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[GTMF 2015]「Game Tools & Middleware Forum 2015」会期直前情報〜「Unreal Engine」関連セッションの聞きどころは
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印刷2015/06/23 00:00

インタビュー

[GTMF 2015]「Game Tools & Middleware Forum 2015」会期直前情報〜「Unreal Engine」関連セッションの聞きどころは

画像集 No.001のサムネイル画像 / [GTMF 2015]「Game Tools & Middleware Forum 2015」会期直前情報〜「Unreal Engine」関連セッションの聞きどころは
 2015年7月7日(大阪),7月17日(東京)と,国内2都市で開催される「Game Tools & Middleware Forum 2015」は,その名のとおり,ゲーム開発で使用されるゲームエンジンやミドルウェアを一堂に集めたイベントである。そこで行われる展示&講演から主要なものをピックアップして概要を紹介してみたい。今回取り上げるのは,「Unreal Engine」でお馴染みのEpic Games Japanだ。

 さて,「Unreal Engine」(UE)はもっとも歴史が長く,そして高い実績を持つゲームエンジンである。
 日本のゲーム開発シーンにその名が知られるようになったのは,PlayStation 3,Xbox 360の時代に向けて登場した「Unreal Engine 3」(UE3)からだろう。日本のゲーム会社では自社開発のエンジンを好む傾向が非常に強かったこともあり,2005年から2006年頃,PS3,Xbox 360時代の最初期には,UE3は,それほど日本のゲーム開発スタジオから求心力を得られなかった。しかし,時代を経るごとに信頼と実績を獲得していき,2010年前後のPS3,Xbox 360時代の最後期においては採用事例が急増している。最初期には「どうせリアル系の戦争もののシューティングゲームしか作れないんでしょ」といった野次も聞かれたが,いやいやどうして。最後期には幼児向けゲームから本格2D格闘ゲーム,カードゲームに至るまでが日本のゲームスタジオからリリースされ,いつの間にか,日本のゲーム開発シーンでもすっかりお馴染みの存在となっている。

●UE3ベースの日本のゲームスタジオによる開発タイトル
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超速変形ジャイロゼッター
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GUILTY GEAR Xrd -SIGN-
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LORD of VERMILION III
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Mighty No.9

 そしてPS4,Xbox One時代に突入したわけだが,このタイミングでリリースされたのが最新の「Unreal Engine4」(UE4)である。
 UE4は,UE3時代に先端開発シーンから寄せられた要望を取り入れただけでなく,エンジンのアーキテクチャを一新し,先端グラフィックス技術の採用,アーティストの発想で自在なゲームロジックを設計できる機能なども搭載して,ゲームエンジンとしての完成度をさらに向上させた。
 UE4においては,UE3時代初期のようなこともなく,最初から日本のゲームスタジオの大作プロジェクトにおける採用事例の発表が相次いだ。ゲームエンジンなどからは最も縁遠い場所であるように思われたアーケードゲームの開発現場でも続々と採用されている。紆余曲折はあったが,日本のゲーム開発シーンは,今や,完全にUE4の価値を認めるに至っているといっていいだろう。また,6月に行われたE3でも,UE4と公表はされていないものも含めて,UE4を採用したタイトルが多数出展されていたとのこと。

●UE4ベースの日本のゲームスタジオによる開発タイトル
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鉄拳7
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ストリートファイターV
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キングダムハーツ3
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Bloodstained: Ritual of the Night

 ところで,UE3は当初「高価なゲームエンジン」として認識されていたが,UE4ではそのイメージを払拭するために,2014年に月額19ドル(当時の日本円で約2000円)という低価格で提供することを発表して話題を呼んだ。これにより,小規模ゲームスタジオはもちろん,個人レベルの開発者までが手軽に利用できるようになり,日本おいても利用者を劇的に増やすことへとつながった。
 さらに翌年の2015年3月には,月額19ドル制を廃止して無料提供することを発表。開発したゲームの四半期ごとの売り上げが3000ドル(日本円で約37万円)を超えた場合に総売上の5%を徴収するという成功報酬型となった。つまり,ゲームを販売せず,ゲーム開発を試すだけならば,無料で使えることになったのだ。これは,日本において,ゲーム専門学校やゲーム関連学科のある大学で歓迎され,カリキュラムへの採用が進むことにもなった。
 こうした流れは,日本の開発コミュニティを盛り上がりを加速させており,日本語のUE4関連書籍も相次いで出版され,さらに日本人開発者による日本語のUE4開発系Webサイトをも数多く生み出すことにもつながった。
 UE3時代には,UE3を活用するのには海外の開発コミュニティサイトを読解できる英語力が必要な場面が多かったのだが,現在のUE4時代においては,日本語でのUE4関連情報の入手は各段に容易なものとなっている。

UE4での作業の中心となるアンリアルエディタ
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 こうした日本におけるUEのプレゼンス向上にはUEの開発元,Epic Gamesの日本法人の精力的なサポートが大きく作用していると思われる。そんなEpic Games日本法人が,今回の「Game Tools & Middleware Forum」(GTMF)において執り行うセッションが二つあるので,今回はそれを紹介してみたい。
 一つは「Unreal Engineの最新ハイエンドデモ『Open World』に使われた技術」,二つめは「UE4で開発環境は次なるステージへ〜才能のコラボーレーションでクリエイティビティはさらなる高みへ〜」だ。
 それぞれのセッションの担当者に「どんな内容なのか」「どんな聴講者を想定したセッションになるのか」などを聞いてみた。

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最新ハイエンドデモ「Open World」の技術解説セッションはどんな内容か


 「Unreal Engineの最新ハイエンドデモ『Open World』に使われた技術」は,講師を務める今井翔太氏によるとGame Developers Conference 2015(以下,GDC 2015)で公開された「Kite Demo」に活用された技術を解説する内容になるそうだ。

広大な空間内で繰り広げられるKite Demo
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今井翔太氏(Epic Games Japan,コミュニティ・マネージャー)
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 Kite Demoは,凧を追う少年が不思議な洞窟に行き着くまでの短い冒険を描いたファンタジックなショート作品だが,いうまでもなくUE4ベースであり,そしてリアルタイムCG作品になっている。見どころは随所にあるが,この作品では,16km×16kmの広大なオープンワールドを構築し,そこを舞台に物語を展開させている。「Kite Demo」は映像作品ではあるが,作り方はあえてゲーム的にしているのである。

今井氏:
 私のセッションでは,このデモの開発で実践された,写真から草木や岩などをモデリングしたり,テクスチャを生成する技術にフォーカスしてお話ししたいと思っています。
 こうした取り組みは,オフラインCG制作の世界では結構一般的になった技術なんですが,ゲーム開発においてはまだ導入しているところが少ないようですからね。
 実は,そうしたKite Demoの技術解説はGDC 2015の「Creating the Open World Kite Real-Time Demo in Unreal Engine 4」(講演動画)というセッション内でも行われたことがあるのですが,日本語で詳しく話されるのは今回が初めてですし,私のバックグラウンドがまさにVFX制作やオフラインCG制作にあることもあって,自分の経験や知見なども交えて具体的に話せるかな,と思っています。

 このKite Demoに登場する岩はスコットランドで,草木類はニュージーランドで撮影された写真をベースにモデリングされ,テクスチャ類も同じくそうした写真から生成されているのだそうだ。

今井氏:
 対象物を複数の角度から写真撮影して,その写真から3Dモデルやテクスチャを半自動生成するんです。屋外で撮影された写真には,影や陰影が出てしまっているわけですが,そうした影や陰影を消し去る技術やツールなどについてもお話しします。
 ゲーム開発においても,広大なシーンを高品位かつ低コストで制作するためには必要になってくる技術ですので,アーティストの方はもちろん,プログラマの方にも聞いていただきたいですね。

Kite Demo探索モードの画面。当日は,Epic Games Japanのブースで,このKite Demoの実動展示を行うそうだ。実際に16km×16kmの広大なオープンワールドをゲームコントローラを使って探索できるとのことである
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UE4の開発環境に関するセッションはどんな内容になるのか


ロブ・グレイ氏(EPIC GAMES JAPAN,サポート・テクニカル・アーティスト)
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 「UE4で開発環境は次なるステージへ〜才能のコラボーレーションでクリエイティビティはさらなる高みへ〜」は,UE4を活用してのゲーム開発を行う際の,より具体的かつ実践的なTIPSを集約した内容になるとのことだ。講師は,下田純也氏ロブ・グレイ氏の両名である。
 さて,UE4といえば,プログラマでなくても,それこそ一切のテキストを打たずにゲームロジックまでもが設計できる「ブループリント」と呼ばれるツールがある。また,基礎的な材質を組み合わせることで表現した質感を作り込める「マテリアルエディタ」もUE4の看板機能の一つだ。こちらのセッションではそうした豊富なツール群の解説などが中心になるのだろうか。

グレイ氏:
 そうですね。ブループリントに関しては,ゲームロジックを作る人,レベルデザイン(ステージデザイン)をする人が分かれている開発ケースにおける連携の仕方について話せればと思っています。
 アニメーション関連の実例として「ブレンドスペース」の活用も紹介したいですね。ブレンドスペースとは,アニメーションの動的かつ適応型の合成処理を定義・設計できる機能です。
 マテリアルエディタについては,アーティスト/テクニカルアーティスト達が効率的に高品位な材質設計をする際に便利な「マテリアルインスタンス」についても紹介します。

UE4のブループリントとマテリアルエディタ
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 驚くべきことに,UE4はソースコードが公開されたゲームエンジンである。誰もがGitHubからソースコードを入手できるようになっており,やろうと思えば,UE4を自分で改造したり,機能を追加したりすることができる。もちろん,一般的な開発者ならば,「吊し」のUE4のままでほとんど不満はないであろうが,大手ゲームスタジオが手がける大規模な開発プロジェクトでは,必要な機能を自前で追加しなくてはならなくなるケースもありえる。今回のセッションでは,そうした話題なども取り扱われたりするのだろうか。

下田純也氏(EPIC GAMES JAPAN,サポート・マネージャー)
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下田氏:
 はい。UE4のカスタマイズ手法や,UE4の各種エディタの拡張の仕方,DCCツールからのデータのインポートの仕方などにも触れようと思っています。
 UE4は,アイデアをすぐに形にできる創造性と生産効率の高さがウリです。UE4の基本情報にも触れますが,GTMFは開発現場の方々の来場者が多いですから,実際のハイエンドタイトル開発でUE4をどう活用したか……といった視点での話を多くしようと思っています。
 それと,当日は登壇者の自分達はブースにいると思うので,なにかUE4に関連する技術的な突っ込んだ質問があれば,ぜひ声をかけてください。全力で対応しますよ(笑)。


おわりに〜UE4の今後は?


 最後に,最近のUE4の動向,そして将来の進化の方向性についても聞いてみた。

下田氏:
 6月にUE4のバージョン4.8がリリースされました。このUE4.8はパフォーマンスが大幅に改善されたことはもちろん,バーチャルリアリティ(VR)に広く対応するアップデートもなされています。Oculus,Morpheus,SteamVRなど,主要なVR対応型HMDをすべてサポートしていますよ。
 最近,UE4は,ゲームだけでなく,映像作品の制作現場を初めとしたゲーム以外の分野からの引き合いも強くなっていますが,UE4.8では,そうした分野のプレイヤーからの要望で,3Dモデルやアニメーションデータのインポート速度の改善も行われています。

リリース後も頻繁にバージョンアップが行われているUnreal Engine 4。4.8の詳細はこちら
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 今後,UE4は,どう進化していくのだろうか。

下田氏:
 UE4.9以降は機能追加よりはパフォーマンスの改善,使いやすさの向上にもっと注力していくことになっています。
 それと,Windows 10発売後は,DirectX 12対応版のUE4が提供される見込みです。これからもUE4は進化していきます。楽しみにしててください。

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Game Tools & Middleware Forum公式サイト

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