheiser Communicationsです。
 そういう経緯があるので,ゲーマー向けヘッドセットをSennheiser Communicationsが手がけて,そのままゲーム系製品全体もという流れになっています。

4Gamer:
 つまりUSBサウンドデバイスも,“Sennheiser Gaming”として,Sennheiser Communications側のゲーム部門で担当しているということですね。

Tim Völker氏:
 はい。
 営業活動は「Sennheiser」という統一ブランドで行っており,販売網もSennheiser本社のものを使っています。そのため(ブランド戦略では)ドイツ本社が策定するガイドラインに従う必要がありますが,一方でコペンハーゲンでは,ゲームに関わる世界戦略を策定しています。製品(ポートフォリオの)管理や販売,マーケティング,研究開発のすべてに関わっているということです。

4Gamer:
 ということは,たとえばスピーカードライバーであったり,マイクであったりの開発はコペンハーゲンで行い,音質チェックなどは本社で行う,といったイメージなのでしょうか。それとも,本社で作ったコンポーネントがあって,ものがあって,その中からピックアップしてヘッドセットなりなんなりを作る感じですか。

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Tim Völker氏:
 我々はSennheiserグループ内のシナジーをたくさん活用しています。とくに研究開発やテストの工程では多くを共有していますが,ことゲーマー向けヘッドセットに関した話をすると,部材調達や製品開発におけるほとんどをコペンハーゲンで行っています。
 ご質問にお応えすると,高いオーディオ品質を得るためのトランスデューサー(※transducer,変換器。ここではスピーカードライバーのこと)ではSennheiser本社が開発したものを使っています。

4Gamer:
 それ以外は製品開発の「フルパッケージ」をデンマークで行っている?

Tim Völker氏:
 大体そんな感じですね。もっとも,ドイツ本社の製品との間で品質に違いはありませんよ。本社の定めた品質ガイドラインに沿って,同じ手順で同じ品質テストを行っているからです。

G4ME ZERO(左)とG4ME ONE(右)
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4Gamer:
 初代「G4ME ONE」「G4ME ZERO」(順に現「GAME ONE」「GAME ZERO」。以下現行製品名で表記)が出たときに,GAME ONEが非常に「Sennheiser的」な音をしていて,一方のGAME ZEROはちょっと違う路線だったのが,強く印象に残っています。
 GAME ZEROのような製品が出てくるのはSennheiser本社ではなくSennheiser Communicationsだからなんだろうと,個人的には勝手に納得していたんですが,いまのお話からすると,そういうわけではないようですね。

Tim Völker氏:
 そうですね。GAME ZEROについて言えば,そういうわけではありません。
 先ほどお話したように,どちらもSennheiserのトランスデューサーを採用していますが,GAME ONEはご存じのとおりオープンエア(=開放)型で,おおむねSennheiserのHD 500シリーズと似た音響特性を持っています。対するGAME ZEROは,どちらかというと一般的な音楽を聴くとき,よりナチュラルに感じられるかもしれませんね。

2万円超級の価格でデビューしたUSBサウンドデバイス「GSX 1000
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4Gamer:
 GAME ONEとGAME ZEROがゲーマー向けのハイエンドであることに疑いの余地はありませんが,2017年にはミドルクラスのものが出てきました。かと思えば独自のバイノーラル技術を採用するUSBサウンドデバイスを,やはりゲーマー向けとしてはハイエンドの価格帯で投入していますよね。
 Sennheiser Communicationsの考えるゲーマー層とはどういうもので,そこへ向けてどういう製品を作ろうとして,今のラインナップになっているのでしょうか。

Tim Völker氏:
 Sennheiserはプレミアムブランドとして,ヘッドセットにおいてもハイエンドセグメントにフォーカスしなければなりません。そして,製品および音の品質によって,我々はまったく新しいベンチマーク(benchmark,価値判断の基準)を提供できます。
 しかし一方で,ゲーマー向けヘッドセットの市場では,100ドル強の価格帯にとても大きなポテンシャルがあるのも事実でで,GSP 300と「GSP 350」を投入したのは,それが理由ですね。200ドル超級の金額をヘッドセットには投資できない,もしくはしたくないというゲーマーへの提案となります。

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Michal Tempczyk氏:
 Sennheiserグループとしてトランスデューサーに労力やノウハウを詰め込み,音質を高めていますが,Sennheiser Communicationsとしても快適さや耐久性といった,ゲーマーが必要とする他の要素でも高い品質を実現しています。

4Gamer:
 具体的には何をしていますか。

Tim Völker氏:
 我々は快適さや耐久性でも調査研究に多くの時間を割いていまして,たとえば世界中で耳の形をリサーチしたりしています。我々が(GAME ONEとGAME ZEROからなる)プレミアムラインと,(GSP 300とGSP 350からなる)ミディアムラインの両方に導入したのは,その結果として特別に開発したイヤーパッドを用い,音響的に「シーリング」を実現する試みです。スペ―シャル(spacial,空間的な)なサウンドのための方策ですね。

4Gamer:
 ブランドのポジションがまずあって,それを価格帯ごとに製品へ落としていく開発スタイルなんですね。

Michal Tempczyk氏:
 そのとおりですが,それとは別に,顧客志向型のボトムアップ型で製品を作ろうとする意識ももちろんあります。
 たとえば,ゲーマーの人達が強く意識していることの1つに,長時間装着したときの快適性というのはありますよね。

4Gamer:
 ええ。

Michal Tempczyk氏:
 そういった装着性に関するニーズは常に強いわけですが,そこを掘り下げていって,いまTimが述べたようなシーリングや,あるいはハウジングといったところへ反映させています。

4Gamer:
 低価格帯についての考えも聞かせてください。ローエンドは脇へ置いておくとしても,市場には59ドルから89ドルくらいの,エントリー市場向け製品が数多く存在しており,100ドル台前半のところとはまた別の,ホットな戦場になっています。
 この価格帯をどう捉えていますか。

「CX 3.00」というインイヤーヘッドフォン。たとえばこれだと税込5000円台から購入できる(※2017年11月上旬現在)
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Tim Völker氏:
 もちろん,その価格帯にポテンシャルがあることは分かっています。ただし,プレミアムブランドとしての我々が重点的にターゲットとして,かつ投資する市場ではないのも確かです。
 もしエンドユーザーさんが,どうしても投資額を50ドル60ドルに抑えたいということであれば,(MXシリーズやCXシリーズといった)インイヤーヘッドフォンを購入いただくこともできるでしょう。おそらくそれもよい選択だと思います。

4Gamer:
 実際のところ,50ドルとか60ドルのゲーマー向けヘッドセットがSennheiserブランドから出たとして,音質が上位モデルほどではなかったら,エンドユーザーはがっかりするでしょう。

Michal Tempczyk氏:
 そうです。我々はSennheiserですから,音質には妥協できません。低価格帯に大きなポテンシャルがあるとしても,我々はゲーマーに最高のオーディオ製品を提供するという,自分達のビジョンにこだわらねばならないのです。

4Gamer:
 ところで,最近GSP 300のテストを終えることができて,まもなくレビュー記事を掲載できると思うのですが(※10月30日に掲載),結果は興味深いものでした。というのも,その音がGAME ONEともGAME ZEROとも異なっていたからです。

Tim Völker氏:
 どのように違っていました?

4Gamer:
 周波数特性の観点でお話すると,GAME ONEは低強高弱,GAME ZEROは低弱高強で,GSP 300はその中間という印象です。

Tim Völker氏:
 ということは,価格を考慮するとGSP 300は非常にいい製品と考えているということですか。

4Gamer:
 はい。音質面では妥協らしい妥協が感じられません。
 一方で快適性はGAME ONEとGAME ZEROが明らかに上で,その点では多少の妥協が見られるものの,税別100ドルという北米市場におけるメーカー想定売価からすれば,納得できるレベルではないかと思いますね。

GSP 300のSplit Headband。詳細はレビュー記事を参照してほしい
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Tim Völker氏:
 その点については1つ意見がありまして,できれば,GAME ONEやGAME ZEROではなく,同じ価格帯の競合製品と比較してみてください。そうすれば,GSP 300の持つ快適性を理解いただけると思います。
 弊社ではGSP 300の「Split Headband」(スプリットヘッドバンド)というヘッドバンド構造を開発するのに多くの時間を割いており,快適性は価格帯からすると突出しています。また,先ほどお話した,「耳の形状の世界的なリサーチ」により,十分なシーリング能力を確保しながら快適性を犠牲にしないイヤーパッドもありますから,その部分を比較してみてください。

4Gamer:
 我々のレビューではいつもそうしていますよ(笑)。最近エンドユーザーにとって快適性はより一層重要になっています。よりカジュアルなユーザーが増えているという分析もありますが,一方,コアゲーマーは数時間ずっとプレイしますから,快適性については相当念入りにやっています。


Sennheiserの考えるゲーマー向けUSBサウンドデバイスとマイク,そして次世代製品


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4Gamer:
 先ほど少し話に出たUSBサウンドデバイス,GSX 1000についても聞かせてください。
 私の記憶が確かなら,GSX 1000は,ゲーマー向けのサウンドデバイスとして,初めてバイノーラルレンダリングを実装した製品です。
 バーチャルサラウンドサウンド出力に対応するゲーマー向けサウンドデバイスを市場投入するときはサードパーティの技術を選択するというのが一般的であるわけですが,なぜこの種の技術を採用しようと思ったのでしょう?

Tim Völker氏:
 GSX 1000で採用しているバイノーラルレンダリングエンジンは,Sennheiserの持つ「AMBEO」(アンビオ)計画に基づく技術の一部……というか傍流です。
 AMBEOはご存じですか。

4Gamer:
 はい。総合的なVR音響ソリューションの総称,くらいの理解ですが。ハードウェアだけでなく,ソフトウェアまで含む点が印象的で覚えています。
 確か,Ambisonics(※アンビソニックス,ある一点でさまざまな方向から同時に収録した複数の録音を用いて,後からその音場を360度で再現する録音・再生技術)対応マイクがすでに製品化されていましたよね。

AMBEO VR MIC
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Tim Völker氏:
 よくご存じですね。マイクは「AMBEO VR MIC」です。
 このAMBEO計画の初期プロセスから少し離れて開発されたのがバイノーラルレンダリングエンジンで,そこからバーチャル7.1chのサラウンドアルゴリズムにつながっています。

4Gamer:
 ああ,AMBEOの技術をバーチャル7.1chに落とし込んだことが,GSX 1000を生んだと。

Tim Völker氏:
 そうですね。このバイノーラルレンダリングエンジンとサラウンドアルゴリズムは,ゲーマーに新しいソリューションを提案する大きなチャンスをもたらしてくれました。
 GSX 1000を利用することでゲーマーは,よりよい音空間と,正確な音の定位(≒位置)が得られ,これにより,敵がどこにいるのかを,わずかではあるかもしれませんが,敵よりも早く認識できるようになります。ゲーム用途では現状,これ以上ないアプローチだと考えています。

4Gamer:
 おおむね同意ですが,そこで一点気になるのは,バイノーラルレンダリングエンジンは一般に,ヘッドトラッキング技術との併用になるということです。GSX 1000はヘッドトラッキングをサポートしていませんが,その理由は何でしょうか。

Tim Völker氏:
 シンプルにお答えすると,GSX 1000はSennheiserのゲーマー向けサウンドデバイス第1弾だからです。
 ご存じのとおり,ヘッドトラッキング技術自体が複雑で,それを組み合わせるのもまた複雑な開発工程になります。将来的に,GSX 1000のソフトウェアアップグレードや,あるいは後継やバリエーションの製品として,ヘッドトラッキング機能を提供する可能性はありますが(今回はまず,バイノーラルレンダリングエンジンの提供を優先しました)。

4Gamer:
 それは素晴らしい。期待しています。
 さて,GSX 1000……というかUSBサウンドデバイスではもう1つ,やはり価格帯の話があると思うのです。GAME ONEとGAME ZEROをトップエンドとして,GSP 300などがあるように,GSX 1000をトップエンドとして,ミドルクラスの製品があってもいいような気はしますが,その点はいかがでしょう?
 もちろん先ほどの話があるので,エントリーの話ではなく,あくまでも100ドルから150ドルくらい,というイメージですが。

Tim Völker氏:
 その質問に対する回答は,「GSP 350がそれです」というものですね。
 USB接続のGSP 350は,北米市場におけるメーカー想定売価が139ドルです。Dolbyの技術によるバーチャル7.1chサラウンドサウンドが付いているので,これをどうぞ,ということになるでしょう。
 正直,これより下を求めると,我々がやりたくない「音質面の妥協」を強いられることになります。USB接続型ヘッドセットではなく,単体のUSBサウンドデバイスで「出費を抑えながら高い音質を期待したい」という気持ちは分かりますが,それはおそらく,正しい選択肢ではありません。

4Gamer:
 いくつかのメーカーのUSBサウンドデバイスが頭に浮かびましたが(笑),了解です。
 マイクはいかがでしょう。ご存じのように,ストリーマーというプレイスタイルが誕生して,最初は皆Blue Microphonesを使っていたわけです。

Tim Völker氏:
 そうでしたね。

4Gamer:
 そのうち,Razerが「ゲーマー向けマイク」を市場投入して,いまでは台湾勢が後を追っているという状態ですが,Sennheiserからは出ていませんよね。「Sennheiser Communicationsはヘッドセットのメーカーだから当然」ではあるのですけれども,プロ用の単体マイクではとても強いSennheiserブランドのゲーマー向けマイクはない。この点についてはどうお考えですか。

MK 4 digital
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Tim Völker氏:
 いい質問ですが,実のところ,明快に「ストリーマー向け」と謳っていないだけで,我々はすでに選択肢を持っています。1つはUSB接続対応の「MK 4 digital」ですね。

4Gamer:
 MK 4 digitalは確かにUSB接続でしたね。面白い製品だなと思っていたんですが,なるほど,アレがストリーマー向けという位置づけですか。

Tim Völker氏:
 現時点で,世界クラスのストリーマーが何人もMK 4 digitalを利用していますよ。
 ご指摘のとおり,競合から廉価な製品が出てはいますが,我々はこの目的に適したプロ用マイクをすでにラインナップしていますから,本気のゲームストリーマーにはそれらを推奨しています。Sennheiser Communicationsとして,1から開発する必要はありません。すでに選択肢があるからです。

4Gamer:
 いまお話を聞きながら調べましたが,北米市場におけるメーカー想定売価で約400ドルしますよね。それは問題にならない?

Tim Völker氏:
 いま私は「成功したストリーマーが使っている」とお話ししましたが,要するに彼らは成功していて,お金に余裕があるんですね。
 ゲーマー向け市場だと単体マイクは高くても200ドル台ですから,そこは確かに一歩踏み出す必要があるのですが,他のものよりプロフェッショナルなマイクを本当に欲している,成功した,もしくは成功したいと真剣に考えているストリーマーにとっては,それほど大きなステップではないと思います。

4Gamer:
 分かりました。
 あと,お話できる範囲でけっこうですが,今後の製品計画についても聞かせてください。

Tim Völker氏:
 もちろん,ロードマップ上には数多くの製品がありますが,それを事細かにお伝えすることはできません。
 ただ,GAME ONEとGAME ZEROの後継は来年出るでしょう。

4Gamer:
 なんと。聞いてみるものですね。

Tim Völker氏:
 (笑)。完全な新設計で,新機能もあります。この2製品がおそらく日本のゲーマーの皆さんに最も求められているものだと思いますので,また4Gamerさんが面白い記事を書いてくださることを期待しています。

Michal Tempczyk氏:
 もうすぐサンプル版が出ますよ。

4Gamer:
 おお。だとすると発表はCES 2018かな? くらいに思っておきましょう。
 個人的に,GAME ONEとGAME ZEROの外観については,「ものすごくSennheiserっぽいけど,全然ゲーマー向けっぽくない」という印象を抱いています。要するに「オーディオ向けヘッドフォンのデザインだよね」ということで,GSP 300はそれと比べると多少ゲーマー向けっぽくなりました。新設計と聞くと,見た目のアップデートにも期待してしまうのですが。

PC 350の製品イメージ。PC 360ともども,販売終了済みの製品である
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Tim Völker氏:
 とてもよいご指摘です。
 GAME ONEとGAME ZEROはそもそも,「PC 360」と「PC 350」がベースになっています。
 10年ほど前,Sennheiserのヘッドフォンである「HD 500」が良い製品だという評価をいただいたわけですが,オープンエア型のPC 360と密閉型のPC 350は基本的に,このHD 500に高品質なノイズキャンセリングマイクをブームで取り付けた製品です。

4Gamer:
 はい。

Tim Völker氏:
 PC 360とPC 350は世界的に大成功したので,しばらく販売が続きましたが,これらを置き換えたのが,約2年半前に登場したGAME ONEとGAME ZEROです。
 ゲーム市場へ参入した我々の長期目標は,「現存するすべてのゲーマー向けヘッドセットを我々の製品で置き換える」ことにあります。なので,GAME ONEとGAME ZEROを出してから,「ゲームのためのデザイン」にあらためて取り組み始めました。
 世の中にはクレイジーなデザインのゲーマー向けヘッドセットも多数ありますが,成熟したブランドであるSennheiserが目指す方向性ではありません。Sennheiserとして何がよい形で,どういったカラーコーディネートがいいのかを,実際にゲーマーに尋ね,フィードバックをもらっています。

4Gamer:
 ということは,GSP 300とGSP 350では,そのフィードバックの結果が出ていると?

Tim Völker氏:
 そのとおりです。GSP 300とGSP 350は,「ゲームのためのデザイン」に特化し,ゲーマーとともに作り上げた最初の製品です。
 ご存じのとおり,先行する他社も同じように「ゲーマーのために」と言っていますが,結果として見てくればかり派手で,よい機能や音質ではない製品を量産しています。我々は,ゲーマーが選んだことを後悔しないような製品を提供しているわけです。

4Gamer:
 つまり,GAME ONEとGAME ZEROの後継も,同じ路線のデザインになるということですか。

Tim Völker氏:
 いえ,次の製品は完全に異なるデザインになるでしょう。GSP 300やGSP 350以上に,ゲーマーのために特化したものになります。

Michal Tempczyk氏:
 ヒントを出しておきましょう。新設計において,機能的でないものは1つとしてありません。LEDイルミネーションとかいった,ギミック感満載のデザインに傾いたりもしていません。機能性は,我々のファーストプライオリティです。

Tim Völker氏:
 付け加えると,我々が常に気を付けているのは,最高の音質はトランスデューサーからこそ得られるということです。そこに,競合より頭一つ抜けたマイクの性能と,可能な限り最高の快適性を追加します。
 幸いなことに,ヘッドセットを新設計したことで,仕様をさまざまに変更する機会も生まれましたからね。

4Gamer:
 とても楽しみですが,聞けば聞くほど,かなり変わるのではないかという気がしますね。それで「Sennheiser色」は残るのか,そこはちょっと心配ですが。

Tim Völker氏:
 それはあなたがテストして判断することですよ(笑)。

4Gamer:
 確かに(笑)。
 もう1つ,Sennheiserブランドの動きとして気になるのは,据え置き型ゲーム機の市場をどう見ているのか,ということです。もちろんアナログ接続型であればゲーム機ともモバイルデバイスともつながるわけですが,「据え置き型ゲーム機向けヘッドセット」の市場性はどう捉えていますか。

画像集 No.006のサムネイル画像 / ゼンハイザーに聞く,「ゲーマー向けサウンドデバイス」市場への本気度と新製品ロードマップ
Tim Völker氏:
 ゲーマー向けヘッドセット市場に向けた戦略を立案したのは,いまから数年前の話になりますが,そのとき,全世界におけるインストールベースだと,PCユーザーは2億1000万以上で,一方の据え置き機は,PlayStationとXboxの合算で8000万以上という数字が出たんですね。それを基に我々はまず,世界規模ではPCへフォーカスすることに決めました。
 また,PCゲーマーのほうが,据え置き型ゲーム機のゲーマーよりも,高価なヘッドセットを好んで選ぶ傾向にあります。これは単純な理屈で,ゲーム機よりもPCのほうがシステム全体の価格が高く,よりプレミアムだからですね。

4Gamer:
 ああ,それはよく分かります。ゲーム機のユーザーは,ゲームタイトル1本よりも高いデバイスを好まない傾向にあるという話も日本ではよく聞きますね。

Tim Völker氏:
 傾向としてはそうですね。我々の調査だと,ヘッドセットで200ドルというのを「許容範囲」とするPCゲーマーは一定数います。一方,これが据え置き型ゲーム機のゲーマーになると,200ドルは非常に高額という話です。
 もちろん,我々は8000万人いるゲーム機のユーザーにポテンシャルを感じています。だからこそ,(最初期モデルの「G4ME」から「GAME」へ製品名を切り換えるときに)GAME ONEとGAME ZEROではゲーム機と接続するためのケーブルを追加したわけです。

4Gamer:
 そういう理由だったんですね。

Tim Völker氏:
 GSP 300の価格をできる限り抑えた背景にも,ゲーム機でゲームをプレイする人達の存在があります。
 なので,「現在のSennheiserはPCと据え置き型ゲーム機の両方をターゲットにしていて,もっとマルチプラットフォーム対応製品をリリースしていきたいと考えています」というのが,質問への回答になるでしょうか。

4Gamer:
 一部のメーカーは,HDMIで受けて,プロセッサボックス上でデコードして……みたいなことをやっていますが,Sennheiser Communicationsとしては「ゲーム機とはアナログ接続」が基本線になると。

Tim Völker氏:
 「逆」は難しいですからね。PCゲーマー向けのヘッドセットをゲーム機に対応させるのは簡単ですが,その逆は難しい。同時に,多くのゲーマーがPCとゲーム機の両方を持っている。どちらをメインでプレイするかは国によって異なり,日本では確か7割がゲーム機メインで3割がPCメインでしたが,いずれにせよ「両方でプレイする」点では変わりません。であれば,両方で使えるものを出すのが道理でしょう。

4Gamer:
 質問は以上です。ありがとうございました。

Sennheiserのゲーマー向けサウンド製品情報ページ(英語)

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